Withコロナ時代に対応する スタッフ育成に効果を発揮する ミーティング活用術

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Withコロナ時代に対応する スタッフ育成に効果を発揮する ミーティング活用術

  1. コロナ禍におけるミーティングの重要性
  2. Webを活用した新たなミーティング方法
  3. コミュニケーション力アップミーティングの実施
  4. 階層別ミーティングによるスタッフ育成法

 


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目次

1.コロナ禍におけるミーティングの重要性

コロナ禍において、スタッフは働くこと自体に不安を持っています。
政府や厚生労働省、保健所等からの情報提供の他、専門家からのコロナ対策の提言やコロナ感染症の反応、海外の状況等を正確に把握し、スタッフに伝えることが必要です。
合わせて、院長のコロナに対する今後の対応や診療方針を明確に伝え、歯科医院全体で診療を継続するためにも、ミーティングを開催し、院長以下スタッフ全員の意思統一を図り、コロナに対応することが重要です。

1.ミーティングの重要性

院内ミーティングは、歯科医院の成功の基礎が確立される場という認識が必要です。
活性化された組織とは、スタッフを信頼して業務に取り組む「参加型組織」です。
そして最善のリーダーシップは「スタッフ中心型のリーダーシップ」です。
このような最適な組織を目指すためには、ミーティングが重要になってきます。スタッフが普段思っていても声に出せない潜在化した課題を顕在化して、検討し合う場としてのミーティングは重要な位置づけとなります。

院内ミーティング実施の効果

2.コロナ禍に対応したミーティング議題

新型コロナウイルス感染症は、1年経過してもその原因と発症状態、感染方法、最善の治療方法は不透明です。
ワクチン接種に関してもその成果や副反応等が明確にはなっていません。
そのような状況下でスタッフは勤務を続けています。院長はコロナ禍における新たな診療理念や経営方針、診療体制等、今後の医院運営をどうしていくのかをスタッフに伝え、スタッフの不安を払しょくすることが重要になります。

コロナ禍におけるミーティングの議題

スタッフは各自の考えをもって診療に従事しています。
全体ミーティングも必要ですが、一人一人の意見や考え方を聞くためにも1対1の個別ミーティングも必要です。
特にコロナ禍では、自身と家族を守るという考え方を持つスタッフもいます。医療従事者として「患者への奉仕」という命題を優先、と義務付けるわけにはいきません。
個人の考えも尊重する必要があります。

3.経営コンセプトの共有

(1)ビジョン・ミーティング開催で経営目的の共有化

コロナ禍でのミーティングは、スタッフの不安を取り除き、将来への安心感を与えることと、患者に対する院長の思いをスタッフに実践してもらう場です。
院長の経営目的は、一人一人のスタッフを支援しながら、最終的には安定した経営を行い、診療を継続する事です。
経営目的を示す事で、スタッフ全員の判断基準ができ、取り組みの効率・効果が高まります。
そのためにも、ビジョン・ミーティングを開催する必要があります。

ビジョン・ミーティングの題目

(2)業務改善ミーティング

業務改善ミーティングでは、スタッフとともに自院の現状を分析したり、日々の業務で発生する課題の解決策を検討したり、実践の為の具体策を検討したりというように、価値観や考え方をぶつけ合う事で、環境の変化に適応できる組織づくりを推進していきます。
歯科医院は、環境の変化に柔軟に対応して発展し続ける必要があります。
社会的価値を高める為にも新しい知識・技術を常に吸収するとともに、患者が望むニーズへの対応を目的として、持続的に変化していかなくてはいけません。
院内の全員が、各課題や状況、ニーズの変化に共有した知識を持つ為にも、業務改善ミーティングの実施は必須です。

4.口腔内ケアは感染症対策予防に有効

ミーティングで、新型コロナ感染症対策の上でも、歯科治療が重要だというスタッフの意思統一を図ることがポイントです。
口腔内のケアがウイルス感染症予防になるということは日本歯科医師学会等で報告されています。
口腔内を清潔に保つことはウイルス感染・重症化予防につながります。

IgA※が細菌やウイルスをブロックする仕組み

2.Webを活用した新たなミーティング方法

新型コロナウイルス感染拡大後、各歯科医院では様々な感染症対策や予防対策を講じて診療しています。
保健所や厚生労働省、各地方厚生局、地方自治体、マスコミ等より新型コロナに対する様々な情報が都度提供されていますが、詳細部分が不明確な場合が多く、院内における通知・告知を徹底する事は難しいという意見が多くあります。
また、歯科医院では、夜間診療や土日診療、長時間診療を行っているため、シフト勤務が多く、全員が揃うことが難しい中、感染リスクも考えると簡単には院内ミーティングも開催できません。
情報伝達とスタッフ側の考えや質問等への回答、院長の考えを通達するためにもミーティングは重要で、コロナ禍における新たなミーティング方法を考える必要があります。

