職場の規律を正し、トラブルを未然に防止する!人事労務リスクマネジメント

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職場の規律を正し、トラブルを未然に防止する!人事労務リスクマネジメント

  1. 職場規律の乱れが招くトラブルの現状
  2. 職場規律の改善、定着によるリスクマネジメント
  3. 労働法の理解、遵守によるリスクマネジメント
  4. トラブルを未然防止するためのポイント

 


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1.叱れない上司、叱られたい部下職場規律の乱れが招くトラブルの現状

昨今「人事労務のリスクマネジメント」という活字を目にする機会が多くなりました。
人事労務トラブルはおよそ全ての企業が抱えるリスクであり、いざトラブルに直面した場合に適切な対応ができなければ、多大な損失を被るリスクが高くなります。
本レポートは、人事労務に関わるリスクに着目しています。
その傾向と対策を掴むことによりリスクに対処できる組織作りにお役立て下さい。

1.変化してきた人事労務トラブル

人事労務トラブルは、相変わらず増加の一途を辿っていますが、徐々にその質が変わってきています。
かつて人事労務トラブルといえば、労基法を軽視した事業主からの一方的な解雇や労働条件の引下げによるものが中心でしたが、最近は様々な問題行動を起こす従業員をめぐって起こるものが増えてきています。

人事労務トラブルの要因

このような時代背景には、従業員のライフスタイルの変化や非正規社員の増加、パソコンの普及による対面によるコミュニケーション力の低下が挙げられます。
一部の従業員の問題行動により職場の規律が乱され、それが組織風土の悪化につながっているというものが増加していますが、そもそも職場規律の乱れに関しては、企業自身が主体的に規律改善の対策を講じていくことが求められます。

人事労務トラブル防止に向けた取り組み

2.職場規律の乱れ、放置による組織への影響

職場の規律が乱れることで、どのような影響があるでしょうか。
職場・従業員と企業に分けて、その影響を考えると以下のようにまとめることができます。

職場規律の乱れ、放置による組織への影響

3.年間100万件を超す労働相談

職場規律が乱れ、内部で改善、解決できない組織になると、外部へ救いの手を求め、労働紛争へと発展する可能性があります。
厚生労働省は毎年、「個別労働紛争解決制度」の施行状況をまとめ、公表しています。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止や早期解決を支援するもので、都道府県労働局や労働基準監督署内に設置された「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。
平成26年度は、総合労働相談、助言・指導、あっせんの件数がいずれも前年度と比べ減少しましたが、総合労働相談件数は7年連続で100万件を超え、高止まりしています。

総合労働相談件数及び民事上の個別労働紛争相談件数の推移

労働トラブルでよく問題になる事柄として「賃金の問題」があります。
「賃金未払い」、「サービス残業」、「長時間労働による労災認定」などといった記事はよく見かけます。
しかしながら、「職場規律」に起因する「いじめ」、「嫌がらせ」等のパワハラ相談件数は6万件を超えており、個別労働紛争相談件数の中で一番多く締めています。
特に、人事課や総務部と言った専門の部署がない中小企業からの相談件数が多く、実際に労使トラブルになって初めて、その重要さが分かる経営者が多いとうかがえます。

就労形態別の個別労働紛争相談件数

2.職場規律の改善、定着によるリスクマネジメント

1.全ての企業に存在する人事労務リスク

職場規律に起因するリスクは、全ての企業に存在します。
主に企業の「ヒト」に関するものですから、コンプライアンスに関するリスクが大半を占めています。
そして、リスクの内容によっては、企業経営に大きなダメージを与えるものかもしれません。
しかし、すぐに相談できる弁護士や社労士と顧問契約をしている企業はごくわずかで、突然のトラブルに相談先さえ見つけられないケースが多く見られるようです。
また、顧問契約をしている弁護士や社労士が労働問題に詳しくなかったり、あるいは、その判断に使用者として納得がいかない場合もあるようです。
企業として人事労務リスクにはどのようなものがあり、いざという時にどのような対処方法が考えられるのかを整理する必要があります。
以下に主な人事労務リスクを記載します。

