1.モバイルを活用すると世界が拡がる
はじめに
場所を問わずコミュニケーションできる携帯電話は、今や1人1台、常時持ち歩くことが当たり前となりました。
「いつでも、どこでも」そして「そのとき、その場所で」コミュニケーションできる携帯電話は、人々の付き合い方はもちろんのこと、人々の行動を変え、さらには社会システムにまで変化をもたらそうとしています。
特に着目したいのは、生まれながらにして携帯電話が当たり前に使われている社会で育ってきた若者たちの考え方や行動です。
そこで本レポートでは、今後社会で重要な消費世代となっていく携帯世代に向け、マーケティング活動を実践していく上で必要な知識と実践方法をまとめました。
企業としてモバイル時代にどう向き合い、どのように取り組んでサイトを構築し運用していくのかを解説します。
モバイルを活用した具体的事例
(1)ZOZOTOWN モバイル
「ZOZOTOWN モバイル」は、インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」の携帯サイトとして、特に携帯電話に親和性の高い10代後半か ら20代前半の顧客を中心に、利用者数は年々増加しています。
特徴的なことはPCサイト同様に、顧客が欲しい情報を簡単に検索できる機能を拡充していることです。商品の検索ページでは、商品のカラー展開やアイテム説明など多くの情報を一度に閲覧でき、サイト上に常時掲載されている約5万点の全アイテムの中から、顧客が欲しいアイテムにピンポイントでたどり着けるよう考慮した工夫がされています。
(2)全日空「ANA SKY MOBILE」
全日空では、「ANA SKY MOBILE」という携帯電話向けサイトを中心にモバイルサービスを 展開しています。
モバイルマーケティングは1999年の「iモード」開始に合わせてスタート。当初は航空券の予約サービスだけを展開していました。
2001年からはサイト利用者に楽しんでもらうためのエンターテインメント系コンテンツを増やし、2004年からはおサイフケータイを使ったサービスを開始。
携帯電話だけでチェックインや搭乗までもできるようにサービスを拡大していきました。 予約、航空券購入、チェックインまでを携帯電話だけで行うことができ、現在は携帯電話から座席指定もでき、トラベルサポートサービスも展開しています。
PCと携帯電話では利用シーンが異なります。
PCは搭乗日前の1週間に6割の人が予約手続きをするのに対し、携帯電話は飛行機が飛ぶ前日から当日に予約の5割が集中しています。
(3)日本コカ・コーラのインタラクティブ・マーケティング
日本コカ・コーラは、2006年夏から日本独自のデジタル展開を考え、若者に対してどうリーチすれば良いかを模索しました。
そして、2006年の秋からユーザー数が伸びてきたディー・エヌ・エー(DeNA)のソーシャルネットワーキングサービス「モバゲータウン」の成長に注目し、提携を決めました。
まずは清涼飲料水の「ファンタ」で実験し、効果を検証してから、コカ・コーラのキャンペーンをモバゲータウン内で行うとともに、テレビなどほかのメディアとの連携を始めました。
キャンペーンの内容は、一定期間、モバゲータウン内にプロモーションサイトを設け、アバターアイテムやゲームなどを無料で配布するものでした。
結果、プロモーションサイトのトップページだけで3655万件のアクセスがあり、「コークスキー」というキャラクターを立てて公開した日記も1000万件以上のページビューがあったといいます。
マーケティングに適用されたケータイ
ケータイは「情報インフラ」「生活インフラ」として広く普及しています。
このツールをぜひとも企業のビジネス活動に有効に活用すべきです。
実際に、ケータイの有用性を理解し、企業活動に組み入れている事例は多く存在します。
そしてその活用方法もさまざまです。
単にケータイを連絡用の手段として営業担当者に持たせるだけではなく、企業内の情報システムとケータイを連携させ、CRM(顧客情報管理)の端末としてケータイを活用している企業もあります。
営業先の情報をケータイで閲覧し、顧客とのやり取りの内容はケータイからデータ入力し、日報や稟議もケータイから入力し、上司もそれらの内容をケータイで確認し、決済まで行う。
そんなシステムの活用はすでに珍しくはなくなってきています。
また、ケータイをマーケティング分野に活用しようという試みも早い時期から取り組まれています。
