自社の負担軽減に活用できる令和2年度における雇用関係助成金

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自社の負担軽減に活用できる令和2年度における雇用関係助成金

  1. 活用メリットの大きい雇用関係助成金の概要
  2. 非正規雇用労働者のキャリアアップに活用できる助成金
  3. 雇用維持に関する助成金
  4. 労働環境の改善につながる助成金

 


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1.活用メリットの大きい雇用関係助成金の概要

中小企業は、厳しい環境変化の中で様々な対応が求められています。
「働き方改革」では同一労働同一賃金への対応が来年4月までと期限が迫っています。
また人材不足の状況の中、あらゆる雇用形態の社員の戦力化、および定着への取り組みも急務となっています。
そこに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染拡大による企業収益の低下も企業業績の足を引っ張る形となっています。
このような厳しい状況において、中小企業の支援を図るために様々な助成金がありますが、今回は令和2年度に活用でき、かつ活用メリットの大きい助成金の活用法について解説します。

1.コロナによる中小企業への影響

新型コロナウイルスは日本中の企業に大きな影響を与えました。中小機構による「第160回中小企業景況調査(2020年4月~6月)」によると、今期の中小企業の業況判断DI(好転、不変、悪化の3択の質問をし、好転の割合から悪化の割合を引いたもの)は前期より39.7ポイント低下のマイナス64.1となりました。
新型コロナウイルスの影響を受け、中小企業の業況感は過去最低となり、下げ幅も過去最大となりました。
これらの状況下において、経営を支え、前に進めるために活用できるのが助成金です。

2.助成金活用のメリット

助成金を活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
大きく分けて以下の4つが挙げられます。

助成金活用のメリット

つまり、助成金を活用することで、リスクを抑えて投資ができ、事業の拡大を推し進めることができます。
また、助成金を活用していること自体をプロモーション活動に使うことができ、新たな事業に繋げることもできます。

3.助成金活用のデメリット

ここまでは助成金を活用したメリットをお伝えしてきましたが、助成金活用のデメリットについても触れておきます。
デメリットとして挙げられるのは以下の4つです。

助成金利用のデメリット

4.不正受給による影響

上記助成金活用のデメリットの中でも「④不正受給」について詳しく説明します。
不正受給をしてしまうとペナルティが課せられ、事業の停滞やマイナスプロモーションとなってしまいます。
よって、申請をする助成金の要件や概要については正しく理解しておくことが必要です。

不正受給の場合の措置

5.助成金制度の体系

令和2年度に活用可能な助成金は、大きく2つの体系に区分することができます。

助成金制度の体系

まず①の雇用関係助成金について見ていくと、大きく7つに分類することができます。

雇用関係助成金の体系

以上のように助成金には様々な種類があります。これら一つ一つの助成金に必要な要件が定められています。
この中から自法人に合った助成金を見つけていただくことになりますが、2章では「キャリアアップ助成金」について、3章では、コロナ禍で注目が集まっている「特定求職者雇用開発助成金」「雇用調整助成金」について詳しく説明します。

2.非正規雇用労働者のキャリアアップに活用できる助成金

1.キャリアアップ助成金の概要

キャリアアップ助成金とは、「有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む。)の企業内でのキャリアアップを促進する取組を実施した事業主に対して助成をするもの」とされています。
そしてこのキャリアアップ助成金は7つのコースに分かれています。

キャリアアップ助成金のコース分類

2.キャリアアップ助成金の要件

まずキャリアアップ助成金を受給するために求められるのは、「キャリアアップ計画」の提出です。
キャリアアップ計画は以下の3つの要件を満たした上で作成し、管轄の労働局長の認定を受ける必要があります。

キャリアアップ計画の要件

キャリアアップ助成金の各コースについてそれぞれに求められる要件を解説します。
ここでは、活用メリットの大きい「正社員化コース」「賃金規定等共通化コース」および「諸手当制度共通化コース」を紹介します。

(1)正社員化コース

①助成額

諸条件を満たし、支給申請が承認されると、以下の金額が助成されます。

助成額

②対象となる社員

助成対象となる社員の条件をまとめると下記になります。
①から④のいずれかを満たしていれば対象となります。

対象社員

③申請の流れと留意点

申請手続きの流れとその際の留意点を確認します。

計画から申請までの流れ

(2)賃金規定等共通化コース・諸手当制度共通化コース

正規雇用労働者と有期雇用労働者について、基本給の見直しや、住宅手当や通勤手当、また賞与の支給有無などの見直し時に活用できます。
それぞれのポイントを確認していきます。

①助成額

諸条件を満たし、支給申請が承認されると以下の金額が助成されます。

助成額

②対象となる整備内容

助成要件を満たすために下記内容の対応が必要です。

対象要件、賃金規定等共通化コースの要件図

このキャリアアップ助成金については同一労働同一賃金への対応を求められている今、積極的に活用できるものの一つといえます。

3.雇用維持に関する助成金

1.多様な人材の受け入れに関する助成金

本章では、新たな労働者を受け入れる際に活用できる助成金を紹介します。
雇入れ関係の助成金は、大きく3つに分かれています。

雇入れ関係の助成金の体系

ここでは活用メリット大きい特定求職者雇用開発助成金について解説していきます。

【特定求職者雇用開発助成金の概要】

①助成額

諸条件を満たし、支給申請が承認されると、以下の金額が助成されます。

助成額

②対象となる社員

助成対象となる社員は①から⑮に分類され、雇い入れた際の助成額が変わっています。

対象社員

③申請の流れと留意点

申請手続きの流れとその際の留意点を確認します。

計画から申請までの流れ

まずこの助成金には「支給対象期」が設定されています。
その「支給対象期」を6か月で区切り、第1期~第6期とします。
この助成金を受給しようとする事業主は、それぞれの支給対象期終了後翌日から2か月以内に申請をします。
2か月を過ぎるとその期間分の支給を受けることができません。また、支給対象期ごとに支給額の上限が設けられています。
対象となる労働者への給与の賃金額が上限となります。

2.雇用調整助成金

コロナ禍で注目を集めている雇用調整助成金は、新型コロナウイルスの影響を受け、令和2年9月30日までの間、全国で特例措置を実施しています。

新型コロナウイルスにかかる雇用調整助成金の特例措置

 

対象となる事業所、計画から申請までの流れ

4.労働環境の改善につながる助成金

1.労働環境に関する助成金の体系

本章では、労働環境に関する助成金を紹介します。
労働環境に関する助成金は以下の8つに分かれています。

労働条件等関係助成金の概要

今回は①業務改善助成金、そして②働き方改革推進支援助成金の中から、勤務間インターバル導入コースを解説していきます。

2.業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金の引き上げを図るための制度です。

要件、助成額、申請の流れと留意点

3.勤務間インターバル導入コース

時間外労働を抑えるため、勤務間インターバルを導入することを目的に、コンサルティングや労務管理用機器の導入を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して支給されます。

要件、助成額

多くの助成金制度は、自ら調べて気づかないと見逃してしまうことが多く、こまめに厚生労働省などからの情報をチェックすることをお勧めします。
自社に活用できる助成金が見つかれば、ピンチをチャンスに変えることができますので積極的にご活用ください。

 

■参考資料
「中小企業のための補助金・助成金 徹底活用ガイド」経土会 同友館
厚生労働省「雇用調整助成金ガイドブック」
「令和2年度雇用、労働分野の助成金のご案内」
独立行政法人 中小企業基盤整備機構ホームページ
「第160回(2020年4-6月期)中小企業業況調査のポイント」

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