支援策の活用でビジネスチャンスを掴む!中小企業支援策の活用ポイント

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支援策の活用でビジネスチャンスを掴む!中小企業支援策の活用ポイント

  1. 成長戦略の実現に向けた中小企業の課題
  2. 強化された中小企業支援策
  3. 中小企業が活用できる金融支援と助成制度
  4. 事業拡大のチャンスを活かした具体的事例

 


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1.成長戦略の実現に向けた中小企業の課題

わが国に420万社あるといわれている中小企業・小規模事業者は、日本の製造業の基礎を支えたり、また、サービス業においては高い付加価値サービスを提供したりと、日本の産業を世界に誇れるものとしている産業基盤となっています。
政府は、アベノミクスに掲げる成長戦略を実現するためには、中小企業の産業基盤の革新が重要テーマであると捉え、これを支援するためのさまざまな施策を打ち出しています。
本レポートでは、具体的な支援策についてご紹介しますので、今後の自社の経営基盤強化に役立てていただければ幸いです。

中小企業・小規模事業者の競争力強化に向けた課題

政府は、中小企業・小規模事業者の成長分野への進出を支援し、2020年までに黒字事業者を70万社から140万社に増やすことを目標に掲げています。
その他にも、新たに1万社の海外展開の実現や、それぞれの地域に有する資源を活用し、それらをブランド化させて競争力を強化させることも目指しています。
また、経営者の高齢化による経営者交代による新陳代謝を促しています。
このように、中小企業・小規模事業者の競争力強化を図るための取り組み課題を解決させるために、国などからさまざまな支援策が打ち出されています。

中小企業・小規模事業者の競争力強化に向けた課題

「日本再興戦略」に盛り込まれた中小企業支援策

政府は、デフレマインドを一掃するために大胆な金融政策を行った「第一の矢」、湿った経済を発火させるための機動的な財政政策を行った「第二の矢」を放つと同時に、TPPへの交渉参加、電力システム改革、待機児童解消策などの手を打ってきています。
これらの「第一の矢」、「第二の矢」で作ったデフレ脱却への期待を一時的なものに終わらせないために、「第三の矢」としての成長戦略を打ち出したものが、6月14日に「日本再興戦略」として公表されました。
この「第三の矢」である成長戦略によって、実質GDPがマイナスとなった日本経済を再び成長に向けて加速させ、新陳代謝を促し、成長分野への投資や人材の移動を促そうとしています。
経済の回復によって、企業の収益改善、従業員の給与アップ、および雇用増大という形で国民に経済回復効果を還元させ、消費増加や新たな投資を誘発するという好循環を作り出し、地域や中小企業・小規模事業者にも波及させることを狙いとしています。
このような日本経済の成長には、中小企業・小規模事業者への支援拡大による活性化が欠かせないとしており、その具体的な支援策は「日本再興戦略」に盛り込まれています。

日本再興戦略イメージ

成長戦略実現に向けて中小企業が取り組むべき経営課題

成長戦略において政府は、地域経済の活性化、新産業の育成支援、金融緩和による金融支援、および規制緩和による諸手続きの簡素化などの中小企業支援策を打ち出しています。
これらの支援策をうまく活用することができれば、自社の成長発展に役立てることが可能といえます。
一方では、中小企業において、人手不足を反映しての人件費高騰による収支悪化や、少子化の中で労働力人口の減少、熟練労働者の退職による技術力低下などは大きな課題となっています。
サービス業界などでは、人材確保が難しく事業拡大を断念した企業も出てきています。
このようなマイナス要素についても、人材育成支援、販路拡大支援などの支援策が打ち出されており、これらの支援策をうまく活用することで課題解決に役立てることが可能です。

中小企業の成長につなげる重点課題、成長を阻害する可能性のある改善課題

2.強化された中小企業支援策

中小企業が積極的に活用すべきさまざまな支援策

これまで述べてきたように、中小企業を支援するために、国や公的機関によるさまざまな支援策が講じられています。
各支援策が自社で活用可能かどうかをホームページ等で確認いただき、自社に該当する支援策については、積極的に活用を検討いただきたいと考えます。

中小企業が活用できる支援策

地域資源の活用、ブランド化の促進で地域活性化を推進

地域に眠っている、ヒト、モノ、コミュニティといった数多くの資源を活用し、地域資源の発掘、ビジネス化するための支援ネットワークの構築や一層のブランド化を図り、中小企業・小規模事業者の競争力の強化につなげようとしています。

