逆風下でも経営を安定させる現状分析から 取り組む 収益改善のポイント

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逆風下でも経営を安定させる現状分析から 取り組む 収益改善のポイント

  1. 原単位分析から立案する収入増加策
  2. 来院患者の把握と満足度向上による増患対策
  3. 広報活動の見直しで実現する増患対策
  4. 徹底したコスト管理による増益対策

 


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1.原単位分析から立案する収入増加策

歯科医院の増患・増収対策を検討する際、多くの院長は広報活動を考えがちですが、自院の状況を細かく分析した上で対策を検討しなければ、効果がほとんど表れない、という結果につながります。
自院分析の結果、得た多くの項目を改善もしくは見直しをするだけで増収につながるということがあります。
また、患者の1日当たりの診療単価やレセプト単価等の原単位分析をすることも改善につながります。
まずは自院の診療の原単位分析、患者分析、認知活動分析、コスト分析等を行い、具体的な増患・増収対策を構築することがポイントです。

1.診療単価の把握と増収対策の立案

(1)レセプト単価分析

まずは毎月のレセプト単価を調査します。
各都道府県によって各単価平均は異なっているため、自院の単価が地域の平均値と比較し、平均値より高いのか低いのかを把握する必要があります。
高すぎだと調査の対象になる可能性があり、低すぎだと治療内容や検査内容が不足している可能性や、点数の請求漏れも考えられます。

都道府県別レセプト単価の平均値

患者一人が月に何回来院しているか、1日当たりの診療単価は何点かを分析します。
自院の患者一人の1日当たりの診療単価は、前記のレセプト単価と同じく、治療内容や検査内容の不足がないか、施設基準等や治療点数の請求漏れがないかのチェックにつながります。

都道府県別患者一人当たりの来院平均回数と1日当たりの診療単価

(3)原単位分析からの増収対策

自院の原単位分析と都道府県別の平均値と比較し、自院の単価が低い、来院回数が少ない等があれば、改善の余地があります。
レセプト単価、患者一人の1日当たりの診療単価が低いという事であれば、診療内容や検査に不足がないか、診療点数の算定漏れや診療自体に治療不足がないかを点検します。
来院回数が少なければ、月ごとの患者の診療回数の見直しも検討事項です。
患者の病状により、手掛けられる治療内容や検査内容も違ってきますし、1日でも早く治療を終了して欲しいという患者の希望もあります。
治療後の経過観察で治療計画が変わってくる場合は、各都道府県別の平均値を参考に、自院の患者数と関連して適切な治療計画を策定する必要があります。
患者の満足度向上は、必ず行う必要がある取り組みです。
治療の実情と患者の気持ちを合わせて、判りやすい説明をすることがポイントです。

原単位分析からの治療計画の見直し

2.治療計画説明のポイント

レセプト単価、1日当たりの診療単価を見直すために、新たな治療計画を立案すると、患者からクレームが来る可能性があります。
事前に治療計画についての説明がポイントとなり、カウンセリングや検査から患者の状況を詳細に把握し、その状況にあった治療計画を策定し、コミュニケーションを取ってわかりやすい説明を行うことです。
効率的に治療計画説明を行うために、スタッフにはマニュアルを、患者にはビジュアル化されたツール類を使います。
患者には、目と感覚に訴えるツール類を用意し、興味を持つような場面を設定します。

説明ツールの整備ポイント

2.来院患者の把握と満足度向上による増患対策

増患・増収対策には、自院の立地特性による患者層、年齢層を把握・分析することがポイントです。
そこから、ターゲットを絞りこみ、対策を立案し、具体策を構築することが重要です。

1.立地特性と来院理由の把握

自院がどの地域のどのエリアにあるかを確認し、患者の来院理由を把握する必要があります。
患者アンケートの中で、診療所を選択した理由の上位には、「近いから」という項目が上がってきます。
何によって診療所を知ったかという質問には、「ホームページ等のインターネットによって」という回答も多いのですが、地域によっては「通りがかりに見た」という回答も多くあります。
診療所の立地によっては、年齢層にも違いがあります。
オフィス街や市街地では30歳代の独身女性や一般サラリーマンが多く、住宅街は平均して多くの世代が来院し、専業主婦、子供、高齢者など社保家族や国保などが多くなります。

