1.高収益医院に学ぶ歯科マーケティング
1.歯科医院の業績
平成22年度歯科医療法人経営実績調査において、医業収入の対前年増減比較は以下のような結果でした。
歯科業界は競合の激化が進み、二極化が進行していることは改めて言うまでもありませんが、この実績結果は、それがますます拡大していることを示しています。
医業収入は、全法人平均6.8%の減収であるのに対して、医業収入上位20%の優良歯科法人においては前年対比2.3%増加しています。
2.歯科医院における増収対策のメニュー
3.高収益歯科医院に学ぶマーケティング戦略
(1)高収益医院の取り組み
これまでの歯科医院の収入向上対策は、患者数アップ、つまり新規患者の確保を目的としていました。
これは、「新規患者」をどれだけ集めるかを主な目的とした、広報活動を主にした認知度向上対策、医院リニューアル・医療機器リニューアルといったイメージアップ戦略や患者紹介率アップ対策等でした。
しかし、歯科医院における業績格差がますます広がっている現状から、高収益医院にみられるマーケティング戦略には、新規患者の確保だけではない、いくつかの特徴がみられます。
そのポイントは、「既存患者の満足度向上活動」「新規患者の獲得活動」「自費率向上の取 組み」といった3つのサイクルをまわすことにあります。
その中でも、特に診療単価の増加を図るためにも「自費率向上の取組み」は最重要テーマとなります。
これまで急性期病院の目指す方向として実施されてきたDPCは、2010年12月16日中医協・DPC評価分科会において、「DPC/PDPS」という新たな類型で進められることとなりました。
2.自費診療の重要性と移行ポイント
1.自費診療の取組み方
(1)自費率向上の考え方
自費の多い歯科医院は金儲け主義だと見られがちですが、これは全くの誤解です。
自費診療は患者さんにとって最良の治療を提供することであることをしっかりと伝え、理解を得る必要があります。
そのためにも、治療技術の向上、医療サービスの充実を図るとともに、自費治療に関する情報提供の量と質を増やし、患者さんの選択肢を広げることが重要です。
このことが結果として、医院の収益向上へつながります。
(2)自費診療への移行を高めるポイント
診療の流れを、従来の保険診療のシステムと対比し、患者さんに十分な情報を提供することが、自費診療への移行率を高めるポイントになります。
(1)自費診療を患者さんに勧めるのではなく、「自費と保険の違い」を明確にする自費と保険の違いが分からない患者さんは、通常の説明を聞いているだけで、自費を強引に勧められている(=金儲け主義の医院)と受け取りがちです。
(2)「自費と保険の違い」を説明するためのカウンセリングを実施する患者さんには、「自費と保険の違い」を分かりやすく説明するとよいでしょう。
患者さんの知識を高め、選択は患者さんに任せましょう。
カウンセリングは対等の立場で行います(チェアサイドを離れ心理的不安を取り除く、同じ視線の高さで話す)。
(3)カウンセリング、マニュアルの整備効率的にカウンセリングを行うために、ビジュアル化されたツール類を使います。
(4)カウンセリング・トークの整備 複数のドクターがいる場合や、カウンセリングをスタッフに移管する場合は、標準的なカウンセリングの説明ができるようにトーク・マニュアルを整備します。
(5)自費に関するデータ管理実施策の効果測定を自費診療収入で見るのでなく、自費診療移行率によって判定します。
(3)自費切替えのパターン分類
実際に保険診療から自費診療への切り換えを図る場合、大きく分けて次の3つに分類することができます。
2.自費率向上:情報提供の量と質の徹底
(1)医療収入における自費診療率の割合(金額と人数比)
全国の歯科医院の自費診療率は、おおよそ10%~15%といわれています。
つまり、保険診療で成り立っているのが85%~90%で、自費診療で成り立っているのが10%~15%とな ります。
自費診療の内容にもよりますが、一般的にみると、100万円の医業収入が100人の患者さんから成り立っていると仮定すると、自費診療患者数は、実際には、2~3人、保険患者数は97~98人となります。
一人の自費の患者さんの獲得は、医院全体の増収に大きな効果があります。
(2)自費診療は健康に対する価値観で決まる
富裕層の方が、自費診療を行っているという間違った認識があります。
自費の患者さんは、所得が高い層の方が多いのは事実です。
しかし300万円前後の所得層でも10%以上の自費の患者さんがいます。
歯の健康に対して価値を見出している人たちに、しっかりとした情報提供していくこ で一定割合の人たちは、自費治療を選択していきます。
所得とは関係なく、歯に対するしっかりとした正しい情報提供を歯科医院に来院する患者さん全員に行っていくことが、自費治療を選択する患者さんを安定して増やすことにつながります。
(3)情報提供の徹底による自費率向上
自費診療は収入に大きく影響を与えますが、ある程度の患者さんに多少の情報提供をしてもそう簡単に効果が上がるものではありません。
患者さんの症状に合わせた最善の治療法として患者さんの理解を得られるように丁寧に情報提供をおこなうことが必要です。
すべての患者さんは理解できる範囲で必要な情報を欲しがっています。自費診療の情報提供を、「患者さん全員に徹底して行うこと」、「継続すること」が自費率向上へつながっていきます。
3.自費率向上のための具体的手法
1.自費診療へのアプローチ
2.自費向上のためのツール
(2)これからの入院患者の受け皿
今後の急性期に入院した患者の受け皿には、どのような選択肢があるのでしょうか。
国は下記のような多様な選択肢の整備を進めています。
■参考文献
「3 カ月で医院が変わる 勝ち組歯科医院経営55のポイント」寶谷光教 (クインテッセンス出版)
「歯科医院のための自費率向上マニュアル」(日本エル・シー・エル)