歯科検査の重要性アピール 予防歯科の取組みポイント

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歯科検査の重要性アピール 予防歯科の取組みポイント

  1. 今後の歯科医療は治療から予防へ
  2. 歯科医院による定期検診の重要性
  3. 特殊歯科検査の取組みによる増患対策
  4. 予防歯科に取組んでいる先進事例

 


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1.今後の歯科医療は治療から予防へ

歯科医療は年々変化しています。
保険診療による虫歯治療から歯周疾患や歯根治療、自由診療による審美歯科やインプラント治療等まで、専門性も高まり治療の幅が広がってきています。
また、歯科疾患になってから治療を行うのではなく、歯科医院で定期検診や予防指導を受けて、歯科疾患にかからないようにする「予防歯科」という考え方も浸透してきています。
歯科医院にとっても予防のために定期的に来院する患者を確保でき、その患者から家族や友人知人などの新たな患者層の発掘へも繋がります。

1.歯科医院にとって予防歯科取組みの必要性

(1)歯科疾患数と現在歯数の関係

厚生労働省の調査では、むし歯や歯周病になっている患者は年々減少しています。
この調査から、将来において歯科疾患による患者数は年々減少していくと予想されます。

むし歯の年次推移、歯周病調査(4mm以上歯周ポケット有)、1人平均現在歯数の推移(H11~23年)

(2)予防への移行

歯科疾患患者が減少していくなか、インプラントや審美歯科といった自由診療に取組む歯科医院も増加していますが、予防歯科に取り組み、患者数を増加させている歯科医院も多くあります。
自由診療に関しては、特にインプラント等の専門性の高い治療に関しては、知識と臨床研修等による治療技術の向上が必要であり、そのための研修に要する時間と費用も掛かってしまいます。
予防歯科に関しては、定期検診を充実すること、また歯科衛生士と歯科医師の知識習得とセルフケアへの指導により、患者に十分な対応ができます。

(3)予防への取組み時の注意点

予防歯科に取組む際には、予防という考え方を患者へどう説明するかがポイントとなります。
インフルエンザや感染症等に対しては、予防の意識を持って病院や診療所へ来院されますが、口腔内に関しては、痛みや出血、歯の欠損等が起こってからの来院が一般的です。
いかに口腔内の健康維持の重要性について、患者に対し判りやすく説明し、理解してもらうということが必要です。

予防による口腔内の健康維持と疾病抑制効果、歯や口と全身の健康との関係性、予防による虫歯・歯周病対策

2.歯科医院による定期検診の重要性

予防歯科として定期検診を受けてもらうため、歯科医院では様々な取組みをしています。
また、企業や自治体では無料歯科検診が実施されています。
無料歯科検診を受診したから、わざわざ歯科医院へ行く必要が無いという方もいますが、無料歯科検診ではむし歯ゼロと言われたのに、歯科医院での検診では数本むし歯があったという例があるようです。
歯科医院で行う歯科検査がより精密な結果が出るということを説明し、患者にしっかり理解してもらうことが、信頼を得て、かかりつけ歯科医院になる重要な取組みです。

1.無料歯科検診と歯科医院での歯科検診の差

(1)無料歯科検診

企業や自治体による無料歯科検診では、対象者が多数での実施となるため、1人に費やす時間は5分から10分前後、検査機器を使用せず、視診検査がほとんどです。
事業所の定期検診、学校検診、妊婦歯科検診、3歳児検診等がこれらに該当し、歯科医院が行う定期検診とは精度が異なります。

無料歯科検診のメリット・デメリット

(2)歯科医院が行う定期検診・歯科検査

口腔内観察だけでなく、レントゲンや口腔内カメラ、唾液検査等の精密な検査により、視認できない虫歯や歯周病、歯茎の中の骨や歯根等の状況を検査できます。
この精度・専門性の高さが患者に十分に伝わることが、歯科医院で定期検診・歯科検査を受診しようとする動機になります。

歯科医院で行う定期検診・歯科検査のメリット・デメリット

検査時及び説明時は、以下の点に留意することが重要です。

歯科医院での検査時及び説明時の留意点

2.歯科検査から治療への流れを整理

定期検診や歯科検査からの結果から、より症状に合った治療計画が立案でき、治療を行うことができます。
また、その後のメンテナンスもより細かく指導することができます。
そこで、検査から指導、治療、メンテナンスといった予防歯科の流れを策定する必要があります。

歯科検査のメニュー、歯科検査の流れ(例)、軽度の歯周病治療の流れ、中程度の歯周病治療の流れ

3.特殊歯科検査の取組みによる増患対策

予防という言葉だけで定期検診受診に結びつけることは、難しいと感じる院長も多いはずです。
予防歯科・定期検診をアピールして来院につなげるには、患者に歯科検査をもっとよく知ってもらう必要があります。
さらに、歯科検査もシステムや最新医療機器による精密な検査を実施していることを周知することで、来院を促進することにつながります。

