ワンランク上の歯科医院を目指す!事例から学ぶ 患者満足度向上対策

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ワンランク上の歯科医院を目指す!事例から学ぶ 患者満足度向上対策

  1. 「ヒト」に関する研修で患者対応力向上
  2. 「モノ」に関する工夫で患者ストレスの解消
  3. 「カネ」に関する工夫でファン患者を獲得
  4. 「ココロ」に関する工夫でスタッフの人格向上

 


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1.「ヒト」に関する研修で患者対応力向上

1.マーケティング活動は既存顧客の満足度把握から

これまでの歯科医院のマーケティング活動は、新患獲得を目的とした、広報活動を主とする認知度向上対策、または医院リニューアル・医療機器リニューアルのようなイメージアップ戦略、あるいは患者紹介率アップ対策等でした。
しかし、歯科医院における業績格差がますます広がっている現状から、昨今のマーケティング活動は、「既存患者の満足度をいかに高めるか」という考え方が主流になっています。

マーケティング活動のポイント

2.患者に好まれる歯科医院スタッフ対応のポイント

患者アンケートから好かれる医院の特徴を把握し、そのための対策を構築します。

患者から好かれる歯科医院の特徴

患者から好かれる歯科医院は、スタッフ対応や丁寧な説明の良さが上位を占めています。
医療設備の充実や治療技術の高さ、医院の雰囲気の良さ等が続きますが、まずは、患者対応力アップが重要です。

3.「ヒト」に関するトレーニング

ある日突然、良いクリニックに変わることはありません。毎日、毎週、毎月の研修の積み重ねが大切です。
来院される患者は、「明確に説明される」「話をよく聞いてくれる」という対応を望んでいます。
この「話す(伝える)」「聞く」という行為は、現実には非常に難しいことに気づき、これらを改善する研修を十分に行うことが重要です。

 

伝える研修事例:いも虫研修・MAP研修、言葉の選択事例:専門用語を使わず、わかりやすい言葉を使用する研修

4.書面で説明する重要性を再確認

これらの研修は、「伝える」「説明する」ことの難しさと専門用語の理解度の低さを知り、また、説明を受ける患者が「聞いていない」「理解していない」ことに気づく研修です。
大切なことは記憶に頼らず、きちんと紙に書いて説明し、手渡しする必要があることを再確認します。
治療計画や治療方法等の説明は、予め書面を用意して、視覚と聴覚の双方で認識してもらうようにします。
自宅へ帰っても確認できるよう、わかりやすく、すぐに捨てられないような書面を用意することをお勧めします。

2.「モノ」に関する工夫で患者ストレスの解消

1.待ち時間を短く感じさせる工夫

歯科医院の内部に手を入れることで、治療を待つ患者がストレスを感じないようにする工夫ができます。
「ヒト」による対応だけでなく、待合室やトイレでは、備品や音楽のような「モノ」を介した患者満足度向上の方法があります。

(1)待合室の家具等による工夫

待合室のコージーコーナー(心地よい<cozy>空間<corner>)をチェックします。
まず朝一番と午後一番の患者が座る席と空く席を把握し、それが特定の場所に集中している場合は、椅子の間隔やパーテーション、観葉植物、本棚等でアレンジし、居心地の良い場所を複数用意します。

(2)待合室の図書の充実やディスプレイ、音楽等による工夫

朝や午前、午後、夕方、夜間と患者層が変化します。
来院される患者層すべてに合わせた図書を置くことのほか、時間帯によって図書の入替を行うのも一つの方法です。
季節に応じたディスプレイもお勧めします。
医院の外周から診察室まで、1年間12ヶ月の暦を取り入れるなど、待ち時間を利用した癒しの空間を演出します。

暦を意識したディスプレイを考える

フォトフレームを設置して写真を飾ったり、外周にプランターで花を植えたり、人形や小物を用意したりして、患者の視覚に訴えます。

写真事例(富士山、日の出、鯉のぼり)

その他、音楽によって待ち時間を短く感じさせる方法もあります。
具体的には、次のようなものが挙げられます。

音楽によって待ち時間を短く感じさせる方法

2.トイレへの工夫

クリニックの素顔はトイレに表れます。トイレ内の設備や清掃状況、備品による飾り付け、情報提供する掲示物、照明、鍵など工夫する箇所は多数あります。
温水洗浄便座の設置は当たり前となってきています。
その他、トイレ用擬音装置や便座クリーナーの設置、荷物置き場や上着掛けの用意、ハンドソープやペーパータオル等、特に女性の患者が要望しそうな設備・備品などを検討します。
また、トイレットペーパーや消臭剤も少し高級なものを用意します。

