窓口業務の負担軽減と医療情報の一元管理 マイナンバーカード活用による オンライン資格確認の概要

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窓口業務の負担軽減と医療情報の一元管理 マイナンバーカード活用による オンライン資格確認の概要

  1. オンライン資格確認導入の背景とその概要
  2. オンライン資格確認を導入するメリット
  3. 医療機関における準備作業と留意点
  4. クリニック導入事例と厚生労働省Q&A


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1.オンライン資格確認導入の背景とその概要

1.オンライン資格確認の導入背景

(1)オンライン資格確認とは

オンライン資格確認は、患者が持参したマイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号などによりオンラインで資格確認を行うことができる新制度です。
「資格確認」とは医療機関・薬局の窓口で、患者の保険資格情報を確認することで、この新制度の利用が開始された場合、その患者が現在、保険診療を受ける資格があるのか、即時オンライン上で確認できるようになります。
オンライン資格確認については、骨太の方針2019において、「2021年3月から本格運用する」とされていましたが、医療機関等・保険者における現状と課題を踏まえ、システムの安定性確保やデータの正確性担保などの観点から、プレ運用を継続したうえで、遅くとも薬剤情報の閲覧開始を予定している10月までに本格運用を開始するとしています。

オンライン資格確認の体系等、オンライン資格確認の導入(マイナンバーの健康保険証利用)について

(2)オンライン資格確認導入の背景

現状では、医療機関や薬局で資格確認をするために、患者の健康保険証に記載されている必要な項目(保険証記号番号、氏名、生年月日、住所など)の情報を医療機関システムへ一つずつ入力しています。
しかし、この時に資格の有効期限や正しい所持者であるかという確認が取れないため、健康保険証の有効性が確認できないという問題があります。
その結果、月に一度のレセプト請求時に正しく請求できないことや、返戻処理が発生するため医療機関や薬局の事務作業の負担が生じることがあります。
こうしたことから、医療機関や薬局と医療保険者との間で、被保険者資格の有効性と本人確認を効率的に確認するための仕組み(オンライン資格確認)が求められるようになり、ICチップに搭載した電子証明書を使う方法が検討されました。
そして、二重投資を避けて広く社会で利用されるITインフラを安全かつ効率的に活用するという観点から、マイナンバーカードの活用が検討されました。

2.オンライン資格確認の概要

(1)オンライン資格確認の仕組み

現行の資格確認では、資格情報に関する多項目の入力やリアルタイムで資格情報が確認できないなど、医療機関・薬局では資格確認に大きな問題を抱えていました。
そこで、新制度のオンライン資格確認は、これらの問題を解消するためにオンライン上で被保険者の資格情報を簡単に行えるよう考えられた仕組みです。

オンライン資格確認の方法

(2)薬剤情報等の閲覧

常時、支払基金・国保中央会とオンラインで接続されるため、支払基金・国保中央会の情報を医療機関・薬局に提供することが出来るようになります。
マイナンバーカードを用いて本人から同意を取得した上で、薬剤情報や特定健診等情報を医療機関等で閲覧することが可能となります。

薬剤情報等の閲覧

(3)マイナンバーカードを健康保険証として使用する場合の注意点

マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、あらかじめ患者がマイナポータルで保険証利用の申込をすることが必要です。
なお、保険証利用の申込をしていない患者が受診した場合には、医療機関・薬局の窓口において、顔認証付きカードリーダーで保険証の利用登録ができます。
また、医療機関・薬局の窓口では受診時にマイナンバーカードは預かりません。顔認証付きカードリーダーの場合は、患者自身にカードリーダーに置くことになります。汎用カードリーダーの場合は、カードリーダーにかざすとともに、受付職員に見せていただくことになります。
一方で、患者の希望により、本人の前で支援を行うことは問題ありません。
患者が受診時にマイナンバーカードを忘れた場合は、現行の健康保険証を忘れた場合の取り扱いと同様になります。
仮に、患者が健康保険証を持参していれば、健康保険証によるオンライン資格確認を実施することになります。

2.オンライン資格確認を導入するメリット

(1)医療機関側のメリット

オンライン資格確認を導入することで、医療機関と患者の双方にメリットがあります。
主に医療機関が受けられるメリットは以下のとおりです。

オンライン資格確認のメリット(主に医療機関側)

(2)患者側のメリット

患者側が受けられるメリットの一つに「限度額適用認定証等の連携」が挙げられます。
これまで限度額適用認定証等は加入者(患者)が保険者へ必要となった際に申請を行わなければ、発行されませんでした。
オンライン資格確認を導入すれば、加入者(患者)から保険者への申請がなくても、限度額情報を取得でき、加入者(患者)は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなります。

限度額適用認定証等の連携、医療機関・薬局で同意した場合に閲覧可能な項目

2.その他オンライン資格確認導入のメリット

オンライン資格確認を導入いただければ、患者の薬剤情報・特定健診等情報を閲覧することができます。
患者の意思をマイナンバーカードで確認した上で、有資格者等が閲覧します。
※薬剤情報、特定健診等情報は本格運用開始時点から閲覧可能。

