品質向上、コストダウン 業務効率化を実現する業務改善の進め方[企業経営情報]大阪市 日新税理士事務所

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業務改善とは何か
競争力強化のための業務改善
リーマン・ショックによる経済の急激な落ち込みのなかで、日本の企業は一斉にコスト削減へと舵を切りました。
多くの企業では「全社一律コスト○%カット」「全社員一律ボーナス○%カット」といった緊急避難的な措置が取られ、何よりもスピードと削減金額の大きさが重要視されました。
緊急対応が一息ついた現在では、コスト削減という生き残りのための改革から、持続的な競争力強化のための業務改善に取り組もうという機運が高まっています。
低コストであることはもちろん、競争力を強化するためには業務品質の向上やスピードアップなどが要求され、それを実現するのが業務改善なのです。
本レポートでは、業務改善の考え方を分かりやすく解説し、現場で使える業務改善の手法を紹介していきます。
業務改善とは何か
業務改善について考える前に、まず、「業務」とは何か、「改善」とは何かを考えてみます。
この2つの定義を明確にしてチーム内で共有することにより、人によってばらつきがちな「業務改善」のイメージが統一され、議論がスムーズに運ぶようになります。

(1)業務とは何か
業務改善の対象となる「業務」とは、「“自社にある資源”を“顧客にとって価値あるもの”に変換する活動」と定義することができます。
それでは、「自社の資源」と「顧客にとって価値のあるもの」とは何でしょう。
まずはイ メージのわきやすい「顧客にとって価値のあるもの」から考えてみましょう。
業務とは何か
1)「顧客にとって価値のあるもの」を考える
顧客にとって価値のあるものとは、それに対して顧客がお金を支払ってくれるものといい換えることができます。
具体的には、自社で何が顧客にとって価値のあるものかを考えると分かりやすいでしょう。
顧客にとって価値のあるものが自動車・パソコンなどの「モノ」の場合もあれば、修理・相談といった「サービス」の場合もあります。
さらには、株価・賃貸物件などに関する「情報」の場合もあるでしょう。
2)「自社の資源」を考える
では、顧客にとって価値のあるものに対応する自社の資源とは何でしょうか。
「モノ」を生み出すための自社の資源は原材料であり、「サービス」を生み出すための自社の資源はサービスが施される前の状態を指します。
例えば、壊れた自動車が自社の資源の場合は、修理された自動車が顧客にとって価値のあるものになります。
さらに、情報を生み出すための自社の資源は、バラバラに散らばった現象や事実ということができます。
3)「自社の資源」と「顧客にとって価値のあるもの」を細分化する
企業はヒト・モノ・カネという資本を投下して、自社の資源を顧客にとって価値のあるものに変換する業務を行っています。
前述の例は、全社的な活動を1つの業務としてとらえて、自社の資源と顧客にとって価値のあるものを例示していますが、さらに細分化し、部門単位で業務をとらえることもできます。
例えば、自動車メーカーの開発部門の「業務」は、過去に製造した自動車や顧客の潜在的なニーズという情報(自社の資源)を、新しい自動車の設計図という形(顧客にとって価値のあるもの)に変換する活動、ということができます。
同様に、課、担当者個人という、さらに小さな単位で業務をとらえることができます。
具体的に何を改善すればよいのか?
次に、改善とは何かを考えてみましょう。
業務は自社の資源を顧客にとって価値のあるものに変換する活動ですから、改善を業務と関連付けて考えると、資源を価値のあるものに変換する活動において、品質・費用・時間をより良い状態を作り出すことと定義できます。
つまり、ある特定の業務に関して、品質向上(クオリティアップ)、費用低減(コストダウン)、納期短縮(スピードアップ、速さ)、といういずれか、または2つ以上を実現することが改善だといえるのです。
業務が改善されたかどうかは、この3つの視点で判断することになります。
業務改善の3つの視点
ここまで、業務改善を業務と改善とに分けて定義付けてきました。
上司から「業務改善」を命じられたなら、どの範囲の業務を、どの視点から改善すべきなのか、定義付けを明確 にすることからスタートすることが肝要です。
業務改善の4つのステップ
前述のとおり、業務改善とは、自社の資源を顧客にとって価値のあるものに変換する活動(業務)において、品質向上(クオリティアップ)、費用低減(コストダウン)、納期短縮(スピードアップ)のいずれか1つ以上を図ることです。
では、業務改善はどのようなステップに分けることができるでしょうか。分類に絶対的なルールはありませんが、ここでは大きく「現状分析」「解決策立案」「改善策導入」「評価・ 再見直し」という4つのステップに分けて考えてみます。
業務改善の4つのステップすべ てに共通して必要とされるのが現状把握です。
業務改善の4つのステップ
「現状分析」「改善策立案」の進め方
「現状分析」の進め方
「現状分析」のステップでは、現状の業務を分析し、改善目標に向けて“どう改善すれば成果が上がるのか”ということを見極め、改善する業務の方向性を作り上げていく作業を行います。
現状分析は下記のステップで進めていきます。
現状分析の進め方
何を改善したいのか
ひとくちに改善といっても、どこの何を改善すべきなのか。
改善のための課題の発見が第一です。やみくもな改善は掛け声倒れになるばかりか、業務を増やすだけです。
業務改善の対象はもちろん「業務」です。業務は「モノ」「コト」「ヒト」から成り立っています。
業務改善の対象はこの3つを対象とします。自分の仕事を振り返り、「どうも、この辺りが問題だ。なんとか改善できないか?」という視点で課題を整理します。
業務改善の3つの対象
改善テーマ設定の着眼点事例
「顧客は満足しているのか」「もっと収益をあげられないか」「もっと効率が良い方法はな いか」「コストを下げることはできないか」という思いが業務改善のきっかけとなります。
業務の何から改善したらよいかという着眼点としては下記のような例が挙げられます。

