機能分化と新たなニーズへの対応 2018年診療報酬改定の概要

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

機能分化と新たなニーズへの対応 2018年診療報酬改定の概要

  1. 次期診療報酬改定の基本的方向性
  2. 外来・在宅医療に関する改定のポイント
  3. 入院医療・リハビリテーションに関する改定要点
  4. 精神医療その他診療所に関わる改定の概要


この記事をPDFでダウンロードする。

 

1.次期診療報酬改定の基本的方向性

1.示された2018年診療報酬改定の方向性

(1)2018年度診療報酬は、前回に続き全体マイナス改定へ

次期診療報酬改定の改定率は、診療報酬本体部分が0.55%引き上げられた一方で、薬価における大幅な引き下げや費用対効果の視点から効率化された項目等の引き下げの影響により、全体改定率は1.19%のマイナス改定となりました。
前回改定と同様に、本体はアップしたものの全体改定率は引き下げとなる形で、次回以降もこの傾向が継続すると予想されます。
また、2018年度改定は、6年に1度の診療報酬と介護報酬の同時改定であり、団塊の世代が全て75歳以上の高齢者となる2025年に向けた道筋を示す実質的に最後の同時改定となるため、医療・介護双方の制度にとって重要な節目だといえます。

2018年度診療報酬 改定率

(2)次期改定にあたっての基本認識

次期診療報酬改定に向けた議論の経緯を踏まえ、改定にあたっては次の3点が基本認識として示されました。

次期改定にあたっての基本認識

(3)地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築

上記の基本認識の下、次期改定では医療機能の分化・強化、連携や、医療と介護の役割分担と切れ目のない連携を着実に進めることを重視し、地域包括ケアシステムの構築と併せて、今後の医療ニーズや技術革新を踏まえ、国民一人ひとりの状態に応じた安心・安全で質が高く効果的・効率的な医療を受けられるようにすることが重要と示しています。
また、今後の医療ニーズの変化や生産年齢人口の減少、医療技術の進歩等の状況から、制度を支える医療現場の人材確保や働き方改革の推進が重要であり、さらに日本の医療制度が直面する様々な課題に対応するために、診療報酬のほか医療法・医療保険各法等の制度的枠組みや補助金等の予算措置など、総合的な政策の構築を目指すとしています。

地域包括ケアシステムと地域における医療・介護ネットワーク

これら基本認識と方針を踏まえ、厚生労働省は、次期診療報酬改定の基本的視点を次のように提示しています。

2.次期改定の基本的視点と具体的方向性

次期診療報酬改定では、次のような基本的視点と具体的方向性を明示しています。

2018年度診療報酬改定の基本的視点

2.外来・在宅医療に関する改定のポイント

1.外来機能強化を促す改定

(1)外来が担う入院前からの支援機能に係る評価

これまで入院時に行われることが多かった患者状況のアセスメント業務を外来で行うことにより、円滑な医療提供につながることを目指して、退院支援加算を入退院支援加算に改称する等の改定が行われます。
外来医療においては、これら支援機能を強化することが求められています。

入院前からの支援の機能強化(イメージ)

(2)退院時共同指導に係る評価の拡大

入院前支援強化と併せて、特に診療所が担う在宅療養支援において算定される退院時共同指導料については、職種要件の算定要件が緩和されました。

退院時共同指導料の改定

また、前回導入された紹介状なしに特定機能病院等の大病院を受診した場合の「患者定額負担制度」については、適用する病院の範囲を拡大しており、診療所の外来受診推進が継続されています。

紹介状なしの大病院受診時の定額負担の見直し等

2.在宅医療に関わる主要な改定

(1)訪問診療をめぐる改定

在宅医療を支える医療機関に対する評価では、複数で訪問診療を行う場合や在宅療養支援診療所以外の診療所が訪問診療を提供する場合など、現行の評価体系に関わらず、在宅医療に取り組んでいる医療機関に対する評価が新設されるなどの見直しが行われます。

訪問診療をめぐる評価の見直し

また、在宅等患者を対象とする評価として、在宅時医学総合管理料および施設入居時総合管理料に係る加算が新設されます。

在宅時医学総合管理料および施設入居時等医学総合管理料に係る加算

(2)往診料算定要件の改定

地域医療を担う診療所が行うケースが多い往診については、訪問診療と明確に区分したうえで、実態に応じた算定が可能となるような見直しとなりました。
例えば、在宅療養支援診療所以外の診療所で、定期的に訪問診療を行っていない患者については、患家の求めに応じて医師が必要性を認め、往診を行った場合が対象となります。
また、連携先との協働を含めて訪問診療を行っている終末期患者について、緊急往診加算における緊急な場合に該当するものとして追加されています。