1.情報伝達とミーティングの方法

情報伝達やミーティングを行うには様々な手法があります。
書面や電話、口頭で、ミーティングの場を設けるほか、メールやグループライン、オンラインミーティング(リモート)等を活用して、意思疎通ができる方法も構築されています。
情報提供だけであれば通達だけで済みますが、意見交換や協議することが必要な場合や詳しい説明が必要な場合、相手の考え方や気持ちを聞いた方が良い議案を考えると、顔を合わせる方法の検討が必要です。

(1)メールやSNS等を利用

SNS(ソーシャルネットワークサービス)はWEB上のコミュニケーションツールとして活用されています。
情報発信や情報共有、情報収集等がしやすく、簡単な交流やコミュニケーションは取りやすく、使い勝手も良いので多数の方が利用しています。
一方で、ルールを明確にしなければ、スタッフ間のトラブルに発展するケースがあります。
手軽に活用可能ですが、プライバシーの保護等、院内ルールも明確にする必要があります。

SNSが多く利用されている理由、SNSの種類

(2)Webミーティング(インターネットミーティング)

SNSツールは簡易な意見交換や感想を述べたり、私事伝達、報告には向いていますが、会議形式の質疑応答、協議等の会話や考え方を伝え意見を聞くといった長時間かかるような形態には不向きです。
そのような時は、オンラインやリモートによるWebミーティングが適しています。
リアルタイムで対面と同じように行うことができ、レジュメ等の画面共有や資料提供も行えるので、場所の確保や紙ベース資料の用意等が省けます。

Webミーティングの活用方法

デメリットとしては、ネットワーク環境の整備やセキュリティ対策、参加者にはWeb会議を設定する知識も必要となります。
画像の乱れや音声が途切れる等の問題が生じる可能性がありますので、事前に説明を行った上で、ミーティング前にテストを行いましょう。

2.Webミーティングを行う際のポイント

Webミーティングを開催する際には十分な注意が必要です。
全員が集まるミーティングでは、主催は院長なので、スタッフは指示に従い、場所も医院内で行うことがほとんどで、延長や休憩等も主催側の判断で行われます。
Webミーティングとなるとスタッフは自宅等で、プライベートを割いて参加するため、時間制限や家事、訪問者等による一時退場のような事態も起こりえます。
映像の乱れや音声の不具合、ミーティング内容によっては院長の通知や説明、注意に終始し、短時間で終わってしまうパターンや、題目が曖昧なため、長時間をかけて結論がでないということも考えられます。
貴重な時間を無駄にしないよう事前準備が重要です。

Webミーティングの事前準備

3.コミュニケーション力アップミーティングの実施

歯科医院で実施した患者アンケート調査の結果では、「分かりやすい説明をしてくれる、話を聞いてくれる」等、患者とのコミュニケーション力が高い歯科医院を選択する、という回答が多くありました。
高い治療技術も必要ですが、説明や傾聴など、患者は高いコミュニケーション力での応対を望んでいます。
感染予防対策により、マスクをつけ、アクリル板越しの応対になり、患者とのコミュニケーションを取ることが難しくなってきています。
ミーティングによりスタッフ全員のコミュニケーションスキルアップを図ります。

1.コミュニケーションスキルアップミーティングの重要性

スタッフそれぞれに接遇サービスの基準はあると思いますが、接遇サービスは院長の診療理念や経営方針を基に、スタッフ全員が共有して認識して行動する必要があります。
歯科医院ごとに間取りが違いますし、バリアフリーやテナント、戸建てと開業形態も違います。
また、患者層や診療体制(予約制、順次受付等)といった外部要因によっても違いますし、患者応対も院長の診療方針等によって差があります。
スタッフによって接遇サービスが違うと患者は戸惑ったり、差別されていると感じるため統一を図る必要があります。
院内ミーティングを開催し、統一した接遇への考え方を認識させ、具体的に接遇サービスをどう行うのかを理解してもらうことが重要です。

コミュニケーションスキルアップミーティングの重要性

2.目標とするコミュニケーションスキル

高いコミュニケーションスキルというと、相手に情報を伝えるのがうまい(交渉力や説得力がある)等、一方的に伝えるスキルをイメージする方が多くいます。
実際のコミュニケーションは、情報の発信と受信によって初めて成立します。
高いコミュニケーションスキルとは、発信だけでなく、相手から情報を発信させるスキルも高いということです。

高いコミュニケーションスキル

3.「聴く」というコミュニケーションスキルを高める

(1)話を聴く

「聴く」は「意識的に相手の話を聞こうという状態」のことを指します。患者に興味を持ち「相手が何を伝えようとしているのか」「相手の言いたい事は何か」を考えながら聴くので、患者の意図や真意、伝えたい内容を聴き取ることができます。

(2)正しく聴くための3手順

しっかり話を聴くためには次の三つの手順を踏むことです。
患者が話しやすい態度を意識的にとることで、話しやすくなり情報を引き出しやすくなります。
また、聞き手である自分の耳にも話が入りやすくなるという効果もあります。
人間の心理は、態度を意識的に正すことでコントロールができます。