(1)会議 ~会議の無駄をなくす~
業務の中で会社の業績に直結せず、無駄な業務として一番にあがるのが「会議」です。
無駄な会議をなくすためには目的を明確にし、改善点を明らかにすることです。
無駄な会議は目的が明確になっていないことが多いため、まずはそれぞれの会議を目的別に分類します。
うまく分類できない会議は、目的が不明確であったり、複数の目的を兼ねていたりする場合があります。
会議の目的別改善点
(2)文書管理 ~必要な資料がすぐに取り出せるには~
より業務をしやすくするための文書管理の仕組みは、低コストで高品質であることを目指します。
低コストとは、文書量を最小限にして用紙代、インク代、作成コスト、保管コスト、廃棄コストを削減することです。
高品質とは、文書の目的を明確にし、簡潔明瞭に作成でき、判断・意思決定が容易にできることを目指します。
社内文書管理改善の着眼点
(3)コストダウン ~利益を増やすには~
コストダウンは会社の事業活動からムリ・ムダ・ムラをなくし、収益に結びつける状態を作り上げることです。
コストダウンの着眼点
改善課題の明確化
改善テーマを設定したら、そのテーマにどんな課題があるのかを明確にしていきます。

(1)業務プロセスのチャート化
業務や帳票の流れなどはプロセスチャートを作ることで課題が明らかになります。
プロセスチャートは、個人の業務の流れを、部・課・係・担当者といった範囲で関連付け、他の部門まで広げていきます。
プロセスチャートにすると、どの部署の、どの段階に課題が あるのかが明確になります。
お客様からの製品情報問い合わせ対応のプロセスチャート例
(2)マトリックス法
課題には「階層」があり、相互に関連しているケースもあります。そのため課題という言葉の解釈のすれ違いが起こるケースも少なくありません。
こうした課題の抽出・整理に適しているのが、マトリックス法です。
洗い出された課題を、部署、課題の重要性などの2つの軸で一覧にし、課題の性質を明らかにしていく方法です。
各部署でどのような重大な課題があるのかがひと目でわかるとともに、課題の関連性が浮かび上がってきます。
会社全体の電話対応のクレームに関するマトリックス図の例
改善策の立案
課題が明らかになったら、効果的な改善テーマに標準を合わせ、改善の方向性を探ります。
創意工夫が求められ、物の見方の転換が求められます。
そこで、改善の方向性を決める5つの視点を利用して方向性を決定していきます。
改善の方向性の5つの視点
(1)排除
目的があいまいな業務、役割を果たしていない業務などは「排除」します。仮に一度やめてしまった後、必要性を感じたら復活させればよいのです。
(2)交換
作業手順を入れ替える、担当を入れ替えるなど、何かと何かを「交換」してみることでも改善されることがあります。
(3)簡素化
業務プロセスを簡素化したらどうなるのかを考えます。さらにどうすれば簡素化されるのかを考えます。業務の標準化なども「簡素化」に含まれます。
(4)変更
時期が集中する業務に関しては、事前に行える業務の時期を「変更」することも改善の効果があります。業務を分散化、細分化して、業務の進め方を変えようとする視点です。
(5)対照
拡大と縮小、集中と分散、標準と個別、事前と事後など現状採用している業務の進め方に対して、これらの「対照」的な視点で考え直すことです。
「改善策導入」「評価・再見直し」と業務改善事例
業務改善策の導入
次に「改善策の立案」のステップで作り上げた業務改善の方向性を業務改善実施計画書に具体化し、実際の組織の状態に合わせて「導入」していきます。
現状の業務の進め方から新しい進め方に移行するステップを考えていきます。その際には、常に「現実的か」ということを意識し続ける必要があります。
また、改善の実施中には業務改善実施計画書を、定期的に確認し、「もともとの改善案で意図したものは何か」「いつまでに、どのようなことができればよいか」を振り返り、そのときの実施状況と比較しながら、確実な実施に繋げていきます。
業務改善実施計画書(例)
改善業務プロセスを「評価・再見直し」する
そして「導入」した改善の効果を「評価」します。
評価では、業務改善を実行した結果、「問題が解決したかどうか?」を、改善目標の数値の確認という現状把握を通して行います。
このステップでの重要なポイントは、運用状況のサポートです。
業務ごとの「処理時間」「処理コスト」「処理に必要とされる資源」「ボトルネックになりやすいポイントの抽出」 など、改善の実施状況をレポートすることです。
大切なことは運用状況のレポートをしっかりと見直し、再度、次の業務改善に向けて「現状分析」のステップに繋ぐということです。
改善業務の文書化を行う
業務は社内外の環境に対応して常に変化していくものであり、一度問題が解決された らといって、それが永続的に最適な業務プロセスになるというものではありません。
従って、業務改善の進め方を業務遂行する現場が理解し、共通認識を持ち、日々の業務の中でこのサイクルを回し続けることが重要なのです。
様々な視点による業務改善事例
(1)営業支援の仕組み改善
営業部員の営業投下時間の増大
1)改善テーマ
小売業A社では、営業部員の営業投下時間をもっと増やすことはできないかと苦心していました。そこで、営業訪問件数の向上を図るために営業支援の仕組み作りに着手しました。 2)改善策
営業支援の仕組みとして、顧客情報の管理や訪問対象リストの提供、提案資料のデータベース化、日報記録管理が一般的ですが、A社ではこれらとともに作成された日報の顧客別、商品別、地域別に検索できるようにする、社外からも会議に参加できるネット会議システムを導入しました。
なかでもユニークな点は、営業部員の「オフィスの滞留時間」の短縮を促すため、ノート型PCや移動型キャビネットを各人に用意したうえで、営業部員のデスクを共有デスクとしたことです。
この共有デスクスペースには、常駐・専任の営業支援スタッフを数名配置し、外回りの営業部員との連絡調整、精算事務の代行支援など支援体制を整えました。
「営業部員は、成約を決めるのが使命。会社で営業支援スタッフが電話一本で準備もしてくれるうえ、機転も利かせてくれる。」と専用のデスクを失った営業部員の評判は意外にも好評で、お客様とのやりとりに専念できるとのことでした。
3)改善実施後の成果
成果として、A社では営業人員の変更はないものの、訪問件数が1.5 倍となり、成約件数も2割増加しました。