主な人事労務リスク

2.職場規律を守るための就業規則の役割

就業規則とは、企業で働く従業員の労働条件や守るべき服務規律などを具体的に定めた規則のことをいいます。
従業員数が10人以上となったときに作成し、企業の所在地を管轄する労働基準監督署に届け出ることになっています。
また、変更した場合も同じように届出が必要です。
従業員数が10人以上と規定されているとはいえ、仮に従業員が10人未満だとしても、すべての従業員の力を効率的に発揮させるために、従業員同士のトラブルを防止するために、守るべき一定のルールが必要です。
就業規則を作る目的は、従業員一人ひとりが勝手な判断・行動をしないよう、一律に守るべきルールを定め、運用していくことです。
言うなれば、就業規則はその企業の組織運営の骨格となる憲法の役割を果たすものであるため、服務規定がきちんと整備されているか中身の再点検をする必要があります。
守るべきルールが明確になれば、そのルールを徹底させるためにも、これに違反した者には「制裁」というペナルティを課す必要があります。
どのようなペナルティが適用されるのかも就業規則に書いてあれば、未然に違反を防止する効果も働きます。

就業規則の役割(全体像)

企業は労務管理の中で、様々なアメとムチを使い分ける必要があります。このバランスが非常に難しく、まさに従業員の教育の基本であり、企業利益に直結する部分でもあるのです。
また、多くの企業が就業規則の考え方をおろそかにしています。
適度なバランスが保たれて組織がうまく機能している企業は団結力(モチベーション)が増し、競争力が高まるといえるでしょう。

3.管理職に必要な意識改革

昨今の人事労務トラブルを見る限り、同じ企業が何度もトラブルを起こしたり、あるいは同じ企業が継続的に違法な行為をさせたりしていたという傾向があります。
このように継続的にトラブルが発生する原因は、企業の管理職に「ルールを守らなければならない」という意識が欠けているからです。
従業員は、会社の管理職の姿勢をよく見ています。
企業の管理職にルールを守ろうという意識が欠如している時、従業員も「管理職がルールを守っていないから自分も守らなくてもよい」という意識になってしまいます。
人事労務トラブルを発生させないためには、まず管理職がルールを守らなければならないことを明確に意識し、企業全体にメッセージを発信することが必要です。

管理職に必要な意識改革

4.場規律を定着させるために必要な社員研修

従業員に社内規律やルールを周知徹底させるためには、定期的に社内研修を行うことが必要です。
社内研修の方法には、各部署内による勉強会、内部講師による講義形式、および外部講師を招聘した講義などがあります。
ポイントは、定期的に研修を実施することで、自社では社内規律やルールの遵守は必須であることを常に意識づけさせることです。

職場規律を定着させるために必要な社員研修

社内研修の方法も様々ですが、従業員が関心を持ち、リスクやコンプライアンスの意味を理解できる社内研修にしなければ意味がありません。
一般的な講義形式だけの研修は、従業員も飽きてしまいがちなので、過去のリスク事例を題材にしたりQ&A方式の研修にしたり、外部講師研修等、バリエーションを持たせる工夫が必要です。

3.労働法の理解、遵守によるリスクマネジメント

1.労働法をめぐる法令違反

人事労務トラブルの原因として労働法の軽視も挙げられます。
労働法といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではりません。
労働問題に関する多くの法律をひとまめにして労働法と呼んでいます。
その中には、 労働基準法や労働組合法をはじめ、労働安全衛生法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった様々な法律が含まれています。
昨今では、労働基準法を中心にパートタイム労働法、労働安全法、労働者派遣法における法令違反が多いのが実情です。
以下に法律別に主な法令違反をまとめます。

労働法をめぐる主な法令違反

2.労働基準法における罰則とリスク対応

労働法の中でも労働基準法に関する法令違反が多数を占めます。
労働基準法に違反すると違法な労働を命じた管理職だけではなく、企業も罰則を科せられるリスクが生じます。
よって労働基準法違反防止のために必要な措置や違反行為是正の措置を速やかに講じることにより罰則を回避する必要があります。
以下に主な労働基準法の罰則を示します。
該当している、または該当している恐れがある場合は、即刻リスク解消に向けての対策を講じる必要があります。

