歯科医院の増患対策 今から打てる経営改善対応策

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歯科医院の増患対策 今から打てる経営改善対応策

  1. 増患対策は全員で取り組むテーマ
  2. アメニティ整備による増患対策事例
  3. 診療体制の見直しによる増患対策事例
  4. 福利厚生の改善による増患対策事例

 


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1.増患対策は全員で取り組むテーマ

歯科医院が取り組むべき経営テーマは多岐にわたります。特に「増患対策」は、歯科医院の経営に直結する重要なテーマです。
「どうやって来院患者を増やすか」と院長がいくら知恵を絞って対策を講じても、スタッフがその思いを理解しなくては対策が進みません。
組織は一人ひとりが多様な価値観を持っていますから、組織の人数が増えれば増えるほど全員が同じ基準で考え、同じ方向を向いて行動できる土壌をつくることの重要性が増してきます。
だからこそ、院長の浸透しにくいビジョンやミッションを、スタッフにわかりやすいように伝える必要があります。
今回は、スタッフ一丸となって「増患対策」に取り組んでいる歯科医院への取材から明らかになった、成功のヒントを紹介します。

1.対策の考え方

(1)患者満足度を高める

増患には、様々な対応策があります。
まず最初に、患者の認知率を高める広告戦略が挙げられます。
チラシ、配布物、情報誌への掲載、看板、ホームページ等の媒体を使うケースがありますが、一番効果を発揮するのが、既存患者からの良い評判が口コミで広がるケースです。
その口コミも、近年はSNS等により広範囲かつ伝達する速度も速くなっています。
口コミによる良い評判を勝ち取るには、高い診療技術はもちろんですが、患者満足度の向上に向けての対策を練る必要があります。

増収増患対策のポイント

前述のことからも「既存患者の満足度向上対策」が重要となります。
せっかく来院した患者が次に来院しないと、確実に患者数は減少します。
既存患者の満足度を高める取り組みによって、再来診および家族の来院が見込めます。

既存患者満足度向上のポイント

(2)患者の来院環境を整える

歯科医院の場所や開業形態によって、診療圏や患者層が違います。
住宅地の歯科医院、商業地やオフィス街では患者層も来院時間や曜日、マイカーによる通院や公共交通機関の利用等、様々な条件が違ってきます。
「患者ニーズ」を知り、そのニーズに合わせた診療日時や駐車場、待合室の造作、設備等の対策を考える必要があります。
患者層に合わせた来院できる環境を整備することも重要なポイントです。

来院環境の整備

2.スタッフ満足度向上のポイント

(1)診療・技術の向上とやりがい

増患対策を実施するためには、患者側へのアプローチだけではなく、歯科医師やスタッフの新しい医療技術の習得や、診療実績のアップ、コストパフォーマンスの工夫が必要です。
また、最近は医療安全等を含めコンプライアンス対策も不可欠です。
スタッフが今後どのように能力向上していけるかを歯科医院側から提示することで、目標とやりがいが生まれ、取り組む姿勢が変わります。

(2)雇用・労務対策

患者満足度の向上から増患増収のためには、勤務歯科医やスタッフの協力が欠かせません。
歯科医院全体での取組みがあってこそ成果が望めます。
そのためスタッフの長期定着を進めるには、雇用条件や体制の構築、教育制度等の雇用・労務対策が重要となります。

雇用・労務対策のポイント、職員確保と定着率改善策

何をすべきかを自ら考える人材を育成することがクリニックには必要ですが、具体的な応対方法を丸暗記するだけではなく、医事従事者として必要な心構え、歯科医院の置かれている経営環境、医院の理念と方針を理解させるなど、より大きなビジョンを理解させる事によってスタッフの役割への認識が醸成されます。

2.アメニティ整備による増患対策事例

1.託児ルーム設置による増患対策事例

A歯科クリニックは、ショッピングセンター内のテナント物件という立地で、来院患者は子供連れが多いという状況でした。
院長は差別化の一環として院内託児サービスの提供を考え、開業時より歯科助手兼任の保育士を採用し、治療患者の子供を見ています。

A歯科クリニックの概要

託児サービスをより充実させるためのリニューアルは、広いキッズスペースがあっただけの院内を、対象別の託児スペースとして1階と2階にそれぞれ設けました。
1階のキッズスペースは、小学生がひとりで遊べるように、本や専用テレビを設置し、向いの受付からスタッフが様子をみることができます。
また、隣の診察室からもガラス越しにキッズスペース内が見えるため、複数の目による監視ができるようになっています。
2階の託児ルームは、未就学児が予約なしで利用ができるもので、15畳の広さがあり、専任の保育士を配置して本や専用テレビ・玩具等も備えています。
託児ルームは安全確保の目的もあり個室にしていますが、開放感と視認性を意識し、1階から階段をのぼってきた所から見えるように、一部をガラス張りにしているのも特徴です。

院内託児サービスの内容、院内託児スペース、院内託児サービス実施の効果

2.予防専用ユニット・滅菌コーナーの充実による増患対策事例

B歯科クリニックでは、増患対策として定期検診の強化を図り、リフォームに合わせて予防専用ユニットと消毒滅菌システムを設置しました。
予防専用ルームと消毒滅菌コーナーは、患者に清潔感をアピールする施設として整備し、予防専用ユニットは治療と区別するために完全個室化し、消毒滅菌コーナーはガラス張りにして、感染対策に取り組む姿勢をしっかりとアピールしています。
スタッフにも、予防治療を行う側の意識改革を目的として、内部・外部研修を実施しました。

