歯科医院経営は人材採用から 歯科医院の効果的な求人方法

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歯科医院経営は人材採用から 歯科医院の効果的な求人方法

  1. 歯科医院経営は優秀な人材の採用から
  2. 応募者目線で募集方法を検討する
  3. 面接時の注意点と採用基準の確立

 


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1.歯科医院経営は優秀な人材の採用から

歯科医院のスタッフの多くは女性が占めており、歯科医師や歯科技工士の男性比率は高いものの、こちらの職種にも女性が多く進出してきています。
ですが、女性特有の問題として、結婚、出産、育児、といった理由により退職を選択するケースも多く、院長も引き止めることにためらいを感じて、そのまま受け入れることが多いようです。
退職による欠員補充のためには、新たなスタッフの募集ということになりますが、今までのようにハローワークや新聞の折込チラシによって募集するという手法では、なかなか良い人材が集まりません。
今回は、より良い人材を確保するための募集方法と、整備すべき雇用条件、効果的な面接手法等について解説します。

1.歯科衛生士の理想形

人材募集の前に、どんなスタッフを雇用したいかを考える必要があります。歯科衛生士、歯科助手、受付兼歯科医療事務といった職種において、理想とするスタッフ像を念頭に置き、募集から面接、採用と進めていきます。
理想通りの人材を探すことは難しいのが現状ですが、その素質を持った人を採用してから育成するという視点を持つことも重要です。
また、未経験者や新卒者を雇用する際では、どんな性格か、何に興味を持っているのか、医療を選択した理由は何か、学生時代に熱心に取り組んだことがあるか等、今後の研修への取り組み方が想像できるような事項を確認することが必要です。

(1)歯科衛生士はスタッフ内でのリーダー

歯科衛生士は、歯科医院のリーダーとして果たさなければならない役割があります。
院長の理念や方針に沿って、診療を含めた医院運営を行うためには、院長が何を考え、どうしたいのか、またスタッフはどう思い、どうしていきたいのか、という意思が統一されることが重要です。
院長の理念や方針を伝えても、命令されていると感じて反発するスタッフや、適当に返事をして聞き流し、行動しないスタッフもいますので、お互いを理解することが前提となります。
人の能力の把握と併せて、その人のモチベーションを保ちながら仕事に取り組ませるかも重要な職務です。
優秀な歯科衛生士には、院内スタッフの取りまとめや育成・指導、院長とスタッフの調整役、患者とのつなぎ役、個人の歯科衛生士としての高い能力が備わっています。

優秀な歯科衛生士とは

2.歯科助手の理想形

ライセンスの無い歯科助手の医院における主な業務は、(1) 受付事務、(2) 診療アシスタント業務、(3) 医療事務の3つに大別されます。
その中でも優秀な歯科助手は、次に何をするのか、また、患者がどう反応するかを予測し、その準備を行えるスキルを持っています。受付兼任も多いため、患者との最初の接触から高い接遇力が求められるため、当然、他のスタッフとの連携調整能力も備えています。

優秀な歯科助手の業務

3.人材募集の方法

(1)求人方法とツールの選択

人材募集の手段は多々あります。その中から自院にとってどの方法が良いのか、組み合わせを考え選択しなければいけません。

人材募集

これらの方法・ツールにはそれぞれ特徴があるため、その特徴を活かす募集方法を選択する必要があります。

募集手法の特徴

(2)雇用条件の整備

雇用条件は、応募を決める重要な動機づけになるため、夜間診療や土日診療を行っている歯科医院が多いことを考えると、労働時間やシフトについて明確に表示する必要があります。

給与規程の表示

(2)給与条件の整備

給与規程の定める内容は、求職者の関心事であり、転職者は前職や他院の求人と比較し応募してきます。
明確な給与規程を作成し、募集時には掲載せずとも、面接時には説明できるようにする必要があります。

2.応募者目線で募集方法を検討する

スタッフの採用は、医院側が希望する人材像を示すだけでなく、応募者がどんな医院で働きたいのか、またどのような待遇を望むのか、という要望と合致することで達成されるものです。
応募者の立場や視点でみた募集内容となっていなければ、良い人材は集まりません。

1.応募者が調査できる医院情報の公開

応募者にとって雇用条件等も重要ですが、どんな職場か、院長の人柄や歯科医院の診療理念はどうなのか、ということにも興味があります。
特に、能力が高い方ほどホームページやSNS等の確認や調査を行ってから応募してきています。

応募者が知りたいこと

2.求人専用サイトの作成

歯科医院のホームページの中に、職員募集専用サイトを作成するのも一つの方法です。
歯科医院に勤務したい方が知りたい情報は多々ありますが、情報誌やハローワークに掲載できる紙面は少ないため、掲載できる内容も限られてきます。
職員募集用のサイトで十分な情報提供を行うことで、より良い人材に医院のことをよく知ってもらい、選んでもらうことが最も効果的な採用につながります。

