医療法改正で広告規制が強化 ウェブ広告の見直しポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

医療法改正で広告規制が強化 ウェブ広告の見直しポイント

  1. 医療法改正による広告規制の見直し
  2. 医療機関ホームページガイドラインの概要
  3. SNSを活用した広告手法と違反広告の事例

 


この記事をPDFでダウンロードする。

 

目次

1.医療法改正による広告規制の見直し

今までウェブサイトについては広告規制の枠からは外れていましたが、昨年、医療法が改正され、広告の対象として扱われることになりました。
それに合わせて医療機関のウェブサイトにおいて不適切な表示がないか、厚生労働省で監視する「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」が開始されています。
厚生労働省では広告や医療機関のホームページに関するガイドラインと監視体制の強化によって、違反広告の防止と消費者トラブルの減少を図ろうとしています。

1.医療法の一部改正で広告規制

(1)医療に関する広告規制の見直しに関する事項

平成29年6月14日に公布された医療法改正において、医療に関する広告規制の見直しに関する事項が追加されました。
施行期日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとなっています。

平成29年度 医療法改正 医療に関する広告規制の見直しに関する事項

(2)平成30年6月施行予定

厚生労働省の社会保障審議会医療部会は平成30年2月、改正医療法の施行に向けた、医療に関する広告規制に関する省令案等を了承しました。
その後、3月に、省令・告示、新たな医療広告ガイドラインを発出、平成30年6月1日から施行する予定となっています。

医療広告規制のスケジュール

2.医療法改正の内容

医療法改正では、「広告の定義」と「広告の定義に記載した限定的に認められた事項」が改正されました。
医療は人命や身体に関わっているサービスであるため、不当広告によって患者が誘引され、不適切なサービスを受けた場合の被害が、他の分野と比較して著しいということがあります。
また、医療は専門性の高いサービスであり、患者はその広告だけでは、提供される実際のサービスの質を事前に判断することが非常に難しいため、規制が強化されています。

(1)医療における広告の定義

医療における「広告」とは、患者に対し受診等を誘引(誘因性)する意図があり、医師や歯科医師、病院・診療所が特定(特定性)できること、誰でもが認知(認知性)できることを表示(方法を含む)しているものが「広告」となっていました。

医療における広告の定義

今までウェブサイトについては、バナー広告やSEO対策(※)を取っているもの以外は認知性がないとされ、広告規制の枠からは外れていましたが、改正によってウェブサイトも広告その他の表示となり、医療法に定める広告として扱われることになりました。
そのため、現在の掲載事項についても今後は規制の対象になるので、ウェブサイトで掲載している事項については、早急に確認し、修正をする必要があります。
(※)SEO対策:検索結果で自院サイトを検索上位にするための対策

(2)現行の広告規制と今後の変更点の比較

今回改正された広告規制では、ホームページ(ウェブサイト)を「広告その他の表示」と扱っています。

現行の広告規制と今後の変更点の比較

(3)院内掲示は対象外

医療法や療養担当規則では、院内にある掲示すべきものが決められており、患者に情報提供するための多様な事項について、診療所内の認められやすいところに掲示することが義務付けられています。
ただし、院内掲示は来院する患者だけが対象になっているため、認知性がないので広告とはされず、情報提供は広報として扱われています。

院内掲示は対象外

3.ウェブサイトの監視体制強化

(1)医療等に係るウェブサイトの監視体制強化事業とは

厚生労働省では、医療機関のウェブサイトにおいて不適切な表示が認められる等の指摘を踏まえ、昨年8月より、「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を開始し、広く一般の方からも通報を受け付けるなど、監視体制を強化しています。
平成29年8月から12月までに、730サイトを調査した結果、虚偽や大げさな広告をウェブサイトでしていた医療機関が、のべ112件に上ったことが判明しています。
厚生労働省は、これらの医療機関に対し、自主的な改善を促す通知を出しています。

医業等に係るウェブサイトの監視体制強化のイメージ

(2)医療機関ネットパトロールとは

厚生労働省では、委託事業としてインターネット上で「医療機関ネットパトロール相談室」に通報フォームを設け、うそや大げさな表示がないか、通報や情報提供を募っています。

医療機関ネットパトロールとは

2.医療機関ホームページガイドラインの概要

これまで医療機関のホームページは「広告」とみなされていなかったため、明確な規則や基準がありませんでした。
今回の改定ではウェブサイト・ホームページも「広告その他の表示」に該当するものとされ、医療法に定める広告として扱われることになりました。
医療機関ホームページガイドラインは、インターネット上の医療機関のホームページ全般が対象となります。

