歯科医院の増収ポイント 新たな自由診療への取り組み

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歯科医院の増収ポイント 新たな自由診療への取り組み

  1. 自費率を向上させる取り組みポイント
  2. 時代の変化に対応した自由診療メニュー
  3. 新たな自由診療への取り組み効果
  4. 自由診療に特化した診療所事例

 


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1.自費率を向上させる取り組みポイント

歯科医院の増収対策には、自由診療への取り組みが挙げられます。
補綴物等の保険対象外の診療材料使用やインプラント等の保険外診療行為そのもの、ホワイトニング等の審美歯科、矯正歯科等と様々な形態があります。
従来、単に「自由診療」として患者へ勧めていたものが、「口腔内の健康を維持するための考え方」を前面に出して、自由診療を推進するという手法に変化してきています。
患者側も身体の健康には口腔内の健康が関連するという意識が向上していることから、口腔内の健康に対する歯科医院の取り組みが注目されています。

1.自費率向上の考え方

自由診療は、患者にとって「最良の治療を提供されること」であることを十分に理解してもらうためにも、治療技術の向上、医療サービスの充実を図るとともに、自由治療に関する情報提供の量と質を増やし、患者の選択肢を広げることが重要です。
この選択肢の拡大が、結果として歯科医院の増収へつながります。

自費率向上の考え方

2.自費率を高めるポイント

(1)マニュアルの整備とデータ管理

自費率向上には、患者が自由診療への理解を深め、納得して受診することが必要です。
カウンセリングや検査から患者の状況を詳細に把握し、その状況にあった治療計画を策定し、コミュニケーションを取ってわかりやすい説明を行うことです。
説明の準備としてカウンセリングマニュアルを、説明ツールとしてデータを整備します。
効率的にカウンセリングを行うために、スタッフにはマニュアルを、患者にはビジュアル化されたツール類を使います。
患者には、目と感覚に訴えるツール類を用意し、興味を持つような場面を設定します。

説明ツールの整備ポイント

勤務歯科医やスタッフがカウンセリングを行う場合は、標準的なカウンセリングの説明ができるようにマニュアルを整備します。
また、トークの訓練も必要です。
一方的に話すのではなく、患者の聞取りの状態を観察し、理解が進んでいるか、飽きてきていないか等の判断をしながら行える訓練を行います。
また、自由診療の効果測定は、収入ではなく自由診療移行率によって判定します。
患者のうち、どの程度が自由診療を選択したか、自由診療のどんなメニューが選択され、または選択されなかったか等、成功例と失敗例を集めて管理し、次に活かします。
また、治療前と後の写真等を保険診療と自由診療別にデータ化し管理します。

(2)カウンセリングの実施

患者には「診療行為」だけではなく、「健康維持」という意識を向上してもらい、その一環として自由診療がある、と認識してもらうことが重要です。
そのポイントはカウンセリングにあります。
心理的不安を取り除くために、同じ視線の高さで話すことが求められるため、出来ればカウンセリングコーナーを設け、患者の注意を引く場面を作る必要があります。

保険診療と自由診療の比較ポイント

3.時代の変化に対応した自由診療

自由診療への取り組み方にも時代に応じた変化が見られます。
従来、保険診療の限界と診療後の口腔内の状態の比較により自由診療を勧めていましたが、近年は患者の健康への意識が高まり、また歯科医院でも患者に健康への意識が向上するように努めたことで、自由診療を選択するという流れを作っています。

(1)アンチエイジングを取り入れる

アンチエイジングという言葉は、一般社会に浸透してきつつあります。
歯科診療においても、患者に生涯を通じて自身の歯で好きなものを食べることで満足のいく食生活を送り、日常生活での満足感、幸福感、安心感などのQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指してもらうことでアンチエイジング歯科治療という言葉を使い始めています。
QOL向上はアンチエイジングの原点であり、「究極の予防医学」だと考え、様々な取り組みが始まっています。

