令和4年度診療報酬改定詳細解説 新設・変更された 歯科診療報酬の 概要

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令和4年度診療報酬改定詳細解説 新設・変更された 歯科診療報酬の 概要

      1. 令和4年度 歯科診療報酬改定の概要
      2. かかりつけ歯科医機能の充実と医科との連携強化
      3. 重症化予防の推進とデジタル化への対応
      4. 歯科固有技術の評価の見直し

 


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目次

1.令和4年度 歯科診療報酬改定の概要

令和4年度の診療報酬改定において、様々な診療報酬点数が改定になりました。
算定要件や対象患者が見直されたものや診療点数が改定されたもの、新設されたもの等がありますので、改定項目を理解したうえで、要件や基準を再確認し、診療報酬請求を見直すことが急務です。

1.令和4年度診療報酬改定率

令和4年度診療報酬の改定率は診療報酬本体ではプラス0.43%です。
各科の改定率は、医科がプラス0.26%、歯科がプラス0.29%、調剤がプラス0.08%となり、その一方で薬価はマイナス1.35%、材料価格はマイナス0.02%の改定となりました。

令和4年度診療報酬改定~改定率

2.改定にあたっての基本認識

前回、令和2年度診療報酬改定の基本認識であった(2)健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現、(3)患者・国民に身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現、(4)社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和については、本改定に引き継がれました。
今回の診療報酬改定においては、コロナ渦の状況を受けて、新たに「(1)新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築など医療を取り巻く課題への対応」が基本認識の柱として付け加えられました。

改定にあたっての基本認識

3.令和4年度 歯科診療報酬改定のポイント

令和4年度の歯科診療報酬改定のポイントは、大きく2点です。
1点目は、「効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」であり、その内容は3つの項目「かかりつけ歯科医の機能の充実」「地域包括ケアシステムの推進のための取組み」「質の高い在宅歯科医療の提供の推進」で構成されます。
2点目は、「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」で、「口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進」「医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応」で構成されています。

令和4年度歯科診療報酬改定のポイント

4.厚生労働省統計に見る歯科医院を取り巻く経営環境

厚生労働省保険局医療課が作成した令和4年度診療報酬改定の概要【歯科】では、歯科医院を取り巻く経営環境について解説しています。
歯科診療所数は横ばいが続き、同様に推計患者数も平成23年から横ばいが続いています。
また、20歯以上の者の割合も増加しており、これらのデータは、治療中心型から治療・管理・連携型へのシフトを推進する厚生労働省の根拠データとなっています。
今回の改定は、これらの環境を踏まえた内容になっていると言えます。

横ばい続く歯科診療所数、横ばい傾向にある歯科診療所推計患者数、20歯以上の者の割合 (年齢階級別・年次推移)

2.かかりつけ歯科医機能の充実と医科との連携強化

本改定の重点ポイントとして、「効率的・効果的で質の高い医療体制の構築」が掲げられました。
具体的には、かかりつけ歯科医機能の充実、在宅医療の提供の推進、地域包括ケアシステム推進のための取組みです。
これらに関連した改定項目について解説します。

1.かかりつけ歯科医・在宅歯科医療の充実

(1)かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直し

地域の関係者との連携体制を確保しつつ、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の維持・向上を推進する観点から、かかりつけ歯科医の機能の評価について、地域における連携体制に係る要件及び継続的な口腔管理・指導に係る要件が見直されました。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直し

(2)20分未満の歯科訪問診療の評価の見直し

歯科訪問診療の実態を踏まえ、診療時間が20分未満の歯科訪問診療を行った場合について、点数設定が見直されました。

20分未満の歯科訪問診療の評価の見直し

(3)在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の見直し

在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の対象疾患に、口腔機能低下症が含まれることを明確化するとともに、評価が見直されました。

在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の見直し

2.地域包括ケアシステムの推進

(1)在宅医療における医科歯科連携の推進

在宅療養支援歯科診療所1及び2の施設基準について、歯科訪問診療の実績要件が見直されました。

在宅医療における医科歯科連携の推進

(2)総合医療管理加算等の算定要件の見直し

口腔に症状が発現する疾患に係る医科歯科連携を推進する観点から、総合医療管理加算等について対象疾患及び対象となる医療機関が見直されました。

総合医療管理加算等の算定要件の見直し

(3)歯科医療機関連携加算1の対象医療機関及び患者の拡充

情報提供料(Ⅰ)における歯科医療機関連携加算1について、情報提供を行う医師の所属及び患者の状態にかかる要件を廃止し、医師が歯科訪問診療の必要性を認めた患者を対象とすることになりました。