iモード等が普及し始め、着信メロディのダウンロードが流行りだした2001年ごろには、飲料メーカー、製菓メーカーなどが着信メロディをノベルティとしたキャンペーンを展開し、ケータイがこれまでの常識を覆す広告宣伝効果をもたらすツールであることが知られるようになっていきました。
当初はデジタルノベルティとしてケータイの着信メロディやゲームアプリなどを配信するといった使い方が主体でした。
その後、顧客の囲い込みという観点からケータイをマーケティングツールとして応用する使い方も一般化するようになりました。
QRコードを使って専用サイトヘ誘導し、そこで会員登録してもらい、キャンペーン情報やクーポンなどを配信するという使い方です。誰もが一度は飲食店店頭などで、こうした会員サービスを見かけたことがあるでしょう。
こうした、企業活動にケータイを活用する事例には、大手企業のブランドばかり目立つように感じますが、モバイルマーケティングの考え方を理解してケータイのどういった機能を活用するか、ユーザーの特性はどういうものか、実際にどのような形でケータイサイト等を構築していくかなどを理解できれば、どんな小規模な商店・企業でも、ケータイを有効に活用した営業活動を展開できます。
大きな転換期にきたケータイサービス
これまで右肩上がりで成長してきたケータイ業界は成熟市場へと突入し、加入者の新規獲得を目的としたビジネスモデルから、既存ユーザーをいかに満足させ、他キャリアヘの移行を抑えるかという戦略に方向転換を迫られています。
こうした時代背景のもと、総務省は2007年に「モバイルビジネス活性化プラン」を公表し、ケータイの販売スタイルの見直しをはじめとする業界の方向転換に向けた施策を打ち出しました。
この施策により2007年11月からケータイの販売価格が高騰したことは記憶に新しいところです。
ケータイの販売スタイルの見直しばかりに焦点が向けられてしまいましたが、総務省が打ち出した政策は、実はもっと奥が深いものです。
これまで、わが国のケータイサービスは通信キャリアがサービスに関しての主導権も握っており、端末メーカーや販売店は、通信キャリアの元で事業を進めていくというビジネススタイルが取られてきました。
iモードをはじめとする便利なサービスが世界に先駆けて展開され、多くのユーザーがその便利さを享受してきたのですから、これはこれで、素晴らしいビジネスモデルであったと評価すべきところなのでしょう。
しかし、成熟市場へと突入した昨今、通信キャリア主導によるビジネスモデルから、オープン化したマーケットヘ転向を図り、さまざまな企業体がケータイビジネスに関わることができる環境を整えていくことが求められています。
こうすることで、より豊かなサービスが増えていき、競争により利用料金も下がっていくという期待があります。
さらに世界のケータイサービスやビジネスモデルと足並みを揃えていくことで、日本から世界へ、ケータイを活用したさまざまなビジネスが展開していける環境を整えていくことを目指しています。
2.携帯時代のマーケティング手法
ケータイが社会インフラとして普及した現在、その活用は企業にとって至上命題になってきています。
しかし、ただケータイサイトを作るだけでは成功にいたることはできません。
ケータイマーケティングの成功は、まずはケータイユーザーを理解することから始まります。
ケータイの特性を理解し、ケータイユーザーの行動特性に応じたマーケティング戦略を立てることが重要になります。
さらに、ケータイは消費者の生活や価値観を変えるほどのインフラにもなっています。
すでに「ケータイを活用する」という対処療法だけでは、対応不可能なほどの市場変化が起きています。
本章ではケータイユーザーの特性を解説しながら、ケータイ時代におけるマーケティング戦略に必要なノウハウと視点を解説します。
ケータイユーザーの消費行動プロセス
1.AIDMA
では、企業はケ一タイユーザーに対し、どのようなマーケティングを行っていくのが有効なのでしょうか。
まずは、「狭義のマーケティング」の範囲である、商品やサービスを知らせ、購買に至らせるまでについて説明します。
まず広告などで商品の存在を認知し、さらに広告やパブリシティに触れていくことで興味がわき、欲しいという欲求が形成されます。
そして購入を心に決め(記憶)、来店をして購入するというように、消費者の行動を分析しました。
AIDMAの消費行動パターンが主流である市場では、企業は「リーチ&フリークエンシー」と呼ばれる広告手法で、広告やパブリシティなどで商品情報を大量かつ頻繁に露出させ、消費者の認知を広め、購買動機を形成していきます。
