有用な情報の提供と利便性の向上を図るデータヘルス 改革で 実現する未来

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有用な情報の提供と利便性の向上を図るデータヘルス 改革で 実現する未来

  1. 医療情報等の利活用に向けた取り組み
  2. 健診・検診情報利活用の仕組みと方向性
  3. 医療機関等における医療情報利活用の仕組み
  4. 電子処方箋の実現とオンライン資格確認Q&A


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1.医療情報等の利活用に向けた取り組み

1.健康・医療・介護分野のデータの利活用に向けた政策の方向性

少子高齢化に伴い医療・介護サービスの担い手が減少する中で、健康・医療・介護分野のデータやICTを積極的に活用することにより、健康寿命の延伸や国民の利便性向上を図り、医療や介護現場において、サービスの質を維持・向上し、医療提供の効率化や生産性の向上を図ることが重要であると考えられています。
こうした一連の改革を「データヘルス改革」と位置づけ、厚生労働省では、データヘルス改革推進本部を設置して、データヘルス改革を推進しています。
今後、医療等の現場において、保健医療従事者が患者等の過去の保健医療情報を適切に確認することが可能になれば、より適切な医療等サービスをより迅速に提供できることが期待されます。
また、患者等が、スマートフォン等で自身の保健医療情報を閲覧・確認できる環境を整えることで、日常生活改善や健康増進等につながる可能性があり、さらに、本人同意の下に医療・介護現場で役立てることも期待されています。

データヘルス改革が目指す未来

2.健康・医療・介護情報の利活用に向けた基本的な考え方

厚生労働省では、健康・医療・介護情報の利活用に向けて「健康・医療・介護情報利活用検討会」を設置し、5月18日の検討会では今後の検討事項として下記のことを挙げ、新型コロナウイルス感染症等の感染症の拡大等も念頭に情報の利活用を進めていく考えです。

5/18 検討会に提示した検討課題、意見の整理とそれを踏まえた今後の方向

3.オンライン資格確認等システムについて

保健医療情報の利活用に向けて、2021年3月から運用開始予定となるオンライン資格確認等システムやマイナンバーカードの活用が関与しています。
マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みで欠かせない医療機関や薬局の受付に配置するカードリーダーの目標普及率は、2020年度末に6割、2021年度末に9割、2022年度末には概ね全てに普及することを目指しています。

オンラインによる資格照会のイメージ

このオンライン資格確認の運用を開始するためには、各医療機関に「顔認証付きカードリーダー」と「資格確認端末」が設置されている必要があります。
そこで、厚生労働省は「医療情報化支援基金」を設置し、こうした機器設置費用を補助する仕組みを設けました。

医療機関・薬局への補助

2.健診・検診情報利活用の仕組みと方向性

1.健診・検診情報利活用の目的

急激な少子高齢化、人口減少が進むにあって、更なる健康寿命の延伸に向けた取組を進めることが重要です。
そのための仕組みの一つとして、世界的には、個人の健康診断結果や服薬歴等の健康等情報を電子記録として本人や家族が正確に把握するための仕組みであるpersonal health record(PHR)の考え方が広まっています。
我が国では、今後2年間のうちに特定健診、乳幼児健診等、薬剤情報について、マイナポータルにより提供する予定で、これらを通じて予防、健康づくりの推進等が期待されています。
マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスで、子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認できたりします。
PHRについては、国民・患者の保健医療情報を本人自身が活用して予防・健康づくり等に活用するとともに、それを本人同意の下に医療・介護現場で役立てることを目指しています。
個人の保健医療情報をサマリー化・ヒストリー化することで、自らの健康管理・予防行動につなげられるようにするとともに、本人の希望によって個人の保健医療情報を医師等に提供し、診療等にも活用できるようにすることで、より質の高い医療・介護の提供が可能となります。
また、国や自治体等による公衆衛生施策や保健事業、医療的ケアが必要な障害児者を含む者への災害等の緊急時での利用や保健医療分野の研究への二次利用など、年齢や性別、障害の有無等にかかわらず誰もがより良い保健医療を享受するための活用を目指しています。

PHRの利用目的、PHRの全体イメージ

2.自治体検診情報のマイナポータルを活用した情報提供

健康増進法に基づく自治体検診(がん、肝炎ウイルス、骨粗鬆症、歯周疾患)については、既に特定健診や乳幼児健診等がマイナポータルを通じた情報提供を予定していることから、既存のインフラの活用の観点も踏まえ、自治体中間サーバを介したマイナポータルからの提供に向けて環境整備を行うことが計画されています。

