歯科医院の増患対策手法リニューアルによる差別化戦略

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歯科医院の増患対策手法リニューアルによる差別化戦略

  1. リニューアル戦略の概要とその重要性
  2. 建物や施設・設備のリニューアル
  3. 広報戦略と診療体制の見直し
  4. 患者や職員に向けた医院の工夫

 


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1.リニューアル戦略の概要とその重要性

新規開業の歯科医院は多種多様なマーケティング対策を取り、患者獲得のために差別化を図ってきています。
既存歯科医院間の競合だけでなく、新規開院する歯科医院にも対抗し増患を図るために、リニューアルを検討することも一つの手法です。
今回は、歯科医院のリニューアルについて解説します。

1.歯科医院の施設数の変化

(1)歯科医院の施設数の変化

歯科医院の開業は、年々増加しています。そのなかで、既存歯科医院との競合対策だけでなく、新規歯科医院への対策が必要です。
また、歯科医院を取り巻く環境変化を把握することも求められます。
厚生労働省の医療機関施設調査(平成29年)において、歯科医院数は68,940件(平成28年10月現在)でした。
平成17年は66,732件、約10年間で2,208件の増加となっています。

歯科医院数の年次推移

(2)開設数と廃止数の変化

平成28年の歯科医院の開設数は1,702件で、廃止数は1,549件でした。
平成20年頃は、開設・廃止ともに2,000件を超えていましたが、近年は1,700件前後で推移しています。
ただし、個人開設から医療法人化の組織変更の場合も廃止届と開設届が提出されるのと、個人開設の形態を取っている分院(サテライト)の分院長が退職する場合も開設届と廃止届が出されるため、純然たる新規開設、廃止の数字ではありません。

歯科医院の開設数と廃止数の推移

2.リニューアルについて

(1)リニューアルとは

リニューアルというと建物や内装工事の改修ととられがちですが、実際には、ハード面のほか、ソフト面、ハート面というように建物の改修という目に見えるものだけでなく、診療体制やスタッフの意識、患者満足に直結するサービスのリニューアルを計画し、実行する必要があります。

(2)リニューアルの種類

リニューアルには、建物や内装工事での個室化やバリアフリー化、外壁内壁の改装、トイレや冷暖房等の設備関係、TVやインターネット、給茶機等の備品、医療機器の入替等のハード面のリニューアルのほか、予防歯科や自由診療、訪問診療への取組み、医院デザインやイメージカラーの変更、広報活動の変更や新たな広告による歯科医院の診療体制のリニューアル、また、院長の診療理念や経営方針のスタッフの意識改革や接遇方法の変更等のソフト面での様々な領域での種類があります。

ハード面でのリニューアル、ソフト面でのリニューアル、ハート面でのリニューアル

3.地域におけるポジショニングの確立

競合医院の特徴を知り、地域における自院のポジショニングを検討します。
医院の得意な分野を強調し、弱点をカバーし、競合医院との差別化を図れるポジショニングを確立する取組みが重要です。

ポジショニング確立のポイント

2.建物や施設・設備のリニューアル

ハード面でのリニューアルは、増築や大規模改修工事、医療機器の入替、またCTやレーザー、CAD/CAMの導入等となると多額な資金を投下することになります。
診療所や医療機器の状況により必要に応じて計画を立てますが、増患対策や、イメージを改善するためという理由だけであればリニューアル計画も詳細に検討することが重要です。

1.外観等のリニューアルポイント

建物の外観や看板、駐車場のリニューアルは、院長のコンセプトや診療の得意分野の他、患者層に合わせた計画を立案します。

ポイント

センスの良い外観・外壁は、落ち着きをもたらし、好感を持って迎えられます。
看板のリニューアルも建物と一体化している場合は、全体のデザインを考え取組みます。

外観と看板を一体化したリニューアル事例、落ち着きのある外観・内観の事例、夜間の照明に配慮した改修事例

2.看板のリニューアルポイント

看板は「認知効果」「誘導効果」を持っています。
建物に掲げる看板や野立て看板、入り口に設置するスタンド看板によって、この場所に歯科医院があると認知してもらえることが「認知効果」、歯科医院までの道順を案内するのが「誘導効果」です。
常時多くの人が通る生活道路や通勤経路にある看板には、とっさの時に思い出してもらえる確率が高くなる「リマインダー効果」がありますが、意識を導くという「誘導効果」も期待できます。

見やすい看板のポイント

3.内装等のリニューアルポイント

内部のリニューアルには、プライバシー保護による個室化や間仕切り壁の設置、イメージや間取りの変更、最新医療機器の導入や入替等があります。

ポイント

(1)明るく優しい空間へ

天井からの下がり壁やカウンターの高さの変更による広がり感を出し、色合いや照明計画で明るさを調整します。

明るく優しい空間へ

(2)全個室よりも個室風、パーテーションはアイデア次第

全部を個室にする必要はなく、一部屋は個室に、ほかは個室風にパーテーションを利用して区分けします。
このパーテーションも無機質なものではなく、飾りを間においたり、実用的に器具をおく等の工夫することによって、仕切りが活かされてきます。