主な労働基準法の罰則、内容及び対応法

3.今後の法改正の動向を理解する

昨今の労務問題に目を向けると、雇用、労働の現場において、正規雇用者と非正規雇用者との処遇格差、非正規雇用者の雇用の不安定さ、正規雇用者を中心とする長時間労働といった様々な問題があります。
こうした雇用、労働をめぐる諸問題に対し、平成24年に労働者派遣法、平成25年に労働契約法の改正が行われました。
更に、正規雇用労働者の年間労働時間が2,000時間と高止状態であること及び年次有給休暇の取得率が50%を切っている実情からも、長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進等、働き方の見直しが喫緊の課題となっています。
政府が発表した「日本再興戦略改訂2014」では、「世界トップレベルの雇用環境の実現」を大前提として、働き過ぎ防止に全力で取り組むとしており、企業等における長時間労働が是正されるよう、監督指導体制の充実強化を行い、法違反の疑いのある企業等に対して、労働基準監督署による監督指導を徹底するとしています。
更に、今後も大きな改正として、以下のことが検討されています。

今後の法改正の動向

上記 (1)の年次有給休暇の取得促進に関しては、平成28年4月より年10日以上の有給休暇を与えられる従業員に、毎年時季を指定して年「5日」の有給休暇を取らせることが企業の義務となります。
よって、現段階から計画的な有給消化、適正人員配置に目を向けるとともに、企業によっては、変形労働制の導入等を視野に入れていかなければ後々、労務トラブルを招きかねません。

4.トラブルを未然防止するためのポイント

1.管理者の規律チェックを通し従業員の変化に気付く

企業は、職場の規律を確保し、従業員が職務に集中できる組織秩序を保つ必要があります。
以下は、職場規律が乱れる傾向です。
定期的に管理者がチェックし、1つでも該当するものがあれば注意信号ととらえ、あたりまえの習慣にならないように注意喚起していく必要があります。

職場規律チェック

職場規律が低下していく原因は、企業と従業員の認識のギャップや規律の乱れの放置が考えられます。
職場の乱れを見逃さない規律正しい職場にするには、ルール違反があったときは、適切に注意、指導する体制を整える必要があります。
最終的には、従業員がこの会社で「働きたい」、「安心して働いていける」と感じることができる職場に繋げていくことが重要です。
以下は、「企業」、「管理者」、「従業員」別の対応法です。

企業、管理者、従業員別の対応法

2.セクハラ防止に必要な管理者の問題意識を醸成する

セクハラは、一般的に「相手の意に反する性的な言動により、相手に不快感や不利益を与えること」をいいます。
男女雇用機会均等法第11条では、「職場において行われる性的な言動に対し、それを受けた当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること(対価型)」、または「職場において行われる性的な言動により、当該労働者の就業環境が害されること(環境型)」と整理されています。

対価型と環境型のセクハラ

厚生労働省によると、平成25年度のセクハラの相談件数は9,230件。企業にセクハラ防止対策を義務づけた改正男女雇用機会均等法が施行された平成19年度の1万5,799件から約4割減っています。
しかし、露骨な「対価型セクハラ」は減っていますが、「環境型セクハラ」は依然として高止まりしているのが実情です。
そこで企業側は、以下の「言行一致」の取り組みを徹底することでセクハラの効果的な防止や早期の対応が可能となります。

言行一致の取り組み例

3.クレドを作成し基準行動を浸透させる

職場規律を維持したり、企業の価値観を強く共有するための方法としてクレドの作成が挙げられます。
クレドとは、ラテン語で「信条」、「約束」、「志」を意味し、経営理念など、職場共通の価値観、考え方を言語化し、簡潔、かつ、具体的にまとめたものを指します。
昨今では、会社の経営理念などをまとめた「クレドカード」を指す言葉として定着しつつあります。
クレドは通常、以下のミッション・ビジョン・バリューで構成されています。

クレドの構成

クレドの定着は、組織文化を形成します。
また、組織文化は「法人の性格」と言い換えることもできます。
良い組織文化を築くと全ての従業員の価値観に大きな影響を与え、職場規律を根付かせることも可能になり、人事労務に関するリスクマネジメントにも結びつきます。
以下は、クレドカードの作成例です。経営者のみで作成するのではなく、従業員を巻き込んで作成するのがポイントです。
昨今、日々の朝礼でクレドを合唱している企業も出てきました。
職場規律を維持し、前向きな従業員を育成するためにもお勧めします。

クレドカード(バリューを抜粋)

■参考文献
『リスクマネジメントの法律知識と対策』(三修社)
『不祥事を防ぐ社員の意識づけと行動ルール』(中経出版)
厚生労働省ホームページ

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