介護報酬同時改定へ向けて 2018年診療報酬改定の方向性

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介護報酬同時改定へ向けて 2018年診療報酬改定の方向性

  1. 次期診療報酬改定の全体的動向
  2. 入院医療をめぐる改定の方向性
  3. 外来・在宅医療に関する評価の見直し
  4. 「2025年モデル」を見据えた今後の病医院戦略


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目次

1.次期診療報酬改定の全体的動向

1.2018年診療報酬改定に向けた議論と重点項目

(1)中医協における主な検討項目

国民医療費は、2017年度予算ベースで約45兆円に上っており、高齢化や医療の高度化が進む中で、国民負担は年間1兆7000億円増加する試算です。
2005年を起点にすると、国民医療費は過去10年間で毎年平均2.5%増加しており、高齢化による同1.2%を上回っていることから、医療費の伸びを高齢化の範囲内に抑制することを改めて求めています。
また財務省は10月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会において、2018年度診療報酬改定では2%半ば以上のマイナス改定が必要と示し、医療費の伸びを高齢化の範囲内に抑制することを提案しています。
今後、年末に向けて改定率を含め、各項目に反映される点数等評価の設定に向けた議論が進められます。

中医協における主な検討項目

(2)2016年度診療報酬改定の特徴~次期改定に向けての課題

前回2016年度改定は実質マイナス改定でしたが、新規入院料等の新設や大きな変更は見られませんでした。
2018年には、(1) DPCの暫定調整係数廃止、(2) 療養型入院基本料2の廃止、(3) 介護療養病床の廃止が予定されていますが、大きな変更はなかったとはいえ、一部の病院には影響を及ぼした改定でもありました。

2016年改定で影響を受けた病院とは

改定内容により、全く影響を受けない医療機関と、大きな影響を受ける医療機関があったのが、2016年度改定の特徴として挙げられます。
このほかにも高度急性期病院は、産科・小児科等が要件となっている総合入院体制加算2(旧)を同加算1にランクアップした病院(例:700床規模で年間1.1億円増)以外にとっては、厳しい改定になりました。
次期改定の検討にあたっては、「2025年モデル」の実現に向けて、医療機能の分化を推進して主に急性期病床の削減を図りたい厚生労働省の示す方向性からは、次期改定におけるインセンティブによって、病院や病床の機能再編を促したいという意図がうかがわれ、厚生労働省が設定したハードルに満たない、あるいは異なる用途で使用している医療機関に対し、狙い撃ちともいえる評価の見直しを行っているといえます。
こうしたピンポイントでの評価見直しの傾向は次期診療報酬改定以降も継続するとみられ、厚生労働省が推進する地域医療構想との整合性を図るうえでは、各地域ニーズに合致した「地域完結型の医療」を実現する病棟編成が、今後の医業経営安定には不可欠な取り組みになります。

2.次期改定の基本的視点と具体的方向性

次期診療報酬改定の方向性は、2016年改定に続き、地域医療構想との連動を含め、基本的に前回改定を踏襲しています。

2018年度診療報酬改定の基本的視点と方向性の例

2.入院医療をめぐる改定の方向性

1.高度急性期と急性期における課題と改定の方向性

(1)看護必要度をめぐる見直し

急性期入院をめぐる改定では、看護必要度に関する見直しが行われる見込みです。
看護配置7:1算定病棟では、手術や化学療法を実施している割合が高いために患者入院単価が高くなります。
そして、日別入院単価が高いほど、看護必要度該当の対象となる患者割合が高いことも指摘されることから、次期改定において急性期要件である看護必要度に関する見直しが行われる見通しです。

入院単価に応じた看護必要度該当患者割合

(2)2018年度改定におけるDPC/PDPSの見直し

DPCは、重症度係数の廃止等の改定が予定されており、今後は効率性係数と救急医療係数の重要性が増すといえます。

DPC病院の7つのキーワード

2.ポスト・アキュート機能をめぐる方向性

地域包括ケア病棟には、ポスト・アキュート(他急性期病院からの転院)とサブ・アキュート(在宅患者・施設入所者、急性増悪患者の受け入れ)の2つの機能がありますが、双方について現在は一律化されている点数を、段階的に見直す方向性が検討されています。
一方で回復期リハについては、これまで制度整備が進められてきており、前回改定に引き続き、質の高さを重視したアウトカム評価のための要件の厳格化が予想されます。

