自社の業績を伸ばす!リーダー育成と組織活性化のポイント

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自社の業績を伸ばす!リーダー育成と組織活性化のポイント

  1. リーダーに求められる本来の役割
  2. 環境変化に対応できるリーダーの育成方法
  3. 組織を活性化させるための仕掛けづくり
  4. 組織活性化と人材育成に成功している企業の実践事例

 


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1.リーダーに求められる本来の役割

エネルギー、IT、および観光などにおいては新たなビジネスモデルが構築され、政府の後押しのもとインフラ整備が進められている中で、中小企業にもビジネスチャンスが広がってきています。
このような状況において、中小企業にとって今、一番悩ましい問題となっているのが人材不足であるといわれています。目の前にビジネスチャンスがあっても、そのチャンスを活かせないからです。
中小企業は、限られた人材を最大限活用しなければ業績の拡大を図ることは難しく、今後、自社の中核を担うリーダーの役割はますます重要となっています。
今回は、自社の拡大、発展を目指している中小企業にとってキーパーソンとなるリーダーに焦点を当て、リーダーを育成するための方法や組織づくりについて解説しています。

企業の業績を継続的に伸ばすために必要なリーダー像

自社の事業規模を拡大、発展させるためには、市場の拡大や新商品・サービスの開発を続けていくことが必要です。
もし、リーダーが既存の枠組みにこだわり続けた結果、ビジネスチャンスへの対応が遅れると、その組織はすぐに衰退へと向かってしまうかも知れません。

企業発展に必要なリーダー像

リーダー自身が危機意識を持ち、早めに問題の芽を摘む

中小企業は経営者の強い想いで創業されたケースが多く、当然ながら経営者に大きな権限が集中しています。
創業の初期段階において、業績が安定するまではこのような傾向になることも必要といえますが、これが長く続くとリーダーをはじめとした社員の側には自分たちで何かをしなければならないという危機意識が欠如してきます。
その結果、社内に潜むさまざまなリスクに対しても気付くのが遅れ、自社の成長を妨げる要因にもなり得ます。
組織の管理体制が不十分であると、業務のモレやミスを起こす可能性が潜んでいるにもかかわらずそれに気付かない(または気付こうとしない)ために、大きなトラブルや事故を招く恐れもあります。
攻めに転じる前に、組織におけるリスクを把握し、問題が大きくなる前に早めに手を打つことも必要です。

部下育成も重要なリーダーの役割

リーダーは、限られた戦力(人材)を活かしきることを常に考えなければなりません。
例えば、これまで業績を牽引しているのがリーダー個人の力によるところが大きいとしても、今後、業績をさらに拡大させるためには、リーダー1人の力では限界があります。
リーダーは、組織力をどうしたら最大限発揮させることができるのかを考えるべきです。組織力を活かすためには、個々のレベルアップ(人材育成)が必要です。
もし、部下の能力に差があるならば、その部下の能力を向上させ、早期に戦力化できるよう指導していかなければなりません。

部下育成も重要なリーダーの役割

2.環境変化に対応できるリーダーの育成方

自社における自身の役割を認識する

多くの企業で、リーダー育成が企業の成長の鍵を握ると捉え、今後の自社の舵取りを任せられる人材育成への取り組みを行っています。
しかし、グローバル化の進展をはじめとして、日本企業を取り巻く環境が変化していることで、自社が取り組むべき経営課題の難易度は上がっており、思うように育成が進んでいないというジレンマに陥っている経営者もいるようです。
過去において成果を上げてきたリーダー自身が時代の変化を捉え、今の時代に求められるリーダーを目指さなければなりません。
また、次のリーダーを目指す中堅社員も、自身のステップアップを図るためにリーダーとしての役割を理解しておくべきです。このような人材のレベルアップが、自社の成長につながります。