話を聴く3手順

4.「話す」というコミュニケーションスキルを高める

話をするとは単なる言葉のやり取りをすることではなく、相手の感情を意識することが大切です。
情報を伝える時は、正しくわかりやすく、さらに相手の個性を尊重し、「相手を理解し、配慮して、自分の思ったことを正直に伝える」ことを心がける必要があります。

コミュニケーションにおける心理階層

5.「理解する」というコミュニケーションスキルを高める

人はだれもが自分の置かれている状況・立場・気持ちを理解してほしいと思っています。
相手が自分のことを理解・配慮してくれていることを感じ取れると相手の言い分を受け入れやすくなります。
その点を意識していれば、円滑なコミュニケーションをとることができます。

(1)質問により理解を深める

正しく聴くということは、正しく理解しているかを確認する必要があります。
話を聴いても患者の意図することや真意とは違う意味に受け取ってしまったのでは、コミュニケーションは成立しません。
正確に聴き取ったかを確認するには、質問の形で患者の話した内容を繰り返したり自分の言葉で言い換えたりすると間違いは少なくなります。

(2)感情の汲み取り方

正しく聴き取ることに合わせ、その話を通して患者が意図するところや感情を理解するように意識することも大切です。
患者の感情をないがしろにして、事実に関する情報の授受だけでよいものではありません。
患者の話の内容を正しく理解することは、患者の意図するところや感情についても察することにつながりますし、患者は「理解されている」と感じて非常に安心して話せるようになります。
そのため、こちらの意見も患者に受け入れてもらいやすくなります。

4.階層別ミーティングによるスタッフ育成法

スタッフの育成方法は多種多様で、誰に対し何を目的として育成するかの選択がポイントです。
よって、新卒者を含む未経験者に対して歯科医療とは何かを教える基礎講座や、患者にどう対応するかの接遇研修、中堅クラスの各専門業務の臨床研修、ベテランスタッフへの組織力アップや部下育成の研修会等、階層別のミーティングが有効です。
また育成方法では、コーチングを取り入れたミーティングを行うことで、現状と理想像の差が明確になり、課題抽出から克服に至る育成が可能となります。

1.コーチングによる育成法

(1)コーチング育成シートの作成

コーチングによる育成方法を具体的に組み立てるために、まずコーチングアウトラインを作成します。
院長の理想像と現状との能力差を具体的に把握し、それをどのように縮めていくのかを検討する必要があります。

コーチング育成シート作成のプロセス、スタッフ育成のための環境整備

(2)学習する「課題」の形成

院長の役割の一つとして「課題確認」が有ります。
スタッフをどれだけ理想像に近づけられるかは、何が課題なのかを発見し、スタッフに期待する姿を示して、「課題」を認識させることです。

課題形成のポイント

2.階層別スタッフ育成方法

スタッフに持っていて欲しい「意識」「能力」は黙っていて身に付くことはありません。
特に若いスタッフやパート職員に自発的行動を望むより、医院側の指導・教育によって習得させる必要があります。
スタッフも新人と3年~7年位の経験者、リーダークラスと階層が分かれます。
それぞれのレベルに合わせた階層別の研修をサイクルで繰り返し行う必要があります。

歯科医院の教育サイクル(①~③を繰り返し、レベルアップを図る)

(1)新人スタッフはキャリアアップでの戦力化

新人スタッフには自院の経営理念や基準行動を習得させることが重要です。
経営理念は根源的な考え方です。
尊重すべき価値観や行動規範であり、緊急事態に遭遇した場合やマニュアルにない判断を求められた時の基準ですので、理解させることが大切です。
考えなくても自然と「言える」「行動できる」レベルまでアップする必要があります。

入職時に徹底すべき項目

(2)中堅クラスに特に必要なコミュニケーション力のスキルアップ

患者ニーズの変化やその地域や年齢層によって、患者が歯科医院に求めるものも変わっていきます。
中堅クラスにこそ、再度マーケティングに沿った意識の再確認となるミーティングを行うことが重要です。
医療のプロとしての提案を判りやすく説明し、理解してもらうことができなければ、患者の満足は生まれません。
情報を引き出し、また、提供する医療を理解してもらうという双方向のコミュニケーションが必要となります。

患者が望むスタッフ像

(3)スタッフリーダーは部下育成能力の向上

スタッフリーダーには、部下・後輩の教育・育成のスキルと、組織としての体制づくりや機能するシステムづくりの能力を身に付けてもらう必要があります。
ミーティングや、コーチングを活用した育成法などを知り、リーダーが行うことができるよう指導していきます。

ミーティング時のリーダーの役割

 

■参考資料
「歯科医院経営を成功させる50の心理法則」 妹尾 榮聖 著(クインテッセンス出版株式会社)
「今すぐ医院に貢献できる 歯科衛生士の育て方」 加藤 久子 著(同上)
「患者様をファンにする最強のコミュニケーション」井上 裕之 著(同上)
digital-moonホームページ:リモートワーク
リモートワークでWeb会議をスムーズに進める12のコツ
日本口腔保険協会ホームページ:口腔ケアでウイルス感染予防
日本歯科医師会ホームページ:口腔ケアで免疫力アップ

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