働き方改革の解決策として経営革新に貢献するロボットがもたらす未来の働き方

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働き方改革の解決策として経営革新に貢献するロボットがもたらす未来の働き方

  1. 競争力強化に期待されるロボット導入
  2. ホワイトカラーの業務効率化を可能にするRPA
  3. ロボット導入の進め方と成功のポイント
  4. 生産性が向上したロボットの導入事例

 


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1.競争力強化に期待されるロボット導入

わが国では、政府主導での「働き方改革」が進められています。
働き方改革は、いわゆるホワイトカラーの長時間作業を減らしてワークライフバランスを整えたり、女性や高齢者が働きやすい労働環境をつくり、労働参加率を向上させて国全体の生産性を向上させることを目的としています。
生産性向上は、各企業においても重要な課題となっており、本稿では自社の生産性向上につながるロボットを活用した「働き方改革」の進め方やその効果について解説します。

1.労働生産性向上の必要性

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較(2016年度版)」によると、主要先進7ヵ国の労働生産性(2015年)は日本が最も低く世界で22位となっています。
そして、今後は日本における就業者数が減少すると予想されています。
経済産業省「新産業向上ビジョン」によると、2015年に6,334万人だった就業者数は、2030年には約0.9倍の5,599万人に減少します。
経済産業省が掲げた目標では、GDP比で、2030年には2015年の1.6倍の846兆円に増やすことを定め、そのためには労働生産性を1.8倍に伸ばす必要があるとしています。

労働生産性の現状と目標

既に知られているように、現在の日本は少子高齢化が進行中であり、総人口と労働人口は減少の一途をたどっています。
経済成長を維持しつつ国際競争力を強化するために、政府は上記のような目標を掲げ、労働生産性の向上を目指しています。

2.働き方改革につながる自社の意識改革

日本企業がグローバルな競争に勝ち抜くためには、イノベーションを興すための創造的な業務に時間を使う「真の働き方改革」が求められています。
ところが実態は、日常業務の単純作業に追われたり、そちらを優先させた結果、創造的な業務に時間を割けないという状況もみられます。
創造的な業務に使う時間が一番大切だというのに、「残業を減らせ」という大号令のもと、手っ取り早く「創造的な時間を減らして日常業務の作業時間を確保している」ような状況が常態化しているならば改善が必要です。
今、日本企業に必要なのは、「単純作業」を減らし、創造的な業務に時間をシフトさせる真の働き方改革であるといえます。

求められる真の働き方改革

真の働き方改革のためにできることは二つあります。
一つは、これまでの業務のあり方を見直して、生産性を向上させること。
そしてもう一つは、人間に代わって働いてくれる新たな労働力の創生です。
過去に、産業用ロボットが、ブルーワーカーの労働の一部を代替してきたように、いまだ人間に残されている定型化されたルーティン作業を代替してくれる新たな労働力である「ロボット」が注目されています。

3.ロボット導入の必要性

日本人労働者が単純作業に追われている現状を見直して生産性を向上させるために、人間に代わって働いてくれるロボットが注目されています。
産業用ロボットであるロボットアームが人に代わって工場のラインで作業を行うかのように、人がパソコンを使って行っていた事務処理をソフトウェアロボットが代わって行う、すなわちホワイトカラー業務の自動化を後押しする役割を担ってくれます。
「ITによる改善を試みたものの、費用対効果が見合わず断念した」「そもそも自動化はできないとあきらめていた」業務などにも、改善と改革の可能性を与えてくれる技術です。

ロボット導入の効果

ボットの導入により、パソコンやサーバーに対して、人手で行われている処理の一部の自動化ができることになります。
また、個人の手作業を自動で実行することができるため、「単純作業」に追われてしまっている問題を解決するうえでの切り札になります。

ロボット導入による生産性向上の方向性

2.ホワイトカラーの業務効率化を可能にするRPA

1.RPAとは何か

ホワイトカラーによるパソコン業務の自動化を担う、ソフトウェアロボットの名称を、RPA(Robotic Process Automation)と言います。
より細かく言えば、端末に表示されているアプリケーションや業務システムを識別して、人と同じような操作ができるソフトウェアということになります。
ソフトウェアロボットと呼ばれることもありますし、デジタルレイバー(Digital labor:デジタル労働者)と称されることもあります。
ソフトウェアですので、ロボットと言っても、工場で組み立てや溶接をしているロボットや、先進的な店舗で顧客対応に取り組むロボットのように、形がある物理的な存在ではありません。
あくまでパソコンやサーバーのなかで動作するものです。