組織における階層

リーダーに必要な3つの力

これからの企業に求められる人材を育成するためには、「思考力」「コミュニケーション力」「実行力」という3つの力が必要です。
「思考力」は、論理的に物事を考えたり、創造性豊かに発想したり、物事を解釈したりする力のことを言います。
このような論理的かつ創造性豊かな思考は、すべてのビジネス活動の基盤となり、自ら考えて判断し活動することを通じて成長につながります。
「コミュニケーション力」は、自分の考えや意見を的確に相手に伝えたり、コミュニケーションによって相手を動かしたりする力のことを言います。
部署間連携など協働してプロジェクトに取り組むケースなどにおいて必須となる能力です。
「実行力」は、計画的に仕事を進め、最後まであきらめずやり抜く力です。どんなによい計画を立てても、最後までやり遂げなければ成果は出ません。
これらの力は、現場での実践を通じたり、および実践的な研修によって身につけることができます。

リーダーが身につけるべき3つの能力

リーダーの実践力を伸ばす研修法

(1)リフレクション研修

GE(General Electric Company)では、「リフレクション」と呼ばれる、その日にどのような気付きがあったのかという振り返りを研修期間中に毎日徹底して行い、経験から教訓を導き出すことを「習慣化」させています。
2011年ごろから、「Leading in times of Uncertainty」や「Leading in times of Ambiguity」といった、曖昧で不確実な時代にどうやってリーダーシップを発揮していけるのかを大きなテーマに掲げて、人材育成を行っていました。そのときに実践していた研修法です。
この手法は決して難しいものではなく、リーダーが自身の活動を毎日振り返り、その日の課題を整理し、次にどのような手を打つのかをメールやレポートで上司に報告しています。
この実践的な研修手法によってリーダー育成に大きな成果を上げています。

(2)ケーススタディ研修

リーダー育成を図るためには、社内における実践的な研修を継続的に行うことも必要です。
自社の課題を的確に捉え、その課題についてどのような取り組みを行うのかについて参加しているリーダー同士でのディスカッションを通じて問題解決的に解決策を立てていきます。
自部門における原因を探り、問題点を洗い出し、具体的な解決策を導き出すため、組織的な問題などについて研修を通じて検討していく方法として有効です。

ケーススタディの事例

(3)ワークショップ型研修

ワークショップとは、「創ることで学ぶ活動」と定義され、新しいものを生み出すことを通して、その試行錯誤の結果として学びが生まれるところに特徴があります。
創造的な活動を前提としているため、その過程を事前に予測したり統制したりすることができません。
研修参加者が自由に考える中で創造性が駆り立てられます。
このため、ワークショップ型研修は、商品開発や新規事業立案などイノベーションを志向した目的で活用することが有効です。

教育体系の構築で積極的な研修を実施

研修手法を紹介してきましたが、自社全体で積極的に研修を実施するためには、研修体系を整備することが望まれます。
研修体系の構築については、階層、職位、職種別の研修が軸となりますが、社員の能力開発を促すためのテーマ別研修(例:ロジカルシンキング、問題解決研修)も加えると、網羅された研修体系が構築できます。
テーマによっては、外部から講師を派遣することで新しいノウハウや考え方を吸収できるため、先行投資という意味においても、積極的に研修を実施するべきです。

研修体系モデル

研修体系を構築するための成功ポイントは、まずは自社における研修ニーズの把握です。
研修ニーズを把握するには、経営者、上司、現場のニーズの他、自社の戦略をにらんだ期的、短期的ニーズなど多角的に見る必要があります。
自社の経営課題を的確に捉え、その課題に対して誰にどのような教育をしていくか、また、その教育は誰(内部、外部)が担うのかを明らかにします。
自社の教育担当者は、実践力を高めるために、知識のみならず現場での事例研究などを行うことが効果的でしょう。
自社にないノウハウについては、研修コストはかかりますが、外部研修機関の積極的な活用も検討するべきです。

