患者・スタッフの院内感染拡大防止 新型コロナウイルス対策の政府方針と感染防止策

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

患者・スタッフの院内感染拡大防止 新型コロナウイルス対策の政府方針と感染防止策

  1. 新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
  2. 診療前に整備すべき標準予防策
  3. 患者来院時および診療時における留意点
  4. オンライン診療による感染拡大防止

 


この記事をPDFでダウンロードする。

 

1.新型コロナウイルス感染症対策の基本方針

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が日本国内でも急速に広がり、歯科医院においても多大な影響が出ています。
新型コロナウイルスの感染が発生する前にも、厚生労働省より令和元年11月22日に院内感染に関する取組の推進について、必要な取り組みを行ように通知が出ていましたが、令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定を受けて、感染拡大防止の観点から、対策の周知徹底と取組みへの指針が出ています。

1.新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針

政府は、国民の生命を守るため、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況を的確に把握し、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていくため、今後講じるべき対策を現時点で整理し、対処に関する全般的な方針を示しています。

新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針

2.感染症対策の実施に関する重要事項

(1)情報提供と共有

政府は、国民に対する正確で分かりやすく、かつ状況の変化に即応した情報提供や呼びかけを行い、行動変容に資する啓発を進めています。

情報提供と共有

政府は、厚生労働省等の関係省庁のウエブサイトへのリンクを紹介し、SNS等の媒体も積極的に活用、また、民間企業等と協力し、情報発信を行うとしています。
情報内容には、感染症の発生状況やクラスターの発生場所、規模等についての検疫所からの情報提供に加え、企業等の海外出張又は長期の海外滞在のある事業所、留学や旅行機会の多い大学等においても、帰国者への適切な情報提供を行い、渡航の是非の判断・確認や、帰国者に対する2週間の外出自粛の要請等の必要な対策を講じるよう周知を図り、情報提供を行うとしています。

(2)サーベイランスと情報収集

厚生労働省等関連省庁や地方公共団体は、様々な情報収集を図り、PCR検査の実施と検査結果等について公表していくこととしています。
※サーベイランス:感染症、経済等の動向について調査・監視を行うこと

サーベイランス・情報収集

3.歯科医院における感染拡大防止対策

政府は歯科医院に対して、歯科医療に関連する一般歯科診療時の院内感染の予防策について、「一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針(第2版)」を参考にするようにと依頼しています。
新型コロナウイルスについては、飛沫感染が主体と考えられており、標準予防策に加え、接触感染予防策、飛沫感染予防策が必要です。
歯科診療においては、唾液等の体液に触れる機会が多いことや歯の切削等によりそれらが飛散することがあるなどの特性に鑑み、感染拡大防止のため、以下の点に特に留意することとしています。

新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針

2.診療前に整備すべき標準予防策

新型コロナウイルス感染症は、潜伏期間が2週間前後と他のウイルス疾患より長く、発熱や呼吸器症状といった具体的な症状がないウイルス保有者が一定の割合が存在しているといわれています。
この無症状病原体保有者が感染源になる可能性があるため、歯科医院でもより一層の感染対策の強化が求められます。

1.感染経路の予防対策と考え方

日本歯科医学会では、感染経路への予防策として、以下の留意点を通知しています。

感染経路の予防対策と考え方

2.患者来院前の適切な対応

一番の予防策は、ウイルスを歯科診療室内に持ち込まないことです。
この時期においては、来院前の適切な対応が必要となります。
現在、発熱や風邪様症状を有する、本人または同居者に14日以内に海外渡航歴がある、鼻症状を伴わず突然、味覚・嗅覚に異常が出たなど、新型コロナウイルス感染症が疑われる患者を診察する場合には、標準予防策に加えて接触感染や飛沫感染などの感染経路別予防策を考えるべきです。

(1)電話による対応

患者のマスク着用の有無にかかわらず、「受付で短時間の会話を交わした場合」でもリスクはあります。
そのため感染の回避には患者からの電話での相談が望ましいです。

電話相談

(2)患者の受診制限

院内感染を防止するためには、患者に説明を充分に行い、納得してもらった上で、新型コロナ感染者またはその疑いのある患者の受診を制限することが重要です。
自院の入り口や院内等には新型コロナウイルス感染への防止対策を取っていること、その疑いのある患者の診療は制限していること、現在の身体状況や過去の渡航歴(2週間以内)等の確認を取っていることを掲示します。

