職場の規律と社員満足度を高める!就業規則の見直しポイント

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職場の規律と社員満足度を高める!就業規則の見直しポイント

  1. 就業規則の重要性と見直しの効果
  2. 職場の規律を高める見直し方法
  3. 暗黙の了解を見える化するルール作り
  4. 社員満足度を高める規定見直しのポイント

 


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1.就業規則の重要性と見直しの効果

1.会社が抱える問題点

就業規則は、貸金や労働時間、休日、休暇、服務規律や懲戒などについて、社員の入社から退職までの労働条件や就業上のルールを定めた、会社の「ルールブック」です。
近年は、インターネットの普及により、労働者側も労働基準法等の知識と情報を得られるようになり、労働条件に対する要求が厳しくなってきました。
会社で発生する問題に対応していくには、統一的なルールを決める必要があり、統一的なルールをまとめたものが就業規則になります。
しかし、中小企業の就業規則で散見される問題は以下の通りとなっています。

中小企業の就業規則で散見される問題

上記のような場合、労務トラブルに対応できなかったり、就業規則に記載してある内容が足かせとなる場合があり、会社が不利な状況に立たされることになります。

2.就業規則の効果

就業規則には、以下のような効果があるため、自社の実態にあったものを作成する必要があります。

就業規則

法令を無視した就業規則は、その部分は無効となりますし、トラブルの元となってしまいます。
当然、労働基準監督署への届出の際に指摘を受けます。
今やコンプライアンスは企業運営にとって不可欠なものであり、労働基準法等の改正は頻繁に行われますので、定期的な就業規則の見直しが必要です。

3.社内ルールを反映させた就業規則の重要性

近年発生している様々な労務トラブルは、会社と社員との間で、労働条件や服務規律などについて理解や解釈が異なっていることが原因となっています。
また、病気等で休職する社員への対応についても、会社として放置できない問題となっています。
就業規則は、以下のような内容で構成されています。

就業規則の内容構成について

(1)は、世の中の環境変化や社会規範の変化に影響を受けます。
例えば、労働法が改正された時には、強制的に変更となる場合があります。
(2)は、組織変化、事業体変化に影響を受けるものですが、会社の暗黙のルールとなっていることを記載することで、会社と社員の約束事を明確化することができます。
就業規則で大切なのは、「法律で決められていない部分」、つまり任意的記載事項であり、どのように自社にあった形で規定していくかがポイントとなります。
任意的記載事項の例としては、以下のようなものがあります。

任意的記載事項の例

上記の内容を見てもわかる通り、法律的に義務付けはないものの、任意的記載事項が自社の就業規則に記載されていることは重要です。
もし、自社の就業規則に任意的記載事項の記載が無かったり、曖昧な表現になっている場合は、自社の体力、業務の特性や経営理念などに合わせて、早急に自社の就業規則を整備する必要があります。

4.コミュニケーションツールとして活用する

就業規則は会社側・社員側どちらにとっても大切なルールブックであり、社員のやる気を高めるために、コミュニケーションツールとして活用することができます。
就業形態が多様化し、労働者の個別化が進む中で、労使トラブルが急増しています。
労使トラブルの原因を考えると以下の2つに集約できると考えます。

労使トラブルの原因

会社にとって就業規則とは、社内ルールを明確にして社員に伝えてあげるという役割を持っています。
会社として社員にしてあげたいこと、社員に守ってほしいことを就業規則で社内ルールとして明確にすることで、その意図を理解した社員は会社とコミュニケーションを図れたことになります。
就業規則をコミュニケーションツールとして活用する効果は以下の通りとなります。

就業規則のもたらす効果

会社と社員のコミュニケーションツールとして就業規則を上手に活用することで、労務トラブルを発生するリスクを抑え、会社の生産性を高める効果をもたらします。
一方で、就業規則の運用を誤っていた場合、その効力を否定した判例は、過去に多数あるので、作成された就業規則を適正に運用することが大切です。
また、問題が発生している例として就業規則があるにもかかわらず、ケースバイケースの対応をしてしまうと問題となってしまうので注意が必要です。

2.職場の規律を高める見直し方法

1.始末書を提出しない社員への対応事例

事例

(1)対応方法

始末書は反省文や謝罪文という意味を持っているので、これを強制すると個人の自由な意思を尊重する憲法などの法理念に反する場合があります。
しかし、本人が始末書を提出しない場合は、顛末書という形で報告させることはできます。
顛末書の提出義務を就業規則に明記しておくことで顛末書を提出しない場合には、会社への報告義務違反として、懲戒処分も可能になります。
なお始末書という名称でも、就業規則に報告書としての意味しか持たないものであると明記されていれば、提出を義務付けても問題はありません。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

2.残業拒否者への対応事例

事例

(1)対応方法

会社が社員に残業をさせるためには、「時間外労働・休日労働に関わる協定書(36協定)」を労働基準監督署長に届出なければなりません。
さらに、就業規則に残業を命じる旨の記載をすることで、残業を業務命令とすることができます。
過去の裁判例でも時間外労働を命じるためには就業規則に「業務上の必要があるときは、時間外・休日労働を命じる」旨の記載があることが必要だとしており、この記載があれば労働者は正当な理由なく残業命令を拒否できなくなります。
残業を命じる場合のポイントは、以下の通りとなります。

