ウェブサイトも規制対象に 6月施行 新たな医療広告ガイドライン

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ウェブサイトも規制対象に 6月施行 新たな医療広告ガイドライン

  1. 医療法改正と広告規制の見直し
  2. 新医療広告ガイドラインの概要と罰則規定
  3. 広告規制の強化による影響と対応
  4. 医療広告規制の対象となる具体例


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1.医療法改正と広告規制の見直し

1.医療広告規制見直しの経緯

(1)医療法改正における広告規制見直し

平成29年に成立した改正医療法において、医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数が近年増加している現状を踏まえ、医療広告に関する規制についても見直しが行われました。

平成29年医療法改正の概要

(2)新たな医療広告ガイドラインの策定

医療法改正に伴い、(1) 医療機関のホームページを医療法上の「広告」に含めて規制の対象とすること、(2) 医療法に基づき禁止している虚偽広告や誇大広告等については、医療機関のホームページについても禁止すること等の議論が「医療情報の提供内容等に関する検討会」において行われてきました。
こうした経緯のもと、新たな「医療若しくは歯科医療または病院若しくは診療所に関する広告に関する指針(医療広告ガイドライン)」が策定され、厚生労働省令とともに、本年6月1日より施行されています。

医療広告ガイドラインの基本的な考え方

(3)広告規制の対象範囲の拡大へ

従来、医業機関のウェブサイトについては原則広告として取り扱っていませんでしたが、今回のガイドライン見直しにより、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象となっています。
しかし、患者が求める情報の円滑な提供の妨げになるおそれがあることから、一定の条件の下に広告等可能事項の限定を解除することとしています。

広告規制対象の見直し

2.広告禁止事項の追加と広告可能事項の限定解除

(1)広告禁止事項の見直し

厚生労働省は広告禁止事項について見直しを行い、新たに「治療等の内容・効果に関する体験談」や「治療等の内容・効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等」に関しては、省令で禁止事項と規定しました。

広告禁止事項例~治療効果等の体験談、術前または術後の写真

(2)広告可能事項の限定解除

患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるため、一定の要件を満たせば広告可能事項の限定を解除して、他の事項を広告することができます。
具体的には、次の4つの要件を満たすことが必要です。

◆広告可能事項の限定解除が認められる具体的要件

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の(1) ~(4) のいずれも満たした場合とされています。
ただし、(3) 及び(4) については、自由診療について情報を提供する場合に限られます。

広告可能事項の限定解除が認められる具体的要件

2.新医療広告ガイドラインの概要と罰則規定

1.新医療広告ガイドラインの施行

従来の医療広告ガイドラインと「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針」(医療機関ホームページガイドライン)に代わり、新しい医療広告ガイドラインが策定され、本年6月より施行されています。
平成29年の医療法改正により、広告の内容及び方法に係る禁止事項として、従来法律に規定されていた「虚偽」に加えて、これまで省令に規定されてきた「誇大」「比較優良」「公序良俗違反」を法令上に規定しました。
これを受けて、新たな医療広告ガイドライン(新広告GL)は、法令に基づく禁止事項やそれ以外の事項について、次のように現在の考え方を示しています(下図のうち、■が新たな規定部分)。

医療広告禁止事項の変遷

2.禁止される広告内容と広告可能な事項

(1)禁止される広告内容

医療広告ガイドラインでは、禁止の対象となる広告の内容について示しています。
内容が虚偽にわたる広告は、罰則を付して禁止されます。

禁止の対象となる広告の内容

(2)広告可能な事項

広告可能事項は、一つひとつの事項を個別に列記するのではなく、一定の性質を持った項目群としてまとめ、「○○に関する事項」と規定する方式(いわゆる「包括規定方式」)を採用しています。
現在、広告可能な事項として、下記14項目が挙げられています。

広告可能な事項

3.医療広告に関する罰則とその適用

医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)による改正により、医療広告に対する罰則の適用が定められています。
医療広告における虚偽内容については、直接医療法上の罰則を受ける可能性があるほか、それ以外の広告禁止事項も罰則が適用される可能性があるため、注意が必要です。

医療広告に対する罰則の適用

尚、(1) ・(2) のいずれも、違反が疑われる広告に対して、調査等を行うことができるとされており、助産所についても同様に取り扱われます。

3.広告規制の強化による影響と対応

1.医療広告戦略とツールの見直し

(1)自院ホームページのコンテンツ

ウェブサイトが規制対象となった新たな医療広告ガイドラインの内容を踏まえ、自院のホームページに掲載しているコンテンツが医療広告として適切なものかを確認する必要があります。
例えば、患者の体験談や症例写真を掲載している場合には、ホームページの内容変更が必要となる可能性もあります。
ただし、症例写真のケースでは、下記のような工夫で掲載が認められるようになります。

術前または術後の写真の掲載が認められるケース

(2)メールマガジンに対する規制適用

厚生労働省は、医療広告ガイドラインに関するQ&Aを公表しています。
例えば、患者の希望により入手する場合も想定し、医療機関が配布するメールマガジンやパンフレットについて、次のような見解を示しています。

メールマガジンやパンフレットの取り扱い

(3)SNSにおける患者等の感想

フェイスブックやツイッターなどSNS上の掲載内容のうち、医療機関の治療等の内容または効果に関する感想を述べた場合については、医療機関による誘因性(後述)の有無により、広告規制に該当するか否かが判断されます。

SNSにおける掲載内容の広告該当性

2.広告規制の対象者による影響と広告媒体

(1)広告代理店等に委託したケース

広告代理店等に依頼して医療広告を作成した場合も、自院の広告内容について不備がないか確認する必要があります。
広告規制に抵触する内容であれば、医療機関と広告代理店等双方が、法令上の罰則や指導の対象となる可能性があるからです。

広告代理店等との関係

(2)広告に該当する媒体とは

規制の対象となる医療に関する広告の妥当性については、以下の2点いずれの要件を満たす場合に、広告に該当するとしています。

広告の定義

また、広告の規制対象となる媒体の具体例として以下のものが挙げられています。

広告に該当する媒体の具体例

3.医療機関のネットパトロール強化へ

平成29年8月より、厚生労働大臣の受託事業として医療機関ネットパトロール事業が開始されました。
政府は、広告規制の改正後、規制範囲が拡大されることもあり更なる監視体制の強化を図っています。
昨年の実績については、第8回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会参考資料1(平成30年1月24日)として公表されています。

医療機関ネットパトロールの進捗状況

4.医療広告規制の対象となる具体例

1.医療広告とはみなされない具体的な例

医療広告ガイドラインの中で、通常、医療に関する広告とはみなされないものの具体例が示されています。
従前の医療広告ガイドラインと比較すると、患者申出によるパンフレット送付等の項目、およびインターネット上のホームページの項目が削除され、医療広告の対象となった点が改正されています。

医療に関する広告とはみなされないものの具体例

2.ウェブサイトに関する広告規制の具体例

ウェブサイトに関して医療広告の具体的な例が示されています(医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会)。
医療法上の広告規制に該当するかどうかについては、「誘引性」と「特定性」のいずれの要件も満たすかどうかが判断基準となります。

ウェブサイト例〜ランキングサイト、口コミサイト

3.禁止される医療広告の具体例

新たな医療広告ガイドラインでは、禁止となる広告の具体的な例が示されています。
特にウェブサイトが広告規制対象となったことから、6月に施行された医療広告ガイドラインの内容を確認し、抵触しないような配慮と必要に応じた見直しが求められます。

禁止の対象となる広告の具体例

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