そして、消費者が他社製品ではなく、確実に自社商品を購入するよう、店舗数を拡大したり、販売店の棚を確保していきます。
これが従来の「マスマーケティング」の王道でした。
2.AISAS
そしてパソコンのインターネットが普及すると、ここに「AISAS」という新たな概念が提唱されました。
広告などで認知した消費者はサイトでより理解を深め、同様の商品やそれらへの評価を検索・比較し、「記憶」のプロセスを経ずにサイト上で購買をします。
そしてその評価を他者と共有していきます。
3.ケータイならではの衝動的消費「DSMA」
ケータイならではの衝動的消費は「DSMA」と呼ばれます。
ケータイならではの衝動的消費「DSMA」
ケータイは「知りたいことを知る」ために使われることがよくあります。
外出中に友人と「これから何食べようか」という会話になると、ここで「何かを食べに行きたい」という「消費を前提にした欲求」が生じます。
AIDMAと大きく違うのは、購買動機を形成するという過程がなく、そもそも購買動機、しかも比較的すぐの購買動機があるユーザーがケータイを使って、「何をどこで買うか」を決めようとするということです。
たとえば「何かを食べに行きたい」という欲求が生じると、まず地域やジャンルでお店を検索する(Search)。そして行きたいお店が見つかると、そのお店のページをBookmarkするか画面メモに保存します(Memory)。
そしてお店へ行き食事をします。
もちろんケータイ以前にもこのような消費行動は存在しました。
しかし、欲しいものがあっても、それを外出先などで調べることはできず、頭の中にある情報と目に見える情報だけで判断していました。つまり、広告によって知った記憶の中の情報、そして目に見える看板や店舗の雰囲気、メニュー、POPなどから判断していました。これがケータイで調べるようになると、広告や販促物の影響は相対的に薄れます。
(1)検索対策
このような消費行動に向けて企業が行うべき対策の1つは、自社の商品やサービスを購入する動機がある消費者の「Search」に対しての最適化です。
良い商品やサービスを作っていても、見つけてもらえなければ意味がありません。
逆に、すでにDesire(欲求)がある消費者にアクセスされることは、非常に成果につながりやすいということにもなります。
モバイルの場合、PCと違ってSearchから多数のサイトを比較しにくいため、なおさらです。
そのためには、検索サイトから最初にアクセスしたページがきちんとユーザーの目的に合致し、かつ期待を抱かせるようなデザインやコンテンツを用意することが肝心となります。 しかし、この消費行動は「どこでも同じようなものが買えるもの」に対しては発生しません。
コンビニで買えるようなものを、わざわざケータイで検索してから買う動機がないからです。
よって、コンビニで買えるような菓子などを作るメーカーは、こういった利用シーンを想定したサイトを作ってもあまり意味がないといえます。
つまりこの利用シーンを想定してケータイを活用すべきなのは、飲食店やサービス業などが主となります。こういった企業が、ケータイを活用して新たな顧客を来店させるようにするためにはどうしたらよいのでしょうか。
まず考えられるのは検索エンジン対策(SEO、SEM)になります。
しかし、ケータイの検索エンジンはまだまだ進化の途上にあり、効果的な対策の方法は変わっていきます。実際、これまでも何度も変化しています。
確実に表示されるキーワード広告への投資はまだしも、SEO対策のサービスに高い投資を行うことは、費用対効果を慎重に考えて判断した方がよいでしょう。
本質的な対策は行う意義が高いですが、「裏ワザ」のような対策は長期的に効果が出るとは限りません。
(2)ジャンル特化型検索サイトの利用
一方、飲食店であればSEOやSEMよりも、もっと確実な方法があります。
「食ベログ」 や「ぐるなび」のような「ジャンル特化型」の検索サイトヘの掲載です。
これらのサイトをすでにBookmarkしているケータイユーザーは増えています。
また、店舗独自のサイトを用意しなくても、来店の動機を形成するのに十分な情報をこれらのポータル上に掲載することができます。
そして、Googleなどで検索しても、これらのサイトのページは上位に表示されることが多いため、ケータイサイトを持たなくても新規顧客誘引には十分なのです。
さらに、「食ベログ」に登録されている飲食店に至っては、Googleの最上部に食ベログからの検索結果が表示されたりもします(「駅名」+「飲食ジャンル」のような検索結果になります。) ただし、食ベログは基本的に「CGM」であり、一般の人である「レビュアー」の評価 が絶対であることも頭に入れておく必要があります。
