診療の効率化で時間コントロール 最新機器の活用による待ち時間対策

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診療の効率化で時間コントロール 最新機器の活用による待ち時間対策

  1. 待ち時間が長くなる要因とその影響
  2. レセプトコンピューター機能付加による対策
  3. 予約システム導入による時間短縮化策
  4. 患者の不満を解消する待ち時間の有効活用

 


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1.待ち時間が長くなる要因とその影響

歯科医院における患者満足度向上の課題で、最初に取組む必要があるのが「待ち時間対策」です。
歯科を含む医療に関する意識調査(調査会社の保有する対象者相手:個別面接調査及びWEB調査)の中で、受けた医療に満足していない理由に「待ち時間」と回答した割合がWEB調査で47.3%、個別面接調査で44.4%と、いずれも第1位となっています。
予約制を採用するケースが多い歯科医院でも、「予約しているにも関わらず待たされる」といった待ち時間へのクレームはなくなっていないようです。

1.患者の最大の不満は待ち時間

患者にとって、診療を待つというのは苦痛な時間です。
楽しいことを待つのに比べ、痛みを我慢し、不安な気持ちで治療を待つという時間は非常に耐えがたい時間です。
また、その時間が長いほどストレスは増加し、ストレスが最大になった後では、どんな良い治療を行っても患者の不満は消えません。

患者からの評価を最大限に高めるには

2.待ち時間が長くなる要因

(1)予約診療での時間配分

現在、予約診療を取り入れている歯科医院が多数を占めていますが、予約診療を行っていても待ち時間があるという歯科医院も多くみられます。
予約を取ることは、一日に治療する患者数が確定するということを意味しており、歯科医院経営の上で黒字となる患者数も想定できます。
しかし利益がなければ健全な歯科医院経営も行うことができないという事実から、予約のキャンセルを考え、少しでも患者数を増やしたいと考えて、ギリギリの診療時間で患者予約を入れてしまうケースも否めません。
また、どの治療も一律の時間(15分や20分など)で区切ることはできません。
しかし、患者の会計時に次回の予約を入れる歯科医院では、どんな治療が次に行われるかを会計担当者が把握していないため、同じ時間区分で予約を入れる、という場合も考えられます。
待ち時間が長くなる要因のなかには、時間を守るという意識の問題もあります。歯科医院側でも患者側でも時間を守るという意識に欠けるため、「待たせても仕方がない」「少しくらいは遅れても大丈夫だ」という考えがあるといえます。

待ち時間が長い主な理由

(2)治療と準備・片付けへの配慮不足

予約を取る際、治療に平均○○分かかるから治療時間は○○分平均で予約を入れるという事をよく聞きます。
平均を取るという考え方自体が、長くなることもあれば短く終わることもある、という意味であり、すでに遅れることを前提にしています。
また、診療時間の中には治療のほかに準備や片付け、患者移動もあります。
そのため、治療時間のみの間隔で予約を取ると、すでに次の患者の診療開始時間が遅れてしまうということにもなります。

3.長い待ち時間が及ぼす経営への影響

(1)患者離れとスタッフ定着率の悪化

待ち時間が長くなると、歯科医院への信頼が低下することで、様々な影響が出てきます。
不満を抱かれ、歯科医院側の要望に応えてくれなくなったり、自由診療を勧めても拒まれたりするほか、最悪な事態として他の歯科医院への転院にもつながりかねません。
また、スタッフの定着率にも間接的に影響が出ているようです。
これは待ち時間の長さを含めて、患者からのクレームが常態化すると、スタッフのモチベーションが低下する等、転職の理由にもなっています。

待ち時間が長いことによる影響

(2)待ち時間短縮化で回避

待ち時間を短縮する対策には様々な方法があります。
例えば、スタッフや患者においても時間を守るという意識改革や、治療に付随するカルテ作成時間の短縮、また治療を考慮した自動予約システムの導入、患者が待ち時間を有効に使うことでの待ち時間をクレームにしないようにする患者呼び出しシステムの導入、さらには診療前にカウンセリングを行い、「待ち時間」を生まない対策が挙げられます。
そのほか自現機でのX線現像をデジタル化して診療時間短縮をする方法等があります。

