新型コロナウイルスの感染拡大防止 オンライン診療の 概要と対応策

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新型コロナウイルスの感染拡大防止 オンライン診療の 概要と対応策

  1. 感染拡大に伴う政府の対応
  2. オンライン診療等によるコロナ対応
  3. オンライン診療等の報酬と軽症者への対応
  4. オンライン診療の手順とQ&A


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1.感染拡大に伴う政府の対応

1.新型コロナウイルス感染症の発生動向

世界的に新型コロナウイルスが流行しています。
国内において新規感染者数は下火となりましたが、まだまだ予断を許さない状況です。
新型コロナウイルスの感染患者数の状況については、下記のグラフのように4月に入ってから大幅に増加しました。

新型コロナウイルス感染症の国内発生動向

こうした患者数の増加に伴い、令和2年4月7日に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発令され、一部の区域が対象となり、さらに、令和2年4月16日に対象地域が全都道府県に拡大されることになりました。
その後安倍首相は、5月25日に首都圏と北海道で続いていた新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を解除すると表明し、約1カ月半ぶりに全面解除となりました。

2.新型コロナウイルス感染症対策の方針について

政府は新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針として以下のことを示しています。
医療機関においても、三密(密閉・密集・密接)をできるだけ防ぐため、接触機会を減らすことや患者間の距離に配慮した待合室などの工夫が求められています。

新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針(一部抜粋)

3.オンライン診療のさらなる活用の検討

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた時限的・特例的な対応として、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者等についても電話やオンライン診療の活用ができるよう検討され、保険対応できるようになりました。

新型コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえたオンライン診療の活用について

4.世界で拡大するオンライン診療

新型コロナウイルスの感染者数について世界に目を向けると、アメリカをはじめ、現在も多くの患者数を抱える国があります。

新型コロナウイルス国別感染者数の推移

アメリカでは、患者数の増加に伴い公的医療保険「メディケア」でオンライン診療の保険適用範囲を大きく拡大し、州政府も同時期に民間保険会社に保険適用できるように指示しました。
イギリスでは、国民医療制度(NHS)において、保健医療サービス会社であるバビロン・ヘルスの開発したオンライン診断アプリを保険適用としています。
このアプリでは人工知能(AI)による症状の分析が行われ、受診の必要性の有無なども含め、「診断」にまで踏み込むような回答をしてくれます。
さらに、アプリ上で医師との遠隔健康相談、医療機関の受診予約が可能となっています。
こうしたオンライン診療の世界的な普及が進む中、日本においても株式会社LINEが今夏にオンライン診療アプリをリリースする予定です。
国内のユーザー数が8,000万人を超えるLINEがサービスをスタートさせるとなると、国内においてもオンライン診療が大きく普及する可能性が高くなります。

2.オンライン診療等によるコロナ対応

1.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療について

患者から電話等により診療等の求めを受けた場合、診療等の求めを受けた医療機関の医師は、当該医師が電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方が当該医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をして差し支えないこととしています。
ただし、麻薬及び向精神薬の処方は認められていません。

初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施要件

なお、医師が電話や情報通信機器を用いた診療により、診断や処方を行うことが困難であると判断し、診断や処方を行わなかった場合、対面での診療を促す、または他の診療可能な医療機関を紹介するといった対応を行うことは受診勧奨に該当し、こうした対応は医師法に規定する応招義務に違反するものではありません。

2.初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の留意点

初診から電話や情報通信機器を用いて診療を行う場合は、次のアからウまでに掲げる条件を満たした上で行わなければなりません。

初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する場合の留意点

3.2度目以降の診療を電話や情報通信機器を用いて実施するケース

(1)既に対面で診断され、治療中の疾患を抱える患者について

当該患者に対して、これまでも処方されていた医薬品を処方することは事前に診療計画が作成されていない場合であっても可能となります。
また、当該患者の当該疾患により発症が容易に予測される症状の変化に対して、これまで処方されていない医薬品の処方をしても差し支えありません。
ただし、次に掲げる場合に応じて、それぞれの要件を満たす必要があります。

実施要件

(2)電話や情報通信機器を用いて初診を行った患者について

電話や情報通信機器を用いて初診を行った患者に対して、2度目以降の診療も電話や情報通信機器を用いて行う場合については、「初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施」の記載に沿って実施することとしています。