3.組織を活性化させるための仕掛けづくり

組織を活性化させるための取り組み項目

社員一人ひとりに創造的な学習を促すには、それを根付かせるためにふさわしい経営のありかたが問われます。
社員の自主性だけに委ねるのではなく、組織全体で創造的学習を後押しする仕組みや運営が求められます。
今後の企業が目指す姿としては、社員の知識を結集し、多様なアイデアを活かしながら試行錯誤を繰り返し、創意工夫を行って新しい価値を社会や顧客にもたらすことが必要です。
そのために、人材を単に人件費コストと捉えず、経営資源と捉えるべきです。
経営資源ですから、積極的に投資するべき対象となります。
一方、創造的な学習の機会を社員に与えない企業は、社員自身が革新することができず、自社も旧態依然とした組織のままとなり、目先の利益を追いかける企業に陥ってしまいます。

組織を活性化させるための企業の取り組み項目

クロスファンクショナルシステムの導入で組織を活性化

クロスファンクショナルチームとは、既存の企業内の組織にとらわれることなく、随時組織横断的に編成されるプロジェクトチームやタスクフォースのことを言います。
組織横断的なメンバーでチームが構成されるため、セクショナリズムの弊害で硬直してしまった組織の経営・業務改革や、体制刷新に効果があるといわれます。
このチームは、集中的に組織横断的な問題・課題の解決を図る場合や、新規ビジネス開発などに用いられるケースに多く採用されています。
このチームを活用し、企業再生に役立てた事例として、日産自動車のゴーン改革が有名です。
1990年代、同社が深刻な業績不振に陥っていた時代は、顧客志向が欠如し、組織には「他責の文化」が根強く残っており、発生している問題は自分たちの部署にあるのではなく、他の部署にあるのだと互いに責任をなすりつけ合うセクショナリズムや縦割り意識が蔓延していたといわれています。
日産自動車のゴーン社長は、こうした「他責の文化」を払拭するために「製造・物流」、「マーケティング・販売」などの10のクロスファンクショナルチーム(部門横断的に構成されるチーム)を立ち上げ、抜本的な改革に取り組みました。
この活動を通じて、部署間の連携が密接になり、情報が共有されるようになり、V字回復の一因になったともいわれています。
中小企業のような小さな組織においても、縦割り組織のまま社内での情報共有がうまくいっていない企業においては、まずは縦割り構造を見直しするべきです。

製造業におけるクロスファンクショナルチームのイメージ

プロジェクト活動でリーダー育成と組織の成果を上げる

プロジェクト活動は、自社の重点項目について短期的に成果を上げるために行われる活動です。
プロジェクトメンバー・活動資金・設備などを必要に応じて投じることができるため、効率的に活動を進めることが可能となります。
プロジェクトには、「ビジネスチャンス型」と「問題解決型」があります。
「ビジネスチャンス型」は、目の前にビジネスチャンスがあった場合、そのチャンスを活かすための方法について検討します。
一方「問題解決型」は、組織の中で顕在化している問題や放置しておくと重大な問題となり得る状況について具体的な解決策を検討します。
これらの活動に当たっては、プロジェクトリーダーがプロジェクト推進の中心を担うことになりますが、この役割を自社のリーダーや次のリーダー候補者に任せることにより、彼らのリーダーシップを発揮できる場にもなります。

プロジェクト活動のメリット

プロジェクト活動が有効な具体的となる取り組みとしては、新規マーケット開発、新商品開発などの市場拡大プロジェクトの他、自社の組織体制を強化するための業務改善、リスクマネジメント、問題解決などがあります。

