- 2018年 経営実績とその傾向
- 2018年 収入上位診療所の経営実績
- 2018年 収入ランク別経営実績
- 2018年 医療法人経営指標分析結果
1.2018年 経営実績とその傾向
1.2018年経営実績の概要
本調査は2018年の決算書に基づいて、実数値から経営状況を把握することを目的としています。
その上で、連続して調査を実施している2017年との比較を通して、改善または悪化の状況を分析しています。
抽出したデータは、2018年に決算を終えた歯科診療所306件(医療法人87件、個人開業219件)の数値を抽出し、平均値を算出しています。
なお、本分析では、人件費から役員報酬と専従者給与は除いています。
2.全体動向と利益の傾向
(1)全体動向
2018年における歯科診療所の経営実績は、2017年と比較して増収増益となりました。
過去の本調査データでは、2012年から増加に転じており7期連続での増加となっています。
保険診療収入は1.2%増、自由診療収入は5.3%増加しています。
(2)利益状況
限界利益、医業利益ともに増加し、限界利益が対前年比102.1%、医業利益は同107.9%という結果となりました。
3.医業収入の傾向
医業収入の実績は、下記のとおりです。
医業収入合計では、対前年比102.2%を示し、保険診療収入が1.2%、自由診療収入が5.3%の伸びとなっています。
4.医業費用の傾向
(1)医業費用対前年比較
医業費用の実績は、次のとおりです。
変動費は2.4%増加し、人件費は3.0%の増加、その他固定費は0.2%増加しました。
(2)医業費用の傾向
(3)参考 役員報酬・専従者給与
個人開設と医療法人を合算して集計したため、人件費から役員報酬と専従者給与は除いています。
別途集計した専従者給与と役員報酬を合算した平均値は、以下のとおりです。
5.2018年と過去推移分析の概要
本調査は2012年から毎年4月に実施し、経営実績レポートとして提供してきました。
今回は、はじめに2018年から診療報酬改定年度に合わせ、時系列に遡りその傾向を分析します。
本来であれば患者数や患者単価といった原単位に基づき分析すべきですが、各年度の決算書実数値をベースにしていますので、実数値から傾向を分析します。
なお抽出データは、人件費から役員報酬と専従者給与を除いています。
6.過去推移全体動向
2012年からの実績を時系列にみると、歯科診療所の経営実績は、2012年と比較して増収増益となりました。
医業収入は4.9%、うち保険診療収入は2.0%の増加、自由診療収入は18.3%増加しています。
変動費は6.2%の増加となりました。
限界利益は4.6%の増加、また医業費用が5.6%の増加となり、医業利益は3.2%の増加となりました。
7.医業収入の傾向
診療報酬改定率は次ページのとおりの推移で、いずれもプラス改定となっています。
2010年に民主党政権下で診療報酬改定が実施され、10年ぶりのネットプラス改定となりました。
その流れは2012年にも継承され、1.38%(5,500億円相当)の診療報酬本体の引上げが行われました。
また、2014年の診療報酬改定は、消費税率引上げに伴う医療機関等の課税仕入れにかかるコスト増への対応分が盛り込まれました。
その後、大幅なアップではありませんが、プラス改定は続いています。
推移状況から、保険収入は2.0%、自由診療が18.3%の大幅な伸びとなっています。
歯科診療所数の増加による競争が激化しているためと、予防歯科等と合わせ自由診療への取組みがなされている結果と考えられます。
2018年は、2012年と比較して金額で2,635千円の増加となり、自由診療の増加は1,611千円となっています。
8.医業費用の傾向
医業費用の実績は、次のとおりです。
変動費は6.2%増加し、人件費は17.8%の増加、その他固定費は1.7%減少しました。
2014年以降は消費税が8%にアップしたことで、コスト削減に対する意識が高まった時期といえます。
ただ最低賃金の上昇により、受付や歯科助手の一般職の多い歯科診療所にとって人件費の増加は避けられませんでした。
そこで、データのベースとなっている都道府県における最低賃金の推移を比較してみます。
2.2018年 収入上位診療所の経営実績
1.収入上位診療所の経営実績の概要
第2章で分析した歯科診療所306件(医療法人87件、個人開業219件)の決算書より、医業収入上位20%を抽出し、経営データを集計しました。
対象は61件で、内訳は医療法人46件、個人開業15件となっています。
2.収入上位診療所の動向と利益の傾向
(1)経営動向と利益状況
2018年歯科診療所全体の経営実績と同様、収入上位診療所も増収増益となりました。
保険診療収入、自由診療収入とも増加しています。
(2)利益動向
限界利益、医業利益の双方が増加となりました。
限界利益が対前年比105.2%、医業利益は同104.7%という結果となりました。
3.医業収入の傾向
収入上位診療所の医業収入の実績は下記のとおりです。
医業収入合計では、対前年比104.9%となっています。
保険診療収入、自由診療収入とも伸びを示しています。
(1)医業収入 対前年比較
(2)医業収入分析結果
4.医業費用の傾向
(1)医業費用対前年比較
医業費用では、変動費は3.5%、人件費3.9%、その他医業費用は7.6%、それぞれ増加しています。
(2)医業費用分析結果
(3)参考 役員報酬・専従者給与
第2章と同じく、参考として役員報酬と専従者給与を合算した平均値は、以下のとおりです。
3.2018年 収入ランク別経営実績
1.収入ランク別経営実績の概要
本分析で抽出したデータは、2018年に決算を終えた歯科診療所306件(医療法人87件、個人開業219件)から、医業収入が年間5千万円未満、5千万円以上1億円未満、1億円以上に分けて、分析しました。
第2章のデータ同様、個人開業に統合したため、人件費から役員報酬と専従者給与は除いています。
医業収入別の個別データは、次ページ以降に掲載しました。
収入ランク別に集計した主要データは、下記のとおりです。
2.収入ランク別診療所経営実績分析結果
(1)医業収入5千万円未満の診療所の平均データ
医業収入50,000千円未満診療所の歯科診療所は、減収減益となりました。
医業収入は541千円減(対前年比1.7%減)、また医業利益は528千円減(同6.6%減)となり、減価償却費や接待交際費も減少していますが、医業収入のマイナスの方が上回った結果です。
(2)医業収入5千万円~1億円の診療所の平均データ
医業収入5千万円~1億円の歯科診療所は増収減益となりました。
医業収入は1,447千円増加(対前年比2.1%増)、医業利益は、90千円減少(同0.4%減)となりました。
(3)医業収入1億円以上の診療所の平均データ
医業収入1億円以上の歯科診療所は、増収減益の結果となりました。
医業収入は、9,911千円増加(対前年比6.8%増)、医業利益は3,319千円増(同8.9%増)となりました。
4.2018年 医療法人経営指標分析結果
1.医療法人経営指標分析結果
本章では、医療法人歯科診療所81件の貸借対照表の数値から経営指標を算出し、収益性、生産性、安全性、成長性の4つの視点で分析を行いました。
第3章までの分析は、医療法人・個人開業のデータを合算しましたが、経営指標分析においては医療法人歯科診療所を対象としています。
■2018年 比較損益計算書 医療法人無床診療所平均
経営分析に必要となる主要損益数値は、次のとおりです。
役員及び職員数についてはその平均値から、役員4名および、職員数6名の計10名で計算しています。