マイナポータルを活用したデータ提供のイメージ

3.民間事業者におけるPHRの利活用に向けた今後の方向性

現在、様々な民間PHRサービスが既に存在し、今後更なる利活用が想定されています。
例えば、患者の自己管理をサポートするサービスなどを手がけるWelby(ウェルビー)は、PHRサービスを提供している企業で、生活習慣病や糖尿病などを対象に、血圧・血糖値・体重などを記録し、自己管理を支援するスマートフォン向けアプリを提供しています。
複数の医療・健康機器メーカーと連携し、これらのメーカーの各種測定器で計測したデータをアプリに取り込める仕様となっています。
また、「Welbyマイカルテ導入医療機関」を通して、健康管理に向けたアドバイスや応援をもらうことが可能です。
こうした民間PHRサービスは、単に個人の健康情報等を記録するだけでなく、それに基づき生活習慣の改善方法等の提示、健康増進サービスの推奨等、個人の自己管理をサポートするものが多くあります。

民間PHRサービスの機能、民間PHRサービスの機能に対する検討事項

今後、こうした検討事項をクリアするとともに、民間PHRサービス提供企業と医療機関が連携して、患者の健康管理を支援していくケースが増えていくことが考えられます。

3.医 療機関等における医療情報利活用の仕組み

1.情報連携が有用な保健医療情報について

厚生労働省は、医療機関等の間で保健医療情報を確認するのに有用なデータ等について診療現場の意見を収集するため調査を実施し、その結果を公表しています。
診療現場における情報連携についての主な意見は以下のとおりです。

診療現場における情報連携に関する主な意見

こうした意見を踏まえて、診療における情報連携が有用なミニマムデータについては、医療の質の向上や効率化、患者自身の健康管理や重症化予防の視点とともに、技術動向や費用対効果を踏まえて検討を進めることとし、これらの保健医療情報を全国で確認できるためには、レセプトに記載されている情報以外の情報については、医療情報を標準化しつつ医療機関外へ提供される仕組みが必要となります。

2.医療機関等における医療情報利活用に向けた方向性

厚生労働省は、医療機関等における医療情報利活用に向けた方向性として、まずは、今後全国一律に統一されて集約されるオンライン資格確認等システムにある薬剤情報に加えて、手術情報等の情報を活用し、全国の医療機関等がこうした医療情報を確認・利用できる仕組みを構築することとしています。

オンライン資格確認等システムで手術情報等を確認・利用できるメリット、薬剤情報・特定健診情報の閲覧イメージ

また、薬剤情報に加えて確認・利活用できることとする情報は、現在でも患者に交付されている診療明細書に記載されている医療機関名、診療報酬が算定される手術・移植、透析といった診療行為の項目のほか、医療関係者間において患者を診療する際に有用と考えられる項目とする予定で、その他の医療情報についても、退院時サマリや検査結果等情報項目の拡大や、できる限り最新の情報を共有できる方策について、オンライン資格確認等システムにある情報の活用の成果等も踏まえつつ検討を進めていく考えです。

4.電 子処方箋の実現とオンライン資格確認Q&A

1.電子処方箋の実現に向けた方向性

政府は、現在は紙でやりとりしている処方箋を、患者の利便性、重複投薬の可能性等を考慮してオンラインで管理し、紙を不要とする電子処方箋を普及させていく考えです。
本年6月22日の経済財政諮問会議では、2023年からの実施を目指す電子処方箋について前倒しし、2022年の夏からの実施を目指す方針を表明したほか、「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プラン」として、3つのACTIONを今後、2年間で集中的に実行するとしています。

3つのACTION

2.オンライン資格確認の基盤を活用した電子処方箋の概要

先に述べたとおり、電子処方箋については、オンライン資格確認等システムのネットワークの活用が予定されており、その仕組みについては以下のようになります。

仕組みの概要、電子処方箋の運用と処方情報・調剤情報の活用のイメージ図、想定しているメリット

3.オンライン資格確認導入に向けたQ&A

厚生労働省では、医療機関、薬局等に向けてオンライン資格確認システム導入に向けたQ&Aを公表しています。
政府は、今後100%の普及率を目指していますので、自院においても導入に向けた検討が求められています。

オンライン資格確認に関するQ&A

 

■参考資料
厚生労働省:健康・医療・介護情報利活用検討会
オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)
内閣府:2020年第9回経済財政諮問会議
株式会社welbyホームページ

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