充実したトイレ環境の提供

3.駐車場の工夫

テナント診療所であっても駐車場への心配りは必要です。
入出庫時、歩道への気配り、雨の日対策、障がい者の方への対応等、工夫する所は多数あります。

駐車場の工夫

4.その他の工夫

その他の工夫としては、下記の項目が考えられます。

その他の工夫

3.「カネ」に関する工夫でファン患者を獲得

1.ファン患者を増加させるコストの見直し方法

新患を増やすための費用とファン患者を増加させるための費用とでは、支出する項目と内容に大きく違いが出ます。
どのような項目にお金を掛け、ファン患者層を広げるかがポイントです。
医院のことを知ってもらい、その上で選択をしてもらえるようなファン化活動が必要です。

ファン患者を獲得するための活動

次に紹介する改善事例において、A歯科医院では、新患を増やすための活動として、主に広告を中心に月額400千円を支出していましたが、ファン患者獲得の成果には結びついていませんでした。

改善前:新患増加を図るための費用(月額)

この400千円の支出を見直し、ファン患者を増加させる費用として、下記のように配分を変更しました。
無駄な支出を削減し、医院スタッフや患者から喜ばれる有効な費用へと改善されています。
開業後年数が経過している歯科医院は、既に地域住民に認知されていますので、電話帳広告等の費用は最小限にし、その財源を患者サービスの向上や医院スタッフの業務効率向上等に活用します。
この事例では、第2駐車場の確保やパートスタッフの採用、待合室のリフォームが該当します。

改善後:ファン患者を増加させるための費用(月額)

2.増収増患から増点増益へ

歯科医院のマーケティングは、これまで新規に来院する患者数(新患)をいかに増やすかということが主とされていました。
しかし単純な患者数の増加は、診療の質の低下につながりかねません。
同じ収益であれば、患者数は同じでも診療報酬単価を上げ、質の高い診療を提供し、可処分所得を上げることを目指すべきです。

増収増患から増点増益へ

B歯科医院は、A歯科医院と同じ収入ですが、人件費等のコストが多いため利益は減少しています。

患者視点からのメリットとデメリット

選ばれる歯科医院の条件は、患者にしっかりと向き合って診療することから始まります。
また、受診した患者がどう受け取っているかが重要であって、医院側が十分対応しているという自己満足では選択されません。
豊富な医療知識をもって、しっかりと話を聞き、わかりやすい説明をした上での診療を心がけましょう。

4.「ココロ」に関する工夫でスタッフの人格向上

医院スタッフの育成方法は、実技と接遇の研修と思われがちですが、技術や言葉遣い、適切な行動基準を習得する研修だけではなく、人間性を高める研修も必要です。
職務や能力に加えて、人格を高めることにも取り組みましょう。
来院患者に対しても、心に感動を生む応対をしなければいけません。
医院スタッフの心構えひとつで感動を呼ぶ行動ができます。

1.感動するミーティングの開催

実務研修ではなく、感受性を高め、感動する心を持ってもらうミーティングも必要です。年1回でも開催しましょう。

 感動するミーティングの開催

全員でこれらを見たり読んだりして、一緒に涙を流し、感動しましょう。
その気持ちを大切に抱きながら、来院された患者と接するように促します。

本、DVD等

2.医院の物語ファイルの作成

院長の診療方針や経営理念を明確にし、医院スタッフや受診される患者に伝えよう、とよく言われますが、「高尚過ぎて表現が恥ずかしい」「受け取る方も理想過ぎて白けてしまう」ということも耳にします。
これを様々な物語にしてファイル化し、医院スタッフや来院患者に伝えましょう。

物語ファイル

院長のスタッフ全員に対する思い、患者への思いを知ってもらい、医院スタッフがこれを理解して共有することにより、医院としての方向性を一致させる、という目的が達成され、組織の活性化が図れます。

3.待合室で30分待つ研修

診療時間中、医院スタッフに30分間待合室に滞在してもらい、患者の視点で待ち時間を経験させます。
これにより多くの新たな発見が期待され、患者の気持ちが良く理解できるようになるうえ、患者からの声掛けもあるため、コミュニケーション向上の効果も出てきます。
さらに、研修後にはレポートを提出させることとし、もし自分で得た「気づき」がまとめられず、レポートを提出できないスタッフがいた場合、別の教育研修を実施します。
また、患者に対しては、患者の立場から待合室で30分待つ研修を実施している旨を、掲示物や配布物などでアピールすることも重要です。

4.ユニバーサルサービス研修

障がい者や高齢の方の対応に際しては、アイマスクや身体の不自由さを体験することを通じて患者の気持ちを知り、マニュアル以上の対応ができるように、あるべきサポートとは何かについて気づかせます。
特にトイレは、来院患者から安心・信頼を獲得する大切な場所です。
そのため、(1) 清掃は行き届いているか、(2) ユニバーサルデザインになっているか、(3) 視覚・聴覚の工夫がされているか、という3つの視点で見直してみましょう。

細やかなハード・ソフトの工夫

■参考
平成27年6月17日 ㈱吉岡経営センター開催 クリニック経営セミナーより抜粋し、編集
「患者さん満足度アップの具体的事例紹介」
講師:株式会社 MMP代表取締役 認定医業経営コンサルタント  鈴木竹仁 氏

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