- クラウドファンディングの概要とその特徴
- クラウドファンディング5つの類型
- クラウドファンディングの活用方法
- 日本における成功事例
1.クラウドファンディングの概要とその特徴
昨今、ネットサービスの普及により、投資などの行為を行う障壁が下がる事象が発生しております。
その中で個人がインターネット経由で他の人々や組織に、財源の提供や協力などを行う「クラウドファンディング」が注目されてきています。
そこで、本レポートではクラウドファンディングの概要と、中小企業でも活用できる事例を紹介いたします。
1.クラウドファンディングとは何か
クラウドファンディングのクラウドとは、「雲」でなく、群衆を意味する「crowd」です。
企業や個人が、インターネットを通じて不特定多数の投資家から小口の資金を幅広く集めるという意味です。
クラウドファンディングは、資金提供者に対するリターンの形態により、次の「寄付型」、「購入型」、「投資型」の3つに大別されます。
(1)寄付型クラウドファンディング
インターネットのウェブサイト上で寄付を募り、寄付者(資金提供者)には資金の活用状況等を記載したニュースレター等を送付します。寄付者には対価はありません。
主な資金提供先は、非営利の団体で、被災地・発展途上国支援の団体等が多くなっています
(2)購入型クラウドファンディング
購入者(資金提供者)から前払いで集めた代金を元手に製品を開発し、購入者に完成した製品等を提供します。
購入者への対価は商品・サービスとなります。
主な資金提供先は、音楽・ゲーム制作事業、被災地支援事業、障がい者支援事業等を行う事業者・個人です。資金調達規模は、数万円~数百万円程度となっています。
(3)投資型クラウドファンディング(融資型・ファンド型・株式投資型)
プラットフォーム運営業者を介して、投資家と事業者との間で匿名組合契約を締結し、出資を行います。
出資者(資金提供者)への対価は、事業の売上や収益となります。
主な資金提供先は、音楽関連事業、被災地支援事業、食品・酒造・衣料品等の事業です。
資金調達規模は数百万円~数千万円程度となっています。
2.クラウドファンディングのメリットとデメリット
クラウドファンディングのメリットとデメリットを整理すると下記のとおりです。
3.SNSが共感や参加意識をバックアップ
クラウドファンディングで集められる資金には、金銭的なリターンがないものが多いにも関わらず、資金を提供する側は、プロジェクトを立ち上げた資金需要者の想いや計画に対して、「共感」や「参加」といった意識を持って資金を投じています。
それができる背景には、Facebookなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)や、Twitter、ブログなどウェブを通じたコミュニティの確立によって、各個人が価値観やビジョンを共有していることが挙げられます。
資金提供者は、実際には会ったことがなくても、資金を投じることでプロジェクトを起案した資金募集者との距離を縮め、ともに参加している意識が強く醸成されます。
他方で、資金調達しようとする中小企業や個人は、テスト段階にある商品をプロジェクトとして公開し、マーケティングの場としても利用できます。
クラウドファンディングの運営業者は、資金を必要とする資金募集者のプロジェクトと、それに賛同した、資金提供者(個人)の間を取り持つ役割を果たしています。
そのため、運営業者は、既存の信用情報だけではなく、SNSなどのネット上の評判を含めて、プロジェクトの審査を行います。
運営業者の収益は、インターネットを経由して低コストで資金を集める場を個人や企業、団体に提供し、集めた資金に応じて手数料を徴収することで成り立っています。
4.これからの日本のクラウドファンディング
日本では購入型のクラウドファンディング運営業者が最も多く、新たな参入が相次いでいます。
一方、投資型は「規制が厳しく、手間暇がかかる。小口の資金ニーズに対応するのは割に合わない」といわれています。
事業者や投資家にガイドラインを遵守させれば良い購入型とは異なり、投資型では、事業者の審査が厳格にならざるをえず、匿名組合契約の事務も煩雑になります。
また、日本では、クラウドファンディングの資金提供者の大半は首都圏を中心とした大都市周辺に限られており、全国に浸透し普及するまでにはしばらく時間がかかりそうです。
