思考を整理し、自社の戦略を立てる ビジネスに役立つフレームワーク思考

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思考を整理し、自社の戦略を立てる ビジネスに役立つフレームワーク思考

  1. 経営課題を解決するフレームワーク思考とは
  2. 課題別フレームワークの体系
  3. 中小企業で活用できるフレームワーク
  4. フレームワークの活用事例

 


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1.経営課題を解決するフレームワーク思考とは

ここ数年、政府の景気刺激策が大胆に打たれていますが、景気が好転している実感を持つことができない状況が続いています。
このような経営環境の中でも中小企業においては、会社経営を成功に導くためには、日頃から自社の経営課題を探索し、たとえ小さな経営課題であっても速やかに解決する努力が欠かせません。
今回は、経営課題や業務・人材に対する課題解決に向けて活用できる『フレームワーク』について紹介します。

中小企業が抱えている経営課題

中小企業は、大企業と異なり規模のメリットを活かしにくいことや、販売価格の低下などにより利益確保が難しくなっています。
また、中小企業には、人材不足に関する悩みも根深いものがあり、生産年齢人口の減少という経営環境において、過去の成功体験の延長線上で事業を拡大してくことが難しいという状況もあります。

中小企業が抱えている経営課題例

経営課題を解決するフレームワーク活用のメリット

自社が抱えている経営課題を改善・解消し、ビジネスの効率性を高めてくれるのがフレームワークという思考ツールです。
フレームワークとは、「戦略、分析、構想のための思考の枠組み」という意味であり、課題を整理し、最善の解決策を得るための手順を様々な方法でアプローチします。
フレームワークを使うことにより、考えたり、議論したりする時に、大切な内容がモレることを避けることができ、到達したいゴールに導いてくれる手助けをしてくれます。
また、「自分が体得している知識だが、他人にはうまく言葉で説明できない」等といった、相手に伝えることが難しい状況である「暗黙知」を「形式知」化することにもフレームワークは役立ちます。モヤモヤしていたことを形式知化できるようになると、物事をよりすっきりさせることができます。
そして、言語化する時に表現の違いで上手く意思疎通できないこともあります。そのような時でもフレームワークという型を通じて考えれば共通言語化できるため、コミュニケーションを円滑にする効果が期待できます。
何より重要な効果は、フレームワークを使って考えることで結論を導き出したり、考えを整理したりすることで、躊躇していたアクションを起こす起爆剤にできることです。

フレームワーク活用によるメリット

ビジネスにおけるフレームワーク

フレームワークは、囲碁や将棋の「定石(定跡)」のように先達が考えたビジネスの最善策です。
これを上手に活用することにより、迅速かつ精度の高い意思決定や問題解決が可能になり、ビジネスの効率性・生産性が格段にアップします。
フレームワークは数多く存在します。
それぞれ手法やフォーマットが異なるため、解決したい課題に応じて、どの枠組み思考を使用するのかが重要となります。
一流の営業マンが顧客のニーズを上手く引き出せるように、日頃から良い関係を構築したりセールストークを自分流にアレンジする等の努力をしているように、フレームワークも経営課題の解決に向けて使いこなすことが必要です。

フレームワークの考え方を浸透させる

注意が必要なのは、「フレームワークは万能だ」「フレームワークさえ知っておけば大丈夫」等と考えてしまうことです。
フレームワークは思考を深めるためのツールであって、「目的」に沿って使わなければ意味がありません。
重要なのは、フレームワークを覚えるだけではなく、仕事の中で必要なフレームワークを何度も使ってトレーニングすることです。
それを繰り返し実践していくことで、次第に「フレームワーク思考」が身につき、思考や分析の精度が高まっていきます。

2.課題別フレームワークの体系

経営戦略策定・マーケティングに活用できるフレームワーク

企業が経営戦略策定やマーケティング戦略策定に活用できるフレームワークを紹介します。
マーケティングでは、商品別戦略、エリア別戦略、価格戦略において役立てることができます。

経営戦略策定、マーケティング戦略策定に役立つフレームワーク

業務改善・効率化につなげるフレームワーク

業務改善は、計画的に行うことでより効果が高まり、問題解決の近道になります。
実際にさまざまな企業で利用された効果的な方法や分析手法として、業務改善をする上で有効なフレームワークには、次のようなものが挙げられます。

業務改善・効率化に役立つフレームワーク

人や組織を動かし、戦略実行に役立つフレームワーク

自社の事業戦略の実現には、人材確保、育成、および能力の発揮とパフォーマンスの最大化がキーワードになります。
人事戦略、育成に役立つフレームワークを紹介します。

人材の採用・育成に役立つフレームワーク

3.中小企業で活用できるフレームワーク

中小企業で活用できるフレームワーク

(1)ロジックツリーの体系

問題解決の場面で、本質的な問題点を突き止めるための手法がロジックツリーです。
ビジネスフレームワークの基本といっても良いものです。
ロジックツリーは、問題や課題をツリー状に展開していき、原因や解決策を導き出すときに有効です。
このフレームは、階層別に展開され、第一階層(大項目)で解決すべき問題を取り上げ、第二階層(中項目)で考えられる原因を検討します。
そして、第三階層(小項目)で第二階層の原因を解決するための課題を検討します。
真の原因を究明するために、原因をより深く掘り下げる場合には、第二階層をさらに細分化していきます。