3.応募者の行動

応募者は、ハローワークや求人誌や求人サイトで職員募集を確認すると、まずはスマートフォンやPCで歯科医院の状況を検索し、雇用条件だけでなく医院の雰囲気や他のスタッフ、院長の人となり等を調べます。
そして、さらに詳細に知りたいと考えた後に採用に応募する、という行動をとるものです。
この行動に沿って、ホームページやWEBサイト、フェイスブック等SNSでの歯科医院情報を公開することが効果的です。
近年、国家資格の人材紹介会社が増加し、その会社に登録する人も増加しています。
勤務先の詳細情報の公開、より具体的な勤務状況を確認できるから、という登録者のニーズがあるようです。
応募者が望む情報を提供する、という姿勢が大事です。

4.その他の募集活動

ハローワーク、求人誌等によるもののほかにも募集方法はまだあります。
特に、優秀な方の確保で多いのは口コミです。
友人知人、スタッフからの紹介は能力の高い人が集まることが多く、有効な手段です。
院内に職員募集の掲示(ポスター)を貼る、求人用名刺を作成し、面談者すべてに配布する、スタッフにも声をかけて、友人知人、先輩や後輩等の紹介を依頼する、歯科衛生士が集まる会に参加し、講演の機会を持つなど歯科衛生士の輪を広げる、さらに歯科衛生士の専門学校へ依頼する等があります。
歯科衛生士専門学校は、在校生の求職先も探していますが、過去の卒業生のつながりも多く、OBOGが直接専門学校へ転職先を探しにくる場合も多くあります。

その他の求人方法

5.能力に応じた給与制度から募集を増加

(1)能力給制度の導入

スタッフの能力を評価し、その能力に応じて給与を支給する仕組みを構築します。
初任給を決定した後は、毎年昇給時に人事評価を行い、その結果を昇給額に反映し、またリーダー等昇格の際の判断基準とします。

能力給制度のメリット

(2)給与制度構築の際のポイント

院長のさじ加減によって、給与が決定している医院は、スタッフとの信頼関係に悪影響を及ぼすばかりか、医院での業務に対するスタッフ個人のモチベーションの低下につながるおそれがあります。
給与制度は、スタッフと雇用関係の中で、特に誤解があってはならない部分であり、基準を設けることによって、スタッフとの信頼感も高まります。

給与制度を個人のモチベーションにつなげるポイント

(3)給与表作成事例

給与は、職務基準書と連動して等級を設定します。
能力に応じて、等級を3段階に設定した場合、給与表は下記のとおりとなります。
等級が上位になる程、昇給ピッチを多く設定し、毎年の昇給は、人事保評価の結果に合わせて号俸で決定します。
B評価で1号俸、A評価で2号俸というように運用します。

給与表の例(関東エリア 歯科衛生士)

(4)給与条件表の作成

勤務条件は応募者にとって、最も知りたい情報の一つです。
勤務時間のほか、福利厚生面で特徴的な項目やスキルアップのための研修制度の充実などを整理した上で、採用面接時に説明するなどアピールします。

給与条件表の作成

3.面接時の注意点と採用基準の確立

1.歯科医院が必要とするスキル

歯科医院のスタッフも、それぞれプロフェッショナルを目指すことが必要です。
歯科医院で必要となるスキルは、以下のとおりです。

スタッフに求められるスキル

2.効果的な面接手法

採用面接は、人材計画を進める上で非常に重要な要素です。
面接を行う段取りですが、面接開始前の事前アンケートに協力してもらう事も重要です。
この事前アンケートでは履歴書に記載してある内容を応募者に再度まとめてもらいます。
短時間でまとめさせることで、本来の応募者が持っている能力を試すことにもなります。
面接での質問内容は応募理由や前職の退職理由、また、面接時の目線の配り方や挨拶の仕方、うなずき方、質問に対する回答の仕方などが応募者を見極めるポイントです。

面接実施のポイント

面接時には応募者の素の姿を見極めることが必要になりますが、そのためには質問の内容が重要な役割を果たします。
必要に応じてシビアな質問を投げかけて、相手の対応力を判断することも必要になります。

面接時の質問内容

3.採用基準の確立

スタッフの採用時に重要視すべきポイントは、第一に、その応募者の歯科医療従事者としての適性があるかどうかです。
その応募者の現在持っている技術や知識、経験も重要ですが、むしろその人間性、仕事や患者に対する取組姿勢にポイントを置くべきでしょう。
特に、履歴書や面接時の取繕った表面上のふるまいに惑わされないことが重要です。

(1)採用すべき歯科スタッフの採用基準

採用すべき歯科スタッフの採用基準

(2)チェックポイント

チェックポイント

3.採用後の働き方をイメージさせる質問事例

雇用条件についての質問の他、治療や医院運営についてどう考えているかも確認します。
採用後の働き方をイメージさせながら、回答してもらうようにします。

採用後の働き方をイメージさせる質問事例

 

■参考文献及び参考資料
アポロニア21「スタッフの雇用と育成」(株式会社 日本歯科新聞社より)
図解 今すぐ使えるスタッフの人事評価と給与決定システム(竹田元治、岡輝之 著 クインテッセンス出版株式会社)
アポロニア21 「スタッフが集まる求人の秘訣」 中山 豊
「ハイレベルな人材が集まる医院に変える」 大橋 あゆみ(株式会社日本歯科新聞社より)
「輝く華の歯科衛生士」(小原啓子 竹元雅彦 坪島秀樹 著 医歯薬出版社株式会社)
「歯科助手が患者様を増やす」(領木誠一 著 クインテッセンス出版株式会社)

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