スマートフォン等の端末は普及しても、SNSを通じたコミュニティの成立は十分にあるといえる状況ではないからです。
しかし、時代の要請から、日本における普及も時間の問題であるといわれています。
2.クラウドファンディング5つの類型
日本のクラウドファンディングのビジネスモデルを「資金提供者への金銭的リターンの形態」という切り口で分類すると、(1) 寄付型(リターンなし)、(2) 購入型(金銭以外の財物)、(3) 融資型(金銭)、(4) ファンド投資型(金銭)、(5) 株式投資型(金銭)の5つに分けることができます。
1.寄付型クラウドファンディング
被災地や途上国支援など、社会意義の高いプロジェクトに対して寄付を行うことができるのが寄付型クラウドファンディングです。
基本的にリターンはありませんが、プロジェクトによって、サイト内で活動報告などを閲覧することができます。
2.購入型クラウドファンディング
最新の技術を用いたプロダクトや、ユニークな映画やイベントなど、バラエティに富んだプロジェクトに対して支援を行うことができるのが購入型クラウドファンディングです。
リターンとして、支援金額に応じた商品やサービスのチケット等が手に入ります。
リターン目当てで支援するユーザーが多く、商品やサービスの先行販売サイト的な役割を担っています。
3.融資型クラウドファンディング
寄付型・購入型に比べると日本での浸透度は低いですが、実は世界のクラウドファンディング市場シェアが、最も高いのが融資型クラウドファンディングです。
投資家から集めた資金で、資金調達ニーズのある企業に対して融資を行います。
小口の資金を集めて大口化することにより、これまで個人にはハードルの高かった不動産投資や海外投資などの好条件な投資案件に参加できるようになります。
リターンとして返済金利の一部が分配されます。
4.ファンド投資型クラウドファンディング
応援したい事業者に対して、匿名組合を通じて投資をすることができます。
リターンとして、契約期間中の売上の一部を分配金として受け取ることができます。
また、投資家特典として、投資先の企業の商品やサービスがもらえる場合もあります。
このスキームでは、投資家(匿名組合員)と事業者(営業者)との間で匿名組合(ファンド)契約を締結し、プラットフォーム運営会社が仲介業者となり、投資者(匿名組合員)が事業者に出資し、その事業者の営業から生じる収益の分配を受けるものです。
このスキームを活用した例では、ミュージックセキュリティが運営する「セキュリテ」が有名です。
5.株式投資型クラウドファンディング
金融審議会において議論されていることにより注目が集まっているのが、この株式投資型クラウドファンディングです。
法改正により、インターネット上で、未上場の株式を購入することができようになりました。
投資家保護の観点から、現時点では、一人当たり50万円以下、発行総額1億円未満という数字が提示されています。
3.クラウドファンディングの活用方法
1.クラウドファンディング活用の流れ
ネットサービスを通じたクラウドファンディングの流れを解説します。
クラウドファンディング運営会社のサービス状況により多少異なりますが、一般的には以下のとおりです。
2.クラウドファンディングにおいて留意するべき法規制
(1)寄付型の法規制
寄付型の場合は、以下の点に注意が必要です。
(1) 資金提供者側の問題として、提供した資金は寄付金として一定額までしか損金に算入されないという問題がある。
(2) 資金調達者側の問題として、資金調達者が法人の場合は提供を受けた資金について法人税の対象となり、資金調達者が個人の場合は提供を受けた資金について所得税又は贈与税(資金提供者が個人であるか又は法人であるかによります。)の対象となるという問題がある。(但し、日本では、寄付型クラウドファンディングで提供を受ける資金のような一時所得に関する所得税については年間50万円までは非課税であり、贈与税については年間110万円までは非課税です)
(2)購入型の法規制
購入型の場合は、以下の点に注意が必要です。
(1) 誰が売主となるのかにより、購入対象に関する責任の所在が異なることになるため、スキームの法的構造を吟味する必要があること。
(2) 売買であることから、売主には、瑕疵担保責任等の購入対象に関する責任が生じる。