歯科治療のアンチエイジング

(2)ヘルスケア志向に対応する

患者のヘルスケア志向も高まりを見せてきました。
これは、予防歯科の一種として自由診療も選択する、という考え方で取り入れられています。
日本ヘルスケア歯科学会では、「従来の修復・補綴に重きを置いた歯科医療から、健康な歯列を守り育て生涯にわたって人々の健康のパートナーとなる歯科医療へと、その転換が始まっている」と考えています。
こうした背景もあり、歯科医院においても、修復・補綴といった歯科医療から予防歯科へシフトが進んでいます。

ヘルスケア志向と予防歯科

2.時代の変化に対応した自由診療メニュー

患者ニーズの変化に伴い、虫歯や歯周病等の口腔内の疾患が発症してから通院するのではなく、ヘルスケアという健康志向やアンチエイジングの意識のもと、口腔内の健康維持のために通院するようになってきています。
こうした患者ニーズに対応した自由診療メニューが提供されています。

1.アンチエイジングを取り入れたメニュー

外面だけではなく、内面からの健康・予防・美容には歯科の役割はとても大きく、アンチエイジング歯科治療という考え方が広がってきています。
アンチエイジングは、口腔内の環境を包括的に若返らせることを重要視します。
口腔内の健康を手に入れ、患者自身の歯でおいしいものを食べ、快適に生活するという「QOL(生活の質)の向上」がアンチエイジングの歯科治療です。

(1)メタルフリー治療

メタルフリー治療とは、老化や健康に影響すると考えられる金属類を一切使用しない治療方法で、身体にやさしく、見た目にも自然で白く美しいセラミック系の材質等での人工の歯を装着します。
金属類を使用すると、時間の経過とともに裏の金属が露出する可能性がありましたが、メタルフリーでの治療後には金属が見えることはほとんどありません。

(2)審美歯科・矯正歯科

前歯の色や形(審美歯科)、歯並び(矯正歯科)を治療することは、その部位を治すだけではなく、外見の印象や美しさも大きく変わり、患者の外面や内面の意識まで変化します。
より美しい口元であるために、審美的な悩みを解決することがアンチエイジングへの取り組みになります。

(3)インプラント治療

インプラント治療は、歯根を失った時に取られる処置で、「入れ歯」や「ブリッジ」等を採用せず、人工歯根を埋め込み、噛みあわせを回復します。
見た目の美しさや硬い物を食べられ、美味しさを感じられるメリットがあります。

アンチエイジングとしてのインプラント治療

(4)ホワイトニング

「歯が黄ばんでいる」「もっと輝く白い歯になりたい」と考えている患者は多く、俳優やスポーツ選手によってホワイトニングへの意識は一般人へ広がりました。
加齢や食物中の色素の影響、飲み物等により変色した歯は、歯を削るのではなく、「ホワイトニング」によって本来の若々しい白い歯を取り戻すことができます。

ホワイトニング方法の比較

2.ヘルスケア志向に対応した予防歯科メニュー

ヘルスケアとは、健康の維持や増進のための行為や健康管理のことを表わします。東洋では、養生あるいは未病という概念によって、健康時からの健康の維持や増進が図られてきました。
歯科業界でも、ヘルスケア志向に対応した取り組みが始まっています。
日本ヘルスケア歯科学会の報告書では、1998年にヘルスケア歯科研究会が設立され、2011年には日本ヘルスケア歯科学会となり、疾病を未然に防ぐことが容易であるという歯科医療の可能性を患者利益の追求とし、活動してきています。
虫歯の治療が終わった後や、治療を始める前に予防歯科の説明をする歯科医院が増えています。
虫歯や歯周病の治療は、削ったり詰めたりしても、将来において再度症状が進行し、治療が必要となることが多々あります。
歯科ヘルスケアへの取り組みはまずは予防、もし発症してしまったら、再発防止を目的とするより高度な診療(自由診療)を選択することが重要と考えています。

