- 2018年度診療報酬改定の基本方針
- 基本診療料とかかりつけ歯科医機能に関する改定
- 在宅歯科医療の推進等に関する改定
- 口腔機能低下防止や生活の質向上に関する改定
1.2018年度診療報酬改定の基本方針
2018年度診療報酬改定は、昨年12月11日に改定の基本方針が示され、その後、本年2月7日に中央社会保険医療協議会(中医協)より厚生労働大臣へ答申が提出されました。
今回は、この答申に基づき次期歯科診療報酬で新設された評価や改定された施設基準について解説します。
1.2018年度診療報酬改定の概要
(1)2018年度診療報酬改定率
2018年度度診療報酬の改定率は、診療報酬本体がプラス0.55%で、各科の改定率は医科がプラス0.63%、歯科がプラス0.69%、調剤がプラス0.19%となり、歯科の改定率が最も高くなっています。
一方で薬価はマイナス1.65%、材料価格がマイナス0.09%となったため、全体改定率は1.19%のマイナス改定となりました。
(2)改定に当たっての基本認識
(1) 人生100年時代を見据えた社会の実現
現在でも超高齢化社会である上に2025年には団塊の世代がすべて75歳以上、2040年には団塊のジュニア世代が65歳以上の高齢者となるため、人生100年時代を見据えた社会の実現が求められています。
実現には国民それぞれが予防・健康づくりに関する意識を持ち、すべての国民が状態に応じた安心・安全で質が高く効果的・効率的な医療を受けられるようにすることが必要です。
(2) どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現
地域の実情に応じて、適切な地域でその有する能力に応じ 自立した日常生活ができるよう、地域包括ケアシステムを構築し、今後の医療ニーズや技術革新を踏まえた、各人の状態に応じた安心・安全で質が高く効果的・効率的な医療を受けられるようにすることが重要です。
(3) 制度の安定性・持続可能の確保と医療・介護現場の新たな働き方の推進
今後、人口減少・少子高齢化が進む中で、制度の安定性・持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持するためには、無駄の排除、医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図ることが必要です。
また、今後の医療ニーズの変化や生産年齢人口の減少、医療技術の進歩等も踏まえ、診療報酬のみならず、医療法、医療保険各法等の制度的枠組みや、補助金等の予算措置など、総合的な政策の構築が不可欠です。
これら基本認識を基に、厚生労働省は、次期診療報酬改定の基本的方向性を次のように示しています。
2.次期診療報酬改定の基本的方向性
次期診療報酬改定では、4つの基本的方向性が示されました。特に歯科に関しては、かかりつけ歯科医、重症化予防、チーム医療の推進など、幅広い項目で改正が行われます。
2.基本診療料とかかりつけ歯科医機能に関する改定
1.施設基準の届出による初診料と再診料の違い
歯科外来診療においては、日常的に唾液や血液等に触れる環境下で多くの器具・器材を用いて診療を行っているという特徴を踏まえ、歯科医療機関における院内感染防止対策を推進するという基本的な考え方が示されていました。
よって、院内感染対策の施設基準を設け、届出をしている歯科診療所と届出をしていない歯科診療所に初診料と再診料の差が設けられました。
2.かかりつけ歯科医機能の評価に関する見直し
地域連携及び継続的な口腔機能管理を推進する観点から、かかりつけ歯科医の機能評価及びかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準の見直しが行われました。
かかりつけ歯科医機能強化型診療所加算や歯科訪問診療補助加算、歯科訪問診療移行加算など各加算点数が改定されています。
3.かかりつけ歯科医とかかりつけ医の連携による診療情報の共有
医科歯科連携を推進する観点から、歯科診療を行う上で特に検査値や必要な診療情報や処方内容等の全身的な管理が必要な患者に対し、患者の同意を得て、検査の結果や投薬内容等の診療情報をかかりつけ医とかかりつけ歯科医との間で共有した場合の評価をそれぞれ新設することになりました。
患者一人につき、診療情報の提供を求めた日の属する月から起算して、3月に1回に限り算定できます。
地域包括ケアシステム構築のための取組の強化を推進するうえで、医科歯科連携をさらに強化する目的で新設された点数です。
3.在宅歯科医療の推進等に関する改定
1.在宅歯科医療の推進等の見直しについて
(1)歯科訪問診療の改定項目
効率的で質の高い在宅歯科医療の提供体制を確保するため、歯科訪問診療料や訪問歯科衛生指導料の評価の在り方を見直すとともに、入院患者や介護保険施設入所者等や通院困難な小児に対する口腔機能管理を充実することになりました。
(2)歯科訪問診療移行加算の新設
外来を受診していた患者が通院困難になり、歯科訪問診療に移行した場合に、外来受診を担当したかかりつけ歯科医が継続的に歯科訪問診療を行った場合の評価が新設されました。
2.訪問歯科衛生士に関する項目
(1)訪問歯科衛生士指導料の見直し
訪問歯科衛生指導料については、「1 複雑なもの」と「2 簡単なもの」による区分を廃止するとともに、以下のような見直しを行うことになりました。
(2)在宅等療養患者専門的口腔衛生処置の新設
在宅等で療養する患者に歯科衛生士が専門的な口腔衛生処置を行った場合の評価が新設され、月1回を限度として算定することができます。
3.居宅療養管理指導指導費の一部新設
介護保険においても、歯科医師が居宅療養管理指導を施設等の単一建物で行う場合、人数によって単位が設定されていますが、下記項目が追加されました。
4.口腔機能低下防止や生活の質向上に関する改定
1.歯科外来診療や医学管理についての改定
(1)歯科外来診療環境体制加算の見直し
歯科初診料及び再診料に対する院内感染防止対策に関する評価の新設に伴い、歯科外来診療における歯科治療の総合的な環境整備を評価する歯科外来診療環境体制加算の見直しを行うことになりました。
(2)ライフステージに応じた口腔機能管理の推進
ライフステージに応じた口腔機能管理を推進する観点から、歯科疾患管理料について、口腔機能管理に関する評価を新設することになりました。
(3)機能低下が著しく継続的な管理が必要な患者に関する加算の新設
老化等に伴い口腔機能の低下が認められる高齢者のうち、特に機能低下が著しく継続的な管理が必要な患者に関する評価の加算を新設することになりました。
2.全身的な疾患を有する患者に対する歯科医療の充実
(1)高血圧性疾患、心不全または脳血管障害等の患者にかかる評価見直し
高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全又は脳血管障害等がある患者に対する評価について改定がなされます。
具体的には、必要な医療管理(モニタリングを含む。)を行った場合に1日につき算定
可能な歯科治療総合医療管理料(Ⅰ)及び在宅患者歯科治療総合医療管理料(Ⅰ)が廃止されます。
そして、高血圧性疾患、虚血性心疾患、不整脈、心不全または脳血管障害がある患者に対し必要な医療管理(モニタリングを含む。)を行った場合に、1日につき算定可能な歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)及び、在宅患者歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)について、対象患者を拡大するとともに名称が変更されます。
※今回の記事では、診療報酬改定で新設された項目や廃止された項目、改正された項目をすべては網羅していません。
実際に算定する際には課長通達などの確認を行って下さい。