往診料算定要件の改定

3.入院・リハビリテーションに関する改定要点

1.医療機能の分化・強化をめぐる入院医療改定の要点

(1)入院基本料改定の視点~評価体系の見直し

前回の診療報酬改定後、病院が選択する入院基本料に次のような変化がみられました。

入院基本料改定の視点~評価体系の見直し

届出病床数は、現在でも7:1一般病棟入院基本料が最も多い状況ですが、平均在院日数や重症度、医療・看護必要度、効率性指数、複雑性指数の評価軸をみると、10:1一般病棟の中にも7:1一般病棟相当の基準を満たす病棟が多数存在しています。
入院基本料は、入院診療に係る基本的な療養に係る費用(環境、看護師等の確保、医学管理の確保等)を評価するものですが、現行の一般病棟入院基本料は、主に看護配置等の要件で段階的に設定されています。
そのため、現行の評価との整合性も考慮する視点で議論が行われた結果、大規模な改定が行われることとなりました。
また、各病棟入院料における在宅復帰率について、自宅等への退院支援機能を評価する観点や病棟ごとの機能を踏まえて見直されます。

新たな入院医療の評価体系と主な機能

現行の一般病棟入院基本料は、急性期一般入院基本料と地域一般入院基本料の2つに再編され、現行の7:1および10:1基本料が急性期一般入院料に改められます。

急性期一般入院基本料の新設、地域一般入院基本料の新設

(2)地域包括ケア病棟をめぐる改定

地域包括ケア病棟については、基本的評価部分と在宅医療の提供等の診療実績に係る評価部分とを組み合わせた体系に見直しが行われます。

地域包括ケア病棟をめぐる改定

2.回復期・リハビリテーション病棟をめぐる改定

回復期リハビリテーション病棟に関する大きな改定として、アウトカム評価の推進を図る観点から、リハビリテーションの実績指数が評価体系に組み込まれます。

回復期・リハビリテーション病棟をめぐる改定

尚、病棟専従のリハビリテーション専門職について、一定の要件の下で外来や訪問でのリハビリテーションの提供が可能となります。

4.精神医療その他診療所に関わる改定の概要

1.精神医療に関する主要な改定

(1)精神入院医療に関する評価見直し

精神科入院患者の高齢化が進んでいることを踏まえ、精神科急性期治療病棟入院料等における在宅移行に係る要件について、移行先に介護老人保健施設及び介護医療院を追加するとともに、要件の見直しが行われます。

精神入院医療をめぐる主要な改定

(2)外来:向精神薬処方の適正化に関する改定

外来患者に処方される向精神薬について、長期間にわたる多剤処方の抑制と減薬に向けた取り組みを評価するため、処方料・処方箋料が減算となる多剤処方の範囲が拡大されるとともに、報酬水準の適正化を図る改定が行われます。

向精神薬の適正化を図るための評価見直し

2.診療所に関連するその他個別項目の改定概要

(1)かかりつけ医機能等に関する評価見直し

次期診療報酬改定では、初診時における診療機能を評価する観点から、次のような改定が行われます。

かかりつけ医機能をめぐる評価改定

また、外来受診者が在宅療養へ移行した際を想定し、継続的に受診していた患者が通院困難となった場合に訪問診療を提供している実績がある場合の評価を充実させ、24時間対応体制に係る要件を緩和して、在宅医療の推進を促しています。

地域包括診療料・同加算をめぐる改定

(2)オンラインシステムを用いた診察等に関する評価

(1) オンラインによる診察・医学管理に関する改定

情報通信機器を活用した診療(オンラインシステム等の通信技術を用いた診察や医学管理)について、対面診療の原則の下で、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、診療報酬上の評価が新設されます。

オンライン診療料・オンライン医学管理料の新設

このほかにも、「在宅持続陽圧呼吸法指導管理料 遠隔モニタリング加算(150点:1月につき)」、「在宅酸素療法指導管理料 遠隔モニタリング加算(150点:1月につき)」が新設されます。
情報通信機器を用いた診療については、今後その有効性や安全性に関する検証も進めながら、その範囲が拡大されていくと予想されます。

(2) 人工透析に関する評価見直し

診療所において運営されることも多い透析医療については、対象患者の拡大と併せて、取り組みや実績を評価する見直しが行われます。
透析用監視装置台数や対応する患者数も一定未満であることが施設基準で求められるため、自院の状況を検証し、必要な対応が求められます。

人工透析に関する評価見直し

 

*今回は、2018年2月15日(木)、㈱吉岡経営センター主催 診療報酬改定セミナー「平成30年診療報酬改定の概要と病医院経営対応」(講師:(株)エム・アール・シー 代表取締役 石上登喜男氏)の講演要旨および配布レジュメをベースとし、一部を再構成して作成したものです。
掲載の図表については、出典を明記したものを除き、全て本セミナーレジュメに使用、または一部加工しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。