ブランド化促進のための具体策

新陳代謝の促進で企業を活性化を促す

経営者の高齢化や後継者難が一層深刻化している状況となっている中小企業・小規模事業者の経営者の世代交代、親族外への事業承継等により、その企業が有する有用な経営資源を移転促進することより新陳代謝を図ろうとしています。
また、地域金融機関が地域経済を担う企業の経営改善や事業再生・事業転換等の支援、新たな産業の振興や成長性のある企業の育成に向け、コンサルティング機能の発揮やリスクマネーの供給に積極的に取り組むよう、金融支援を行うことを検討しており、今後、具体的な金融支援策が打ち出される可能性があります。

今後検討が期待される金融支援の具体策

成長分野に参入する中小企業・小規模事業者を支援

中小企業・小規模事業者が、環境・エネルギー、健康・医療、航空宇宙などの成長分野に参入しやすくなるよう、障壁をなくしたり、企業連携のためのマッチングやインターネットの活用を進めることを検討しています。
国が進める成長分野は、今後いろいろな支援策が打ち出される可能性があるため、ビジネスチャンスが期待される分野といえます。

成長分野進出に向けた専門的支援体制の構築

販路拡大の支援により中小企業をサポート

中小企業者にとっては、事業拡大を図るために販路拡大を望んでいても、そのルートや人脈が乏しい企業は、ルート開拓も思うようにいかないケースも見られます。
商工会議所による小規模事業者の全国展開支援や中小機構による各種展示会・商談会の開催、販路拡大へのコーディネートなどの支援策が講じられています。

販路拡大への支援策

3.中小企業が活用できる金融支援と助成制度

新創業融資制度を活用で資金調達を可能にする

独立・開業を行った起業家にとって頭を悩ませるのは資金調達です。
民間金融機関からの融資を受けるのに苦労するケースも聞かれます。
比較的利用しやすい制度として、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方に無担保・無保証人でも利用可能な日本政策金融公庫の「新創業融資制度」があります。
この制度のメリットを整理すると以下のようになります。

新創業融資制度のメリット、新創業融資制度の利用要件

低利での融資が可能な制度融資を活用する

制度融資とは、金利の一部を自治体が利子補給するなど、起業家や中小企業経営者にとっては活用メリットのある融資制度です。
この制度融資における最大のメリットは低利で融資が受けられることです。
この制度融資を受けるに当たっては、都道府県や市町村区などの自治体、金融機関、および信用保証協会が関与します。

制度融資の流れ

都道府県、市区町村などの各自治体は、それぞれの地域の産業振興や創業支援などを目的として、金利の補助などを行っています。
制度融資は、自治体によってその内容は異なっています。
制度融資を利用する場合は、自治体が設置している相談窓口にて相談を行い、申込書および事業計画書等の必要書類を提出した上で書面審査が行われ、内容について了承を受けた後に申込書(あっせん書)が交付されます。
申込者は、申込書を持参し、その制度融資を管轄している民間金融機関にて融資を申し込みます。
この制度融資は、信用保証協会が公的な保証人となっていることから、借り倒れリスクがカバーされており、民間金融機関にとっては、比較的融資に応じやすい制度といえます。
申込者にとっての最大のメリットは、地域にもよりますが、通常の融資よりも低利で融資を受けられることです。
今後融資を希望する事業者は、まずは所在しているエリアの自治体へ相談することをお勧めします。

ものづくり中小企業の支援策

製造業の国際競争力の強化、及び新たな事業の創出を図るため、中小企業が担うものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発、及びその成果の利用を支援するための法律が施行されています。
事業分野としては、基盤強化を推進する12分野が経済産業大臣より指定されています。
この分野に該当している事業者は、特定研究開発等計画を策定し、経済産業大臣に対し認定の申請することができます。
経済産業大臣により申請された計画が認定されると、さまざまな支援措置を受けることができます。

特定ものづくり基盤技術にしてされている12分野、認定を受けたときに受けることができる支援措置

4.事業拡大のチャンスを活かした具体的事例

中小機構の支援により新事業展開に成功した事例

中小機構では、本部と全国9地域本部において、経営課題を持ち、その解決に取り組むことで成長が見込める中小企業に対して、各分野で豊富な経験と実績を持つ専門家を長期継続的に派遣し、アドバイスを実施する経営支援(ハンズオン)を行っています。
このハンズオン支援では、担当のプロジェクトマネージャー、アドバイザー、職員が当該企業のパートナーとして伴走し、きめ細かな対応を図りながら、継続した支援を行っており、これまでに数多くの支援実績を上げています。
今後、経営サポートを受けることを希望する中小企業者にとっては、心強いアドバイザーとしての役割を果たしています。

