- 2020年診療報酬改定に向けた検討と進め方
- 医療・介護及び他医療機関との連携強化
- 外来・在宅医療と介護連携の強化
- 入院医療への対応と今後の経営対応策
1.2020年診療報酬改定に向けた検討と進め方
1.2020年診療報酬改定の方向性
(1)2018年改定の基本方針からみる2020年改定の行方
2018年診療報酬改定では、地域包括ケアシステム構築のための取組強化の一環として、多職種間連携の強化などの活動を推進してきました。
この2018年改定の基本的な方向性は2020年改定も継続させていくものと考えられます。
その中でキーワードとなる言葉は連携です。特に2018年は6年に一度の診療・介護報酬の同時改定年度であり、医療・介護両制度にとって重要な節目となりました。
2018年改定の基本認識として、医療機能の分化・強化および連携や、医療と介護の役割分担と切れ目のない連携を着実に進めることが重要であるとしています。
(2)2018年診療・介護報酬同時改定のポイント
2018年の診療報酬改定では、医療・介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域で、できるだけ長く暮らせるようにしたいという考えのもと、医療・介護の役割分担と連携強化、そして地域包括ケアシステムの推進が更に図られてきました。
また、重症化予防の取組の推進や質の高い在宅医療・訪問看護の確保等が進められてきました。
診療報酬については、今までのサービス提供自体を評価する体系からアウトカム中心とする成果報酬体系へと変化してきました。
2.2020年診療報酬改定に向けた検討
2020年度診療報酬改定に向けた検討においては、春から夏までの第1ラウンドでは患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、年代別に課題を整理し、昨今の医療と関連性の高いテーマについて課題の整理を行います。
秋からの第2ラウンドでは、外来・入院・在宅・歯科・調剤といった個別テーマに分けて、これまでの診療報酬改定での検討項目、2018年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見や他の審議会等の議論等を踏まえて、具体的な診療報酬の検討を進める予定です。
2.医療・介護及び他医療機関との連携強化
1.医療機関が目指す方向性
2016年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)の交付を得て実施された「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業報告書(調査報告:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)」において、サービス事業者である法人の今後の選択肢として、次の4点が挙げられています。
このうち、(1) の「現状維持」は「利用者からみた一体的なサービス提供」を前提とすると、小規模法人が現状のまま持続可能なサービス提供体制を構築していくことは、今後ますます困難になると考えられています。
一方、法人規模の大小に関わらず、(2) から(4) のいずれかの選択については、地域ニーズに応えるため、また法人の経営の持続性の観点からも不可欠なものだといえます。
2.医療・介護連携の重要性
(1)同一法人内等の連携を評価
2018年診療報酬改定では、入院医療機関と退院後の在宅療養を担当する関係機関間での連携を推進する観点から、入退院時の連携を評価した報酬のうち、入院医療機関が連携先の医療機関と「特別の関係」に当たる場合も算定可能となるように見直されました。
今までは、同一法人内における患者の囲い込みは評価していませんでしたが、患者視点からは、法人内ネットワークでは退院がスムーズとなり、地域で長く暮らせることに繋がるとして、2018年改定では同一法人内での連携を評価することとなりました。
(2)法人内・法人外の連携強化
切れ目のない医療・介護を提供するため、医療・介護側それぞれで入退院支援と在宅医療を促す様々な取組や評価が行われています。
具体的には、入退院をスムーズなものとするため医療機関での入退院支援を診療報酬で評価し、その際の介護側の役割を介護報酬で評価することとなりました。
また、退院後の患者が在宅療養を継続していくため、在宅医療と外来医療の現場における医療・介護連携について、診療報酬と介護報酬で評価しています。
この医療・介護連携に関する評価体制は、2020年度改定以降も続くと考えられます。
3.外来・在宅医療と介護連携の強化