残業を命じる場合のポイント

また会社は社員の入社時に労働契約書を結びますが、残業がある場合はこの契約書の中にも「残業がある」旨を明示することが法律で義務づけられているので、注意が必要です。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

3.営業成績の悪い社員への対応事例

事例

(1)対応方法

このような社員でもいきなり解雇することはできません。
まずは注意・指導を行い、それでも改善が見られないようであれば懲戒処分、退職勧奨、そして最後の手段として解雇を検討していくという手順を踏む必要があります。
就業規則には、服務規律や懲戒処分の記載が必要です。
就業規則の服務規律に記載することで、態度の悪さを主観的に捉えて指摘するのではなく、会社の指示する客観的な基準に合致していないと指摘することで、その者の意思に関係なく指導・注意が行えます。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則に記載する場合の記載例

3.暗黙の了解を見える化するルール作り

1.副業に関するルール整備

事例

(1)対応方法

基本的には、社員は労働契約に基づき、1日のうち一定の限られた時間のみ労務に服することが原則となります。
従って、就業時間外は本来社員の自由な時間になりますので、基本的には会社が一方的に兼業を禁止することはできません。
副業のために本来の労務提供ができないのは認められないことですが、最近では、生活のためにやむを得ず副業を行なう人も増えているため、副業を禁止するのではなく本来の労務提供に支障がなければ許可をするという許可制にして就業規則に記載することが一つの方法と考えます。
ただし、副業が以下のようなものに該当する場合は、許可をする必要はないと考えます。

許可をする必要はない副業

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

2.退職に関するルールの整備

事例

(1)対応方法

労働者には退職の自由がありますが、就業規則に事前の退職の申出や業務の引継ぎを定めることができ、違反した場合は、懲戒処分や退職金の減額を検討することができます。
また、場合によっては損害賠償請求できる可能性もあります。
一つの方法として、入社時の説明の中に退職時の具体的なルールの説明も含め、なぜ守る必要があるのか、違反した場合の制裁についても説明することが挙げられます。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則に記載する場合の記載例

3.時間外勤務に関するルール整備

事例

(1)対応方法

今回の場合、放置することは危険で、社員が社内に残る理由を確認し、仕事以外の理由なら帰らせるように毎回声をかけることが重要です。
残業については、会社(上司)が命令をする場合、本人から事前に残業申請があって上司が承認した場合(残業許可制)を基本とします。
突発的に業務が発生して残業せざるを得ない場合でも、会社(上司)から命令を出すようにします。
社員が会社(上司)の指示なく残業をしていて、それを知りながら放置していた場合は、「黙示の残業指示」として残業を認めたことになってしまうので注意が必要です。
一方で、使用者の残業禁止命令を無視して時間外労働を行った場合は、労働時間ではないという判例もあり、終業時刻を過ぎても残っている社員に声掛けすることも重要です。
会社が無駄な残業をさせないことで、労働時間の管理も可能となり、残業代や光熱費等の無駄な経費を抑えることにつながります。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

4.社員の満足度を高める規定見直しのポイント

1.社員のレベルアップをサポートするためのルール規定

事例

(1)対応方法

資格取得後、一定期間の勤務継続を義務付けたり、その期間内に自己都合退職したときには費用の全額を返還させるといった内容の社内規程を設けてしまうと、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に違反する可能性があります。
これを回避する方法として、資格取得費用等を援助する形を取り、会社側は貸付金契約を結ぶという方法があります。
あくまでも貸付金なので、会社は費用を支給したわけではなく、立て替えていることになります。
社員は費用を会社に返済する債務を負いますが、会社が定める一定期間勤務したときは、「返済を免除する」という規定を盛り込みます。
社員に対して貸付金についての詳細な説明を行い同意を得ること、資格取得は業務命令ではなくあくまで本人の意思によるものであり、会社はそれをバックアップする用意があるという立場が重要になります。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

2.年次有給休暇の取得率をアップさせるためのルール規定

事例

(1)対応方法

上記の制度を年次有給休暇の計画的付与制度と言い、有給休暇の取得率を高め年間労働日、年間労働時間を短縮することを目的として導入された制度です。
年次有給休暇の5日を超える部分については、事業所全体で一斉にとる等の計画的付与ができます。
制度の導入には、(1) 就業規則に制度を記載する、(2) 労使協定の締結が必要になります。
また、計画付与の方法として3つの方法があります。

計画付与の方法

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

3.社員が病気になった時のルール規定

事例

(1)対応方法

まずは社員Gに休職を命じ、様子を見ることから始める必要があります。
休職とは、社員が社員の身分を残したまま長期休暇に入ることです。
休職については、法律に定めがないため、会社の任意ルールであり、休職を制度として就業規則に定めることで、社員満足度が高まります。
会社は、休職中に回復の見込みの判断を行ったり、業務への復職を試し、それがダメなら最後の手段として退職勧奨や解雇すべきかどうかについて判断するという手順を踏むことになります。

(2)就業規則記載例

今回のケースを就業規則に記載する場合の記載例は、以下の通りとなります。

就業規則記載例

■参考文献
「労働基準法では届かない!民法・刑法・憲法と就業規則で解決する労務トラブル50」(清文社 発行 河野順一 著)
「職場の労務トラブル 実践Q&A198」(日本法令 発行 (株)アールケーシーアソシエイツ 著)

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