(1)新事業を成功させたA社

新事業を成功させたA社

A社は、プラスチックスペーサー等の土木建築用資材分野では先行企業であり、比較的安定した業績を維持できていましたが、公共投資の減少が続く中、本事業のみでは持続的な成長を期待することは難しく、新たな成長事業の開拓を迫られていました。
同時にプラスチック製品事業者としてプラスチックの廃棄による環境汚染に懸念を抱き、当社のプラスチック成型技術を活かしてプラスチックの再生事業について、多くの課題を解決しながら、混合再生プラスチック新事業を創出することができました。
そこで、中小機構の担当者と同社によるプロジェクトチームを立ち上げました。
このプロジェクトチームにより、品質向上の技術的な課題については、不均一な原料から安定的に高品質を得る製造技術の確立を図ることができました。
ハンズオン支援を受けながら、現状把握からテスト、実施、評価、再テストのサイクルを通じて、品質安定化向上の為の製造技術を飛躍的に向上させることができました。
ハンズオン支援は、自社だけではノウハウ、経験の不足している場合において、専門的な経験を有するアドバイザーを得ることにより、技術的な課題を解決できるというメリットがあります。

(2)成長産業の参入に成功したB社

電機、情報通信技術、精密機械、運輸サービスといった、これまでインフラ市場に参入できていなかった事業者がインフラ資産の更新という巨大市場を見据え、新たな技術やサービスを展開し始めています。
具体的には、劣化したインフラの状態をリアルタイムで把握するモニタリングや、限られた人員で大量のインフラの維持管理を実現するサービスなどが挙げられます。
土木、建設産業以外の事業者によるインフラ資産の老朽化への対応の取り組みは、単純なビジネスの視点によるものだけではなく、ヤマト運輸をはじめ、数多くの企業が自治体と協定を結んで道路の異状を知らせる活動を進める事例のように、ボランティアや社会貢献といった視点もあるのが特徴です。
主に大企業が参入していますが、中小企業のノウハウ、資源を活かすことでこれらの事業への参入できる可能性はあります。

インフラ資産更新への異業種参入企業例

(1)民間事業の資源を活かして道路管理を行っているヤマト運輸

ヤマト運輸は、2012年横浜市が管理する道路についてその異状情報をヤマト運輸から横浜市へ提供するための覚書を締結しました。
宅配業務中に道路の陥没箇所やガードレールの破損、道路通行上に問題となるような箇所を発見した場合に、市の所管事務所に通報するというものです。
職員のみでは点検しきれない膨大な箇所を民間業者者によりカバーした事例です。
このような取り組みは今後、全国に広がっていく可能性があると考えられます。
特に地域の道路に詳しい地元の宅配事業者などには、参入の余地が十分にあります。

(2)補修技術の向上で路盤補修に参入した住友スリーエム

住友スリーエム株式会社は新技術「貼付式路面補修シート」を開発しましたが、この新技術は、舗装道路の路面に発生するポットホールなどの簡易補修や雨天時の車のスリップ防止効果のある、「3M™ ステイマーク™ 路面補修材 L715」を利用したものです。
舗装道路の路面に発生する小さい穴(ポットホール)の上を自動車やバイクなどが通過することで、タイヤのパンクの原因や事故を引き起こすおそれがあるため、該当箇所の早期発見とポットホール発生時の補修対応は緊急性を有します。
交通量や降雨量・降雪量の多い地域では、補修した箇所の剥離や、道路の維持管理費用が、道路増設に比例して増える傾向にあり、ポットホールやクラックの再補修にかかるコストも課題のひとつとなっていました。
新技術として登録された同社の「貼付式路面補修シート」は、柔軟性と耐久性のある合成ゴムをベースとしたシートで、短期間で路面になじむのが特長です。
ポットホールを補修した上に同製品を貼付することでアスファルトの再剥離を予防し、補修を長持ちさせることができます。
道路補修に多大なコストをかけなくとも補修技術の応用することができれば、自治体からの需要に応えることができると考えられます。
中小企業・小規模事業者に対するさまざまな支援策を紹介してきました。
今後の自社にとって活用できる支援策については積極的に活用いただき、自社の成長、発展につなげていただければ幸いです。

■参考文献

2020年の産業(野村総合研究所著、東洋経済新報社)
2025年の巨大市場(浅野祐一、木村駿共著)
中小企業ハンズオン支援事例集(中小機構)

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