歯科医療機関連携加算1の対象医療機関及び患者の拡充

3.重症化予防の推進とデジタル化への対応

本改定の重点ポイントの2つ目は、患者・国民にとって身近で安心・安全で質の高い医療の実現です。
口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進、医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応が掲げられました。
歯科外来診療における感染防止対策の推進やライフステージに応じた口腔機能の推進、歯科口腔疾患の重症化予防の推進、歯科診療所と病院の機能分化・連携の強化、情報通信機器を活用した在宅歯科医療の評価など、様々な点で見直しが行われました。

1.歯科診療における施設基準及び評価の見直し

歯科外来診療における院内感染防止対策を推進し、新興感染症にも適切に対応できる体制を確保する観点から、歯科初診料における歯科医師及び職員を対象とした研修等に係る要件を見直すとともに、基本診療料の評価が見直されました。

歯科診療における施設基準及び評価の見直し

2.歯科口腔疾患の重症化予防の推進

全身の健康にもつながる歯周病の安定期治療及び重症化予防治療をさらに推進する観点から、歯周病安定期治療(Ⅰ)及び(Ⅱ)が、歯科診療の実態を踏まえて整理・統合されました。

歯科口腔疾患の重症化予防の推進

3.ライフステージに応じた口腔機能管理の推進

ライフステージに応じた口腔機能管理を推進する観点から、口腔機能管理料について、口腔機能の低下がみられる年齢等の実態を踏まえ、対象患者が65歳以上から50歳以上に見直されました。

ライフステージに応じた口腔機能管理の推進

4.歯科診療所と病院の機能分化・連携の強化

歯科診療所と病院の機能分化・連携の強化を図る観点から、歯科診療特別対応連携加算について、地域における連携状況を踏まえ、評価の在り方が見直されました。
本改定では、施設基準の要件に、「歯科診療を担当する他の保険医療機関との連携体制が整備されていること」が新設されました。

歯科診療所と病院の機能分化・連携の強化

5.医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応

歯科衛生士等による訪問歯科衛生指導の実施時に、歯科医師が情報通信機器を用いて状態を観察した患者に対して、当該観察の内容を診療に活用した場合の評価が新設されました。
また、オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報または特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することに係る評価が新設されました。

歯科訪問診療料(1日に付き) 通信画像情報活用加算、電子的保険医療情報活用加算

4.歯科固有技術の評価の見直し

今回の改定の中で、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進の中で、歯科固有技術の評価が新設され、一部見直しがなされました。
具体的な内容としては、口腔内検査や部分パノラマ撮影、3次元X線断層撮影、処置関係、手術関係、麻酔関係、補綴関連、歯冠修復及び欠損補綴関係等です。
以下に、その一部について解説します。

1.検査や撮影に関する新設項目

(1)口腔バイオフィルム感染症に対する検査の新設

口腔バイオフィルム感染症の診断を目的として実施する口腔細菌定量検査の評価が新設されました。

口腔バイオフィルム感染症に対する検査の新設

(2)異常絞扼反射を有する患者に対する部分パノラマ撮影の新設

異常絞扼反射を有し、口腔内エックス線撮影が困難な患者に歯科パノラマ断層撮影装置を用いて、X線の照射範囲を限定し局所的な撮影を行った場合の評価が新設されました。

異常絞扼反射を有する患者に対する部分パノラマ撮影の新設

(3)金属代替材料による歯冠修復物の評価の新設と歯冠補綴物の適用拡大

コンピュータ支援設計・製造ユニットを用いて作成した、金属代替材料による歯冠修復物の評価が新設されました。
また、前歯のCAD/CAM冠が保険適用になったことに伴い、算定要件の見直しが行われました。

金属代替材料による歯冠修復物の評価の新設と歯冠補綴物の適用拡大

2.補綴物・処置関係の改定項目

(1)歯冠修復物または補綴物の除去の評価の見直し

歯冠修復物または補綴物の除去について、臨床の実態に合わせて評価を見直すとともに、対象を明確化しました。

歯冠修復物または補綴物の除去の評価の見直し

(2)処置関係の見直し

「処置」における既存技術について、実態にあわせた評価となるよう見直されました。
下記、下線部分の処置が改定となっています。

処置関係の見直し

その他見直し等が多々ありますので、診療報酬請求の際は、所轄厚生局の疑義解釈や訂正通知書を随時ご確認ください。

 

■参考資料
厚生労働省:令和4年度診療報酬改定の概要(歯科)
厚生労働省保険局医療課

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