アイリスオーヤマ一目瞭然の経営術三田村蕗子 著

第1章 LED革命

品質と安さと開発力。
この3つに加えて、家庭用エコルクスを成功に導いた要因が、販売チャネル戦略である。
「他社は家電量販店を中心に販売していますが、電球が切れたら主婦はどこに買いにいきますか?最寄り品を扱っているドラッグストアですよね。」大山社長。
LED照明には興味があるがわざわざ買いにいくほどではないという主婦の目に触れやすいチャネルへの進出が、アイリスオーヤマのLED革命に力を貸している。

第2章 高シェア・高収益を生み出す商品開発力

アイリスオーヤマは、自社を「アメニティを生み出し、人々の暮らしをソリューションする生活用品のメーカーベンダー」と称している。
著者によると「購入時から使用時に至るまでストレスが少ない。
毎日の暮らしのなかで、生活者が抱えているちょっとした不満や不便を解消してくれる、便利で満足度の高い生活用品のメーカーであり問屋である。」
節操なき品揃え。
ガーデニング、ペット、収納用品、家電製品やLED照明、健康美容関連まで。製品の顔ぶれは時代に応じてころころと変わる。
しかし、実は一本、明確な筋が通っている。
どれも「生活のなかに横たわる不足不満を見つけて解消する」という目的を持って開発された商品だ。
ラインナップが幅広い理由を、大山社長は、「いろいろ作っていると効率が悪いと思われるかもしれない。しかし、非常時にはこの方がダメージが少ないんですよ。経済は10年に一度はバブルがはじけますからね。カードをたくさん持っていることは大きな強みなんです。」
アイリスオーヤマが年間に開発する商品は1000アイテム以上。
総売上高に占める新製品の割合は59%(2011年度)にも及ぶ。
商品開発と販路開拓のポイント
(1)不満や不便を感じているアイテムはないか
(2)その問題を解消する商品を自社で作れないか
(3)商品を求めているユーザーはどこにいるか
(4)その用途は他の分野にも転用できないか
1973年.オイルショックが日本を襲った。
最悪の事態から得た教訓は
(1)好況時に投資を行い、不況時にはじっと我慢するという経営は通用しない。
(2)大きなマーケット向きの少品種大量生産の商品は、容易に市況に左右され買い叩かれる可能性が高い。
(3)不況時は問屋や商社による代理店販売では自社の商権が安定しない。
(4)つぶれる会社とつぶれない会社との違いはマーケティングにある。
(5)マーケティングで製品を開発し、生産しよう
(6)同業が少ない業種でオンリーワンとなれる事業を確率する必要がある。
商品開発の要であるユーザーインとは、顧客という漠然とした固まりではなく、もっと個に寄り添いながら消費者が日々の暮らしを送っていくなかでのニーズ(つまり生活者ニーズ)にフォーカスする。マーケットインよりさらに顧客視点に立った発想である。
さらにユーザーインの発想を具現化するために、同社では「S・R・G」のコンセプトを踏まえている。
Simple 機能はシンプルに
Reasonable 価格はリーズナブル
Good 商品はグッドに  わかりやすく、値ごろ感があり、グッドな小雨品、過剰な機能や装飾はなし。
シンプルでリーズナブルな価格設定。
進出すべき市場を選定する基準
(1)将来性があること
(2)小さなマーケットで自社のノウハウや強みが活かせること
(3)既存の企業が高収益を上げていること
(4)競合メーカーに比べて優位性があること。

第3章 メーカーベンダーイノベーション

メーカーベンダーとは、問屋機能(ベンダー)を併せ持った製造業(メーカー)という意味だ。
「うちは特定の業種に特化したメーカーではなく、業態化したメーカーベンダー。
園芸もペットも収納、家電品、LED照明も作って売る。共通するのは「快適で便利、安心で安全」な生活を送るための商品であること。
これらをコストを考えながら売り場に揃えることが我々の目的。
製造業の目的はモノを作ることだが、うちは違う。
モノを作るのは目的じゃなくて手段です。」と大山社長はいう。
アイリスオーヤマは特定の業種にこだわらず(業態化)。
「便利で安心安全で快適な生活」を送りたいと考える客を対象にした商品を自社で作り(メーカー)作った商品をホームセンターをはじめとする小売店に卸し(ベンダー)、店頭をサポートしている。
問屋としての5つの機能
(1)保管機能
(2)配送機能
(3)金融機能
(4)情報機能
(5)開発機能
メーカーベンダーの成立条件
(1)商品力
(2)品揃え力
(3)納品力(商品供給力)
(4)営業情報力
営業戦略の大きな特徴の一つとして「ベンダーとしてイエスからスタートする」。
「イエス」といって取り引きを成立させたものの、万が一勇み足で現実が追いつかなければ即座に代替案を出す。
ベターな方法を提示して、新たな売上を確保してしまえ。
それがアイリスオーヤマ流だ。
物流センターのなかに工場がある運賃を経費と見なさず、製造原価と同じように原価管理を行い、運賃の利益管理を行いたいと考えた。
運賃の原価を下げるために、工場の立地に関する考え方を統一した。
具体的には、国内にある8つの工場はどれも、インターチェンジ近くの交通の便のよい場所にあり、取り引きのある小売店に日帰りで配送できるよう、半径300キロメートル圏内の場所に立地している。
物流でもっとも時間と手間がかかる作業(コストを生む)は、荷物の積み下ろしだ。
この作業を効率化するため、工場のなかに物流センターがあるのでなく、物流センターのなかに工場があるように変えた。

第4章 マネジメントマジック

経営不振企業の3つの病気
(1)経営者が勝手に夢を抱き、具体的なビジョンを社員と共有できなくなる病気
(2)過去の延長で仕事をしてしまう病気。
(3)社員のやる気を削ぐ評価制度
アイリスオーヤマは商品が100あれば、100それぞれの利益を個別に把握できるよう個別原価管理を実施している。単品の損益が明らかになる原価管理マネジメントだ。

第5章 巨大市場を押さえろ

アイリスオーヤマ一目瞭然の経営術三田村蕗子 著第6章 新しいフィールドへ  と、さらに続きますが・・・・・・紙面の都合上、割愛させていただきます。
知っているようで、実態があまり知られていない企業・アイリスオーヤマ。
企業の強みが今回、明らかにされたと思います。
簡単に読めますので、ご興味ある方は、ぜひご一読くださいませ。

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(桐元 久佳)