1.医療機関ホームページガイドライン

厚生労働省では、医療機関ホームページガイドラインを作成し、ホームページ全般の内容に関する規範を決めています。主な、概要は以下のとおりです。

(1)医療機関ホームページ作成上の指針

自由診療などの情報は、インターネット等での情報の入手が一般的となっています。
一部の医療機関では、ホームページに掲載されている治療内容や費用と、受診時における医療機関からの説明・対応とが異なるなど、ホームページに掲載されている情報でトラブルが発生しています。
このため、ホームページの内容の適切なあり方について、本指針を定めることになりました。

具体的なホームページ作成の上での指針

(2)ホームページに掲載すべきでない事項

内容が虚偽又は客観的事実であることを証明することができないものや、他との比較等により自ずから優位性を示そうとするものは掲載できません。
具体的には、次の項目が該当します。

ホームページに掲載すべきでない事項

(3)ホームページに掲載する際の注意点(自由診療を行う医療機関に限定)

通常必要とされる治療内容や費用に関する事項や治療のリスク、副作用等に関する事項については明確に表示し、誰でも確認できるような表示表現にして掲載すべきとしています。

ホームページに掲載する際の注意点

2.広告可能な事項と限定的に認められる広告

(1)広告可能な事項

医療に関する広告可能な事項は、医療広告ガイドラインに記載されています。
これは、医療広告ホームページガイドラインにおいても同様に扱われています。
現行の医療広告ガイドラインと医療機関ホームページガイドラインは、今後一本化されます。

広告可能な事項

(2)広告可能事項の限定解除

医療に関する広告可能な事項の中で、「医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合」には、限定的に認められているものがあります。

広告可能事項の限定解除について

3.SNSを活用した広告手法と違反広告の事例

1.SNSを利用した広告

(1)インターネット・SNS広告の種類

インターネットやスマートフォンの普及から、ホームページやSNSを活用した広告が増加しています。
LINE、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムを活用したり、また、ホームページとのリンクで、より効果的な広報ツールとなっています。

インターネット・SNS広告の種類

(2)インターネット広告の目的とアピール方法

インターネット広告の目的は、素早く、確実にサイトへのアクセスをすることにあります。
インターネット上で自院の存在を周知し、治療への関心を持ってもらって来院を促すことにつなげるには、自院のウェブサイトに潜在的患者を引き付けることが必要です。

3つのウェブサイトへのアクセス獲得アピール方法

2.歯科診療所のインターネット広告での情報発信

歯科診療所のインターネット活用による広告活動としては、まずはホームページによる基本情報の公開です。
そのホームページもスマートフォン対応にし、端末画面で見やすいようにしなければなりません。
地図や院内情報もホームページと同様ではなく、簡略なものにし、受け手側がわかりやすい表示の仕方にします。
また、SNSではできるだけ投稿掲載を行い、アクセス回数の確保を図り、ホームページへのリンクを貼って、情報提供のツールを増やすことです。

インターネット・SNS広告からの情報発信、インターネット広告作成時のポイント(特にホームページ)

今回の改正において、ホームページまでが広告その他の表示となったことでもわかる通り、ウェブサイト等SNSを活用した広告が主になってきています、
医療法改正の施行が始まる前にSNS等すべてを見直し、広告規制の対象にならない対策が必要です。

3.違反広告の具体的事例

(1)内容が虚偽または客観的事実であることを証明することができないもの

ホームページに掲載された内容が虚偽にわたる場合、国民・患者に著しく事実と相違する情報を与え、国民・患者を不当に誘引し、適切な受診機会を喪失させたり、不適切な医療を受けさせたりするおそれがあるものは違反となります。

虚偽、客観的事実と証明できないもの

(2)他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの

特定または不特定の他の医療機関(複数の場合を含む)と自らを比較の対象とし、優良である旨の表現や、著名人との関連性を強調するような表現は違反となります。

他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの

(3)内容が誇大なものまたは医療機関に都合が良い情報等の過度な強調

任意の専門資格、施設認定等や手術・処置等の効果・有効性など、医療機関にとって便益を与える体験談の強調や提供される医療の内容とは直接関係のない事項による誘引は、違反となります。

内容が誇大なもの又は医療機関にとって都合が良い情報等の過度な協調

(4)早急な受診を過度にあおる表現または費用の過度な協調

患者に対して早急な受診を過度にあおる表現、費用の安さ等の過度な強調・誇張等については、不当に誘引する恐れがあることから違反となります。

早急な受診を過度にあおる表現または費用の過度な強調

(5)医療機関への受診や特定の手術・処置等の実施を不当に誘導するもの

科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、国民・患者の不安を過度にあおるなどして不当に誘引することは違反となります。

医療機関への受診や特定の手術・処置等の実施を不当に誘導するもの

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。