労働環境の改善や感染症対策に活用可能 助成金・補助金のな要件と申請上の留意点

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

労働環境の改善や感染症対策に活用可能 助成金・補助金のな要件と申請上の留意点

  1. 助成金・補助金の概要と雇用関係助成金の種類
  2. スタッフ雇用等に役立つ雇用関係助成金
  3. 幅広い経費が対象となるコロナ関連補助金
  4. IT導入補助金2021の概要


この記事をPDFでダウンロードする。

 

目次

1.助成金・補助金の概要と雇用関係助成金の種類

1.助成金・補助金等の概要

(1)助成金・補助金の活用に向けた考え方と助成金・補助金等の概要

昨今、新型コロナの影響により、経営に苦労しているクリニックは多く、中には、収入が激減して閉院を考えた先生もいるかと思います。
こうした厳しい環境の下、クリニック経営において助成金や補助金を申請して受け取るメリットは大きく、最大のメリットは、「返済不要のお金がもらえる」ことです。
今回は、クリニック経営において活用できる可能性が高い助成金・補助金を紹介していきます。
助成金とは、主に厚生労働省(地方自治体の場合もある)が所管し、採用、人事制度の新設、訓練など一定の要件を満たすともらえる返済不要なお金で、「キャリアアップ助成金」などがあります。
一方、補助金は、国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、さまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するというものです。
クリニックでは、「新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」や「IT導入補助金」などが受けられる可能性があります。
給付金については、国や自治体を財源としており、受給条件を満たし、申請することで受け取ることができます。
例えば、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」などがこれに該当します。

助成金・補助金等の特徴

(2)助成金・補助金のメリット・デメリット

一般的に資金繰りに困った際には、金融機関等からお金を借りる、つまり融資を受けるということになります。
しかし、どれだけ金利が低くても、借りたお金は返さなければなりません。
一方、助成金や補助金については、返済する必要がなく、かかる費用の一部を負担してくれます。
助成金・補助金のメリット・デメリットをまとめると以下の通りとなります。

助成金・補助金のメリット、助成金・補助金のデメリット

2.令和3年度における雇用関係助成金の種類

厚生労働省が管轄する雇用関係助成金は実に多くの種類があります。
令和3年度における雇用・労働分野の助成金は以下のように設定されており、大きく分けると7つの区分に分かれ、全部で21種類の助成金が設定されています。

雇用関係助成金一覧

次章では、この雇用関係助成金のうちクリニックが活用しやすいと思われる助成金とその要件等を紹介していきます。

2.スタッフ雇用等に役立つ雇用関係助成金

1.各雇用関係助成金に共通の要件等

(1)各雇用関係助成金を受給できる医療機関

雇用関係助成金を受給する医療機関は次の1~3の要件のすべてを満たすことが必要です。

各雇用関係助成金を受給できる医療機関

(2)受給できない医療機関

平成31年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給(※1)による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けた場合、当該不支給決定日又は支給決定取消日から5年を経過していない医療機関(平成31年3月31日以前に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けた場合、当該不支給決定日又は支給決定取消日から3年を経過していない医療機関)は受給できません。
なお、支給決定取消日から5年(上記括弧書きの場合は3年)を経過した場合であっても、不正受給による請求金(※2)を納付していない医療機関は、時効が完成している場合を除き納付日まで申請できません。

※1 不正受給とは、偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受けまたは受けようとすること
※2 請求金とは、①不正受給により返還を求められた額、②不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合で算定した延滞金、③不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額(上記括弧書きの場合を除く)の合計額

この他、以下のいずれかに該当する医療機関は雇用関係助成金を受給することはできません。

各雇用関係助成金を受給できない医療機関

(3)中小企業の範囲

雇用関係助成金には、助成内容が中小企業規模の医療機関と中小企業以外の医療機関とで異なるものがあります。
中小企業の範囲は以下のとおりです。

医療機関における中小企業の範囲

(4)生産性要件について

事業所における生産性向上の取組みを支援するため、雇用関係助成金を受給する医療機関が一定の要件を満たしている場合に助成金の割増等を行います。
生産性要件の対象となる助成金は限定されているため、申請前に確認しておくことが必要となります。

2.トライアル雇用助成金の概要

スタッフ雇用はクリニック経営において悩みが多い部分です。
可能であれば、試用期間を設けて適切な人材がどうかを見極めたいところです。
トライアル雇用助成金は、職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用する医療機関に助成し、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者および求人者の相互理解を促進すること等を通じて、これらの者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的とした助成金です。

トライアル雇用助成金の支給額

3.キャリアアップ助成金の概要

医療機関で採用ケースが多い、有期雇用職員、短時間職員、派遣職員といったいわゆる非正規雇用の職員について、医療機関内でのキャリアアップを促進する取組を実施した医療機関に対して助成するものです。
本助成金は次の7つのコースに分けられています。