立地による来院理由、立地による患者の年齢層

2.歯科医院の患者ターゲット

保険診療、自費診療によって患者の年齢層が違います。
自院に適した患者ターゲットを絞り、そのターゲットに合わせた増患・増収対策を構築する必要があります。

年齢別患者構成比、年代別自費患者数

3.医院内部で取り組む増患対策

新規患者獲得に成功している歯科医院に共通していることは、紹介(口コミ)患者が順調に増加していることです。
それぞれの医院では、医院内部に向けたプロモーション活動を行っています。

(1)紹介(口コミ)を増やしていく方法(口コミの3原則)

紹介(口コミ)を増やしていく方法(口コミの3原則)

「患者満足度」・「意外性」・「仕掛け」この3つがうまくかみ合うことによって口コミ患者を増やすことができます。

(2)患者満足度向上への取組

患者満足度向上への取組

患者満足度を向上させるためには、より良い医療技術・医療サービス提供はもちろんのことですが、医療行為プラスアルファのサービスの充実が求められています。
院長・スタッフの接遇サービス、院内安全対策、アメニティーの充実、広報活動など総合的な取組が必要です。

3.広報活動の見直しで実現する増患対策

多くの歯科医院では継続した広報活動として、医院看板(建物設置や自立看板)、野立て看板、情報誌への広告掲載、ホームページの作成等を行っています。
近年は広告媒体の変化により、SNSを中心にした広報活動に移行してきています。
高齢者はSNSをあまり利用しない、という固定観念で取り組みを控えている歯科医院もありますが、実際には高齢者本人、または家族によってSNSから情報を集めていることもめずらしくありません。
既存の広報活動を分析し、見直すことも必要になってきています。

1.既存の広報活動分析

現在行っている広報活動での患者の来院動機を調査する必要があります。
既存患者には十分に認知されているため必要のない看板や広告、看板自体の改修の有無を確認するほか、近年の広報活動の主流であるSNS関連に移行を計画するなど、根本的に広報活動を策定しなおすことの検討も必要です。

既存広報活動の確認と見直し

2.SNSを利用した広告への移行

(1)インターネット・SNS広告の種類

インターネットやスマートフォンの普及から、ホームページやSNSを活用した広告が増加しています。
LINE、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムや、それらと自院ホームページとのリンクで、より効果的な広報ツールとなっています。

インターネット・SNS広告の種類

(2)インターネット広告の目的とアピール方法

インターネット広告の目的は、素早く、確実にサイトへのアクセスをすることにあります。
インターネット上で歯科医院の存在を周知してもらい、治療への関心を持ってもらうことで来院を促すには、自院のウェブサイトに潜在的患者を引き付けることがポイントです。

3つのウェブサイトへのアクセス獲得アピール方法

(3)インターネットの利用時間の変化と効果

インターネットは、いつでもどこでも、という時間や場所に縛られないで情報収集が可能であるという利便性からも需要が広がっています。
広告媒体側の都合で告知されるのと違い、利用者の都合にあわせて情報収集と確認ができるという環境が、より効果を上げています。

利用者の都合による利用時間

3.インターネット広告作成時のポイント

歯科医院のインターネット活用による広告活動の改善としては、ホームページをスマートフォン対応にし、端末画面で見やすいようにしなければなりません。
地図や院内情報もパソコン上のホームページより簡略なものにし、受け手側が判りやすい表示の仕方にします。
また、SNSではできるだけ投稿掲載を行い、アクセス回数の確保を図り、ホームページへのリンクを貼って、情報提供のツールを増やすことです。

ホームページ等インターネット広告作成時のポイント、SNSとホームページの活性化のポイント

4.徹底したコスト管理による増益対策

徹底したコスト管理を行い、コストを削減することは利益に直結します。
多くの歯科医院は、医業収入の増加には熱心に取り組みますが、消耗品などの経費削減は後回しになっています。
コスト管理は収入増加と同じウェイトで、日頃からしっかり行うことが重要です。
大きな金額を下げることは難しいと考える院長もいますが、常に無駄な経費を探して平素から着実に行うことが、歯科医院の存続につながります。
固定観念を捨てて、「ゼロベース」ですべての経費の見直しを行いましょう。