(1)PMTC治療

PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥ―ス・クリ―ニング)は、歯のクリーニングです。
PMTCは、通常の歯磨きではなかなか落ちない歯の汚れや病原菌等を取り除きます。口腔内にある細菌(400種類以上)がバイオフィルムを形成し、虫歯や歯周病の原因となりますが、バイオフィルムは簡単には歯ブラシでの歯磨きでは取れません。
PMTCは虫歯や歯周病の予防や血液への病原菌の進入を予防し、老化の予防を促進します。
実際にPMTCを行うのは歯科衛生士の業務であり、歯科衛生士の技術向上がPMTCの効果に反映されます。

(2)レーザー治療

レーザー治療は痛みが少なく、麻酔を少量若しくは使わず、また、治療部位をピンポイントで治療できます。
さらに出血がほとんど抑えられるため、正確な治療が期待でき、身体への影響が少ないためヘルスケア治療として考えられています。

レーザー治療の自由診療

3.新たな自由診療への取り組み効果

アンチエイジングやヘルスケアを取り入れている歯科治療によって、患者行動にも変化が見られます。
厚生労働省の調査とアンチエイジングやヘルスケアを謳っている歯科医院での調査では、新患数や来院患者の年齢層等に違いが出ています。
保険診療と自由診療を併用している歯科医院だけではなく、アンチエイジングや歯科ヘルスケアを行う自由診療専門の歯科医院も出てきています。

1.学会認定がアピールに

(1)歯科疾患の状況の変化

歯の喪失は年々改善してきており、これに伴って歯科疾患による通院数は減少しています。
ただし、口腔内の健康は自然に維持できるものではなく、歯科医院による検診などが不可欠です。

歯科疾患の状況の変化

学校歯科検診や小児時代の通院時、歯科医師や歯科医院から「予防歯科」の重要性を説かれ、また親世代も子供の口腔内の健康に気を付けるようになり、各種学会等による予防への啓蒙活動が少しずつ浸透してきている結果が表れています。

(2)日本ヘルスケア学会来院調査結果

日本ヘルスケア歯科学会の学会誌において、ヘルスケア認定歯科医院を一般歯科医院との初診患者調査を実施しています。
その結果によると初診患者比率が年令別で大きく違ってきています。
一般歯科医院では0~9歳の初診患者が8%弱に比べ、ヘルスケア認定歯科医院では25%強、10~39歳でもヘルスケア認定歯科医院の方が30%から50%以上の割合を示しています。
ただし、60歳以上の年齢層では、一般歯科医院へ通院している現状です。
小児の親世代と若い世代は、歯科ヘルスケアといった考え方が浸透している結果だと思われます。

ヘルスケア認定歯科医院 来院患者調査

2.自由診療収入の増加

当社関与先で、平成24年からアンチエイジングを取り入れている歯科医院の経営実態を調査した結果によると、平成24年には保険診療が42,125千円、自由診療が7,820千円だったのが、平成27年には保険診療46,618千円、自由診療9,392千円となっています。
医療収入に対する比率は、平成24年で15.66%、平成27年では16.77%となっており、自由診療収入は伸びています。

歯科医業収入の変化

3.患者啓蒙と歯科医院のイメージアップ

保険診療を中心に行っている歯科医院でも、予防歯科の主体になる定期検診受診をはがきやメール、メルマガ等により、患者に対し呼びかけています。

(1)情報提供手法

情報提供では様々な手法が行われています。
一般的にハガキやメール、ホームページは多くの歯科医院で実施されていますが、患者啓蒙という観点では、研修会がキーワードとなります。

新たな自由診療の啓蒙活動・広報活動

(2)国と歯科医師会による「8020運動」

1989年、国と日本歯科医師会により「8020運動」が提唱されました。
8020運動とは、「80才になっても20本以上の自分の歯を保つことで豊かな人生を」という考えのもとに、高齢に達しても健康で幸せな日常生活を送ることを目指した運動です。
患者個人のモチベーションを高め、歯科医師ならびに歯科衛生士がそれをサポートすることで達成できる現実的な目標を掲げた運動で、歯科受診促進の後押しとなっています。