顧客の評価が低ければ、逆効果になる可能性も高いのです。
つまり、こういったジャンル特化型のCGMが存在するような業態、少なくとも飲食店は、広告費をかけて新規の顧客を集めるよりも、より商品やサービスの向上に注力して顧客に満足してもらうほうが長い目でみて効果的であるともいえます。
消費者がこだわりを特って買い物をする商品ジャンルであれば、他の業界でも少なからずそういった「消費者主導」の市場になっていくと思っておいた方がよいでしょう。ケータイ時代のマーケティングが必ずしもケータイ活用で結果が出るわけではないという顕著な例です。
モバイルを活用する3つのポイント
2009年2月、日本マクドナルドが過去最高益を達成したというニュースが流れました。
高価格商品の投入に成功したためと報道されましたが、その成功の背景にモバイルサイト「トクするケータイサイト」を利用するクーポン会員がいたことは見逃せません。
モバイ ルサイトを通じてクーポンを配信し店頭誘導に効果を発揮していたのです。
若者だけでなく中高年のサラリーマンまでが携帯電話の画面を見せてオーダーしたり、レジ脇の機械に携帯電話をかざしている姿は、ごく当たり前の光景となりました。
この成功事例は3つの大きな示唆を含んでいるといえます。
1つ目は、モバイルが顧客とのダイレクトコミュニケーションツールとして機能し、売上向上に直接的に貢献可能だということです。
2つ目は、紙のチラシやクーポンをはじめとした来店誘導施策のコストを削減するエンジンになり得るということです。
3つ目は、モバイルはPCサイトにはできない仕事をしてくれるということです。
飲料・食品メーカーのモバイルを使ったキャンペーン、レンタルCDショップの会員サイト、スーパーなど小売店でのモバイルメールマガジン、通販カタログのモバイルオーダーなど、日常生活の中で企業のモバイルサイトの施策を目にする機会は目立って増えてきています。
顧客の囲い込み、コスト削減、省力化など、企業ごとにモバイル導入の目的は異なります。
モバイルが無視できないコミュニケーションのチャネルとして捉えられているのは間違いありません。
NTTドコモのiモードのポータルサイト「iメニュー」には2008年春から一般企業やブランドサイトのためのメニュー「企業・ブランド」というカテゴリー が設置されました。
ASPの登場
サイト数増加の背景には、構築コストの劇的な低下も挙げられます。
サイト作成ルールが通信会社ごとに異なるため、ケータイサイト構築は手間とお金がかかるというのが数年前までの常識でした。
しかし、あらかじめ必要な基本機能を提供するASP(Application Service Provider)というサービスが登場し、コストを抑えたサイト構築が可能となりました。
決められた使用料を払い、パソコンインターネットの管理画面にアクセスして利用するのが一般的な利用方法です。
機能のカスタマイズが自由にできない、自社URLがそのまま使えないなどの制限はあるものの、構築費用の大幅削減というメリットがあります。
また複数のASPを連動させることで多機能サイトも構築できます。
3.モバイルマーケティングの具体事例
米屋が運営するリッチサイト
(1)国産の雑穀にこだわる米屋A商店
A商店は、従業員数13名、1972年の創業以来、地域のお米屋さんとして親しまれてきました。
2代目A社長が1989年から雑穀(粟、きび、ひえなど)を使った商品の販売を開始しました。
以来、お米と雑穀にこだわった数々のヒット商品を生み出してきました。
A社長は日本の食料自給率の低さに強い危機意識を特っており、農業を守るという観点から国内での雑穀生産者の開拓・育成に尽力してきました。
優良な農家に雑穀生産を促し、獲れた雑穀を流通させるネットワークや商品化して販売する商流など、生産から販売まで一貫したビジネスシステム(循環型農業の確立)を作り上げてきました。
穀物は突然増産したり減産したりすることが困難です。
そのため農業生産者の開拓・育成と生産物の売り上げのバランスを取りながら、徐々に・着実に拡大させてゆく工夫が必要になります。性急なことをせず、じっくりと日本の食料自給率を上げてゆくというのがA社長の描くビジョンでした。
A商店の売り上げの大半は、自社商品や米・雑穀のB2B(Business to Business)販売(卸売)が占めます。食料商社などのほか、有名通販雑誌や有名なレストランなども名を連ねています。
