ダイアローグ 対話する組織…中原淳・長岡健 著

「導管メタファー」とは、情報を有形のモノとして捉え、情報の送り手と受け手の間にパイプのような流通経路があり、そのパイプにポンと情報を投げ込めばそのまま受け手に内容が伝わるというコミュニケーション観です。
これは、私たちの日常に広く浸透しております。
典型的な事例のひとつが、教育現場です。
我々は、小・中・高と約1万2000もの時間を一方通行の授業で導管メタファー的なコミュニケーションに順応してしまいました。
情報を有形のモノとして捉えると、明治時代以降、西欧諸国に追いつくためには、効率的だったのでしょう。
しかし、価値観や信念が「伝わった」かどうかは、聞き手の共感や行動・考え方の変化を引き出したとき初めて確認できるもの。
「情報の移動だけでは伝わらないもの」を「伝える」ために、「情報の移動」から「人間の行動や思考の変化」に焦点を移す必要がある。

「対話」とは、
(1) 共有可能なゆるやかなテーマを、
(2) 聞き手と話し手が、
(3) 創造的なコミュニケーションを図ることです。
社会構成主義と呼ばれる哲学的立場からは、コミュニケーションによって、物事の意味づけがなされる。
その意味づけによって、人々の行動は方向づけられていく。

この根幹にある考え方は、「物事の意味とは客観的事実ではなく、社会的な構成物である。
「社会的な構成物」とは、「人々の社会的コミュニケーションによってつくられたもの」です。

対話とは、「客観的事実」と「意味づけ」の関係に焦点を当てる社会構成主義的な視点をもちつつ、相互理解を深めていくコミュニケーションの形態です。

ダイアローグ 対話する組織…中原淳・長岡健 著

3つの「対話」の効用

  1. 協調的な問題解決ができる。
    議論の場合、問題と仮定しているものが間違っていたとしても、問題解決を議論してしまうため、議論に限界がある。大切なことは、問題解決から問題設定だ。
  2. 知識の共有が進む。
    知識には、事実(宣言的知識)とやり方(手続き的知識)があり、事実の共有には、マニュアルも有効だが、「やり方」の共有は、経験の語り合いが有効としてい る。
    ゼロックス社のコピー機修理工が実践しているWar Storyのように個別具体的に「こんな凄い修理をした!」という武勇伝の語り合うことで、初めて出会う現場でも推論することができます。
  3. 組織の変革が進む。
    組織文化は、日常に根差します。
    職場での共通体験を主体的に語り、意味づけすることで、組織文化が醸成・共有されます。

ダイアローグ 対話する組織…中原淳・長岡健 著この本を読んで私がとっていたコミュニケーションの多くが、導管メタファーが多かった反省しております。
時には対話をうまく活用することで、コミュニケーションがうまく図れると思います。
そうすることで、無駄な会議や摩擦も減少し、仕事の成果を高めることができると思います。

経営者・幹部、リーダーの方にお勧めの本です。
お勧め度:★★★★☆ 星4つ
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(桐元 久佳)