1.外来医療と介護連携
外来においては、認知症患者に全人的な医療を行う主治医機能を評価した報酬や、要介護被保険者等のリハビリテーションを医療保険から介護保険へスムーズに移行するための報酬等、地域包括ケア体制の実践に資する報酬があります。
患者数の維持・向上のためには、医療機関における介護部門の強化(特にケアプランの強化)や、介護との連携強化・退院支援が重要です。
また、維持期・生活期のリハビリテーションへの対応を円滑にするため、新しく設けた共通様式を使用して、医療機関から介護保険のリハビリテーション事業所に情報提供した場合の評価の新設や、介護保険の「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業(VISIT)」で活用可能な電子媒体で、計画書を提供した場合の加算を設ける等、医療と介護の連携強化に向けた取り組みを強化しました。
更に、地域の医療機関で一貫したリハビリを提供するため、施設基準を緩和しています。
2.在宅医療と介護連携
在宅医療については、訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所等、地域のあらゆる関係機関と連携して患者を支える仕組みが作られています。
診療報酬についても関係機関との連携に伴う評価を設け、地域包括ケアシステムの推進を図っています。
また、医療機関にとって関係機関との連携強化は、診療報酬を算定できる以外にも患者の相互紹介による安定経営のメリットがあります。
今後、外来医療需要が減少し、在宅医療への需要が増加することが見込まれている中、どのように在宅医療に関わっていくのかを考えることが必要となります。
以下は、(1) 要介護5の判定を受けて自宅で療養中の在宅療養患者で、(2) 強化型ではない在宅療養支援診療所から月に2回の定期的な訪問診療を受けながら、(3) 訪問看護ステーションから訪問看護、(4) 在宅療養支援歯科診療所から訪問診療を受けているケースにおける報酬等の算定例を示しています。
また、在宅患者の緊急時における医療関係職種等がカンファレンスを行うことにより算定できる報酬があるなど、在宅医療は関係機関との情報共有が重要だといえます。
4.入院医療への対応と今後の経営対応策
1.入院医療はベッドコントロールがポイント
今後の入院医療で最も重要なのは、ベッドコントロール(入退院調整)です。
適切な入退院支援(退院計画の実行)は、入院患者と外来患者双方の確保につながります。
退院支援に係る報酬の算定要件を確実にクリアして算定するとともに、先行してベッドを満たす取り組みを継続することが重要です。
後方支援病院(介護老人保健施設含む、以下後方支援病院等)については、ベッドコントロールのポイントの一つである病床稼働率を上げるために、急性期病院等に選ばれる後方支援病院等であることが必要となります。
例えば、入院受け入れの依頼に対し、すぐに受け入れ可能である旨を回答するケースと、時間が経過してから受け入れを断るケースとでは相手に与える印象が大きく異なります。
受け入れの打診があった場合は、可能か否かについてなるべく早く相手方に回答し、かつ適切に対応できることが求められます。
また、後方支援病院等が紹介先から継続的に患者を紹介してもらうためには、先方との信頼関係が重要です。
重要なのは、紹介先へのお礼と早めの報告であるとともに、詳細に情報共有することが連携・信頼関係の確保につながることを、職員個々が理解していることです。
例えば、報告を行う際に患者がリハビリを行っている写真や動画等を添えるなど、前向きに頑張っている様子等がわかるように伝えることで紹介先への印象が良くなり、次の紹介につながる可能性が広がります。
2.今後の経営対応策
2020年診療報酬改定に向けた医療機関の対応としては、患者にとって切れ目のないサービスをどのように提供していくのかを考えることが重要です。
患者の価値を中心に考えると、法人内でサービス提供を完結できるのであれば、法人内での連携強化が重要となり、一方、法人内で完結できない場合には、連携機関との関係強化がより重要な意味を持つため、これらに向けた取り組みを一層推進することが必要です。
■参考資料
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第411回)
「2020年度診療報酬改定に向けた検討項目と進め方について (案)」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業報告書」
関東信越厚生局ホームページ 「在宅医療・介護連携における診療報酬と介護報酬」