プロジェクト活動が有効な取り組み

4.組織活性化と人材育成に成功している企業の実践事例

次世代リーダーに成長する機会を与えているサイバーエージェント

1998年にインターネット企業としてわずか3人で創業したサイバーエージェントは、今では3,500人を超える大企業に成長しました。
同社では、様々な独自の組織運営や人事制度を取り入れていることで近年注目されています。
同社では、社内公募で事業プランを開催する「ジギョつく」は、若手の優れたアイデアを事業化に結びつけるという事業上のメリットだけでなく、意欲や能力が高い20代の若手社員の発掘と登用の場にもなっています。
当初は、1回当たり10数件しか応募がなく、事業化の視点で見ると提案の質も低かったようですが、現在では経営陣の支援もあり、1回当たり400件前後に達しています。
経営陣が優秀だと見込んだ提案には、賞金50万円が提供され、本人が望めば提案者が事業化した会社の社長となり、会社から資本金も出資されます。
このように提案の内容によっては、事業責任者やグループ会社の経営陣に抜擢されることもあることから、社員のモチベーション向上にも役立っています。
同社人材開発本部長によると、この制度の真の狙いは、社内に新規事業を生み出す風土、社員が持っている知恵やアイデアがうまく引き出されるような風土を根付かせることだと述べています。
同社には、利益貢献度をもとに新規事業を格付けし、当該事業の成長を促すとともに、そこでの経験を社員の人材育成に活かす仕組みもあります。
同社ではこの仕組みを用いて、当該事業を営業利益に応じて10段階に分け、各段階ごとに事業の撤退基準や社員の昇格・降格基準を明確にすることで事業全体の成長を促進しています。
事業を通じての失敗は、事業化の知恵を身につけたとみなされ、他の部署から引き抜きがあるなどの次のチャンスも与えられる組織となっています。

サイバーエージェントにおける人材育成の特長

社員の成長を支援しているスターバックス

スターバックスの人材育成手法は、多くのメディアで取り上げられています。
「人を尊重する経営」にこだわりつづけてきた歴史の根本には、現CEOであるハワード・シュルツの深い思いがあります。
同氏は自身が苦労した体験から、誰もが持てる能力をイキイキと発揮できて正しく報われる働きやすい環境をつくろうと志したそうです。
それが同社の人に対する考え方の原点となり、経営理念を示した「ミッション宣言」における行動方針の最初の項目として「働きやすい環境をつくる」と記されています。
この方針が浸透していることなどから、正社員離職率は10%を下回っています。

「ミッション宣言」(スターバックス コーヒー ジャパンHPより)

最初のステップである「バリスタ(ドリンクをつくる技術者)」の研修だけでもOFF-JTが4項目、OJT7項目の計11項目プログラムが用意されており、26時間を費やしています。
同社の研修プログラムにおいては、一方的に指示するものではなく、マニュアルレスの現場を支える育成制度の根幹をなすのは、「ラーナードリブン」(Learner Driven=自ら学ばせる)という発想です。
スタッフ一人ひとりが「なぜそうするのか」を考え、納得して行動できるようにコーチングしています。
また、教わったら次は必ず教える立場に回る「学習のリサイクル」を築いています。
誰かに教えてはじめて、教えられたことが定着すると考えているからです。
アルバイトでも、一定の経験を積んだスタッフは、指導役的なポジションにもチャレンジさせています。

ストアマネージャー(店長)までのキャリア開発システム

同社が採用している人事評価は、目標設定が50%、コンピテンシー評価が50%と、人間力を重視した評価制度になっています。
そのため、具体的に何ができればいいのかを示した「ビジネス姿勢」を階級別に細かく定めています。
例えば、アルバイトや新入社員などの新人に求められる「ホスピタリティ」は「どんな人に対しても役に立とうと行動しているレベル」、「コミュニケーション力」は「コミュニケーションの重要性を十分認識しながら行動しているレベル」など、すべてミッションステートメントに沿って規定されています。
アルバイトや部下を評価するマネジメント層の社員には、人間力が問われています。
同社には、「個別業務に必要な知識やスキルは後からでも習得できる。
まず人間力があれば、他部門でも通用する」という考え方があります。
そのスタンスに基づき、社員は、約3年で異動があり、様々な立場からスターバックスを見つめる視点を習得しながら、店長に昇格していく体制を構築しています。
以上、各社の事例を紹介しましたが、いずれも社員育成やモチベーション向上を図り、組織の活性化につなげています。
このような取り組みは中小企業においても参考になる取り組みであるといえます。
今後、これらの事例を参考に自社の成長・発展につなげていただきたいと思います。

 

■参考文献
「ホワイト企業」 永禮 弘之、瀬川 明秀 著(日経BP社)
「ホワイト企業」 高橋 俊介著(PHP新書)
「イノベーションは現場から生まれる」上野 和夫 著(総合法令出版社)
「実践!プロジェクトマネジメント」 中嶋 秀隆、津曲 公二 著(PHP研究所)

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