進む次期診療報酬改定議論!在宅医療の論点と主治医機能強化

1.社会保障・税一体改革と今後の改定議論

1.報酬改定の根拠~社会保障・税一体改革大綱

在宅医療の推進は、平成24年2月17日に閣議決定した「社会保障税・一体改革大綱」がベースとなっています。
この閣議決定以降、あるべき医療提供体制の実現に向けて、診療報酬及び介護報酬改定、都道府県が策定する新たな医療計画に基づく地域の医療提供体制の確保、補助金等の予算措置等を行うとともに、医療法等関連法が順次改正されています。
医療提供体制に関する具体的改革内容は、下記のとおりです。

社会保障・税一体改革大綱

2.平成26年診療報酬改定の重点課題と附帯意見

(1)平成26年診療報酬改定の重点課題

平成26年診療報酬改定では、「社会保障税・一体改革大綱」に基づき、医療機関の機能分化・強化と共に、在宅医療の充実が図られました。
また、この方向性は平成28年診療報酬改定においても、引き続き取り組んでいくことが必要であると、将来に向けた課題として明記されています。
平成26年診療報酬改定の基本認識と重点課題

(2)次期診療報酬改定は答申附帯意見をベースに検討

次期診療報酬改定(平成28年改定、消費税率引上げ時の対応)は、平成26年診療報酬改定の答申附帯意見を踏まえて、今後検討が進められます。
また、平成26年診療報酬改定の影響等についても調査・検証・検討が行われています。

平成26年診療報酬改定の答申附帯意見

3.次期診療報酬改定は特別調査結果を反映

今後中医協では、次期診療報酬改定に向けて、答申附帯意見を踏まえ、平成26年度診療報酬改定の影響等について調査・検証・検討を行う必要があるとして、関連する項目について特別調査の実施を予定しています。
その調査を進めながら、検討の場(検証部会、入院医療等の調査・評価分科会、薬価専門部会、DPC評価分科会、費用対効果評価専門部会)において、まずは、次期診療報酬改定に向けて、検討を進めるとしています

医業収入と医業収入分析
在宅医療関係では、介護保険との連携と共に、下記の調査が予定されています。
具体的には、機能強化型在宅療養診療所等の評価見直しの影響、在宅不適切事例の適正化の影響、歯科訪問診療の診療時間他下記の項目が順次予定されています。

答申附帯意見に関する事項の検討

2.前回改定における在宅復帰促進策と診療所の役割

1.在宅復帰率要件の拡大で増加する在宅患者

(1)改定における要件強化

在宅復帰率とは、退院患者に占める自宅等への復帰患者の割合をいい、以前は亜急性期入院医療管理料にのみ設定されていましたが、平成26年の診療報酬改定において、7対1入院基本料をはじめとして、いくつかの病棟の基本料に対して要件化されました。
これにより下記に示したような在宅復帰率要件に該当する病院は、入院時点で退院に向けた調整を厳格に進めるとともに、より積極的に在宅へ患者を誘導する動きが出てくることは明白であり、今まで以上に強固な連携先確保のため、おのずと病診連携、病病連携が推進されることになります。

在宅復帰率に関する要件が課せられた病棟等
したがって診療所は、これらの病院と連携して、増加する在宅患者をいかに取り込むかが今後の経営のポイントになります。

前回改定における在宅復帰率の関係性

(2)在宅復帰率の要件にうかがえる連携強化と診療所のスタンス

在宅復帰率は、原則として自宅へ復帰した患者数により算出されますが、下記への転院等も自宅同様にカウントされます。
したがって、下記に示した自宅以外の特定施設においても受け皿としての機能を強化していかなければなりません。
自宅に最も近い場所にある診療所においては、在宅療養を支援する医療サービスを提供し、病院と連携しながら主治医機能を発揮することが求められます。

在宅復帰率の対象となる自宅以外の施設等(7対1)

2.外来医療における役割が強化

(1)病院勤務医負担軽減の先鋒として期待される診療所

コンビニ受診や相変わらず高い大病院志向により、病院勤務医の負担は様々な施策でも大きく軽減されることなく、かかりつけ医に対する期待の声は年々大きくなってきています。
外来患者数の適正化は、構造的な課題への対応(初診料の保険外し等)や紹介・逆紹介を推進することにより改善を図る方向性が示されています。