2.RPAの特徴

RPAの特徴で挙げられるのは代行業務です。
これまでホワイトカラーが担ってきた業務をロボットが代行して効率を高め、さらに事業拡大に結びつけようというものです。

RPAの特徴

3.RPAの活用方法・場面

デジタルレイバーは、社内外の様々なデータをインプット情報とすることができます。
インターネット上のWebやデータベースサービス、オープンデータなど、世の中に出回っている情報のほか、自社で蓄積している電子データがインプット情報の対象となります。
特にWebからはネット上の最新情報を取ることができ、官公庁や自治体が公開しているオープンデータのほか、競合企業の新製品情報などをインプット情報として入手することができるのも大きな特徴です。
他のサービスも活用できます。例えば、様々なクラウドの機能であったり、自社で導入している業務パッケージであったり、人間がアクセスできるものであればロボットが代わりにアクセスしてデータを取ってきます。
各サービスにアクセスしたあとに、データを入力・登録することもできます。
データを抽出して帳票を作ったり、複数データを基にして会議資料、報告資料を作ったりすることも可能です。
確認・判断をデジタルレイバーに代行させることもできます。
定型ルールに基づいた条件分岐などのロジック(判断)を組み込むこともできます。
「データAとデータBを比較して、データAの方が大きかった場合は処理Cを実行してデータBの方が大きかった場合は処理Dを実行する」「指定したWebを巡回し、指定したデータを取ってきて、それらの平均値を算出する」というような定型ルールを実行するのも得意です。

定型処理の自動化による工数削減・品質向上

このような仕組みを応用して、デジタルレイバーには、販売処理、経理処理などの事務処理作業、商品登録、在庫連携などのバック処理、競合他社動向、競合商品のWeb調査、社内の複数システムにまたがっている情報の集計・分析資料の作成などを担当させることができます。

RPAの活用例

企業の人事、経理、調達や営業事務といった、従来は人間が行うしかないと考えられていた作業領域に変革が起き始めています。
そろばんが電卓に代わり、ワープロがパソコンに代わり、工場での手作業が産業用ロボットに代わったように、デジタルレイバー(RPA)の登場によりホワイトカラーの仕事は今大きな転換点を迎えています。

4.ロボットの進化が人の進化を掘り起こす

デジタルレイバーが多くの仕事を担い進化するこれからの社会において、最も進化するのは、実は人間の方であると考えています。
付加価値の低い仕事はロボットが分担し、人間はより付加価値の高い仕事に集中するようになるでしょう。
導入企業においても、最初は半信半疑で取り組んでいた人たちが、今働き方を見直して新たな活用法を自ら考え始めています。
「この業務は本当に必要なのか?」
「バラバラにやっている意味はあるのか?」
「権限や規定も見直すべきではないのか?」
「自社の業務改革のために取引先や顧客にもお願いしてみよう。」
それが、導入後ほんの数週間で起こった変化です。これが人間の進化する力であり、真価なのです。
今までの日本のほとんどの企業で、業務改革という言葉が繰り返し叫ばれてきました。
しかし、進まなかった多くの取り組みもあったと思います。
それが、RPAという手法で数体のロボットを導入してみただけで、その効果を実感し現場の人々の働き方を激変させることが可能になります。

ロボット導入による意識変化

3.ロボット導入の進め方と成功のポイント

1.ロボット導入を検討している企業の期待と課題

(1)企業のRPAに対する期待

導入を進めている企業の期待は以下のとおりです。
現場の方と経営幹部で、それぞれの視点は違いますが、大きな意味では同じことを考えています。

企業のRPAに対する期待

(2)企業の懸念は少ないロボット導入

導入企業は、RPAへの期待を持つとともに、RPAが「初物」であることから心配していることもあります。
具体的には、導入後の効率やスムーズに運用できるかなどがあり、それに対する先行企業の声を取り上げます。

企業の懸念は少ないロボット導入

ロボット導入に対する懸念事項に対しては、導入基準を明確にして、RPAが担当する仕事を一定のレベルに合わせる、エラー対応時のマニュアルを整備する、などの先行企業の経験が役に立ちます。くの先行企業はまさにこれらの心配事をクリアしています。

2.RPA導入における留意点

後、RPAを活用して生産性向上に取り組みたいと考える企業が増えると思われます。
ここにRPA導入のポイントを紹介します。

RPA導入における留意点

3.RPA導入を成功させるための3つのポイント

ロボット導入を成功させるための重要なポイントを確認しておきます。
そのポイントは、業務可視化、RPAソフトの学習、業務改善・改革の3点です。

(1)業務可視化

導入すべき部分を明確にするために、対象の業務が可視化されていることが重要です。
可視化できているということは、具体的な資料があるということです。
業務マニュアルや事務規定などの、業務全体を表している具体的な文書が存在するかをまずは確認する必要があります。
さらに、その上でパソコンの操作レベルで具体的に対象となる業務システムやOAツールを含めて明確化し、さらに具体的な操作を確認してシナリオの作成に着手できるようになります。
「業務可視化→操作レベルでの可視化」の順に進めていきます。具体的に細かい可視化ができないと、ロボットファイルの作成に落とし込むことはできません。