4.処方箋の取扱い及び実施状況の報告について

患者が、薬局において電話や情報通信機器による情報の提供及び指導(以下「服薬指導等」という。)を希望する場合は、処方箋の備考欄に「0410対応」と記載し、当該患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリ等により処方箋情報を送付します。
その際、医師は診療録に送付先の薬局を記載し、医療機関は、処方箋原本を保管して処方箋情報を送付した薬局に当該処方箋原本を送付することになります。
初診からの電話や情報通信機器を用いた診療により処方を行う際、診療録等により患者の基礎疾患を把握できていない場合は、処方箋の備考欄にその旨を明記します。
なお、院内処方を行う場合は、患者と相談の上、医療機関から直接配送等により患者へ薬剤を渡すことも可能です。
初診からの電話や情報通信機器を用いた診療や受診勧奨を行う医療機関は、その実施状況について所在地の都道府県に毎月報告を行うことが求められます。

3.オンライン診療等の報酬と軽症者への対応

1.電話や情報通信機器を用いた診療における点数

(1)初診料

電話や情報通信機器を用いて初診を行った場合については、通常の初診料の点数である288点ではなく、214点となります。
これは、対面診療に比べ得られる情報や提供できる医療内容が限定されることを考慮し、設定されているようです。
ただし、処方料や処方箋料については、通常どおりの点数を算定することができます。

診療報酬上の臨時的な取扱いについて

(2)再診料

2度目以降の診療を、電話や情報通信機器を用いて行った場合は、診療所及び200床未満の病院は再診料(73点)を算定することが可能です。
なお、オンライン診療料に該当する場合も特例として再診料(73点)を算定できます。

再診料

(3)その他の報酬上の扱い

慢性疾患を有する定期受診患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合について、電話や情報通信機器を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行い、管理料等を算定していた患者に対して、電話や情報通信機器を用いた診療においても当該計画等に基づく管理を行う場合は、月1回に限り147点を算定できる扱いとなりました。

情報通信機器を用いた場合の点数が規定されている管理料等

2.オンライン診療料の施設基準緩和

新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑み、オンライン診療料の施設基準のうち「一月あたりの再診料等及びオンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下であること」については、時限的・特例的な対応として、新型コロナウイルスの感染が拡大している間は適用しない扱いとなりました。

オンライン診療料の概要

3.自宅療養又は宿泊療養する軽症者等に対する診療等

患者が増加し重症者等に対する入院医療の提供に支障をきたすおそれがあると判断する都道府県では、入院治療が必要ない軽症者等は自宅療養または宿泊施設等での療養としています。
こうした軽症者等に対して行われる電話や情報通信機器を用いて診療する場合の扱いについては以下の通りとなります。

軽症者等に対して行われる電話や情報通信機器を用いて診療する場合の扱い

4.オンライン診療等の周知について

電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医療機関については、厚生労働省のホームページ等で公表しています。
このため、医療機関については所定の様式に基づき、都道府県に報告することが求められています。
また医療機関は、電話や情報通信機器を用いた診療を実施していることについて、その旨を医療に関する広告として公表することが可能となりました。

4.オンライン診療の手順とQ&A

1.オンライン診療の手順

電話・オンライン診療の手順として医療機関向けのマニュアルが厚生労働省から公表されました。
以下に、そのマニュアルの内容に沿って、電話による診療の場合とオンラインによる診療の場合に分けて説明いたします。

(1)電話による診療の場合

電話による診療を行う場合は、都道府県の窓口に届出を行います。
その際、対面診療が必要な場合に紹介する予定の医療機関がある場合は、事前に了承を得た上で、所定の欄に記入します。ホームページ等において、電話による診療を行う旨、対応可能な時間帯、予約方法等を記載します。
ホームページに、診療が困難な症状や対面診療が必要になる場合があることを記載することによりトラブルを未然に防ぐことができます。

事前の予約について(医師以外のスタッフが電話対応したことを想定)、診療、診療後

(2)オンラインによる診療の場合

オンラインによる診療を行う場合も都道府県の窓口に届出を行います。
その際、対面診療が必要な場合に紹介する予定の医療機関がある場合は、事前に了承を得た上で、所定の欄に記入します。
ホームページ等において、オンラインによる診療を行う旨、診療科、担当する医師とその顔写真、対応可能な時間帯、予約方法等を記載します。

事前の予約、診療、診療後

2.オンライン診療等に関するQ&A

新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて、Q&Aを紹介いたします。

オンライン診療等に関するQ&A

今回のオンライン診療等に関する対応は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関への受診が困難になる状況下に鑑みた時限的な対応であり、永久的に続くことはありません。
しかし、オンライン診療は労働力人口の減少をカバーする医療提供方法と考えられ、導入していない医院おいては、導入の検討の余地が十分にあると思われます。

 

■参考資料
厚生労働省:オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会
オンライン診療の適切な実施に関する指針
中央社会保険医療協議会総会
新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた
診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2年4月10日事務連絡)
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その14)(令和2年4月24日事務連絡)
医療機関が電話やオンラインによる診療を行う場合の手順と留意事項
首相官邸:新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針
外務省:海外安全ホームページ 各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況

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