各種システム導入による業務改善 受付・会計業務 効率化のポイント

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各種システム導入による業務改善 受付・会計業務 効率化のポイント

  1. 改善が求められる予約受付業務
  2. 会計時の対応と自動会計システムの導入
  3. 在庫管理の効率化と在庫管理システムの導入
  4. 新しい情報発信ツールの活用ポイント

 


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1.改善が求められる予約受付業務

新型コロナウイルス感染症対策で、歯科医院では、診療前の検査や準備のためにこれまでより時間を余計に掛けることになり、診療までの時間がさらに長くなっています。
患者にとっては、来院前に必ず予約が必要な完全予約診療であったり、医院に入る前にアルコール等による手指衛生を求められたり、発熱状況等の健康状態の問診やチェックを受けたりしてからの診療開始になっています。
スタッフも受付にビニール等を下ろし防護具を付けたり、診療ごとの消毒等、感染防止に大変な労力をかけて対処しています。
今後も感染症対策を継続することを考えると、患者のストレス解消と満足度向上のため、受付や会計の効率化による労力軽減や待ち時間短縮を図り、患者もスタッフにも安心・安全な診療を行うことが、院長の責務となります。

1.新型コロナ感染症対策による予約受付の変化

予約診療を行っている歯科医院は多くありますが、今までは予約を15分単位で入れ、予約をしていても患者を待たせるような歯科医院も、感染症対策で予約を抑制し、患者の診療が重ならないよう、または待合室で多数にならないように、診療内容によって診療時間を予測して時間を決めている歯科医院が増加しています。

予約の取り方

2.予約システムの活用

受付会計の専門職を雇用している歯科医院はそう多くはありません。通常は歯科助手と受付業務兼任のスタッフが、この新型コロナ感染症対策のため、予約時の患者からの情報収集や、来院時の問診、感染防護、消毒による清拭等、受付業務により多くの時間を割くことになり、歯科助手業務の妨げにもなっています。
予約システム導入による効率化により、スタッフの業務量の減少と患者の待ち時間短縮にもつながり、患者・スタッフ双方の満足度向上への期待が持てます。

歯科医院予約システムの特徴

3.予約システムの付加機能

患者の待ち時間に外出してもらい、診療時間の近くになるとスマートフォンや携帯電話にメールを自動送信し、診療の開始をお知らせするシステムがあります。
予約システムには、受付完了のメールに記載されているリンクから診察待ち情報サイトにアクセスすることで、診察状況や待ち時間を把握することができるシステムや、自動呼出し機能が付加されているものもあります。

自動呼出しシステムの特徴

自動呼出しシステムには、診察時間の呼び出しだけでなく、予約前日にお知らせメールを送信する機能や、会計計算が終了したことをご案内するメールを送信するなど、様々な機能を使えるシステムもあります。
主な付加機能は、次の通りです。

自動呼出しシステムの付加機能

2.会計時の対応と自動会計システムの導入

歯科医院によっては、会計時に診療代金の受渡しだけでなく、次回の予約を受け付けることもあるので、十分な防護対策を取る必要があります。
歯科医院の会計も受付と同じくシステム導入による感染防止と業務効率化が可能です。

1.新型コロナウイルス感染症対策による会計時の対応

ある歯科医院では、受付会計のカウンターに天井から透明ビニールによる遮蔽シートを付け、スタッフはマスクやグローブ等の防護具を身に付けて応対しています。
診療代金の授受においても、紙幣や硬貨にもウイルスが付着している可能性があるので、つり銭用トレイを利用し、直接の手渡しは避けています。
今まではある程度の時間間隔で行っていた清掃も、一人の患者が帰るたび、患者が触った可能性のある場所をアルコール消毒液等で清拭します。
常に換気を行い、空気清浄機の設置や窓や外部のドアも解放します。