いずれも「国産雑穀のこだわり」や「商品の昧」に共感して商品を購入してくれている顧客です。
売上構成比は小さいものの、本社店舗販売や電話やFAXを通じた通販小売も手掛けてきました。古くからつきあいのある地域のお客様をはじめ、全国から引き合いがあります。
(2)顧客との強い絆をモバイルを通じて築く
A商店は小売での顧客接点に課題を抱えていました。
生産から加工・販売まで一貫して手をかけて作る高品質な商品はA商店の持つ大きな強みですが、これまでそのこだわりや思いを顧客に対して積極的にアピールしてきませんでした。
顧客に有益な情報や安全性を持っているにもかかわらず、語りかける機会を設けませんでした。
しかし、一部の顧客は単純な価格比較だけで他社製品にスイッチしているようだと感じ 「なんとかしたい」という思いを抱いていました。
また、自社の商品ブランドが有名になるにつれインターネット経由でPC版ホームページヘの来訪者が増加しましたが、Eコマースのしくみを提供しておらず、もともとは卸先企業への配慮を優先していましたが、「なぜネット通販しないのか」という声の高まりを受け対応時期を思案していました。
これら課題の解決策を検討した結果として、モバイルサイトの導入とPC版ホームページを含めたECの仕組みの導入を決めました。
(3)モバイルサイトを顧客との対話の中心に
既存顧客に送付しているニュースレターを通じてメルマガ登録キャンペーンを告知しました。
お米屋さんらしく、メールマガジン登録者全員にこだわりのお米3合をプレゼントするというものでした。
約2週間の期間中に全国から多くの人がメールマガジンに登録しました。
オープン早々からクチコミでの話題づくりにも成功したといえます。
A商店のモバイルサイトの大きな特徴は、通販利用顧客との「サイトを通じた対話」の動線を複数張り巡らしていることです。ECサイト利用者には単に商品を販売・送付するだけではなく、商品配送時に「ぜひご感想やご意見を聞かせてください」というメッセージとQRコードをプリントしたチラシを同梱し、モバイルを通じて顧客の声を集める動線を用意しています。
同様にモバイルサイト内のすべてのページ下部には「お客様のお声をお聞かせください」というリンクが付きます。
こうして集められた顧客からの声は「みんなのコメニティ広場」というコーナーでスタッフからの返事のコメントと共に紹介されます。
顧客からのコメントや写真が掲載され、スタッフからは顧客の声に対する回答だけでなく、雑穀についての豆知識の紹介なども返される仕組みです。
声を寄せたユーザーだけでなく、コンテンツとしてそれを見る来訪者も楽しむことができるようになっています。
生産から販売までの一貫した姿勢や商品に対するこだわりを一方的に語ると、場合によっては「興味のない自慢話」となり逆効果になってしまう可能性があります。
対話による顧客との信頼関係の構築を第一に置き、共感する顧客を増やし、徐々に深いコミュニケーションヘと誘導するというのがA商店のサイトづくりのシナリオです。
(4)ASPを活用して廉価に高機能サイトを構築
A商店のモバイルサイトのもう1つの特徴はサイト構築方法です。
サイト構築ASPとショッピングASP、メール配信ASPを組み合わせるだけで、特別なカスタマイズをすることなくリッチでユーザビリティの高いサイトを構築しています。
まずはメルマガ登録者を増やし、じっくりとコミュニケーションをして、その結果をレビューするための最小限のツールから始めようと判断したためです。
高機能システムを導入するのは、サイト運営を通じて自社の「相場観」ができあがってからと割り切りました。
また、サイトの企画・構築には顧客対応に関わる社員全員が参加し、コーナー企画やアイディアを持ち寄りました。
顧客の姿を具体的にイメージすることのできるスタッフだからこそのアイディアや配慮があちこちに見られます。
サイトヘの誘導チラシでは「QRコードの撮影の仕方」をはじめての人でもわかるように丁寧に説明しました。
また、想定中心顧客である30~40 代主婦にはパケット定額プランを利用していない層も多くいるだろうと仮定し、サイト各所にパケット代負担についての注意書きを設置しました。
さらに従量課金プランの方のパケット代負担が膨らまないよう、1ページあたりのファイルサイズを極限まで小さくしました。
ZOTOWN モバイル」ホームページ
「ANA SKY MOBILE」ホームページ
『モバイルマーケティングを活性化する 企業携帯サイトの構築(秀和システム)』 木暮 祐一 中谷 健一 吉田 謙 著 企