規定・基準作りで労務トラブル防止!労基署の調査実態と事前対応策

1.労働基準監督署調査の最新情報

1.労働基準監督署調査の最新情報

(1)定期監督業務実施結果でみる全国的傾向

平成24年中に全国の労働基準監督署が行った定期監督等実施事業場数は134,295件となっており、そのうち約68.4%に当たる91,796件において、労働基準法、労働安全衛生法 および最低賃金法に関する法違反が確認され、是正の勧告がなされました。
また、近年、労働条件の適正化、長時間労働の抑制、過重労働による健康障害防止などの目的のため、労働基準監督署の監督件数が増えています。

監督件数・違反件数・送検事件数等、法違反率の高い業種、送検件数の多い業種

全国的な傾向が表れる東京労働局が発表した「平成24年定期監督等の実施結果」をみると、労働時間や賃金等の労働条件の確保・改善に関する法違反の違反内容の上位に挙げられているのは、以下の5項目です。
監督実施件数は、8,964件の事業場が対象となっています。

違反項目

1~4位に挙げられている違反項目については、ここ数年は同様の結果となっており、 今後も注意が必要です。

(2)厚生労働省発表の「地方労働行政運営方針」

労働基準監督署の定期監督業務は、毎年4月から5月にかけて、厚生労働省が発表する「地方労働行政運営方針」に基づき実施されます(詳細は厚生労働省ホームページに掲載)。
この「地方労働行政方針」により、都道府県労働局は管内の行政運営方針を定め、これに基づいて管内の労働基準監督署は年間計画を策定して、定期監督業務を行います。

定期監督の傾向

厚生労働省の発表する「地方労働行政運営方針」を読めば、その年度の定期監督の傾向と対策を立てることができます。

(3)労働基準監督署のチェック項目

近年、労働基準監督署は、労働者の健康保持のための長時間労働・サービス残業取締り強化を行っています。
監督官から重点的に見られ、かつ違反を指摘されやすい事項であるため、企業としては、次の7つの事項について注意する必要があります。

注意すべき7 項目
また、最近の労働基準監督署は、従来の監督業務に加えて集団指導、窓口相談等における啓蒙活動を活発化させています。
さらに、扱う対象も、解雇、賃金、労働時間等の労働基準法で定められている労働条件から、近年の問題となっている労働者のメンタルヘルス、職場の男女関係やいじめ問題に 拡大しています。
労働基準監督署の指導手法の多様化労働基準監督署の調査と流れ

2.労働基準監督署の調査概要

1.労働基準監督署の調査概要

(1)調査の種類

労動基準監督署の調査とは、労働基準監督官が労働基準法の違反の有無を調査する目的で事業場等に立ち入ることで、正式には「臨検監督」といいます。
臨検監督は4種類に分 かれています。

(1)定期監督

労働基準監督署の調査の多くは、この定期監督に該当します。
経済動向、労働災害発生 状況、遵法状況などの分析結果から、対象事業場のリストを作成し、年度の計画にしたがって行うものです。

(2)申告監督

会社に在籍している従業員もしくは退職者から、残業代の未払いや、不当解雇等について労働基準監督署に申告(通報)があったときに、その内容を調査するために行います。

(3)災害時監督

一定規模以上の労働災害が発生した場合、その災害の実態を確認するために行う調査であり、災害原因の究明や災害事故の再発防止の指導を行います。

(4)再監督

過去に指導を受けたが、指定期日までに「是正(改善)報告書」が提出されない場合や、事業所の対応が悪質である場合などに再度行なわれる調査です。

(2)監督官の来社パターン

労働基準監督官の来社パターンは、主に次のように分かれます。

監督官の来社パターン

(3)調査の手順

労働基準監督署の調査、特に定期監督や申告監督の場合の調査の手順は、次のように進められます。

調査の手順

(4)調査書類の種類

労働基準監督署の調査の際には「ご用意いただきたい書類」と題した書面がFAX、または郵送で送付され、この指定された書類について調査が行われます。
次に掲げる書類については、自社で内容に不備がないかどうかを確認しておく必要があります。

労働基準監督官から用意を指定される資料の例

調査終了後、事業所の労働基準法等の法律違反に対して行われる行政指導のことを「是正勧告」といいます。
そして、事業所が労働基準法等に違反する行為を行った場合に、労働基準監督官が交付するのが「是正勧告書」です。
また、法律違反にはあたらないが、改善する必要があると認められたときに交付されるのが「指導票」です。
是正勧告書はもちろんのこと、この「指導票」についても、指定期日までに指摘事項を改善し、「是正(改善)報告書」を労働基準監督官に提出しなければなりません。

労働基準監督官から交付される文書の種類

3.労基署指摘と企業の事前対応策

労働基準監督署の調査は突然訪れるもので、調査を回避する方法はありません。
また、従業員を一人でも採用した場合は、労務トラブルが発生する可能性があります。
労働基準監督署の指摘や労務トラブルをゼロにすることは困難ですが、次のような指摘事例を参考として、自社の事前対応策を検討しておくことが必要です。

有給休暇・労働時間に関する事例
年俸従業員による時間外手当請求
タイムカードと就業時間との差額請求

週40時間を超える所定労働時間の対応
■参考文献
『平成24年労働基準監督署定期監督実施結果』(厚生労働省)
『労基署調査・指導・是正勧告対応の現場』(日本法令)吉本俊樹 著

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