ロジックツリー体系

(2)ロジックツリーが活用できる場面

ロジックツリー作成場面での留意点
ロジックツリーには、大きく3つの種類があります。

《1》問題の原因を見つけたいときに使う「Whyツリー」
《2》全体の構成要素を分解して整理する「Whatツリー」
《3》達成したい目的に対して有効な解決策を探す場合に使う「HOWツリー」です。
これらのロジックツリーを作成する際のポイントは、右のとおりです。

マーケティングに役立つマーケティング・ミックス(4P・4C)

売り手と買い手の両方からアプローチを行い、戦略を立てていくのがマーケティング・ミックスです。
これは、提供する商品やサービスに応じて、いくつかのフレームワークを組み合わせて営業活動や販促活動の戦略に活かすことができます。

(1)売り手側に立った4P

マーティング・ミックスの代表的なモデルが4Pです。
これは、4つのP《Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)》の頭文字を取ったものです。
この4つのキーワードから、自社の商品やサービスが顧客にとって魅力的なものになっているかを検討します。

売り手側に立った4P

(2)買い手側に立った4C

買い手側の視点に立ち、商品・サービス開発を進めていく場面で活用できるフレームワークが4Cです。
これは、4つのC《Customer Value(顧客価値)、Customer Cost(顧客負担の費用)、Convenience(顧客の利便性)、Communication(顧客とのコミュニケーション)》の頭文字を取ったものです。
4Pと4Cは、それぞれの要素が対応しており、両面からアプローチすることでその効果が高まります。
誰にどのような商品・サービスを提供したいのか、ターゲットを絞り込むことで効果的なマーケティングが可能となります。

買い手側に立った4C

目標達成を数値化するKPIツリー

目標達成を数値化するKPIツリーKPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字を取った略語であり、日本語に訳すと「重要業績評価指標」となり、「目標を達成するためにプロセスが適切に実行されているかを管理・評価する指標」のことを意味します。
KPIの本質を理解するには、KPIの「Key Performance」と「Indicator」を分けて考えてみるとわかりやすくなります。

 

 

(1)「Key Performance」とは

KPIの構成要素の一つである「Key Performance」とは「目標達成のカギ」を表します。
つまり、優れたKPI設定をするためには、まずは「目標達成のカギは何か」を見抜かなければなりません。
この「目標達成のカギ」のことを、KFS(Key Factor for success)と呼びます。

(2)「Indicator」とは

「Indicator」とは、その訳語通り「指標」を指します。
例え「目標達成のカギ」を見抜けたとしても、適切な「指標」が設定できなければ目標の達成水準がわかりません。

KPIの体系モデル

4.フレームワークの活用事例

自社の課題解決に役立つロジックツリー活用例

(1)事例

事例

(2)ロジックツリー活用のポイント

《1》問題を発見する

下記のロジックツリーで「事業所別」「商品別」に分解していくと、福岡事業所の商品Bの売上が落ちている、東京事業所の商品A、大阪事業所の商品B、福岡事業所の商品Aが横ばい、その他は売上増ということが明確になります。
このような分解によって、売上減少の発生箇所は「福岡事業所の商品B」であることが把握できます。

ロジックツリー活用のポイント

《2》問題の原因を特定する

売上は、大きく分けて「顧客数×客単価」に分解され、「顧客数」は「新規顧客数」と「既存顧客数」に分解できます。
その「新規顧客数」は「面談件数×受注率」によって変動します。このような分解により、「受注率」が大きく下がっていることがわかりました。
このことから、福岡事業所の商品Bの売上が減少している原因は、「受注率が落ちていること」と原因が特定でき、これが、会社全体の売上減少に影響していることがわかりました。
このように、ロジックツリーは要素分解や因数分解を重ねながら分析していくことで、問題の原因を特定することが可能になります。

問題の原因を特定する

《3》問題解決策を考えやすくする

福岡事業所の商品Bの受注率を改善するという課題に対して、営業面、商品面、価格面に分解して、解決策を洗い出していきます。
このように、ロジックツリーは解決すべき課題に対して、要素を分解しながら考えていくことで、より具体性のある問題解決アクションへつなげていくことが可能になります。

問題解決策を考えやすくする

(3)期待できる効果

期待できる効果

3C分析を活用した戦略実行を行う場面での活用例

(1)事例

事例

(2)3C分析の活用ポイント

3C分析の活用ポイント

(3)期待できる効果

期待できる効果

これまで紹介してきた様々なフレームワークは、戦略策定、思考の整理など、企業活動のあらゆる場面で活用できるものです。
今後、実践において活用いただければ幸いです。

 

■参考文献
「マッキンゼーで学んだフレームワークの教科書」(大嶋 祥誉著 洋泉社)
「9のフレームワークで理解するマーケティング超入門」(金森 努著 同文館出版)
「60分でわかる!ビジネスフレームワーク」(ビジネスフレームワーク研究会著 ㈱技術評論社)

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