かかりつけ歯科医機能と連携機能を強化 平成30年度歯科診療報酬改定の方向性

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かかりつけ歯科医機能と連携機能を強化 平成30年度歯科診療報酬改定の方向性

  1. 平成30年度歯科診療報酬改定の基本方針
  2. 「地域包括ケアシステムの推進」に関する議論
  3. 「かかりつけ歯科医機能」の評価に関する議論

 


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1.平成30年度歯科診療報酬改定の基本方針

介護報酬との同時改定となる平成30年度診療報酬改定については、本年11月29日の財政制度等審議会において、平成30年度予算編成では歳出の約1/3を占める医療や介護に関する社会保障費の伸びを抑制するため、1兆円以上引き下げるよう求めています。

1.改定にあたっての基本方針

これまでの「診療報酬改定の基本方針」においては、(1) 改定に係る基本的考え方・基本認識に続いて、(2) 重点課題、改定の視点等を定めた上で、(3) 具体的な検討の方向を示してきました。
また、基本方針における改定の視点は、社会保障・税一体改革を経て、これまでの改定でも基本的に継承されてきており、それに各改定時における医療を取り巻く状況を踏まえた重点課題等を追加してきたところです。
今回は、6年に一度の介護報酬との同時改定であり、2025年以降も見据えて「地域包括ケアシステム」を構築するための重要な節目とされており、医療・介護の役割分担と連携が重要なテーマです。
また、医療従事者の負担軽減については、これまで重点課題等で継続的に取り上げられてきており、政府の進める働き方改革の推進にも資する項目となっています。

改定にあたっての基本方針と具体的項目

2.歯科をめぐる改定の基本的視点

平成30年度診療報酬改定の基本方針においても、(1) 改定にあたっての基本認識、(2) 改定の基本的視点と具体的方向性を示すこととし、歯科医療をめぐる項目については、つぎのような観点から検討するとしています。

改定にあたっての基本的視点~<抜粋>歯科診療をめぐる項目

3.歯科診療所における重点項目

歯科診療所に関連する重点改定項目としては、地域包括ケアシステム構築の観点から、医科・歯科の連携、かかりつけ歯科医機能の強化と、院内感染防止対策に関する施設基準の厳格化、口腔機能の管理などが重点的に議論されています。
かかりつけ歯科医機能のように重点配分される項目がある一方で、院内感染防止対策では、施設基準の届出がない医療機関については、基本診療料を減算する等の意見が出ています。

平成30年度歯科診療報酬重点項目

2.「地域包括ケアシステムの推進」に関する議論

1.地域包括ケアシステムの推進強化

(1)医療機関との連携と課題

地域包括ケアシステムにおいて、住み慣れた地域で生活を継続することができる包括的な支援・サービス提供体制を、歯科診療所の立場でどのように構築するかが課題です。
歯科診療所単独による支援サービスだけでなく、医療機関(医科診療所、病院等)や介護保険施設との連携によるサービスも重要です。

医科歯科連携の課題「周術期における口腔機能管理」

(2)診療情報の共有の現状と課題

医科歯科連携においては、診療情報の共有が重要です。歯科治療を行うにあたり、医科に通院している患者の病名、病歴、現在の患者の状況、薬剤の情報等の問合せを行うことが多くあります。
地域包括ケアシステムの推進には、この診療情報の共有を常とし、連携が医科および歯科に広がることが望まれます。
「平成28年度医科歯科連携の在り方に関する調査(保険局医療課)」によると、他の医療機関や院内の医科診療科に診療の依頼や診療情報の問合せ等を行ったことがある患者は約8割であり、こうした患者の歯科治療の内容は、抜歯が約9割となっています。
以下に、診療情報共有における現状を整理します。

診療情報共有の現状

また、診療情報の共有化は患者情報が大部分を占め、お互いの診療体制や管理において必要な情報はほとんどないケースもみられ、以下のような課題が指摘されています。

診療情報の共有の課題

2.周術期口腔機能管理や診療情報の共有推進の議論

中医協審議会(平成29年12月6日開催)において、診療報酬改定について、医療連携の中での周術期口腔機能管理と診療情報の共有に関する議論がなされました。
周術期口腔機能管理に関しては、対象患者の拡大や加算の見直しが検討されています。

周術期口腔機能管理に対する改定への要望

診療情報の共有については、医科歯科間の診療情報共有の評価や、医科診療情報提供料(Ⅰ)の歯科医療機関連携加算などの評価の見直しが議論されています。

診療情報の共有に対する改定への要望

歯科医療をめぐる平成30年度診療報酬改定については、地域包括ケアシステムをいかに構築するかという観点から、かかりつけ歯科医機能の強化と、医科歯科連携の強化が重点的に議論されています。

3.「かかりつけ歯科医機能」の評価に関する議論

かかりつけ歯科医とは、患者の乳幼児期から高齢期までのライフステージに応じた継続管理や重症化予防のための適切な歯科医療の提供および保健指導を行い、口腔や全身の健康の維持増進に寄与することです。

1.かかりつけ歯科医機能の評価に関する課題

かかりつけ歯科医の役割とは、地域において住民のために行政や関係する各団体と共に歯科健診などの保健活動等を通じて口腔保健向上の役割を担い、地域の関係機関や他職種と連携して、通院が困難な患者にさまざまな療養の場で切れ目のない在宅歯科医療や介護サービスを提供するとともに、地域包括ケアに参画することなどが挙げられます。
また、かかりつけ歯科医機能の評価については、中医協において、医師との連携や介護関係の施設や事業所等との連携を評価すべき、また、歯科における重複受診は想定されないのでかかりつけ歯科医機能の評価として診療報酬上の差別化は慎重に検討すべき等の意見が出されています。

歯科訪問診療における連携等に関する課題

2.かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所のメリット

「かかりつけ歯科医機能強化歯科診療所」は、在宅歯科医療の提供体制及び総合的な環境体制整備等の確保が施設基準になっています。
そのほかには、医療安全対策及び高齢者の口腔機能管理に関する研修が含まれています。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の評価

また、地域の在宅医療・介護等を担う医療機関・事業所との連携内容は、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所とそれ以外の歯科診療所について、それぞれ以下の状況となっています。

かかりつけ歯科医機能強化型診療所の医療機関・介護保険施設との連携

3.かかりつけ歯科医機能の評価に関する議論

中医協審議会(平成29年12月6日開催)の中で、診療報酬改定に対して、かかりつけ歯科医機能の評価に関する要望が議論されました。
地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能維持のため、継続的な口腔管理・指導が行われるよう、以下の観点からかかりつけ歯科医機能の評価及びかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直しが議論されています。

かかりつけ歯科医機能の評価に関する要望

4.その他基本方針に関連する議論

平成30年度歯科診療報酬改定の基本方針には、病院併設歯科の評価、歯科外来診療における院内感染対策、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応があり、院内感染防止対策の施設基準の新設や、口腔機能管理に対する評価が検討されています。

その他基本方針に関連する議論

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