組織的な取組で無駄を排除!歯科診療所コスト削減実践法

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組織的な取組で無駄を排除!歯科診療所コスト削減実践法

  1. コスト削減の目的と職員意識改革
  2. 使用料把握・委託先見直しによる変動費削減
  3. 業務・支給方法・手当の見直しで人件費圧縮
  4. 省エネ・支出管理による固定費削減

 


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1.コスト削減の目的と職員意識改革

1.コスト削減の目的は適正利益の確保

当社関与先を対象とした平成26年度歯科医院経営実績調査において、医業収益(診療収入)は対前年1.8%の微増となり、変動費が2.5%、医業費用が7.0%増加したことで、全体では6.9%の減益となりました。

平成26年 比較要約変動損益計算書

医業利益は、建物・設備の修繕、医療機器の更新や職員昇給の原資となるものであり、必要利益を確保しなければなりません。
しかし、医業利益の減少分を収入でカバーする場合、上記データでは変動費を加味すると1,225千円の収入増加が必要ですが、患者数や単価増加を図るよりも、変動費や医業費用の見直しによるコスト削減への取り組みのほうが、より現実的で効果が期待できます。

2.コスト削減 2つのポイント

適正利益の確保を考えた時、初めにコストを見直すことは、経営の鉄則です。
コスト削減に取り組む上で徹底しなければならないのは、以下の2点です。

コスト削減2つのポイント

(1)コスト削減に関する方針を示す

院長が、コスト削減に関する明確な方針を示します。
それは、コスト削減を推進する際に、状況によっては、賃金制度の見直しや、取引先の変更や取引停止といった、経営者でなければ決定を下すことができない項目にも目を向ける必要があるからです。

全体フロー

(2)職員に当事者意識を持たせる

コスト削減を進めようとしても、職員が協力してくれないケースがよくあります。
それは、コスト削減の対象が「自分の金」ではなく「医院の金」であり、職員に当事者意識がないことによるものです。
「コスト削減をしないと自院の経営が成り立たない可能性もある」という危機感を醸成して、職員に当事者意識を持たせることが重要です。

3.人件費の変動費化

人件費の考え方についても意識改革が必要です。
改善のポイントは、人件費を一部変動費ととらえ、職員に複数の業務を担当させることです。

(1)人件費を変動費化する

人件費はすべて固定費ではなく、一部は変動費であると考えることが重要です。
例えば、適正な職員数を設定するにあたって、来院患者数がピークとなる時期、あるいは通常時に合わせるかと考えるだけで職員数が変わります。
通常時を基準とし、ピーク時にはパートやアルバイトでカバーすることで、人件費が圧縮できます。
また、アウトソーシングの活用も検討の必要があります。

人件費を変動費化する主な項目

(2)複数業務担当でコスト削減

歯科衛生士は、専任業務として診療補助を担いますが、それ以外の院内業務に携わらない場合、事実上、患者がいない時間等はすべて休憩時間同様の扱いとなってしまいます。
受付やレセプト補助、会計等の業務を全員がフォローできるようになれば、業務の平準化と併せて、時間外労働や職員採用の面からも効率化が期待できます。
また、院内清掃を業者に委託している場合には、職員が清掃する習慣を身に付けることで、委託費削減にもつながります。

4.コスト管理体制の構築と意識改革

(1)元に戻さない管理体制を構築する

コスト削減などの業務改善に着手すると、最初のうちは院内全員で意識して取り組むため、ある程度の成果が上がります。
しかし、少し改善できたからといって徹底の意識を怠ると、いつの間にか元に戻ってしまい、以前より悪くなってしまうことも少なくありません。
院長は職員に対し、常に改善への意識付けを働きかけることが重要です。

(2)改善効果が出なければ方針と活動を見直す

業務改善に着手しても、すぐに効果が出ない場合には、「この取組みはやっても意味がないからやめよう」と考えてしまう場合があります。
しかし、改善の取り組みは実現するまで貫徹することが重要であり、中断してしまっては何にもなりません。
取り組んで効果が出なければ、「適切な手段であったのか」、それとも「やり方は間違っていないがやり切れていないのか」等について検証し、必要に応じて方法を修正する必要があります。

2.使用料把握・委託先見直しによる変動費削減

1.変動費削減マネジメントの基本

月次損益計算書などは、下図のように費用科目を元帳からエクセルシート等へ落とし込み、月次展開できるようにします。
これにより、勘定科目がひと目で確認できます。

変動費削減マネジメントの基本

2.治療材料費削減の組み立て

治療材料費は歯科診療所の規模や機能、役割によって大きな差があるため、削減への取組みを進める必要があります。
保険診療、自由診療、矯正歯科、歯科口腔外科等、診療内容や標榜科目によって必要な材料が変わってきます。

(1)治療材料費

(1)「単価×量」の分解と「ロス構造」の把握

物の費用の削減において重要なのは、「単価×量」の分解と「ロス構造」の把握です。
単価と量を分解することにより、購入の仕方と使い方の見直しが改善の方向性となるうえ、非効率性が発生してしまうロスの構造を把握することで、どこでどのような無駄が発生しているかを明らかにすることができます。

