新たなマーケットを開拓し、中小企業を活性化する!異分野連携新事業分野開拓(新連携)の概要

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新たなマーケットを開拓し、中小企業を活性化する!異分野連携新事業分野開拓(新連携)の概要

  1. ビジネスチャンスが広がる「新連携」の概要
  2. 「新連携」の構築から事業化までのポイント
  3. 「新連携」として認定された事業者への支援策
  4. 新連携事業として認定された事例紹介

 


この記事をPDFでダウンロードする。(企業経営情報)

1.ビジネスチャンスが広がる「新連携」の概要

1.中小企業を後押しするため国が主導している「新連携」

国は、中小企業のビジネスの機会の創出を図り、中小企業の活性化を目指して「新連携」(中小企業新事業活動促進法における「異分野連携新事業分野開拓」)というスキームを構築し、中小企業庁等が中心となってこれを支援しています。
「新連携」とは、「複数の中小企業が連携体を組み、互いの技術やノウハウ等の強みを相互補完しながら、高付加価値の製品やサービスを創出すること」と定義されます。
新連携事業者として国から認定されると、補助金や低利融資、信用保証の特例、また設備投資減税の支援等を受けることや、地域毎に設置された「新連携支援地域戦略会議」によりビジネスマッチングや専門家の派遣等、様々な支援を受けることができます。
今回は、この新連携の概要や成功事例を紹介しますので、自社のビジネスチャンスの拡大に活用いただけると幸いです。

新連携のイメージ

2.新連携事業に認定されるための要件

新連携を構築し、支援対象事業として認定されるには、いくつかの要件が求められます。
新たに連携体を構築する際には、以下の要件を満たしているかどうかについての確認が必要になります。
単に新たな商品やサービスを市場において事業化することに留まらず、相当程度の需要の見込みがあり、事業として成り立つ可能性が高く、継続的に事業が運用されていくことが非常に重要なポイントになります。

新連携事業の要件

3.新連携の計画が認定された事例

以下に新連携の計画が認定された事業の一例を紹介します。
いずれも自社のノウハウを活かし、販路拡大を図るためにIT企業と連携をするケースが多く見られます。

新連携の計画認定事例

2.「新連携」の構築から事業化までのポイント

1.新連携計画申請から事業化までの流れ

新連携を構築するには、中核となる中小企業の存在や、2以上の中小企業が参加することが必要になります。
その際、大企業や大学、研究機関、NPO、組合等をメンバーに加えることも可能です。
まずは、複数の中小企業者で連携体を構築する際に代表者を定める必要があります。
そして、基本方針に沿った事業計画を作成し、代表者の主たる事務所の所在地を管轄する経済産業局長に指定の「異分野連携新事業開拓計画に係る認定申請書」に新連携事業の概要や連携体を構築する中小企業者の名称や経営資源、また資金計画を記入後に申請し、その新連携計画が適当であるかの認定を受ける必要があります。

新連携計画申請から事業化までの流れ

新連携の認定を受けるための事業計画は、「需要が相当程度開拓されること」が求められ、具体的な販売活動計画が存在し、継続的に事業として成立する可能性が高いことが認定のポイントになります。
その他、計画期間が3~5年であること。
また、財務面の要件として「新事業活動」により持続的なキャッシュフローを確保し、10年以内に融資返済や投資回収が可能であり、資金調達コストも含め一定の利益を上げることが求められます。
事業計画の作成・実施の際には「新連携支援地域戦略会議」から支援を受けることが可能です。
このような段階を経て、実際に事業化を目指していくことになります。
新連携事業として認定を受けると、融資・信用保証・補助金・投資・税制、その他様々な支援措置を受けることができます。
そのような支援を活用し、継続的な事業の発展に向けて取り組んでいくことになります。

2.新連携計画申請のポイント

新連携事業として計画を申請する際には、中小企業庁より提供されている「異分野連携事業分野開拓計画に係る認定申請書」(様式第1)及び別紙1~4に下記の項目を記載することが必要になります。

「異分野連携事業分野開拓計画に係る認定申請書」の記載項目

新連携の計画書記入ポイント(中小企業庁HPより一部抜粋)

上記別表1の他に、当該計画における実施項目、実施時期等を記入する「実施計画と実績」(別表2)、連携先の活用する経営資源(設備、技術、知識、技能等)をまとめた「異分野連携新事業分野開拓における連携の態様」(別表3)及び最長5年間の数値計画を表した「経営計画及び資金計画」(別表4)の作成が必要となります。
これらの様式は、全て中小企業庁HPの経営サポート「新連携支援」よりダウンロードすることができます。

