機能分化と在宅医療移行のさらなる推進 2016年診療報酬改定の概要

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機能分化と在宅医療移行のさらなる推進 2016年診療報酬改定の概要

  1. 次期診療報酬改定の基本的視点
  2. 外来・在宅医療に関する改定のポイント
  3. 入院医療・リハビリテーションに関する改定要点
  4. 精神医療その他診療所に関わる改定の概要

 


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目次

1.次期診療報酬改定の基本的方向性

1.示された2016年診療報酬改定の方向性

(1)2016年度診療報酬は全体マイナス改定へ

次期診療報酬改定の改定率は、診療報酬本体は0.49%引き上げとなりましたが、薬価における大幅な引き下げや費用対効果の視点から効率化された項目等によって、全体改定率は0.84%のマイナス改定となりました。

2016年度診療報酬 改定率

(2)地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築

国は、「医療介護総合確保推進法」等の下で進められている医療機能の分化・強化、連携や医療・介護の一体的な基盤整備、平成30年度(2018年度)に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定など、2025年を見据えた中長期の政策の流れの一環としての位置づけを踏まえた改定を進めていくとしています。
特に、地域包括ケアシステムや効果的・効率的で質の高い医療提供体制の整備には、質の高い人材を継続的に確保していくことが不可欠であるとし、人口の減少傾向や現下の人材不足の状況に鑑み、医療従事者の確保・定着に向けて、地域医療介護総合確保基金による対応との役割分担を踏まえつつ、医療従事者の負担軽減など診療報酬上の措置を検討していくことが必要と位置付けています。

地域包括ケアシステム構築と地域における医療機能分化の関係

(3)経済成長や財政健全化との調和

併せて、医療政策においても、経済・財政との調和を図っていくことが重要と示したうえで、「経済財政運営と改革の基本方針2015」や「日本再興戦略2015」等も踏まえつつ、無駄の排除や医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献にも留意することが必要であるとしています。
これら基本方針を踏まえ、次期診療報酬改定の基本的視点として、次のように提示しました。

2.次期改定の基本的視点と具体的方向性

次期診療報酬改定は、前回改定を踏襲したうえで病院・病床機能再編を促すことを基本的視点として明示しています。

2016年度診療報酬改定の基本的視点

2.外来・在宅医療に関する改定のポイント

1.外来と診療所に係る評価

(1)外来医療における認知症ケアの重視

外来医療においては、2014年度改定において主治医機能の評価(地域包括診療料および同加算)が新設されましたが、次期改定でも引き続き外来医療の機能分化と主治医機能強化を促す評価の見直しが実施されます。
また、特に認知症治療に関する評価については、主治医機能の推進と併せて、重複投薬等の減少を図る包括評価を導入するなどの重点化がみられます。

認知症ケアをめぐる外来医療の主要な改定点

(2)主治医機能の強化施策~要件緩和の予測

前回改定で導入された地域包括診療料・加算については、上記算定の基盤となっているものの、医師配置等の要件についてハードルが高く、届出が進んでいなかった地域包括診療料については、施設基準が緩和されました。

地域包括診療料:主治医機能にかかる施設基準の緩和

また、外来機能分化を図るうえで、これまで以上に大病院の外来機能縮小を推進するため、紹介状なしに特定機能病院等の大病院を受診した場合には、選定療養として初再診時に患者から一定金額を徴収する「患者定額負担制度」の導入が決定しています。

紹介状なしの大病院受診時の定額負担導入

2.在宅医療に関わる主要な改定

在宅医療では、患者の状態や居住場所に応じたきめ細やかな評価を実施するものとして、自宅等と定義する対象施設と対象患者の見直し、また在宅医療を専門に行う診療所の評価を導入します。

在宅医療をめぐる評価の見直し

(1)在宅医療専門の診療所に対する評価の新設

在宅療養支援診療所のうち、現行の機能強化型の施設基準に加えて一定の要件を満たしている診療所については、外来診療を行わなくても評価することとなりました。
これは、平成28年3月31日時点で在宅療養支援診療所を届け出ていれば、1年間(平成29年3月31日までの間)は基準を満たしているとみなす経過措置が設けられています。

在宅医療専門の診療所に対する評価の新設

(2)在宅ケアをめぐる報酬の改定

特定施設入居時等医学総合管理料から「施設入居時等医学総合管理料」に名称が変更され、その対象施設に有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームが追加されました。
また、訪問診療を実施し、医学管理を行っている者の数を「単一建物診療患者の人数」と定義して、在宅時医学総合管理料に限り、保険医療機関が医学管理を行う患者数が当該建築物の戸数の10%以下の場合には単一建物診療患者が1人であるものとみなすこととなったため、在宅患者訪問診療料における同一建物居住者の場合の評価が新設(203点)されたことから収入減につながり、大きな影響も想定されています。