「ロス構造」の理解

(2)単価とロスの削減ポイント

単価とロスの関係を中心とした削減ポイントは、次に挙げられます。

単価とロスの関係を中心とした削減ポイント

3.医薬品費削減に向けた購入量の見直し

医薬品費のように、経営と密接に関わる費用は「必要なものを、必要な量だけ購入する」という原則を徹底します。
医薬品や医療材料、および消耗品は、気づくと余分な在庫を抱えてしまっているケースが多くみられます。

(1)在庫(定数)を減らす

薬品棚や物品庫等にある医薬品は、定数管理表などによりチェックを実施し、払い出しを行っているケースが大部分ですが、院長が現場の定数チェックに関与しない仕組みは、好ましい体制とはいえません。

定数チェック不備から生ずる問題点

(2)品目数(種類)を減らす

同じような薬効の薬や同一製品の規格違いなどは、できるだけ最小限の種類に絞り込みます。
これは、医薬品の安全管理上の観点からも重要なファクターです。

4.外注技工料等の削減へのアプローチ

歯科診療所の多くは、特定の歯科技工所との業務委託関係を継続しており、他と比較する機会が余りありません。
また、取引が長くなると、特に問題が起こらない限り、契約内容等を見直すことはほとんどなくなります。
しかし、歯科技工外注先については、その業務について毎年評価を行うべきであり、少なくとも精度管理の確認や、実施内容の精査は自院の責務として行う必要があります。

◆A歯科診療所の事例と見直し効果

【A歯科診療所の概要】 標榜科目 歯科、歯科口腔外科、小児歯科

A歯科診療所では、W歯科技工所に対して技工物の外注を行っています。
月額外注技工料は平均で597千円となっており、これまで業務委託の見直しは全く行っていませんでした。
そこでS歯科技工所に対して、現状の自院患者の状況、技工物と指示事項について提示・説明したところ、下記のとおり技工料見積額が提示されました。

S歯科技工所外注技工料

見積額から試算すると、S歯科技工所へ委託先を切り替えた場合、A歯科診療所における外注技工料は、現在の外注技工料から平均87.6%減となり、月平均74千円(年間888千円)の削減効果と、間接的には自由診療増加にプラスに働くことが考えられます。
ただし、技工先変更により、長く安定して継続してきたシステムが変わるという影響が想定されるため、決定に際しては院内全体のコンセンサスを得る必要があります。

3.業務・支給方法・手当の見直しで人件費圧縮

1.複数業務取り組みによる時間外削減

歯科診療所では、夜間診療や土日診療を行っている所も多く、時間外勤務が発生することがあります。
しかし、そのような状態が恒常的になっているようであれば、目先の状況に振り回されて人件費をいたずらに増やすことになり、長期的には人材を疲弊させ、転職を招くという最悪のリスクを抱えていることになります。
残業の多くは、業務負担の偏りが原因になっています。
以下のような手順で負担をならし、業務の平準化を図ることが求められます。

(1)職員の業務内容と時間外労働のチェック

(1)職員の残業状況を把握する

誰がどれだけ残業をしているのかについて、賃金台帳やタイムカードをチェックし、時間外労働の現状を把握します。

(2)時間外労働が特に多い職員がいる場合

残業は、特定の個人に集中する傾向にあります。時間外労働の状況を確認した結果、特に時間外労働が多い職員が見つかった場合には、その業務内容を調査する必要があります。
本人から聞き取りを行い、業務全体を日次、月次、年次の3つに区分して、それぞれについてどれだけの時間をかけているかを確認します。
聞き取りでは実態がよくわからない場合は、実際に1ヶ月程度、直属の管理者に当該職員の業務内容を調査します。
また、同時にその職員が所属している部門のほかのメンバーについても、残業状況と業務の状況を同じように調査・把握します。

(2)複数業務担当で時間外労働改善

特定の職員に時間外労働が多いのであれば、その職員個人の業務効率の低さの問題、あるいは他の職員との業務バランスが原因だと推測されます。
個人に問題があるならば、個別研修や教育により、能力アップに取り組みます。
そうでない場合は、部門の役割分担や、業務フローに偏りが生じている可能性が高いと推測されるため、特定の職員に負担が集中しすぎないように業務フローや職務の割り振りの見直しが必要です。
特に、限定された業務しか行っていない職員がいる場合は、その業務範囲を広げるサポートを行い、一人が複数の業務を担当することで全体の業務を平準化します。

2.給与見直しによる人件費圧縮

(1)支給方法の見直しで社会保険料を圧縮

毎月納付する社会保険料は、原則として4~6月に支給された給与にその後1年間拘束されます。
よって、4~6月(給与を翌月に支給する場合は3~5月)に残業や休日出勤が多いと、社会保険料においては大きく不利になります。
また、基本給や諸手当などの固定給が変動し、かつ3ヶ月平均の給与額が2等級以上変動すると、月変(随時改定)該当となり、4ヶ月目から社会保険料が変更されます。
毎月納付する社会保険料を節約するためには、まず「7月1日の算定」と「月変」の仕組みを理解することが重要です。