1.コスト削減のための4つの鉄則

コスト削減に取り組む上で徹底しなければならない鉄則が4つあります。
一つ目はコスト削減への方針を明示すること、二つ目はリーダー職が率先してコスト削減を徹底して取り組むこと、三つ目はスタッフ全員に当事者意識を持たせること、最後にお金を掛けない方法を考えることです。

(1)コスト削減に関する方針を示す

コスト削減は、まず院長が明確な方針を示す必要があります。
コスト削減を推進する際に、賃金制度の見直しや取引先の変更等、経営者でなければ決定を下すことができない項目があるからです。

全体フロー

(2)リーダー職が率先してコスト削減を徹底する

コスト削減の推進には、スタッフ全員の取組による業務改善が不可欠です。
スタッフの協力を得るためには、特に院長が明確な方針を示し、リーダー職が率先してコスト削減を推進していくことで、一般のスタッフも納得してコスト削減に取り組むようになります。

(3)スタッフに当事者意識を持たせる

コスト削減を進めようとしても、スタッフが協力してくれないケースがあります。
自分のお金であれば、「もっと安いものを」と考えたり、「まだ使えるから買わない」と思ったりするものですが、医院のお金なら気にならないといった当事者意識の欠如が、コスト削減において一番の問題点です。
コスト削減をしないと自院の経営が成り立たないし、安定した経営のためにはスタッフの給料をカットする可能性もあるという危機感を醸成して、スタッフに当事者意識を持たせることがポイントです。

(4)お金を掛けない方法を模索する

医業収入を上げるためには、最小限のコストで最大の成果を挙げなければ、必要な利益を確保することはできません。
従来なら多額の広告宣伝費を投じて、看板設置や地下鉄駅への広告掲載などでしたが、現在ではホームページがその役目を果たし、ブログやツイッター、フェイスブックなどのSNSで、多くの人に情報提供を行うことが可能となりました。
最小限のコストで最大の成果を挙げられる方策を日々模索することで、他の経費にも良い影響が期待できます。

2.変動費分析および見直しのポイント

(1)変動費分析によるコストの洗い出し

コスト変動費の分析も必要です。
外注技工料や医薬・歯科診療材料が占める比率をチェックし、コストの見直しを検討します。
外注技工料に関しては、技工物が技工所により品質や精度が違うので、一律に安いものが良いとはいえませんし、院長の望むものを提供できる技工所に発注したいのは当然です。
配達方法や、品質と掛かる日数を費用との比較によって選択する必要があります。
医薬・歯科診療材料に関しても、院長が治療に適切なものを選択している中でも、近年の商品開発は進んでいますので、新しい情報を収集する必要があります。
他社メーカーの同等品と比較を行い、より良いもの、コストの低いものを選択することがポイントです。

変動費分析

(2)変動費削減のための交渉術

変動費分析より、医薬・歯科材料費や外注技工料について見直しを図る必要があります。
価格が安いというだけで選択はできませんが、様々な要素を勘案して、現在の取引先との価格交渉、また、別な業者との取引開始等の検討をします。
また、価格交渉をする際に支払いサイトも検討します。
請求書が届いてから支払いまでの期間を短縮することで、価格を下げられないか交渉することも手段の一つです。

3.固定費の変動費化と細かい経費へのこだわりを持つ

(1)固定費を変動費に変える

コストには、収入の増減や患者数にかかわらず一定額が発生する固定費と、収入や患者数に連動して変動する変動費という2つのコストがあります。
このうち固定費の構成比率が高いと、収入が減少した場合には赤字に転落しやすくなります。
変動費の構成比率を高めるようにすることが、利益を確保するポイントになります。

固定費を変動費化する主な項目

(2)細かい経費削減の積み重ねが大差を生む

コスト削減においては、いろいろな努力の集大成が大きな結果として現れます。
そして、実行すれば必ず成果が出るものです。
一つひとつの節約を執念深く徹底的にやることが重要であり、また院内全体で取り組むことによって、歯科医院の規模に関わらず、大きな成果を生むことにつながります。

 

■参考資料
厚生労働省ホームページ:
医療広告ガイドライン より
地方厚生局の歯科診療単価 より
都道府県別 歯科医療費の動向 より
総務省ホームページ:
平成27年 情報通信白書 インターネットの普及状況 より
「歯科医院活性化セミナー」より:(講師)株式会社デンタル・マーケティング 浦濱 隼人 氏

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