キャリアアップ助成金の各コース

のうち正社員化コースでは、次表の額が支給されます。
ただし、対象職員の支給申請人数は、1年度1事業所当たり20人までを上限としています。

正社員化コースの支給額

3.幅広い経費が対象となるコロナ関連補助金

1.新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金

政府は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、緊急的臨時的な対応として都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関(仮称)の発熱患者等に対する診療・検査体制の確保及び医療機関・薬局等の医療提供体制の確保を図るため、診療・検査医療機関をはじめとする対象医療機関等の感染拡大防止対策等に要する費用を補助しています。
本補助金は、原則として、「令和2年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」による補助を受けた医療機関等は対象外となります。
ただし、同補助金の申請日以降に新たに診療・検査医療機関の指定を受けた医療機関については、同補助金の補助基準額(上限額)が本補助金の補助基準額(上限額)より低い場合は、差額について本補助金の申請をすることができます。

(1)診療・検査医療機関の感染拡大防止等の支援

診療・検査医療機関は、都道府県の指定に基づき専ら発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関であり、新型コロナの感染が急速に拡大する中で、院内等での感染拡大を防ぎながら発熱患者等に対する診療・検査を提供することができるよう、緊急的臨時的な対応として、感染拡大防止等の支援を行うため補助金が設定されました。

事業内容

(2)医療機関・薬局等の感染拡大防止等の支援

新型コロナの感染が急速に拡大する中で、医療機関・薬局等においては、それぞれの機能・規模に応じた地域の役割分担の下で、必要な医療提供を継続することが求められます。
医療機関・薬局等において、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供することができるよう、緊急的臨時的な対応として、感染拡大防止等の支援を行うため補助金が設定されました。

事業内容

(3)補助金に関するQ&A

上記の2つの補助金の事業内容について、厚生労働省から「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金に関するQ&A」が公表され、対象費用については、感染拡大防止対策に要する費用だけにとどまらず、日常業務に要する経費など幅広く対象としています。以下、参考となる部分を抜粋して紹介いたします。

補助金に関するQ&A

2.その他医療機関等への補助

上記に紹介した補助金の他にも「医療資格者等の労災給付の上乗せを行う医療機関等への補助」が受けられる可能性があります。
この事業は、新型コロナへの対応を行う医療機関等において、勤務する医療資格者等が感染した際の労災給付の上乗せ補償を行う民間保険に加入した場合に、保険料の一部を補助し、医療資格者等の収入面の不安等を解消して離職防止等につなげ、新型コロナ対応医療機関等の運営の安定を図るものです。
対象医療機関は、都道府県等の要請を受けて新型コロナへの対応を行う保険医療機関として限定されていますので注意が必要です。
補助基準額は、年間の保険料の一部(2分の1)、1人あたり1,000円を上限としています。
詳しくは、厚生労働省が公表している「令和3年度新型コロナウイルス感染症対応医療機関労災給付上乗せ補償保険加入支援事業」で事業内容を確認できます。
また、都道府県に申請を要する補助事業もあり、自院管轄の都道府県ホームページ等で事業内容が確認できます。

4.IT導入補助金2021の概要

1.IT導入補助金2021の事業目的・概要

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金で、通常枠(A・B類型)と、低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)があります。

(1)通常枠(A・B類型)の事業目的

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
自院の置かれた環境から強み・弱みを認識、分析し、把握した経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、業務効率化・収入アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としています。

(2)低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)の事業目的

低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、新型コロナウイルス感染症の流行が継続している中で、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて、労働生産性の向上とともに感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するような業務形態の非対面化に取り組む中小企業・小規模事業者等に対して、通常枠(A・B類型)よりも補助率を引き上げて優先的に支援するものです。

IT導入補助金2021の全体図

(3)補助対象経費

補助の対象となる経費は、ソフトウェア費、導入関連費で、低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)はこれに加えハードウェアレンタル費等が対象となります。

(4)補助金の上限額・下限額・補助率

補助金の上限額・下限額・補助率は、類型によってことなります。
自院が申請する類型と照らし合わせて確認して下さい。

IT導入補助金2021の全体図

2.IT導入補助金2021の補助対象となる事業

補助対象となるクリニックは、一定の要件を満たすことが必要になります。
主な要件は以下のとおりです。

IT導入補助金2021の補助対象となる主な要件

3.IT導入補助金2021の類型判別チャート及びスケジュール等

(1)類型判別チャート

交付申請にあたり、類型の判別を行う際は下記の類型判別チャートを参考にして下さい。

類型判別チャート

(2)スケジュール等

IT導入補助金2021の1次交付申請は既に終了し、2次交付申請締切日が2021年7月30日、3次交付申請締切日は9月の予定です。
申請を検討する際には、事前に日程と「IT導入補助金2021 公募要領」を確認しておくことをお勧めします。

申請・手続きフロー

 

■参考資料
厚生労働省:令和3年度 雇用・労働分野の助成金のご案内
      「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金」について
一般社団法人 サービスデザイン推進協議会:IT導入補助金2021

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。