(1)地域包括ケア病棟の包括評価見直し

地域包括ケア病棟は比較的手厚い包括点数が設定されていますが、稼働率に問題を抱える医療機関が少なくありません。
その理由としては、(1) 医師の転棟に対する理解不足、(2) 看護の専門性の問題と転棟の申し送りの手間、(3) 患者の抵抗、(4) リハビリスタッフの不足が挙げられます。
サブ・アキュート(直接入院)の評価引き上げが予想される一方、転院や院内転棟などのポスト・アキュート機能については、その評価の見直しが現在も検討されているところです。

地域包括ケア病棟~稼働率向上のポイント

(2)回復期リハビリテーションに関わる改定の検討

回復期リハビリテーション病棟入院料1・2については、アウトカム評価の厳格化とともに、地域包括ケア病棟との整合性をどのように図るのかという検討が行われています。
また、回復期リハ病棟では医業収益対医業利益率が高い(療養型病院経営状況比較:2014年度福祉医療機構による調査)ことが指摘されており、アウトカム評価重視の傾向から、評価が低い病院についてはリハビリテーション包括化に向かうことが予想されますが、これらをどこまで反映させるのかという議論が続けられています。

回復期リハビリテーション病棟に係る論点~2017年10月25日中医協総会

3.慢性期入院医療は大きな転換期へ

医療療養型病床では、介護療養病床と併せて療養病床入院基本料2の廃止が2018年3月末に決定していることから、今後の自院のあり方について選択が迫られています。
来年4月に創設される「介護医療院」は慢性期入院を提供する医療機関にとって、選択肢として重要な位置づけだといえます。

慢性期入院医療に係る転換先候補のメリット・デメリット

現在の医療療養病棟入院基本料2を算定、また介護療養病床が今後とるべき方向性としては、(1) 療養病棟入院基本料1を目指し、20:1看護配置、医療区分2・3を8割以上に、(2) 介護医療院への転換、(3) 経過措置6年間は現状維持、の3つが選択肢として挙げられます。
(1) は難易度が高く、(3) は医療療養2の経過措置が決定していないこともあり、現状では(2) 介護医療院への転換が現実的に検討すべき対象だといえます。

入院医療における経営戦略ポイント

3.外来・在宅医療に関する評価の見直し

1.外来と診療所に係る評価

(1)外来医療の機能分化促進

外来医療に関する前回改定においては、かかりつけ医機能の評価(地域包括診療料および同加算)の拡充、紹介状なしの一定規模以上の大病院受診時の定額負担導入などの改定が行われましたが、2018年改定でも引き続き外来医療の機能分化とかかりつけ医機能強化を促す評価の見直しが実施されます。

外来医療における改定議論の要点~厚生労働省資料:中医協総会

次期改定では、これまで以上に大病院の外来機能縮小を推進するため、紹介状なしに特定機能病院等の大病院を受診した場合には、現行の選定療養に加えて、初再診時に患者から定額を徴収する見直しの方向性が示されています。
診療所としては、かかりつけ医としての機能充実とともに、連携の強化に向けた取り組みがますます重要となります。

認知症に対する主治医機能についての評価

(2)外来医療における課題解消に向けた評価見直しの検討

次期診療報酬改定では、外来医療のニーズの変化や多様性も踏まえ、より質の高い適切な外来医療が提供できるよう、外来患者の特性や病態に応じた評価や、新たなサービス提供のあり方について、評価の見直しが行われる見込みです。
かかりつけ医機能を担う診療所にとって、今後生活習慣病の増加が見込まれるとともに、より質の高い医学管理や重症化予防の取り組みが求められており、厚生労働省としてはこれらへの取り組みを高く評価したい意向です。
そのため、診療所を中心とする外来医療においては、次のような改定の方向性が示されています。

外来医療における評価のあり方検討の視点

また、2018年改定では、遠隔診療の拡大が検討項目として挙げられています。
現在は対面診療が原則で、遠隔診療はあくまで補完的な役割とするのが厚生労働省の見解ながら、一定の医療費抑制効果も求められることから、新たな評価項目として認められる可能性が大きいとみられます。