全人的かつ継続的な対応が可能であり、またアクセスの良さがポイントとなる=かかりつけ医

(2)高齢化に伴う慢性疾患への対応が急務となる外来医療

現在65歳以上の高齢者は人口の約20%ですが、平成42年には約32%、平成67年には約41%になると予測されています。
それに伴い、複数の慢性疾患を持つ患者の増加に対する適切な対応が今後さらに求められるため、診療所や中小病院は外来医療における重要な役割を担っていくことになります。

主な傷病の総患者数の割合(平成23年厚生労働省調べ)

3.在宅医療における外来応需体制の見直し

1.在宅医療を専門に行う医療機関について

(1)在宅専門の開設を認めていない現状

現在、厚生局における保険医療機関の指定申請の受付の際などに、必要な場合は、健康保険法の趣旨から、外来応需の体制を確保するよう指導が行われており、在宅医療を専門に行う保険医療機関は認められていません。
しかし、全国一律の運用基準や指針などはないため、厚生局によって、指導内容や方法等に違いがあるとの問題点が指摘されています。

健康保険法等における取り扱い
上記、健康保険法第63条第3項において、療養の給付を受けようとする者は、保険医療機関等のうち、自己の選定するものから受けるものとする(いわゆるフリーアクセス)とされています。
よって、在宅医療を専門に行う保険医療機関を認めた場合は、当該地域の患者の受診の選択肢が少なくなるおそれ、当該保険医療機関の患者が急変時に適切な受診ができないおそれ等が考えられます。

(2)在宅専門診療所に対する規制緩和の動き

第253回中央社会保険医療協議会(H25.10.30)において、規制緩和について検討がなされ、様々な意見が交わされました。
主な意見は以下のとおりです。

主な意見
これらの意見を受けて、規制改革実施計画(抄)が平成26年6月24日に閣議決定されました。
具体的な計画は次頁のとおりです。
今後、中医協の意見を加味しながら、検討が進められます。

健康・医療分野 個別措置事項

2.外来応需体制の課題と今後の論点

平成27年3月18日に開催された中央社会保険医療協議会において、外来応需体制について議論がなされ、主な課題と今後の論点が整理されました。

主な課題と論点

4.主治医機能の強化は次期報酬改定の重要項目

1.主治医機能強化策の概要

前回の改定で重視された「主治医(かかりつけ医)機能の評価」は、「地域包括診療料」及び「地域包括診療加算」の新設により具体化されました。
診療料と加算の概要は下記表のとおりです。

主治医機能について
これらは、医師が複数の慢性疾患を有する患者を対象として、療養上必要な指導や服薬及び薬歴管理、健康管理、介護保険への対応、在宅医療の提供、24時間対応などを行う場合に算定できる外来診療における診療報酬点数です。
調剤薬局などとの連携や常勤医師の必要数(3人)などの要件があり、ハードルとしては決して低いものではありませんでした。
中小病院とサテライト等のグループ診療所を対象として想定されている同診療料は、月1回算定1,503点と比較的高く設定されていますが、一般診療所を対象とした同加算は1回20点と著しく低い設定となっており、現在もなかなか踏み切れていないのが実情のようです

2.診療所の外来機能強化は重点テーマ

これらの診療報酬は基本的には、対象となる高齢者の患者に対して継続的・全人的な医療を提供する医師をかかりつけ医として評価するという趣旨で、外来機能の役割分担という観点から、以下のように診療所を位置づけています。
次期改定においてもこの流れは継続するものと思われます。

外来機能の役割分担
複数の慢性疾患を有する患者については、実にその約45%が複数医療機関あるいは複数診療科を受診している事実が大きな問題となっています。
そのため、医療機関の選択については、まず主治医に必ず外来受診すること、そして主治医の判断によって、病院等の専門医療機関への紹介に基づく検査や入院ができることが重視されます。
こうした仕組みの構築が主治医機能として重要なポイントであり、次期改定においての注目点といえます。

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