「同一建物居住者」に対する診療の評価見直し

3.入院・リハビリテーションに関する改定要点

1.医療機能の分化・強化をめぐる入院医療改定の要点

(1)7:1一般入院基本料に関する改定の概要

次期診療報酬改定では、効果的・効率的で質の高い入院医療の提供のため、医療機能や患者の状態に応じた評価を行い、急性期、回復期、慢性期など、医療機能の分化・強化、連携を促進することを基本方針として掲げました。
急性期医療に関しては、7:1入院基本料の届出病床数が創設以降増加を続けていましたが、平成20年を境にその増加が穏やかになり、同26年度には初めて減少を示しました。
しかし、平成27年度には再び増加傾向となったことを受け、病棟の機能分化促進に向けて、7:1病床届出には急性期医療を提供する医療機関として相応の機能を備えるべきという方針のもと、次期診療報酬改定では要件の厳格化が図られています。

入院医療をめぐる改定~病床機能の分化

主な改定点は、(1) 看護必要度等、(2) 重症患者基準、(3) 在宅復帰率要件の各見直しです。

(1) 一般病棟用の重症度、医療·看護必要度の改定

一般病棟用の基準、地域包括ケア病棟入院料における一般病棟用の基準

(2) 7対1入院基本料の重症患者基準の見直し

一般病棟「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の割合が25%以上

<経過措置>

  • 平成28年3月31日に当該入院料の届出を行っている病棟については、平成28年9月30日までの間、上記の基準を満たしているものとする。
  • 平成28年3月31日に当該入院料の届出を行っている病棟(200床未満)であって、当該入院料の病棟群単位の届出を行わないものにあっては、7対1入院基本料の施設基準について、平成30年3月31日までに限り、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者の割合について、25%を23%と読み替える。

(3) 7対1入院基本料在宅復帰率の要件見直し

7対1入院基本料在宅復帰率の要件見直し

(2)主な看護体制加算をめぐる改定

(1) 看護職員夜間配置加算

《1》看護職員夜間12対1配置加算
イ)看護職員夜間12対1配置加算1 80点
ロ)看護職員夜間12対1配置加算2 60点

《2》看護職員夜間16対1配置加算 40点(新設)

(2) 夜間看護体制加算(新設)

10点:夜間急性期看護補助体制加算算定医療機関

(3) 夜間75対1看護補助加算

30点(1日当、20日限度):13:1入院基本料算定病棟

(4) 夜間看護体制加算 150点(入院初日)

13対1、15対1、18対1、20対1入院基本料を算定する病棟

その他の加算改定項目

2.回復期・リハビリテーション病棟ほかをめぐる改定

(1)回復期リハビリテーション病棟に関する改定

回復期リハビリテーション病棟に関する大きな改定として、リハビリテーションの提供実績が一定の水準以上であるとともに、効果に係る実績が一定の水準を下回る医療機関については、一日に提供される6単位を超える疾患別リハビリテーションは入院基本料に包括されることとなりました。
併せて、回復期リハビリテーション病棟入院料体制強化加算に体制強化加算2(120点)が新設され、専従医師の要件が緩和されています。

(2)脳卒中後遺症患者の入院基本料に関する改定

脳卒中後遺症患者を対象として、各一般入院基本料につき、当該病棟に入院する重度の意識障害者の疾患及び状態等が療養病棟入院基本料に規定する医療区分1又は2に相当する場合は、各々医療区分に従って所定点数を算定するものと改定されました。
ただし、医療区分3相当のものは、従来通り障害者施設等入院基本料・特殊疾患入院基本料に規定する所定点数を算定するとしています。

4.精神医療その他診療所に関わる改定の概要

1.精神医療に関する主要な改定

(1)精神入院医療に関する評価見直し

近年増加しているうつ症状や自殺防止の観点から、これらの症状・疾病を有する患者に対する診療に対する評価が重点化されました。
なかでも、地域社会においてこうした患者をケアする医療連携の構築を目指し、新たな評価を設けています。

精神入院医療をめぐる主要な改定

(2)認知症ケアに関する加算の新設

一般病棟入院基本料、療養病棟入院基本料に対し、以下の加算を新設しました。

認知症ケア加算

2.診療所に関連するその他個別項目の改定概要

(1)医薬品に関する評価見直し

次期診療報酬改定では、重複投薬・残薬の減少と共に薬価の見直しが重点課題に挙げられていることから、後発医薬品使用促進の観点から、次のような改定が行われます。

後発医薬品体制加算をめぐる改定、後発医薬品体制加算をめぐる改定

(2)栄養管理・地域医療連携に関する評価見直し

(1) 栄養管理に関する改定

外来・入院・在宅患者訪問栄養食事指導料については、栄養指導対象患者の範囲が「がん患者、摂食機能若しくは嚥下機能が低下した患者」を加え、拡充されました。

栄養指導料の増点と算定要件の変更

(2) 地域医療連携に関する評価見直し

検査・画像情報提供加算(200点)、電子的診療情報評価料(30点)、診療情報提供料(Ⅰ)に地域連携診療計画加算(50点)が導入されました。

(3)検査料に関する評価見直し

点数が引き下げられた項目、点数が引き上げられた項目

*本レポートは、2016年2月25日(木)、㈱吉岡経営センター主催 診療報酬改定セミナー「2016年診療報酬改定 その概要と病医院経営戦略」(講師:(株)エム・アール・シー 代表取締役 石上 登喜男氏)の講演要旨および配布レジュメをベースとし、一部を再構成して作成したものです。
掲載の図表については、出典を明記したものを除き、全て本セミナーレジュメに使用、または一部加工しています。

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