(2)ペーパーレス会議の推進
コストダウンと社員の意識改善
1)改善テーマ
ソフトウェア開発B社は、コストダウンの意識改善を行うために、会議運営のガイドラインを作成し、会議のペーパーレス化に取り組みました。
2)改善策
会議ではノート型PCとプロジェクターを利用し、必要な資料を必要な時に見せることにしました。
また、会議の目的を明らかにするとともに、会議中に思いついたことや注意書きのメモ用に、会議資料としてテーマや結論を「A4用紙1枚にまとめ、配布する」ことにしました。
このガイドラインは、会議運営の標準化やペーパーレス化を目指すことで、全社員に効率化やコスト意識を持たせることが目的でした。
このほか、外部スタッフやクライアントスタッフを含め、複数人によるネット会議のためのシステムを整備しました。
また、会議資料は、事前にファイル転送やメール添付で、参加者へ事前資料配布し、コピーは厳禁としました。
3)改善実施後の成果
ペーパーレスでコストの削減はもちろんのこと、参加者は配布されたA4用1枚しかもってないため、プロジェクターに映し出された資料に注目し、話し手の言葉や資料に注視し、耳を傾け、会議への集中力が高まり、効率化が実現されました。

(3)出張伝票の見直し
コストダウンと業務効率化
1)改善テーマ
食品メーカーS社の営業部員は、月の半分は出張に出ています。
出張から帰ると、当然 「出張旅費の精算」というデスクワークが待っています。
これが、営業部員にとって頭の痛い業務でした。そこで、出張旅費精算の業務効率化に着手しました。
2)改善策
伝票には記入欄が多く、複雑で電車の発着時刻までも記入欄が設けられています。
記入する営業部員だけでなく、伝票を受け取る総務部にとっても、出張精算は手間のかかる業務の一つでした。
S社では、資格や役職によって支給額が相違しているため、資格や役職に応じた交通機関の利用チェックが必要でした。
総務部員の女性社員のひとことで改善が始まりました。S社の伝票は出張単位で作成するため、複数の目的で出張した場合、精算報告書を複数作成しなければなりませんでした。
この部分を改善し、伝票の枚数は平均すると4分の1となりました。
営業部員も含めてもっと簡素化できないかと議論が広がり、その結果、記入項目や書式の見直しを行いました。
3)改善実施後の成果
成果として、伝票枚数の削減と業務効率化のために支給額も資格や役職にかかわらず、 一律に支給することとなり、出張経費の削減にもつながりました。

■ 参考文献
『もっとうまくできる業務改善(日本能率協会マネジメントセンター 2002年)』 佐伯学、田中信、塚松一也 編
『業務改善がよくわかる本(日本能率協会マネジメントセンター 2007年)』 オフィス業務改善研究会 編
『オフィスの業務改善(日本能率協会マネジメントセンター 2010年)』 株式会社日本能率協会コンサルティング 著

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