1.歯科用CT撮影による検査

インプラントの術前診断や口腔外科領域でも、歯科用CTは活躍しています。
通常の保険診療だけではなく、自由診療のインプラント手術でも、より精度の高い検査結果から詳細な治療計画が立てられ、十分な治療を提供できます。
予防歯科領域においても、質の高い検査結果は患者理解も早く、予防に関する口腔内の保健指導の効果も上がります。

歯科用CTの検査結果の活用法

また、口腔内、顎骨内の細かいエリアでのナビゲーションシステムも、PCにより、CT画像のデータを基にした、顎骨内のインプラントドリルやインプラント体の位置や方向の把握が容易になり、今後の治療計画の立案に多大な影響を与えることになると予想されています。
詳細な画像データを基に、より質の高い治療を行うことができ、原因究明から予防歯科への提言もデータが後押しします。

2.歯科ドックへの取組み

(1)歯科ドック

医療にある人間ドックと同様に、口腔内の定期検診をより精密に行い、疾病の早期発見、リスク確認にそなえるという歯科ドックの受診が増加しています。
歯科ドックには、以下のような効果があります。

歯科ドックの効果

(2)歯科ドックの流れ

歯科ドックは予約による受診がほとんどであり、実施には1時間から3時間程度を要します。
自治体によっては、歯科ドック受診に対する助成制度が設けられています。
歯科医院の検査設備状況により、検査内容は若干異なりますが、基本はほぼ同じです。

歯科ドックの流れ

3.予防歯科の認知活動

歯科検診の流れと説明を文章で作成し、パンフレットもしくは院内情報誌として準備し、患者への周知を行う必要があります。

歯科検診パンフレットの内容項目

4.認知活動の取組ポイント

予防歯科に関する認知活動では、パンフレット同様に、予防歯科と歯科検査の重要性をアピールし、文章だけではなく、写真や画像による視覚に訴えることも求められます。
ホームページは、来院する選択肢にも活用されており、その歯科医院の経営理念や診療方針を知り、専門性や医療機器等を確認して受診することも少なくありません。
ホームページなどの広報ツールを用い、歯科検診の専門性や精度の高い結果等をアピールすることで、定期検診の来患に結びつけることもできます。

場面別予防歯科・歯科検診の認知活動

4.予防歯科に取組んでいる先進事例

予防歯科と併せ、訪問歯科診療を行っている歯科医院では、当初の歯科治療を行った後、予防歯科へとシフトしています。
予防歯科に関しては、患者より訪問先の介護施設等の管理者や在宅患者を抱えている家族が、定期検診を望むことが多いようです。
また、訪問歯科診療は医科との連携を行っていることから紹介も多く、歯科を開設していない病院からは、入院患者の訪問歯科診療の依頼が予防歯科につながっています。
本章では、予防歯科の取組みから増患につながっている事例を紹介します。

1.訪問歯科と医科との連携からの予防歯科へ

中核都市で訪問歯科を行っているA歯科医院の事例を紹介します。
医科診療所との連携から訪問先も増加し、それに伴い予防歯科の患者も増加しています。

A歯科医院の概要

◆訪問歯科から予防歯科への移行

訪問歯科先の患者は介護補助が必要になっており、予防歯科としてのセルフケアがほとんどできません。
介護施設のスタッフや在宅患者の家族は、患者のケア等で忙しく、予防歯科として指導している歯磨き方法も実践できていないのが実情です。
こうした状況から、口腔内の健康維持は、歯科医院の予防歯科に頼ることになります。
しかし、患者や家族、介護施設管理者は、今の疾病に対して治療して欲しいとは考えていますが、この先の口腔内の状況が身体にどう影響するのかを予想できていません。
そこで、A歯科医院ではセルフケアができない患者の口腔内がどうなっていくかを説明し、予防歯科への移行を勧めて、定期検診と歯科医師、歯科衛生士による予防を行っています。

予防歯科への取組み

2.歯科ドックを行う歯科診療所

大都市で歯科ドックを展開しているB歯科医院では、定期検診というより歯科ドックという言葉を用い、専門性を高め、疾病発見を主にアピールしています。

B歯科医院の概要

◆「歯科ドック」という専門性による予防歯科への取組み

定期検診を勧めても患者の来院につながらず、対応策を模索していました。
院長が人間ドックを受診した際、歯科に応用できることに気付き、他歯科医院を調査して実行しています。
また、一般社団法人 日本歯科人間ドック学会を知り、加入と登録をしています。
B歯科医院では、下記の方法で歯科ドックをアピールしています。
写真入りのパンフレットや、検査メニューをわかりやすく説明する資料を準備して、患者に理解いただいたうえで、歯科ドックを実施しています。

歯科ドックのアピール方法

■参考文献
厚生労働省HP 「保険者における歯や口の健康づくりセミナー」資料より
歯科CTナビ 歯科用CTにできること
一般社団法人 日本歯科人間ドック学会
東京国際クリニック 歯科ドック
エンパワーヘルスケア株式会社

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