待ち時間短縮化対策の例

2.レセプトコンピューター機能付加による対策

治療終了後、レセプトコンピューター(カルテ機能付き)を打ち込んでいる院長を見ていると、治療内容を思い出しながら、歯科衛生士が行った指導内容を聞き取ったりなどして入力していることが多くあります。
歯科診療報酬の中には、治療計画の作成や、指導内容を記載した文書による患者・家族への説明を義務付けられている指導管理料があるため、歯科医師や歯科衛生士の記録作成負担が増加して、治療自体や患者指導への時間が取れなくなっているという実態もあります。

1.管理・指導に必要な文書作成の時間短縮

歯科診療報酬では、「医学管理」として様々な項目があります。
その管理や指導において、治療計画の策定や指導文書の作成も定められており、患者やその家族に対し、その文書による説明も義務付けられています。
またその内容に関して診療録への記載も求められています。
このような作業をレセプトコンピューター(カルテ機能付き)の音声入力システムの導入によって文書作成に必要な時間を短縮することで、患者の待ち時間短縮につながります。

医学管理の種類(管理・指導等)

2.音声入力によるカルテ、紹介状等の作成時間の短縮

(1)音声入力による所見や指導説明書等のカルテ作成、他文書作成の効率化

治療終了後に行う他医院への紹介状の作成や診断書の作成、歯科の療法・処置などの所見入力、歯科疾患総合指導・継続管理診断などの各種指導説明書の作成、治療計画書の作成など、レセプトコンピューターへの入力作業は多々あります。
レセプトコンピューターには、歯周検査の結果を音声で入力する機能をもったものもあり、音声入力システムを導入することで作業の時間短縮を図っている歯科医院も出てきています。
また、パソコンの取り扱いに自信のない歯科医師のために、ペン入力機能もあるソフトも開発されています。

音声入力システムの基本機能

(2)音声入力の特徴

音声入力システムの特徴

3.歯周検査持のカルテ音声入力システム

音声入力は、歯科医師のカルテ作成時に活用するだけではありません。
歯科衛生士が歯周検査を行いながら、音声入力が可能なシステムもあります。
ヘッドホン式や耳掛け式のワイヤレスマイクを使用するため、両手が空き、検査に集中することができます。
また、音声入力した内容がすぐにデジタル音声で流れるため、入力した内容を確認しながら中断することなく検査を行えます。
また、修正があっても検査機器を持ち、検査を継続しながら音声で修正できます。

歯周検査時の音声入力システムのメリット

4.音声入力システムの種類

音声入力システムは各社で開発が進み、様々な仕様で販売されています。
ただ、導入している歯科医院がまだ多くなく、その利便性が認知されていないのが現状のようです。
レセコンの配置場所やどんな体制で使用するのか、だれがいつ行うのか等を決めて機能を十分に活用し、診療時間の短縮と効率化で患者の待ち時間対策にも貢献できるようにすべきだと考えます。

音声入力システムの種類

3.予約システム導入による時間短縮化策

1.待ち時間対策としての予約制

多くの歯科医院は予約制を導入しています。
その理由には、患者管理がしやすい、患者を待たせることがない、技工所からの技工物のでき上がりに合わせて予約を入れられる、患者に合わせた診療準備ができる、というメリットが多くあります。

予約制のメリット

患者にとって歯科医院は、急な歯の痛みや補綴物が取れた等の救急治療に関しては、どの歯科医院も当然受け入れてくれるだろう、と思いがちです。
しかし、完全予約制をとっている歯科医院の中には、救急であっても予約が必要な場合もあります。
こうしたケースでは特に、多くの患者は、「すぐに対応して欲しい」「早く治療を終わらせたい」という要望を持っています。

予約制の弊害からの患者からのクレーム

2.歯科医院予約システムの特徴

歯科医院予約システムには、患者情報の一覧やリコールへの対応、来院患者内容や来院動機等の分析、キャンセルの統計管理から内容の表示まで行う機能があり、活用方法は様々です。
患者の立場からは24時間対応で休診日でも予約ができるので、急な痛み等が出ても対応が可能です。
患者にとって電話でうまく症状を説明するのは難しく、億劫に感じるケースも多いため、スマホやPCの操作で予約ができることは非常に便利で活用度が高く、歯科医院の評価アップにもつながります。

歯科医院予約システムの特徴(待ち時間対策用として抜粋)

