- 2022年度 診療報酬改定の概要
- 紹介・逆紹介割合は連続する6か月の割合を報告
- 医師事務加算は雇用形態に関係なく通算可能
- 感染対策向上加算は掲示事項が具体化展望
1.2022年度 診療報酬改定の概要
1.2022年度診療報酬改定の方向性
新年度となり、多くの医療機関で改定の対応に追われていることかと思います。
改定後間もなく、厚生労働省より多くの疑義解釈が出され、診療報酬について詳細な内容が決定されています。
本章では診療報酬改定の概要をおさらいし、次章以降では厚生労働省からの疑義解釈をいくつかピックアップしてご紹介します。
疑義解釈の内容については作成の都合上、令和4年4月21日までのものとなります。
今回の改定率は、診療報酬本体部分が0.43%引き上げられた一方で、薬価、材料価格の引き下げの影響により、全体改定率は0.94%のマイナス改定となりました。
2020年度の改定と同様に、全体改定率は引き下げられましたが、本体部分のプラス改定は今回で8回連続です。
本体部分の引き上げ幅には、看護職員の処遇改善への特例的な対応と不妊治療の保険適用のための特例的な対応の財源として、それぞれ0.2%、合わせて0.4%のプラス要因が含まれます。
その一方で、一定期間は再診を受けなくても繰り返し使える「リフィル処方箋」の導入・活用促進による効率化によりマイナス0.1%、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来でマイナス0.1%、合わせて0.2%のマイナス要因が含まれ、実質的な引き上げ幅は0.23%となっています。
2.これまでの診療報酬改定率の推移
2000年度からの診療報酬改定率をみると、2008年度から本体はプラス改定、薬価はマイナス改定という状態が続き、2016年度以降は全体としてマイナス改定となる状態が続いています。
3.改定の基本的視点と具体的方向性
今回の改定では、次のような基本的視点と具体的方向性を明示されています。
現時点では特に重点課題である新型コロナウイルス感染症などに対する「感染対策向上加算」について、他の項目に比べて多くの疑義解釈が出されています。
2.紹介・逆紹介割合は連続する6か月の割合を報告
1.初診料、外来診療料
「特定機能病院」と一般病床200床以上の「地域医療支援病院」及び「紹介受診重点医療機関」で算定する初診料と外来診療料の減算規定について疑義解釈が出されました。
紹介割合と逆紹介割合の計算対象期間は今年度中の任意の連続する6か月の紹介割合と逆紹介割合を地方厚生局へ報告することとなりました。病院の種類ごとに減算の基準が設けられており、基準に達しない場合は減算対象となります。
2.外来栄養食事指導料
外来栄養食事指導料の悪性腫瘍患者に対して指導する管理栄養士の規定について疑義解釈が出されました。
算定にあたり「がん病態栄養専門管理栄養士」の研修を終えて、認定証が発行されている必要があります。
また、患者への指導時間や指導回数についても疑義解釈が出され、特段の基準はなく、患者にあわせて個別に設定してよいことになりました。
3.生活習慣病管理料
生活習慣病管理料の患者の治療管理の際に関わる「職種」について疑義解釈が出されました。
理学療法士は「多職種」に該当し、保健所職員や他の医療機関職員についても該当になります。
注意する点は総合的な管理は医師が行い、保健所職員や他の職員に指示した内容については療養計画書と診療録に記載することが要件となります。
4.外来在宅共同指導料
外来在宅共同指導料の共同指導のタイミングについて疑義解釈が出されました。
必ずしも初回に実施する必要はないことになりました。
なお、外来在宅共同指導料は「患者1人につき1回限り」算定ができるものなので、算定回数には注意が必要です。
3.医師事務加算は雇用形態に関係なく通算可能
1.医師事務作業補助体制加算
医師事務作業補助体制加算の施設基準について疑義解釈が出されました。医師事務作業補助者の3年以上の勤務経験は他の保健医療機関での経験年数と合算することはできませんが、雇用形態に関しては勤務経験年数を合算することが可能となりました。
また、配置区分ごとに配置基準の数を5割以上にすることとなりました。
なお、病床種別ごとに15対1、20対1等の異なる配置区分での届出は可能ですが、同一医療機関で医師事務作業補助体制加算1と2の届出を併せて行うことはできません。
2.療養病棟入院基本料
療養病棟入院基本料の注について疑義解釈が出されました。
中心静脈栄養を実施している患者に対して嚥下機能に係る検査等の必要性を定期的に確認することにより、摂食機能または嚥下機能の回復に係る実績を有する必要はないこととなりました。
3.一般病棟用の重症度、医療・看護必要度
看護必要度のA項目には様々な変更があり、「点滴ライン同時3本以上」から「注射薬剤3種類以上」に変更され、疑義解釈が出されました。
カウントされる注射薬剤の中でビタミン剤を含めることができる場合について明示されました。
なお、対象になるのは「ビタミン剤が薬事承認の内容に沿って投与された場合のみ」なので注意してください。
4.投薬
今までは湿布薬の処方枚数が1処方あたり70枚と制限されておりましたが、今回の改定にあたって63枚までの制限となりました。
「63枚」という枚数制限は「湿布薬の種類ごと」の上限ではなく、「1処方の中での湿布薬の合計」の上限ですので、注意してください。
なお、63枚を超えて処方する場合は処方箋及び診療報酬明細書内に「疾患の特性等によりやむを得ず処方した理由」を記載する必要があります。
5.リフィル処方箋
今回の改定から始まった「リフィル処方箋」について疑義解釈が出されました。
リフィル処方を行う薬剤と行わない薬剤がある場合や、処方箋1回の使用による投薬期間が異なる医薬品がある場合は医薬品ごとに処方箋を分ける必要があることとなりました。
4.感染対策向上加算は掲示事項が具体化
1.外来感染対策向上加算・感染対策向上加算
2022年度診療報酬改定では感染防止対策の強化が進められ、診療所における外来診療時の感染防止対策に対する評価が新設されました。
外来感染対策向上加算及び感染対策向上加算について疑義解釈が出され、院内での感染防止対策についての取組みとして「基本的な考え方」「組織体制」「業務内容」「抗菌薬適正使用のための方策」「他の医療機関等との連携体制」について掲示することとなりました。
また、感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関が感染対策向上加算2または3の届出を行っている複数の医療機関と連携している場合は個別ではなく、合同でカンファレンスを開催してよいこととなりました。
新興感染症が発生した際に都道府県等の要請を受けて診療を実施する体制を有し、自治体のホームページにて公開されていることが施設基準の要件となっています。
自治体のホームページにて公開されるべき情報が明示されました。
「保険医療機関の名称」「所在地」「確保病床数」「対応可能な時間」などとなりましたが、重点医療機関や診療・検査医療機関によって公開する内容が異なります。
また、自治体のホームページが更新されない場合は更新されるまでの間、医療機関のホームページにて公開されていればよいこととなりました。
外来感染対策向上加算と感染対策向上加算については、掲載する疑義解釈以外にも複数回にわたって多くの疑義解釈が出されています。
厚生労働省のページをご確認ください。
2.その他横断的事項
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点などから、オンライン研修の需要が高まっています。
今回、オンライン研修についての疑義解釈が出されました。
基本的には研修を実施することは可能ですが、出席状況や理解度が確認できる状況及び双方向にコミュニケーションが取れる状況であるかに留意しながら実施する形となります。
一例には受講生がリアルタイムに受講できているかを主催者側が確認しなければならないような仕組みなどがあげられていました。