院内掲示の事例

3.院内の環境整備

(1)標準予防策の徹底

新型コロナウイルス感染の前から、医療では院内感染防止への取り組みが法律で定められています。
まずは標準の感染予防策を徹底します。

標準予防策の徹底

(2)飛沫感染・接触感染の予防

新型コロナウイルス感染の原因としては、飛沫感染と接触感染からの発症が多いとされます。
そのため、定期的な換気や清拭、「3密」の回避がポイントになります。

飛沫感染・接触感染の予防

(3)スタッフの健康管理

スタッフの健康を守るためにも、また感染源とならないためにもスタッフの感染防止と健康管理は必要不可欠です。

スタッフの健康管理

3.患者来院時および診療時における留意点

新型コロナウイルス感染に対しては、時間経過ごとに新しい情報が開示されています。
毎日ニュースや新聞等のメディアで取り上げられている通り、患者や患者以外の市民も感染防止への意識は高くなっていますので、歯科医院側からの情報発信が重要になります。
歯科医院側が新型コロナウイルス感染防止対策をどのように取っているか、診療体制をどう取っているかを詳細に表示して、ホームページを含めSNS等で発信し、安心を得られるようにする必要があります。

1.患者来院時の留意事項

患者来院時の受付応対や患者の待機する待合室の環境整備にも十分留意する必要があります。

来院時や受付対応時の注意事項と待合室等の整備

2.診療時の感染予防

診療時の感染予防については、診療前の準備から診療後の片付けまで、予防対策の徹底を図ることがポイントとなります。

診療時の感染予防

3.防護具の装着時、脱着時の注意点

患者診療時には感染防止に対する最善の注意を図る必要があります。
防護具の装着は、患者にとっては必要以上の対策に見えるかもしれませんが、新型コロナウイルスに感染してしまうと医院全体の消毒やスタッフ全員の検査、自宅待機等、ひどければ医院休診という対策を取る事になり、医院運営に大きな影響を与えます。
スタッフの感染防止、院内感染の防止には防護具の準備は必要不可欠です。
また、防護具からの感染も予想されるため、脱着時と脱着後の処理にも注意が必要です。

防護具の装着時、脱着時の注意点

4.滅菌に強い滅菌機、洗浄機等の導入

歯科の症状(虫歯、歯周病、根尖病巣等)はほとんどが感染症です。
医療機器の滅菌にも十分注意を行うことが重要です。

高性能な滅菌機等

4.オンライン診療による感染拡大防止

オンライン診療を実施する場合の取り扱いについては、平成30年3月に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が出されましたが、歯科医師に関しては明確になっていませんでした。
歯科診療においては、発達過程において正常な口腔機能獲得ができていない小児や、加齢などにより口腔機能が低下した高齢者に対する指導管理など、歯科医師による指導管理に対するニーズが高まっています。
今回、新型コロナウイルス感染の拡大に際して、これらの指導管理に関する受診機会が失われないよう、歯科医療でもオンライン診療の時限的・特例的な取り扱いを認められることになり、令和2年4月24日に厚生労働省から事務連絡が発出されました。

1.初診時からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施

患者から電話等により診療等の求めを受けた場合において、診療等の求めを受けた歯科医師は、電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方が当該歯科医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をして差し支えないこととされました。
ただし、麻薬及び向精神薬の処方をしてはならないこと、とされています。

診療時の注意点

2.初診時から電話や情報通信機器を用いた場合の留意点

初診時からオンライン診療ができるようになりましたが、実施するための留意点が明示されています。

初診時のオンライン診療実施にあたっての留意点

3.再診時に電話や情報通信機器を用いて診療する場合の留意点

再診時にオンライン診療を行う場合についても留意点があります。
あくまでも今回の措置は緊急措置ですから、感染が収束して本事務連絡が廃止された後には、当然のことながら直接の対面診療を行うことになります。

再診時のオンライン診療実施にあたっての留意点

なお、これらの取り扱いは、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月7日閣議決定)において、「新型コロナウイルス感染症が急激に拡大している状況の中で、院内感染を含む感染防止のため、非常時の対応として、オンライン・電話による診療、オンライン・電話による服薬指導が希望する患者によって活用されるよう直ちに制度を見直し、できる限り早期に実施する。」とされたことに基づくものです。

 

■参考資料
厚生労働省ホームページより:
「歯科診療における新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月24日付)
「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日付)
「歯科医療機関における新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内感染対策について」
(令和2年4月8日付)
日本歯科衛生士会ホームページ 歯科衛生士部会より:
「歯科衛生士が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が疑われる患者に口腔ケアを行う際の注意事項について」
日本歯科医学会ホームページ 新型コロナウイルス対策より

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。