3.「新連携」として認定された事業者への支援策

1.政府系金融機関、保証協会による優遇措置

(1)政府系金融機関の優遇金利による融資制度

「新連携計画」に基づく設備資金及び運転資金に関して、計画の評価を加味し、政府系金融機関が優遇金利(政策金融の中で最優遇の金利)で、新連携計画に参画する個別企業向けに融資を行います。

中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工組合中央金庫

(2)中小企業基盤整備機構による高度化融資制度

「新連携計画」に基づき、4者以上が連携して行う事業に必要な生産・加工施設等の設備資金について、中小企業基盤整備機構が都道府県と協力し融資を行います。
融資をするに当たっては、中小企業基盤整備機構が戦略会議と連携しながら、新連携計画の認定前に高度化事業計画に対するアドバイスを行います。

中小企業基盤整備機構による高度化融資制度

(3)信用保証協会による債務保証制度枠の拡大

中小企業者が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度です。
保証の特例を受けるためには、新連携事業の認定を受けることが必要になります。
特例措置によって、以下の通り別枠制度や限度額の拡大制度が設けられており、融資額の増加が期待できます。

普通保証、無担保保証、特別小口保証、売掛金債権担保保証の別枠化、新規事業開拓保証の限度枠拡大

2.減税及びその他の補助金制度

(1)設備投資減税

新連携の認定を受けた者のうち、一定の成長が見込まれる中小企業者は、設備投資の減税が受けられます。

設備投資時の減税内容

(2)特許料等の減免措置

「新連携計画」の認定を受けた技術に関する研究開発事業による成果について、当該認定を受けた中小企業が特許出願(計画開始から計画終了後2年以内に出願されたものに限る)を行った場合、当該特許出願に係る審査請求料・特許料(1~3年目)を半減に軽減できる措置です。

特許料減免のフロー

(3)事業化・市場化支援補助金

中小企業新事業活動促進法に基づく「異分野連携新事業分野開拓計画」の認定を受けた連携体が、新連携事業を行う際に補助金を受けることができます。

事業化・市場化支援補助金の内容

3.その他

(1)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の債務保証制度

新連携プロジェクトの実施において必要なソフトウェアの開発・購入資金及びソフトウェア開発者の教育・研修資金について、「新連携計画」に参画する個別企業の返済能力、プロジェクトの内容を評価し、無担保で債務保証を行います。

IPAによる債務保証制度

(2)中小企業投資育成株式会社の特例

新連携に係る事業を行うため、資本金の額が3億円を超える株式会社の設立に際し、その株式を中小企業投資育成株式会社が引き受けることにより、資金調達を支援します。
また、中小企業者のうち、資本金の額が3億円を超える株式会社が新連携に係る事業を行うために発行する株式、新株予約権、新株予約権付社債を中小企業投資育成株式会社が引受けることにより、資金調達を支援します。

4.新連携事業として認定された事例紹介

1.専門学校等と企業をインターネットで繋ぐ求人サイトの開発・運営

専門学校生向けの求人サイト「Career Map」を企画・販売・運営するG社がコア企業となり、連携体を構築した事例です。
「Career Map」は、企業・学校・学生の3者間で情報共有が可能である点に新規性を有しています。
「Career Map」を導入することで、学生に対して、リアルタイムかつ豊富な企業の求人情報を提供するとともに、専門学校には学生の応募状況等の情報を供給します。
その結果、学生と企業の間で質の高いマッチングが実現できます。

連携体の概要、支援内容

■新連携後の効果

新連携後、求人情報を載せる企業数が増加しており、既に20,000社を超える企業が登録をしています。
登録している利用者も20,000人を超え、両者にとって魅力的なマッチングの場として好評を得ています。

2.快適睡眠をサポートする睡眠ソリューションビジネス

寝具の製造販売を行うI社がコア企業となり、従来の寝具販売から、より事業の高付加価値化を狙い連携を構築した事例です。
睡眠管理ツールやポータルサイト運営する企業と手を組み、睡眠のアドバイスを行い、それに対応した高機能寝具を販売し、事業の高付加価値化を目指しました。

連携体の概要、支援内容

■新連携後の効果

新連携後、高機能寝具についての説明を受け、購入することができる直営店の展開を4店舗まで拡大しています。
さらに、日本各地の高級ホテルと提携し、I社の高級寝具を体験できる場を設け高付加価値商品を求める顧客の開拓を進めています。
これらの事例のように自社のノウハウを活かすためにIT業者等と連携を行うことによってビジネスチャンスが広がる可能性があるのが新連携です。
今回の内容を参考にしていただき、今後の自社のビジネスチャンスの拡大に活用いただければ幸いです。

 

■参考文献
厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省告示
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する基本方針」(平成17年5月2日)
中小企業庁経営支援課「今チャレンジ新連携」
中小企業庁「新連携の概要」

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