会計時や待合室の感染予防対策

2.自動会計システムの導入

(1)会計時の問題点

感染症対策により、会計時及び会計後の業務量が増加するため、患者及びスタッフにも負荷がかかることになります。
患者には、今までより待ち時間が長くなることで、不便な思いをさせてしまい、スタッフにも業務量の増加と感染への不安が伴うことになります。
また、感染症対策に限らず、レジ締めの際においても、現金過不足が出た場合は、スタッフに精神的・時間的な負担がかかります。
こうした理由から、少しでも時間と労力の効率化を図るため、自動会計システムを導入する歯科医院が増えています。

会計に関する問題

(2)自動会計システムの導入ポイント

自動会計システムは、患者が自身で精算するため、つり銭ミスが解消します。
さらに、レセコンもしくは電子カルテへの連動からレジの登録間違い等のヒューマンエラーが無くなり、レセコンや電子カルテから離れた場所に自動会計のレジがあるため、スタッフは患者と距離を取ってコミュニケーションを取れるようになります。
また、金銭授受が直接にならないため紙幣や硬貨に触ることがなく、ほかの医療機器に触れることがあっても、感染のリスクは低くなります。
自動会計システム導入により、レジ締めやつり銭の確認が昼休み前や診療終了後だけで済むため、スタッフの業務量減少と少人数による運営が可能になります。
自動会計システムには、クレジット機能や電子マネーにも対応できるキャッシュレス機能まで付いたものもあります。

自動会計システムの特徴と導入のメリット

3.キャッシュレス決済の導入

現在、キャッシュレス決済が政府主導で進められ、医療機関においても普及が進み、特に自由診療の比率の高い歯科医院で導入されています。
また、スマートフォンの普及により、若い世代では少額の支払いにおいてもキャッシュレス決済を利用しています。

キャッシュレス決済への環境整備

3.在庫管理の効率化と在庫管理システムの導入

歯科医院では、総務や管理部といった人員を雇用しているところはほとんどありません。
院長や受付会計担当、もしくは歯科助手、歯科衛生士が診療業務の合間に在庫管理を行っており、定期的に在庫管理表を付けたり、不足品や期限切れ等の対処は難しい状況です。
現状でできる在庫管理を効率化し、医薬品、歯科診療材料、消耗器具備品の無駄を省き、スタッフの労力を減少することで時間外勤務を無くし、経費削減を図ることができます。

1.在庫管理の目的

診療材料や医薬品等の在庫数や必要数を把握していなければ、診療中に診療材料が欠品して治療に支障をきたしたり、仕入れたものが長い間使われずに過剰在庫となることがあります。
在庫は充足されているかだけではなく、適正な在庫数を確保するとともに、効率的な発注を行うために徹底した在庫管理が必要です。

在庫管理の目的

2.在庫管理の問題点と解決策

(1)在庫管理体制の問題点

在庫管理を定期的に行わず、担当者も決めていない歯科医院が多くみられます。
物品を取りに行ってはじめて、在庫が少ない・欠品していると気づいたスタッフが発注するという医院もあるようです。

在庫管理体制の問題点

(2)在庫管理の改善策

在庫管理の改善策は、在庫管理と発注体制を構築し、稼働させることです。
また在庫管理表等を作成し、誰もが確認できるようにしておくことも重要です。
現在ではPCやスマートフォンによる在庫管理システムを活用するのもスタッフの労力軽減と発注ミスの削減に有効です。

改善策

3.在庫管理システムの導入

(1)在庫管理システムの概要

PCやスマートフォンによる在庫管理システムは、バーコードやタグの活用で、棚卸や在庫管理、発注、検品が飛躍的に効率化できることから、導入している歯科医院も増加しています。