B歯科クリニックの概要、予防専用ユニット、消毒滅菌コーナー、予防専用ユニット、消毒滅菌コーナーのアピールによる効果

3.診療体制の見直しによる増患対策事例

1.待ち時間短縮化のため診療体制を変更

(1)診療時間および診療曜日変更

C歯科クリニックでは、患者への診療サービスの向上と競合する近隣の他院との差別化を図るため、診療時間および診療曜日の見直しと待ち時間解消に取り組みました。
その主な理由として、競合する近隣医院と診療時間や診療曜日が重なっており、患者のアンケート調査からも診療時間の変更や土日診療のニーズが多かったことです。
見直しをするこの機会に、スタッフを増員し、かねてから幅広い層への診療サービスを提供したいと準備していた訪問診療も開始することとしました。

C歯科クリニックの概要、診療時間および診療曜日の変更内容

診療時間の延長や休日診療を行うためのスタッフ増員により、経費は大幅に増加しましたが、患者ニーズへの対応と他院との差別化により来院患者数は確実に増加しました。
スタッフの満足度も、1日の勤務時間は増えるものの、結果として休日が週1日増えることにより向上しました。

(2)予約システム見直しによる待ち時間対策

待ち時間が長い理由としては、院長を含めたスタッフ全員に、時間を守るという意識が欠けていることや、予約の入れ方によるものがありますが、C歯科クリニックでは予約システムの見直しを行い、その結果としてスタッフも時間厳守の重要性を認識しました。

待ち時間対策、歯科医院予約システムの一部特徴

(3)予約システム導入のメリット

予約システム導入後に、患者やスタッフから様々な良い評価をいただきました。
その評価がSNSを含め口コミとなって増収増患につながっています。
また、スタッフも計画的に診療が行えるため、準備や片付けも効率的に行えるので行動や気持ちに余裕ができ、仕事に対する意欲向上にもつながっています。

導入後の評価

2.診療体制見直しによる効果

診療体制の見直しにより、新たな患者層の増加が図れたとともに、スタッフの業務改善につながるという効果がありました。

診療体制の見直しによる効果

4.福利厚生の改善による増患対策事例

1.D歯科クリニックの事例

(1)福利厚生の改善

歯科医院のスタッフはほとんどが女性で占められており、仕事と家庭生活とを両立させながら勤務しているケースが多くみられます。
そのような状況の中、スタッフの定着率をアップさせることが患者サービスの向上に繋がり、結果、増収増患を図る大きな要因になると考えて雇用条件の整備を行った歯科医院があります。
D歯科クリニックでは、「就業日(診療日)見直し」「社会保険への加入」「人間ドック受診時の費用補助」等、スタッフが安心して働ける診療体制や院内規定の整備など、福利厚生の改善を実施しました。
社会保険については、常勤5名未満のため加入していませんでしたが、スタッフからの要望もあり、離職を抑える目的とスタッフ募集の際の差別化として加入しました。
また、スタッフの勤労意欲や売上に対する意識付を向上させるために、年一回の国内旅行と忘年会や新年会を行っています。
社員旅行については、日程や旅行先の希望をスタッフに事前に確認し実施しています。

D歯科クリニックの概要

今まで水曜日は午前診療日とし、スタッフは水曜日を交代制として隔週の休日としていました。
代わりに水曜を休診として、週休2日制に変更しました。

休日追加による勤務条件改善

また、給与体系にもインセンティブを設け、医業収入の貢献度や自由診療獲得、患者紹介等の実績によって増額となるシステムを構築しました。

給与体系でのインセンティブ(ポイント制)

その他、有給休暇の取得を促すほか、有給休暇の計画付与を実施するなど福利厚生面でも改善を図り、社会保険に加入して長期間の勤務に対してのメリットを設け、働きやすい環境を整備しました。
以前は、勤務時間が長いことで退職するスタッフも多く、悩みの種でしたが、勤務体制の変更により退職者が大きく減少し、やむなく退職者がでても、スタッフ募集をすれば人が集まるようになり、雇用・労務に対する問題がほとんどなくなりました。

その他福利厚生改善策

(2)年次有給休暇の計画付与制度の留意点

D歯科クリニックでは、年次有給休暇の計画的付与を実施する際、社会保険労務士に相談し、スタッフが病気その他の個人的事由による休暇が取得できるよう、指定した時季に与えられる日数を留保しておく必要があるとアドバイスを受けました。
年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければなりません。
このため、労使協定による計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。
例えば、年次有給休暇の付与日数が10日のスタッフに対しては5日、20日のスタッフに対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
なお、前年度取得されずに次年度に繰り越された日数がある場合には、繰り越された年次有給休暇を含めて5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。

2.福利厚生の改善による効果

福利厚生の改善により、スタッフの定着率が向上し、患者へのきめ細かい気配りが評判となった結果、クリニックの増患へとつながりました。

福利厚生の改善による効果

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