消費税引き上げに伴う診療報酬改定 2019年10月改定の概要

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消費税引き上げに伴う診療報酬改定 2019年10月改定の概要

  1. 外来・在宅医療の2019年10月改定概要
  2. 入院医療における10月改定
  3. 次期2020年4月改定における検討項目


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1.外来・在宅医療の2019年10月改定概要

1.消費税10%への引き上げに伴う診療報酬改定

(1)過去の診療報酬改定率と2019年診療報酬改定率

2019年10月、」消費税が8%から10%に引き上げられることに伴い、診療報酬改定が行われます。
過去には、1989年(平成元年)4月の消費税導入時、1997年(平成9年)4月に5%に引き上げられた時、また2014年(平成26年)4月に8%に引き上げられた時にそれぞれ診療報酬改定を行い、医療機関や薬局等の仕入れに係る消費税負担増加に対応しています。

過去の消費税導入・引き上げ時の診療報酬改定率

2019年10月から適用となる診療報酬改定率が昨年12月に公表され、消費税の引き上げに伴う診療報酬本体の改定率は+0.41%と決まりました。
各科改定率は、医科が+0.48%、歯科が+0.57%、調剤が+0.12%となっています。

2019年10月実施 診療報酬改定率

(2)改定財源の試算

2019年の診療報酬改定の財源は約4,700億円で、そのうち医科については約4,000億円、歯科が約400億円、調剤が約300億円となっています。
2018年7月に開催された「第16回 医療機関等における消費税負担に関する分科会」において、2014年度補てん状況調査に誤りがあったことが報告され、併せて、2016年度補てん状況調査も公表され、全体の補てん不足等が明らかとなりました。
こうした影響により、今次改定では、2014年度の税率5%から8%への引き上げ時の対応分を再度見直し、新たに必要となる財源と2019年改定分を合わせた改定財源が約4,700億円とされました。

今回の改定財源額(本体のみ)

(3)2019年診療報酬改定の基本的な考え方

消費税率の引上げに伴い、医療機関や薬局等の仕入れに係る消費税負担が増加することから、診療報酬において、2014年度改定と同様に、基本診療料・調剤基本料に点数を上乗せすることを中心とし、補完的に個別項目に上乗せする方針を示しました。
その際、直近の通年実績のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)データ等を用いることや、入院料については病院種別や入院料別ごとの入院料シェアを考慮することにより、消費税率が5%から8%に引き上げられた部分も含め、消費税率5%から10%の部分について、消費税負担に見合うような配点を行っています。

2.外来医療の改定内容

外来医療に関しては、初・再診料等、基本診療料を中心とした改定が中心となります。
今回の改定では、初診料は現行の282点から288点(+6点)、再診料は現行の72点から73点(+1点)となる見込みです。
消費税対応分は、初診料288点のうち18点(上乗せ率6.7%)、再診料73点のうち4点(上乗せ率5.8%)となります。
具体的な報酬項目ごとの点数は次のとおりです。尚、妥結率が低い場合とは、許可病床が200床以上の病院において、医療用医薬品の取引価格に関する妥結率のことであり、妥結率50%以下の場合は通常よりも低い点数となります。

外来医療の報酬項目ごとの点数比較

3.在宅医療に関する改定

在宅医療に関わる改定では、在宅患者訪問診療料と訪問看護管理療養費がプラスの改定となる見込みです。
在宅患者訪問診療料は、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)が現行点数から9~55点の上乗せ、在宅患者訪問診療料(Ⅱ)についても現行点数から6点の上乗せが見込まれています。

在宅患者訪問診療料の点数比較

訪問看護管理療養費は、現行金額から20円~130円の上乗せが予定されています。

訪問看護管理療養費の金額比較

2.入院医療における10月改定

1.クリニックの入院基本料に関する改定

クリニックの入院基本料では、有床診療所入院基本料1(14日以内の期間)は、現行の861点から917点(+56点)、有床診療所療養病床入院基本料(入院基本料A)は、現行の994点から1,057点(+63点)となる見込みです。

クリニックの主な入院基本料の報酬項目ごとの点数比較

2.入院基本料・特定入院料の配点

病院の入院基本料と特定入院料等についても改定が行われます。
特定入院料は種類が多く、病院ごとに算定する項目も様々であり、個別の特定入院料ごとに上乗せ率を算出することが困難であるとして、入院基本料と特定入院料について4つに分類し、その分類ごとに入院基本料と特定入院料の入院料シェアをまとめて、補てんの上乗せ率を算出することとしています。

入院基本料と特定入院料の対応関係に基づく分類(4分類)、一般病院(急性期一般入院料届出)の場合

3.病院の入院基本料に関する改定

病院の入院基本料では、急性期一般入院料1は、現行の1,591点から1,650点(+59点)、地域一般入院料1は、現行の1,126点から1,159点(+33点)、療養病棟入院料1(入院料A)は、現行の1,810点から1,813点(+3点)となる見込みです。

主な病院の入院基本料の報酬項目別点数比較

4.その他の主な入院料に関する改定

その他の入院料に関する改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料1は現行の2,085点から2,129点(+44点)、地域包括ケア病棟入院料1は現行の2,738点から2,809点(+71点)となる見込みです。

その他主な入院料の報酬項目ごとの点数比較

3.次期2020年4月改定における検討項目

1.2020年度診療報酬改定に向けたスケジュール

厚生労働省は、3月6日の中央社会保険医療協議会総会に2020年度診療報酬改定に向けた検討のスケジュールを提示し、了承されました。
2018年度診療報酬改定の影響等については、答申附帯意見を踏まえ、検証のための調査結果から具体的な検討をするとしています。
また、医療をとりまく諸課題については2019年夏頃を目途に広く意見交換を行い、10月後半以降に個別具体的な改定項目について議論を本格化させる予定です。
そのほか、保険医療材料専門部会、薬価専門部会、医療技術評価分科会、入院医療等の調査・評価分科会等において、次期診療報酬改定に向けてそれぞれ検討を進める計画です。

次期診療報酬改定に向けた主な検討スケジュール案

2.2020 年度診療報酬改定に向けた主な検討項目

2020年度の診療報酬改定に向けたスケジュールとしては、春から夏までの第1ラウンドでは報酬の項目にとらわれすぎない活発な議論を促進する観点から、患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に課題を整理することに加え、昨今の医療と関連性の高いテーマについて課題の整理を行います。
10月以降の第2ラウンドについては、外来・入院・在宅・歯科・調剤といった個別テーマに分けて、これまでの診療報酬改定での検討項目、2018年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見、他の審議会等の議論等を踏まえて具体的な診療報酬における評価に向けた検討を進め、2020年2月初旬から中旬にかけて答申が行われる見通しです。

議論における主なテーマ

3.2020年度診療報酬改定に向けた議論がスタート

2020年度診療報酬改定に向けた議論は、中央社会保険医療協議会総会で既に始まっています。
4月10日開催時のテーマは、患者の疾病構造や受療行動等を意識した年代別の課題の整理で、そこでは、乳幼児期から学童期・思春期、また、周産期等における疾病構造の違いや、医療提供体制の現状等を踏まえた課題の整理が行われ、その中で以下のような論点が挙げられています。

乳幼児期~学童期・思春期に関する現状・課題と今後の論点

2020年度改定に向けた議論は、これまでにない「年代別の課題」と「医療と関連性の高いテーマの課題」を軸に展開されています。
これらのテーマで議論された結果がどのように個別事項に反映されていくのかが、今後の注目点といえそうです。

 

■参考資料
「中央社会保険医療協議会 総会」資料

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