(2)RPAソフトの学習

さまざまな製品があるので、やりたいことや組織の状況に合わせた最適なソフトを選びます。
RPAがどのようなソフトか紹介してきましたが、「初物」ですから事前の学習は必要です。
もちろん自社では開発をしないで、パートナー企業に委ねる選択肢もあります。
その場合でも導入予定のソフトウェアの概要や資料などは理解しておくべきです。

(3)業務改善・改革の意識

RPAを一部にでも導入することで業務の効率化は実現できます。
RPAの導入で浮いた工数を使って別の仕事をすることで、劇的な効率化や生産性の向上も実現できます。
RPAを導入する際に対象の業務だけでなく周辺の業務に対しても、業務の改善や改革を意識して進めていただきたいところです。
浮いた工数で何をするかが明確であれば、導入への意識が高くなります。

導入を成功させるための3つのポイント

4.生産性が向上したロボットの導入事例

1.RPA導入が進んでいる業界と対象業務

RPAの導入は、すでに多くの業界の多くの業務で進んでいます。
2017年9月、都市銀行大手がRPAなどの導入により、社員の約3割にあたる9,500人分の仕事を自動化すると発表したことは、大きなニュースとなりました。
このような大手企業に限らず、RPAは中小企業を含め多くの場面で活用されています。

RPAが使われている業界と業務

2.RPAの活用事例(1) ~経理業務の効率化

経理業務はオフィスワークの重要な一環として、毎月の業務負荷は大きい一方、Excel入力、会計システムなどの操作が多く、例えば、仕訳作業は特定のExcelや会計システムにデータを転記することがメインですが、基本的なルールと手順などが決まっているこれらの作業は、ソフトウェア操作が得意なRPAとの相性がとても良い部分があります。
今回は「請求書照合・計上業務」をRPA化したA社の事例を紹介します。
請求書照合の業務はどの企業でも行うことですが、A社は毎月数十時間をかけて行っていたところ、会社の成長に伴って作業量がさらに増え、作業時間も必要な人員も増える一方でした。

A社の請求書照合・計上業務(RPA導入前)

請求書情報の入力や振込実行段階は、人間が目視で確認したほうが好ましいですが、この二つの段階以外は、データの編集のほか、他のソフトウェアにデータ入力する作業になるためRPAの活用が可能となりました。
手操作で請求書情報をパソコンに入力後、決まったルールでRPAがデータを編集し、会計システムに取り込みます。
RPAは各種パスワードやIDを保存する機能もありますので、自動でインターネットバンキングにログインし、振り込み情報を登録することができます。

A社の請求書照合・計上業務(RPA導入後)

A社はRPAの導入により、請求書照合・計上業務の半分以上の作業が自動化できました。
RPAは夜中でも作業可能という強みがあるため、昼間請求書をExcelに入力し、翌日出勤したら既に振込情報がインターネットバンキングに登録済になり、確認して実行するのみです。
作業の量が増えれば増えるほど効果が大きいです。

3.RPAの活用事例(2) ~生産管理業務の効率化

食品メーカーのB社は社員30人程の中小企業で、商品部(原料の仕入れや生産管理)、営業部、品質管理室、事業支援部(総務・経理に相当)などの部署がありますが、システム部門はなく専任のIT担当者がいないうち、1つめの業務をRPA化することができました。
記念すべき第1号プログラムは生産管理業務に関するもので、いままではExcelシート上の商品データから、商品コードや数量などを基幹系システムに一つ一つ手入力していましたが、RPAを用いることで入力を全自動化できるようになりました。
この第1号プログラムはさらなる改良を予定しており、最終的には年間200時間以上の業務時間の削減を見込んでいます。
クローリング(自社にとって有益なネット上の情報を収集すること)や営業やマーケティングへの応用なども検討されています。
B社はまだRPAを導入して間もないのですがさまざまなメリットを感じており、今後はRPAの適用業務を拡大していく予定です。

RPA導入のメリット

日本のほとんどの企業で業務改革という言葉が叫ばれてきていますが、RPAという手法で数体のロボットを導入することによって、その効果を実感し現場の人々の働き方を激変させています。
今回の内容が改革のきっかけになれば幸いです。

 

■参考文献
『図解入門 最新RPAがよーくわかる本』西村 泰洋著(秀和システム)
『デジタルレイバーが部下になる日』池邉 竜一著(日経BP社)
『RPAの威力』安部 慶喜、金弘 潤一郎著(日経BP社)

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