(1)標準報酬月額の各等級に対する「給与額の幅」に注意

例えば、給与が229,999円(健康保険18等級、厚生年金保険14等級)の場合と、230,000円(健康保険19等級、厚生年金保険15等級)の場合では、給与額は1円差であるものの、納付する社会保険料は1年間で約65,000円の差が生じます。
また、230,000円の給与の職員と249,999円の職員は、約2万円の給与格差がありますが、1年間に納付する社会保険料は同額です。
よって、給与額を決定又は変更する場合は、標準報酬月額の各等級に対する給与額の幅を意識して決定する必要があります。

(2)昇給は7月(以降)の給与で実施

4~6月の給与で昇給を行なうと、「算定」の対象になってしまいます。
7月に支給する給与で昇給や諸手当のアップを行なえば、その昇給額が社会保険料に反映されるのが「1年遅れ」になります。

(3)精勤手当などの出来高給は奇数月に隔月支給

精勤手当などの出来高給は、出勤率などの計算期間を2ヶ月間にして、奇数月の給与で支給します。
これは、偶数月に支給するより、4~6月の給与を対象とする「算定」で有利になるためです。

(4)育児休業月変の有効活用

育児休業取得後に何らかの理由で給与が減った場合、わずか1等級の変動でも月変の届出を行なうことが出来ます。
また、この育児休業取得後の月変は、固定的賃金の変動も要件とされていませんので、残業代などの変動給が減った場合でも、3ヶ月平均の給与額が1等級変動すれば月変の届出が出来ます。

(2)各種手当見直しによる人件費圧縮

歯科診療所は、医療の有資格者と補助者で構成され、人が収入を生み出す組織であることから一律の人件費カットは困難です。
しかし、固定費最大の項目であるため、圧縮に向けた取組みは進めるべきであり、人事評価制度の構築などによってメリハリをつける仕組みは必要です。

(1)支給目的が明確でない手当の洗い出し

支給意義のないもの、根拠が不明確な手当を洗い出し検討します。

支給目的が明確でない手当の洗い出し

(2)各種手当を廃止する場合の留意ポイント

各種手当を廃止する場合の留意ポイント

4.省エネ・支出管理による固定費削減

1.省エネ・省資源によるコスト削減

省資源・省エネへの取り組みは、紙・ゴミ・電気の節約など、身近な活動の小さな積み重ねが非常に重要です。

省資源・省エネへの取り組み

直近の損益計算書や残高試算表、総勘定元帳などを見るときには、削減の余地が多いと思われる経費支出額の大きな項目から、順に内容を分析していくのが原則です。
また、前年同期間と比較して、大きな増減がみられる項目については、その原因を重点的に調査することも重要です。

2.利用制限と支出管理によるコスト削減

固定費の中でも、3K費用といわれる「広告宣伝費」「交通費」「交際費」を削減することは、非常に重要です。
これら3K費用削減のポイントは、利用制限と支出管理にあります。
特に法人が開設する歯科診療所は、役員や歯科医師との関係において、タクシーチケット等の使用や、ゴルフ、飲食等の費用に対する管理を怠りがちでもあり、重点対象として管理を徹底します。

3K費用削減のポイント

(1)広告宣伝費

現在契約中の広告を確認し、効果の少ない媒体を中止します。

広告宣伝費

また、地域密着を目指すうえでも、診療圏内の無料パブリシティへの記事掲載などによって広告費の削減を図ります。
基本的には、広告宣伝のために支出した金額に見合う以上の貢献を自院にもたらさなければなりません。
資金的な制約からも、単に医療の評判が向上したといった抽象的な基準ではなく、新患の増加による収入や利益などの「具体的な金額貢献度」で広告宣伝活動を評価する判断基準を持つべきです。

(2)旅費交通費

出張旅費は、一旦ルールを決めてしまうと中々見直しをかけることの少ないコストの一つですが、見直してみると様々なムダが潜んでいることもあります。
学会や職員の研修参加に積極的な医院においては、支給手当項目や利用する交通機関等全体を見直す必要があります。
見直しのポイントは、次のとおりです。

旅費交通費削減のポイント

学会参加等による遠隔地への出張時には、少しの工夫で旅費を大幅に節約できることがあります。

活用できる主な割引制度

(3)接待交際費

交際費については、事前申請の徹底とその申請内容を監査することが必要です。
税務調査でも私的な飲み会等は否認されますが、同様の視点で、その交際費が診療所にとって必要なのかを判断したうえで、最低限の支出に抑える取り組みを行います。

接待交際費

■参考文献
『みるみる<利益>が増えていく!経費節減徹底マニュアル』すばる舎リンケージ
『今すぐ使える、効果が出る!「病院の業務」まるまる改善』日本医療企画

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