在庫管理システムのメリット

(2)在庫管理システムの導入ポイント

在庫管理システムを導入したら、既存の在庫を記録します。
在庫数が発注必要数量になったらスタッフや担当者が業者へメールやLINEでバーコード等によって発注します。
発注を受け付けた業者は、受注確認メールを返信してきます。
納品時にはスタッフがバーコードやタグをつけて記録し、保管します。
バーコードやタグナンバーは自動的にPCへ記録されます。
このシステムにより、商品の動きが可視化・明確化され、適正な在庫が確保できます。システムを活用することで発注の管理コストと時間の削減が図れ、スタッフの業務負担軽減も図れます。
また、会計データとの連動により財務分析を効果的に行え、医薬・診療材料費の節約により、収益率を向上させることができます。

在庫管理システムの導入後の流れ

4.新しい情報発信ツールの活用ポイント

歯科医院からの情報提供は、患者にとって歯科医院を選択する際の非常に重要なポイントになります。
最近では特に、新型コロナウイルス感染防止対策をどう取っているかの情報発信が重要な関心事になっています。
今までの院内情報誌の発行や新聞、地域の情報誌の記事広告やチラシ等による広報活動が、スマートフォン等の普及により、SNSを活用した広報活動に移行してきています。
ただし、地域や患者の年齢層により、広報活動の選択を考える必要があります。

1.SNSの活用

歯科医院の情報発信に合うのは、InstagramかLINEだと言われています。
メールも当初は活用されていましたが、必要以外の情報まで送られてくるため最近では敬遠されてきています。
Instagramは、国内のユーザー数が3,000万人超えと言われ、写真の掲載も可能なため、アピールしやすくなっています。
LINEに関しては、送受信が簡単で利便性が高く、国内ユーザーは8,000万人を超えるとも言われています。
個人間のLINEもグループLINEも組むことができ、活用方法も多岐にわたります。メインユーザーも年齢層や性別の区別がなく、誰でも活用しています。
また求人の場合も、現在では求職者のほとんどがホームページやSNSを通じて職探しの閲覧を行っていて、ハローワークや求人誌への掲載だけでなくSNS併用が必須とも言われています。

歯科医院に適したSNS

2.広告の変化への対応

医療法改正により広告規制が外されてきていると言われていましたが、実際には詳細な条件が定められ営利目的と判断される例も多くなり、新聞の折り込みチラシや記事広告、ホームページによる広告が制限されるといったことも増加しています。
また、若い世代においては、紙媒体自体を読まない、購読しない、といったことがあり、認知度が低くなっているのも現状です。
但し、医療広告は対象年齢や患者層、地域性を見極め、何をどう告知したいかによって選択することが必要になってきました。
SNSの普及は確かに進んできていますが、患者層や地域によってはまだまだ紙媒体やメールによる広告が必要な場合があります。
自医院の置かれている環境を把握し、広報活動を選択する必要があります。

情報発信方法の区別

3.LINEのメリットとデメリット

情報発信にLINEは有効です。公式サービスが無料で利用できるのも便利です。
多数の患者等に一斉送信することもでき、受付の電話業務の軽減にもなります。
受けた方も個別に送られたように感じられますので、特別な連絡に受け取られ、作業の効率化に加え、患者とのコミュニケーション増加にもつながります。
デメリットとしては、LINEに慣れた患者が簡単に予約キャンセルを行うという事例もあり、キャンセル対策は必要になります。

LINEのメリット

4.SNSによる消費行動の変化

SNSの普及によって、個人の消費行動が変化したと言われています。
今までは、消費ニーズが発生してから、どのような商品や販売店等があるかを探索・検索し、広告や各情報発信によって認知(見つける)し、興味を持って試用してみて、その上で顧客(購入・予約)となる流れでした。
現在はSNSによって認知(発見)し、記憶や興味を持ち、その後自身の消費ニーズが発生し、過去の記憶の探索・検索を行い、顧客(購入・予約)となってきています。
歯科医院においても、SNSの情報が来院選択肢の有力な情報になっています。

今までの消費行動

 

■参考資料
アポロニア21 2019年「受付・待合の知恵(上・下)」

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