2.在宅医療関連評価方法の見直し

在宅医療や訪問看護分野は、今後も高齢患者の増加が続くことが想定され、2025年には75歳以上人口が18%に達すると推計されています。
こうした中で、在宅医療に対応可能な医療機関は概ね増加傾向にあり、その大部分は診療所が占めています。
併せて、訪問看護ステーションの数や規模は増加・拡大しています。
これら現状を踏まえ、近年増加傾向にある自宅等における死亡が微増傾向にあることから、特にニーズが高い介護する家族の負担軽減や急変時対応への不安解消に向けた取り組みへの評価も検討されています。

(1)在宅医療の現状と見直しの方向性

在宅医療については、質と量はもとより、効率性も確保しつつ、多様化する患者ニーズに応えることができるようなサービス提供のあり方や、地域の状況、個々の患者の状態、医療内容、住まいや住まい方等を踏まえた評価のあり方が検討されています。

在宅医療をめぐる評価の課題に対応した見直し案

施設基準のハードルの高さから、在学療養支援診療所の届出を断念した診療所であっても、地域におけるかかりつけ医として在宅での看取りまでの医療サービス提供を評価する方向性が固められています。

(2)訪問看護ステーションに関する評価

前回改定を経た結果でみると、重症患者に係る管理料を算定している患者については、その他の患者に比べて病状説明や訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所との連携に係る項目を算定しているケースが多くみられています。
在宅患者の家族が不安として挙げる救急応需体制等の確保のため、地域の医師会が中心となって在宅医療支援センターを設置し、在宅医療を行う主治医の連携を推進するとともに、後方病床の確保や訪問看護ステーションの機能強化を行っている地域があります。
こうした実績をもとに、訪問看護ステーションに期待する役割を前提とし、評価の拡大が予想されます。

4.「2025年モデル」を見据えた今後の病医院戦略

1.その他個別項目の改定の方向性

(1)医療ICT化に向けた検討項目

医療機関の機能や規模を問わず、医療等分野におけるICT化の徹底について次のような改定方針が示されています。
近年の総務省主導によるICT活用推進を受け、医療情報の標準化や共通ICTインフラを整備し、医療の質と効率性向上を図ることで、世界に誇る保健医療水準を維持するとともに、民間の投資を喚起し、健康で安心して暮らせる社会実現を目指すことを目的としています。
これにより、診療報酬上も政策的誘導が行われる可能性があります。

厚生労働省が示す医療分野におけるICT化の徹底

(2)精神医療をめぐる改定の方向性

精神医療については、精神病床の入院患者のうち統合失調症の患者が最も多く、近年は認知症入院患者が微増傾向にあります。

精神科救急入院料の届出医療機関数・病床数・算定回数

2.機能別に見る病医院がとるべき経営戦略

診療報酬改定では、国や厚生労働省が重視する分野に手厚い評価をしており、また政策誘導として評価の見直しや要件の緩和・厳格化が行われていることは否めません。
しかし、改定が重ねられ、政策の軌道修正や変更によって点数が変動するからといって、何も手当をしないままでは今後も安定した病医院経営を確保することは難しくなります。
2025年に向かっては、自院の機能を正確に見極め、とるべき戦略を策定し、実践していくことが求められています。

(1)急性期医療をめぐる戦略

地域医療構想における4区分については、病棟単位の届出であり、1日入院単価から入院基本料相当部分とリハビリの一部を除外したものです。
つまり、診療科単位で急性期の患者が分散している場合、病棟単位の「急性期度合」が高まらないため、診療科単位ではなく、患者の重症度に応じた病棟編成を行う病院が増えてきています。
もともとICUやHCUでは診療科別の概念はないはずであり、急性期の需要に適した病棟編成を検討することが必要です。

急性期の需要に適した病棟編成を検討

(2)ケアミックス、回復期・療養型の戦略

ポスト・アキュート機能として地域包括ケア病棟を活用する場合には、高度急性期病院との連携が重要になり、また回復期リハビリ病棟については脳血管疾患・大腿骨頸部骨折等の術後患者の受け入れ先として、専門職種の配置・採用等を準備すべきです。

ケアミックス、回復期・療養型の戦略

(3)診療所の戦略

「かかりつけ医」のさらなる普及を図る施策が今後も継続すると見込まれ、患者の状態や価値観も踏まえて、適切な医療を円滑に受けられるサポート機能を発揮することが求められます。

診療所の戦略

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