全個室よりも個室風、パーテーションはアイデア次第

3.広報戦略と診療体制の見直し

ソフト面でのリニューアルは、ホームページの見直しに加えて、近年ではSNSへの対応がトレンドです。
また、これら広報活動の他、診療体制や管理体制の見直しも、ソフト面のリニューアルの重要な要素です。

1.ホームページは必須の時代に

国民ひとりが1日にメディアに接する時間は、「インターネット」と「テレビ」は1時間以上、5時間未満が合わせて60%超という統計が出ています。
よって、歯科医院においては、ホームページでの情報発信が必須になっています。
ホームページは歯科医院側からの広報とされていましたが、平成29年医療法改正において、ガイドラインが明確化され、内容について規制されるようになりました。
ガイドラインを守り、差別化できるホームページを作成する必要があります。

患者から選択されるホームページのポイント、スマートフォン対応のホームページの立ち上げ

スマートフォン保有者が増加し、PCと同じくらい、スマートフォンによるネット検索数も急増しています。
スマートフォン対応のホームページ開設は必須になっています。

2.ホームページ以外のSNSの活用

(1)Twitterの活用法

既存患者を維持するのに、ツイッターを活用している医院もみられます。
歯科医院から年末年始の休診予定や新しい医療サービスや、リニューアル自体をニュースとして配信し、それを既存患者にフォローしてもらいます。
そして、患者に歯科衛生用意分のサービスや値引き特典による「フォロー特典」を用意し、院長やスタッフから声がけをするようにします。

Twitterの活用法

(2)Facebookの活用法

フェイスブックは友人同士間のSNSです。
1対1ではなく、友人の向こうにもさらに人がいて、内容をシェアして紹介につながることが多くみられます。
一方で、自分の発信した情報が筒抜けになる可能性があり、経営に関することや患者に関することにふれる内容は避けた方が良いでしょう。
フェイスブックは、院長個人の情報交換ツールとして活用することをお勧めします。

3.診療体制のリニューアル

地域でのポジショニングを確認したら、その患者層に合わせた診療体制のリニューアルも必要です。
診療時間や診療日の変更だけでなく、診療内容も再確認する必要があります。
また、地域の患者層が在宅診療を必要としている場合、訪問診療への取組みの他、病院や医科診療所との連携を図る必要があります。

診療体制のリニューアル

4.医療機器の入替や最新医療機器の導入

(1)既存医療機器の見直し

使用している医療機器をチェックする必要があります。
毎日使用していると機器の状態に見慣れてしまい、古さや汚れが気にならなくなります。
患者は清潔に関して敏感です。業者等第三者にチェックしてもらうことも大切です

(2)最新医療機器等の導入

競合医院との差別化には、最新医療機器の導入も検討が必要です。
より良い医療を提供するため、競合医院との差を付ける、もしくは差を無くすための検討事項です。

最新医療機器等の導入

4.患者や職員に向けた医院の工夫

ハート面でのリニューアルには、患者のハート(気持ちや感情)に訴えるリニューアルだけでなく、スタッフのモチベーションを上げるためやチーム医療への取組み等の内部へ向けた工夫も挙げられます。

1.接遇力の向上

患者は自分で選んだ歯科医院を信頼したい、安心したいという欲求があります。
その気持ちに応える診療は当然ですが、スタッフの接遇力の向上が最も重要です。
また、患者としては、多々ある歯科医院の中で選択して来院したのだから特別扱いをして欲しいという欲求も、隠れた気持ちとして持っています。
期待を裏切らない接遇は、一段階高いレベルが求められます。

接遇力の向上

2.スタッフの基礎能力の向上

スタッフの基礎能力向上は、OJTにより院内の先輩から若手に教育する方法が多いようですが、望む姿になっているかの判断ができないため、院長は毎回ではなくても基準となる研修会に同席することが求められます。

(1)受付、会計時の応対のポイント

患者との接点が一番多いのは受付と会計時です。
診療の話から日常の会話まで、様々な機会があるため、歯科医院のプロの勤務者として、基本的な質問には全員が応えられるように指導します。

スタッフの基礎能力の向上

(2)症例検討会、症例発表会の開催

メンテナンスを行うには、多くの経験値があると有利です。
実例による経験も必要ですが、症例検討会を開催し、他人の事例を実践しているように学ばせることも重要です。
また、歯科衛生士業務であっても、歯科助手や受付・会計も参加させ、知識を習得してもらいます。

症例検討会の開催、症例発表会の開催

3.スタッフへかかりつけ歯科医機能の周知徹底

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」は、今後の地域歯科医療を担う存在であり、診療報酬上もSPTⅡや初期う蝕管理加算が算定できるなどのメリットがあります。
厚生労働省は地域包括ケアを推進しており、今後も強化する方針を打ち出しているため、他院との差別化に有効です。

かかりつけ歯科医機能評価の充実

平成30年度診療報酬改定において、かかりつけ歯科医機能強化型診療所加算や歯科訪問診療補助加算、歯科訪問診療移行加算など各加算の点数が改定されました。

このようなかかりつけ医歯科医機能の知識は、スタッフ全員が理解し、医院全体で取り組むことにより、スタッフの診療に対する意識も向上し、より高い診療提供に結びつけることができます。

 

■参考資料
ビズアップ総研 歯科医院の増患対策の進め方講座
講師 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役木村泰久氏
■写真提供
オジデザインワークス株式会社 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役木村泰久氏

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