8020運動の目標

4.自由診療に特化した診療所事例

「日本アンチエイジング歯科学会」が2005年に設立されて活動しており、認定医・認定医院を明示し、学会活動や報告会を開催しています。
また、「日本ヘルスケア歯科学会」が2011年に設立され、日本アンチエイジング学会と同じく、学会活動や報告会、講演会等を開催し、歯科医師・歯科衛生士向けへの研修会も開催しています。
会員診療所を明示し、歯科ヘルスケアの活動を世間一般に広げているほか、歯科医院では学会員としてのアピールもしています。
この章では、アンチエイジングやヘルスケアを取り入れた歯科医院の事例を紹介します。

事例1:インプラント歯科診療所

保険診療は実施しないインプラント治療専門の歯科医院の事例です。
アンチエイジング対策として、インプラント治療の必要性を感じ、口腔内の健康維持が身体の健康にもつながると考え、より楽しい食事が生活を豊かにするという方針のもと診療を行っています。
また、最新の医療機器の導入や技術研修による能力アップを行い、治療による患者負担の軽減も行っています。

歯科医院の概要

(1)診療の特徴

《1》インプラントへの不安払拭:CT撮影による正確な現状把握

歯科用CTを設置し、詳細なデータから患者の口腔内の現状を把握し、的確な治療計画を立てて施術しています。
CT撮影のデータから、治療計画を綿密に立てて、患者の理解と納得の上、施術しています。
患者によってはインプラントへの不安を払拭できない方もいるため、こちらでは、入れ歯専門の診療所と提携しています。

CTのイメージ写真

《2》インプラントの材料、施術方法の選択

インプラントの材料も多種用意し、金額と効果、メンテナンス、材料による身体へ影響等を説明し、患者に選択肢を示しています。
治療方法もセメント固定式やスクリュー固定式等の説明を含め、カウンセリングを充分に行い患者の納得を得て治療に入ります。

セラミックスのイメージ写真

《3》CGで制作した治療計画による患者の信頼獲得

コンピュータグラフィックにより制作された治療計画を明確に実行できるよう製作されたガイドを、オプションで提供しています。
インプラントの角度、深さ等まで計画され、患者の目で見ても判りやすい治療計画から、施術の正確さを高めている他、人工骨予備手術を数種、ほか静脈内鎮静法等を用意し、万全の体制を構築しています。

(2)患者状況

開院して6ヶ月余りですが、インプラントの予約も埋まり、ほぼ空きの無い状況です。
HPのアクセスも多く、患者からの紹介や提携している歯科医院からの紹介患者で、毎日5~7名の新患が来院しています。
カウンセラーの増員・教育をして、患者対応をより良くしようとしています。

事例2:入れ歯専門の歯科医院

入れ歯専門の歯科医院としてアンチエイジングと歯科ヘルスケアに取組み、健康に影響の少ない材質を選択して、より健康で充実した人生を維持するために「より良い入れ歯」を自由診療で行っています。
機能性、審美性、耐久性、安全性に優れた入れ歯を完全オーダーメイドで提供しています。

歯科医院の概要

(1)特徴

《1》CT撮影による状況確認

歯科用CTを設置し、患者の口腔内の状況に応じて入れ歯を作成し、誤差の少ない入れ歯の提供を行っています。
カウンセリング室にCT画像を見ることのできるシステムを構築し、患者の目でも確認できるようにして安心信頼を得てから治療、入れ歯の作成をしています。

《2》技工士と技工室による自前の入れ歯提供

歯科医院内に技工室を配備し、歯科技工士を直接雇用することで、検査時や治療時にも即対応出来るような体制を構築しています。
歯科技工士も患者との面談を行い、より安心を提供しています。

技工士と技工室による自前の入れ歯提供

(2)患者状況

患者とのコミュニケーションを図り、説明と患者理解のもと治療を行っており、予約も1ヶ月待ちの状況です。
インプラント歯科医院とも連携を行い、きめ細かい対応を心掛け患者要求に応じられる体制を構築しています。

 

■参考文献
日本アンチエイジング歯科学会HP
日本ヘルスケア歯科学会HP
いちばんイイのはどれ?ホワイトニング調査隊HP
「国立保健医療科学院口腔保健部 歯科疾患実態調査・8020財団の抜歯調査報告」より抜粋及び参照

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