- 補助金・助成金の受給対象とメリット・デメリット
- 経営基盤の強化につながる補助金・助成金
- 中小企業の技術革新を支援するSBIR
- 雇用環境改善に活用できる助成金
1.補助金・助成金の受給対象とメリット・デメリット
1.中小企業が活用できる補助金・助成金の活用
国、地方公共団体による公的補助金・助成金制度を熟知している経営者は少ないかも知れません。
その理由は、ホームページなどで各制度に関する情報は公表されているものの、自ら情報収集しなければいつ頃、どのような制度が決定されたのか、知る機会自体が少ない状況であるからです。
ホームページなどで随時チェックを行っていないと、制度に関する情報を知らないまま、当年度の募集がすでに終わっていた、ということもあります。
また、申請手続きが複雑であることが理由で、積極的に活用しないという経営者もいるようです。
しかし、自社の状況に合った補助金・助成金をうまく活用できれば、自社にとっては、大きなメリットがあります。
この記事では、中小企業が活用できる補助金・助成金制度について、特に活用メリットの大きい制度を中心に紹介しておりますので、参考になる制度があれば積極的な活用をお勧めします。
2.受給要件を満たす中小企業・小規模事業者とは
補助金・助成金は、中小企業と大企業では、金額や内容が異なっているケースがあります。
また、中小企業のみが支給対象となっている場合もあります。
中小企業者等の定義は、中小企業基本法に示されておりますので、自社が以下に該当するかどうかについての確認が必要です。
3.補助金・助成金を活用するメリット・デメリット
補助金・助成金は、自社が対象となっていれば活用メリットの大きいものがいくつかあります。
一方、手続きが煩雑であるなどのデメリットもあります。
各制度の補助金・助成金額には、金額の多いものから少ないものまであります。
下記にメリット・デメリットを整理しました。
補助金・助成金活用の最大のメリットは、事業以外で大きな収入を得ることができる点です。
一方、最大のデメリットは、申し込み時の申請や受給申請の際に、多くの書類作成が必要となることです。
補助金・助成金を確実に受給するためにも社会保険労務士や行政書士などの専門家の活用をお勧めします。
2.経営基盤の強化につながる補助金・助成金
中小企業の経営基盤の強化や、技術開発の支援をするための補助金をいくつか紹介します。
いずれも、年度ごとに申請期間が限られており、所管行政機関のホームページ等で募集期間や受給要件などを随時チェックすることが必要です。
1.地域未来投資促進事業費補助金(まちなか集客力向上支援事業)
外国人観光客の消費を取り込み、中心市街地及び周辺地域も含めた経済活力を向上させることを目的とした地域未来投資促進事業費補助金(まちなか集客力向上支援事業)の予算が28年度補正予算にて可決成立し、10月27より公募が開始されました。
市町村が策定し、内閣総理大臣の認定を受けた中心市街地活性化基本計画に基づき実施される、外国人消費獲得のための施設整備事業が対象となります。
リノベーション等により空き家・空き店舗等の遊休資産活用を促進するため下限額を500万円に設定されています。
公募受付は、自社を所轄している経済産業局が窓口となっています。
(※1)経済産業大臣の認定を受けた特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき実施される事業。
(※2)中心市街地活性化に関する法律第15条第1項各号に定める要件を満たす事業者。
(※3)空き家・空き店舗のリノベーション等、低コストで遊休資産を利活用する事業を促進するため下限額を500万円に設定。
2.新技術開発助成金
広く科学技術に関する独創的な研究や新技術を開発し、これを実用化することによって我が国の産業・科学技術の新分野等を醸成開拓し、国民生活の向上に寄与することを目的としています。
当財団の助成は「独創的な新技術の実用化」を狙いとしており、基本的技術の確認が終了し、実用化を目的にした開発試作を対象にしています。
3.ものづくり・商業・サービス開発支援事業補助金
国際的な経済社会情勢の変化に対応し、経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の経費の一部を補助することを目的とした「ものづくり・商業・サービス開発支援事業補助金」制度があります。
中小企業庁が主管となり公募を行っています。
ここ数年、毎年公募(1時公募、2次公募)されており、経済活性化に一定の成果が上がるまでは、継続される可能性がある補助金です。
3.中小企業の技術革新を支援するSBIR
1.中小企業技術革新制度(SBIR)とは
政府が進める成長戦略の中に、中小企業・小規模事業者の技術革新が掲げられていますが、中小企業による研究技術開発とその成果の事業化を一貫して支援する制度として中小企業技術革新制度(SBIR:Small Business Innovation Research)があります。