2.歯科医院予約システムの導入メリット

歯科医院予約システムは費用が掛かりますが、様々なメリットがあります。
予約対応する担当者が新人でもできる簡易性のほか、中断患者や無断キャンセルの減少、症状別による予約受付と管理、また365日24時間の予約ができる等です。

歯科医院予約システムのメリット

(1)予約システム導入の間接的メリット

予約システムには、中断患者や定期健診の案内などを自動で行うシステムが付いているものもあります。
一般的には、スタッフが業務時間にハガキを作成して郵送したり、電話で案内を行っているケースがほとんどですが、こうしたハガキ作成の時間や電話時間が削減でき、その分治療時間や患者とのコミュニケーションをとる時間にあてることができます。
また、中断患者や定期健診への連絡は重要な業務ですが、スタッフにとって心理的な負担になっていることがあります。
スタッフのストレス軽減とモチベーションの低下を防ぐことにもつながります。

4.患者の不満を解消する待ち時間の有効活用

患者の待ち時間対策には、待ち時間そのものを減らすという考え方のほかに、待ち時間を長く感じさせない、待ち時間を別なことで有効に活用してもらう、また待ち時間にカウンセリングを行って、より有益な情報収集と情報提供にあててもらう、といった方法もあります。

1.患者呼び出しシステムで時間コントロール

予約制の歯科医院において、受付後に診療順番が近くなると、患者のスマートフォンや携帯電話にメールを自動送信し、もう少しで診療を開始することをお知らせするシステムがあります。
また、ソフトではなく、歯科医院側のマンパワーで患者にお知らせしているところもあります。
これは待ち時間の発生は避けられないため、その時間を患者にうまく活用してもらおうという考え方が基本になっています。
自動システムでは、単に受付確認だけはなく、受付完了のメールに記載されているリンクから診察待ち情報サイトにアクセスすることで、診察状況や待ち時間を把握することができるシステムになっているものもあります。
また、受付予約システムに自動呼出し機能がついているものもあります。

自動呼出しシステムの特徴

自動呼出しシステムには、診察時間の連絡だけではなく、様々な機能を使えるシステムもあります。
主な付加機能は、次の通りです。

自動呼出しシステムの付加機能

2.カウンセリングの実施で待ち時間を有効活用

(1)待ち時間にカウンセリングを

患者満足度向上策のひとつに、コミュニケーション能力の向上があります。
スタッフの持つ能力向上も当然重要な取り組みですが、歯科医院として患者とコミュニケーションを取る時間を作ることも必要です。
治療中のユニット上での会話もコミュニケーションのひとつですが、治療時においてはこれにあてる時間も限られ、また、患者心理の上でも全てを話せる状況ではありません。
初診時はもちろんですが、診療中でも患者の意識や考え方は変化します。
実際に治療した結果、「こうして欲しい」「不具合を感じる」といったことの聞き取りや、歯科医院側からの情報提供や自費診療の勧めも行う時間が確保できます。
カウンセリングを誰がどこで行うか、どれだけ時間をかけるか、という点の検討は必要ですが、治療まで長く待たせるのではなく、治療前にカウンセリングを行うことで患者に「待ち時間」を受診しているという気持ちになってもらうという効果もあります。
また、事前の情報収集によって実際の治療時間の短縮にもつながり、患者の要望把握したうえでの治療を行うことができ、患者満足度の向上につながることが期待できます。

待ち時間を利用したカウンセリングの導入

(2)院内カウンセリングの手法

カウンセリングを行う場合、下記の内容を検討しながら進めます。

院内カウンセリングの手法

3.待ち時間を感じさせない体制の構築

一般的に、患者が待ち時間が長いと感じる始める時間は20分といわれています。
この20分を過ぎても時間通りに治療が進まない場合、いかに患者に対してアプローチをするかが重要です。
まずは
「今、前の患者さんの診療が長引いています。後10分位で診療できると思います。」
「申し訳ありません。予定していた診療が長引いています。もう少しお時間をください。」というように声かけを行うことが必要です。
診療時間の予測ができ、あと少しで自分の番になるという気持ちが持てると、患者はある程度待とうという気持ちになってもらえるようです。

待合室における対策

予約システムや呼び出しシステム、レセコンの機能アップ等を併用し、診療の効率化を図ることで、待ち時間を短縮することは、患者満足度を高める効果が期待できます。

 

■参考文献
日医総研 第5回日本の医療に関する意識調査

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