(3) 瑕疵担保責任については、完全な免責を定めることは資金提供者が一般消費者であることから消費者契約法上難しいと考えられ、責任の内容については慎重な検討が必要となる。
(4) 特定商取引に関する法律に基づく表記等の、いわゆる特定商取引法による規制を受ける。
(5) 購入対象と対価のバランスが取れていない場合は、単なる贈与として、寄付型の法規制で述べた点と同様の税務上の問題が生じる可能性があること、さらに、寄付型と購入型のいずれも、お金の流れの仕組みによっては、資金決済に関する法律に基づく資金移動業の登録の要否を検討する必要が出てきます。
3.国内最大手のクラウドファンディングサービスを展開しているREADYFOR
現在、日本では、統合型やジャンル特化型など、大小含め数多くのクラウドファンディングサービスが存在していますが、その中でも特に押さえておきたいサイトは日本で最初に設立され、最大規模を誇るREADYFORです。
購入型ですが、社会問題においても積極的であり、災害支援プロジェクトでも高い実績を上げています。
4.日本における成功事例
1.3Dプリンター開発の資金調達で成功
2014年1月15日、クラウドファンディング型ECサイト「kibidango(きびだんご)」にて、3Dプリンタの開発を手掛ける「ボンサイラボ㈱」が立ち上げた3Dプリンタ「BS01 BONSAI Mini」の製造・販売プロジェクトで約1,050万円(達成率525%)を集めることに成功しました。
また、関連する消耗品のEC売り上げ約140万円を加算すると、このプロジェクトで集まった金額の合計は1,190万円強となりました。
実施されたクラウドファンディングは、Webページを見た同製品の支援者から集まった資金が目標金額に達すると成功となり、支援者に同製品が届く仕組み。2013年12月6日から12月27日まで開催されました。
資金提供者とともに、新しい製品を世の中に送り出すことができた事例です。
フェイスブックのコミュニティを作成し、SNSを利用してのマーケティングは、その後のトラブル対応にも大きな効果を発揮できました。
アイディアが盗用されるかもしれないというリスクを取りつつ、オープン化戦略で見事に成功した事例です。
2.玩具開発の成功事例
ばねメーカーの五光発條(横浜市)は6種類のばねと接続パーツでブロックのように組み上げる玩具「SPLink(スプリンク)」を開発し、2013年12月に発売しました。
同社社長は「売れるかどうかを販売前に判断できた」と振り返っています。
構想段階では「やめた方がいい」と社内の反応も悪かったものの、クラウドファンディングを通じて2013年5月からの2ヶ月間に55万円の調達に成功し、「支援者を52人集められた」ことが自信につながりました。
開発中は、毎日のようにフェイスブックやメールで支援者に状況を報告。
「真っすぐな接続パーツが欲しい」「説明書は見やすいように工夫してほしい」など様々な反応が返ってきました。
同社社長は、支援者が製品を待っているというプレッシャーがなかったら、開発は頓挫していたかもしれない、と後述しています。
資金提供者が支援者となり、構想・開発段階から一緒にやってきたことで成功した事例です。
支援者が待っているというのが実感できたことが大きな成功要因です。
3.クラウドファンディングで誕生したロボット
クラウドファンディングで誕生したロボットがあります。
それは、電子機器設計の機楽(東京都狛江市)と中心とする中小企業4社が開発したロボ「ラピロ」です。
日米で1,500万円を調達することができましたが、同社社長は「資金調達段階で商品の需要に手応えがあり、発売前に何台ぐらい売れるのか把握できた」と打ち明けています。
「購入型」のクラウドファンディングを利用して、出資者への報酬(リワード)として、完成した商品を届ける方法もあります。
これにより、製品の一部は事前注文を受けた形となり、生産前に事前の需要予測が可能になります。
クラウドファンディングを利用して、マーケティングのメリットを享受した事例といえます。
■参考文献
『次世代ファイナンス クラウドファンディングで世界を変えよう』(ジャムハウス)
『よくわかる投資型クラウドファンディング』(中央経済社)
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