この制度は、中小企業・小規模事業者にも経済の好循環の波を波及させ、成長させるための研究開発費の支援を目的として、中小企業等経営強化法に規定されています。
中小企業の新たな事業活動につながる新技術に関する研究開発のための補助金・委託費等を特定補助金等として交付しています。
この制度は、国の関係省庁が公募を行い、中小企業の研究開発の機会の増大を図っています。
28年度予算は、昨年度から5億円増額され460億円となっています。
1テーマあたりの補助金・委託費の金額は、100万円~3億円まで幅広いですが、3,000万円~1億円のものが多いです。
本制度は、省庁横断的な制度であるのが特徴であり、現在SBIRに参加している省庁は、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省の7省に上ります。
2.中小企業技術革新制度(SBIR)の対象事業
28年度における対象事業は、全99事業あります。
対象事業は、毎年見直しされますが、中小企業に経済効果が波及するまでは、更新される可能性があります。
本補助金は、いずれも事前申請が必要であり、かつ毎年度初めに応募期間が終了するものが多く、随時チェックしておく必要があります。
3.SBIR特定補助金を受けた法人への支援策
SBIR特定補助金を受けた法人は、さらに以下のようなさまざまな支援を受けることが可能となります。
(1) については、政策金融公庫において、低利(特別利率)での融資(特別融資)を受けることが可能となります。
SBIR特定補助金等の研究開発成果を活用した事業において、必要となる設備資金、運転資金が貸付対象となります。
(2) については、参加しようとする入札物件等の分野における技術力を証明できれば、入札参加資格のランクや過去の納入実績にかかわらず、入札参加が可能になるようにする特例措置です。
(3) については、中小企業支援ポータルサイト「J-Net21」に、SBIR特設サイトが開設されており、専用ページにて自社の研究開発成果やその事業化・商品化情報などを自由に掲載することが可能であり、PRすることでビジネスチャンスの拡大の可能性があります。
(4) については、研究開発事業の成果における発明特許について、特許料等の減免を受けることができます。
(5) については、中小企業信用保険制度のうち新事業開拓保険制度において、債務保証枠の拡大や担保・第三者保証人が不要な特別枠を利用することが可能となります。
(6) については、中小企業投資育成会社からの投資対象について、以下の方であっても投資を受けることができるようになります。
(7) については、貸与機関が実施する小規模企業設備資金制度の貸付割合が1/2から2/3に拡充されます。
4.雇用環境改善に活用できる助成金
1.非正規労働者のキャリアアップ・処遇改善に関する助成金
有期契約労働者、短時間労働者等の非正規労働者のキャリアアップを促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。
政府が進めている正規雇用への転換を加速させるために、平成28年度より一部のコースの助成金額が増加されています。
労働者の意欲、能力を向上させ、自社の生産性向上、優秀な人材を確保するためには有効な助成金です。
2.従業員のキャリア形成を促進する助成金
雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職業訓練等の実施等を行う事業主に助成される制度です。
一般型訓練コース、雇用型訓練コース、重点訓練コース、制度導入に分かれておりますが、労働者の専門性の向上などを検討している事業者にとっては、活用メリットの大きい助成金です。
3.トライアル雇用奨励金
業務遂行に当たっての適性や能力などを見極め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけとするため、経験不足等により就職が困難な求職者を試行的に短期間雇用(原則3か月)する場合に奨励金が支給されます。
4.障害者トライアル雇用奨励金
障害者を試行雇用することにより、その適正や能力を見極め、継続雇用への移行のきっかけとすることを目的としている奨励金です。
この記事で紹介した補助金・助成金はあくまで一例ですが、中小企業の経営改善、経営革新および労働環境改善等に役立つものが多いことをご理解いただけたと思います。
申請のチャンスを逃さないために、特に新年度の補助金・助成金の予算策定の動向に注視しながら自社で活用できる助成金があれば、予めチェックしておき、積極的に活用することをご検討ください。
■参考文献
中小企業のための補助金・助成金徹底活用法 同友館
J-Net21(中小企業ビジネス支援サイト)