薬剤情報・特定健診等情報の閲覧

オンライン資格確認を導入することで災害時における薬剤情報・特定健診等情報の閲覧が可能となります。
通常時は、薬剤情報・特定健診等情報を閲覧するには、本人がマイナンバーカードによる本人確認をした上で同意した場合に限られます。災害時は、特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報の閲覧ができます。

災害時における薬剤情報・特定健診等情報の閲覧

3.医療機関における準備作業と留意点

1.オンライン資格確認導入手順

オンライン資格確認の導入に向けた準備作業は以下の5ステップになります。
顔認証付きカードリーダーの提供や、システムベンダ(現在利用のレセプトコンピュータ等の業者)の現地作業までに期間を要するため、早めに顔認証付きカードリーダーの申し込みとシステムベンダへの発注が必要となります。

準備作業のステップ

医療機関等は、オンライン資格確認を導入した際にポータルサイトを通して補助金を申請することができます。
また、オンライン資格確認は、オンライン請求の回線環境を活用します。
ご利用できるネットワークの回線種類は、IP-VPN接続方式(光回線に限る)とIP-sec+IKE接続方式の2種類です。
詳細はこちらのURLよりご確認ください。

2.オンライン資格確認に関する補助金

オンライン資格確認を導入する医療機関・薬局は補助金を申請することができます。
顔認証付きカードリーダーは、病院については3台まで、診療所については1台が無償提供されます。
それ以外の費用については申請することで補助金が出る場合があります。
詳しい補助内容については以下のとおりです。

オンライン資格確認に関する補助金の内容

3.オンライン資格確認(プレ運用)への参加

前述したように、当初オンライン資格確認については、2021年3月からの本格運用を予定していましたが、現在は10月からの本格運用に向けてのプレ運用となっています。
医療機関・薬局は、「オンライン資格確認利用申請」を行えばオンライン資格確認(プレ運用)に参加することができます。

オンライン資格確認開始までの流れ

4.マイナンバーカードの保険証利用についての検討事項

2021年4月13日に開催された経済財政諮問会議で、有識者議員から、2024年度までに運転免許証とマイナンバーカードの一体化と、各企業の健保組合における単独の健康保険証交付をとりやめ、マイナンバーカードへの完全な一体化を実現すべきと提言されました。
一方で、医療機関・薬局等の準備が完全に進まない状況において健康保険被保険者証を廃止してマイナンバーカードに一本化した場合、保険診療の提供に影響が出ることも考えられるため、医療機関・薬局等のオンライン資格確認導入のための準備促進も重要なテーマとなります。

顔認証付きカードリーダー申込数(2021年4月18日時点)

4.クリニック導入事例と厚生労働省Q&A

1.クリニックのオンライン資格確認導入事例

(1)Aクリニックの概要

医療機関等向けポータルサイトでは、オンライン資格確認の導入事例を紹介しています。
本稿では、クリニックの事例を紹介します。

Aクリニックの概要

(2)オンライン資格確認等システム導入理由

多数の患者が受診されると事務員の業務負担が激増し、保険資格過誤によるレセプト返戻がさらに疲労を募らせることになります。
オンライン資格確認等システムを導入することにより、事務員の負担を減らしたいと思ったことが導入のきっかけとなりました。
Aクリニックでは元々、健康保険証の入力作業に時間を要していたので、入力作業削減により事務員の負担軽減が見込めるのも一つの理由となりました。
また、オンライン資格確認等システムを導入した大きな理由として、高齢患者に「ポリファーマシー(多剤服用による薬物有害事象)」弊害がおよぶのを防ぎたかったことを挙げています。
オンライン資格確認等システムの導入により薬剤情報閲覧を活用することが、薬物有害事象を防ぐうえでも必須になると考えたようです。
また、特定健診データを参照できることに加え、オンライン資格確認に対する患者の理解が導入の決め手となりました。

(3)システム導入後の変化について

システム導入後の変化について、Aクリニックでは以下のことを挙げています。

システム導入後の変化

2.オンライン資格確認の今後の活用予定

オンライン資格確認は今後のデータヘルス※の基盤となります。
今後予定されている内容は以下のとおりです。
※医療保険者が健康医療情報を活用した分析を行った上で行う、加入者の健康状態に即したより効果的・効率的な保健事業を指す。

オンライン資格確認の今後の予定

3.オンライン資格確認に関するQ&A

厚生労働省では、オンライン資格確認についてのQ&Aを公表していますので、一部抜粋して紹介します。
2023年3月末には、ほぼすべての医療機関での導入を目指していますので、オンライン資格確認への対応は必須であるといえます。

オンライン資格確認に関するQ&A

 

■参考資料
厚生労働省:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)
第142回社会保障審議会医療保険部会資料

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