歯科の高収益化を実現 自費率倍増への院内改善対策

1.自費増大のサービス戦略

1.自費増大サービス戦略とは

保険診療報酬の将来予測としては、長期的には増加は見込めなくなってきています。
政策としても医療費支出を抑えようとする動きになっています。
団塊の世代が75歳になる 11年後からは、医療費は急増すると予測されており、保険料の値上げ、診療報酬の抑制、一部負担割合増加、保険適用範囲の縮小などによって対処すると考えられます。
実質の患者数については増加傾向にあります。
高齢化に伴うためか、特に50歳以上の患者が伸びています。
また、景気が好転しつつあることから歯科医療にも影響が出始めています。
その結果、自費診療も伸びてきています。
ただ、人口減少の中で歯科医院数は増加しているため、1件当たりの歯科医院の収支は悪化しています。
特に保険診療に依存している歯科医院の業績に影響が多く出ています。
今後の歯科医院としての取組は自費の増大対策が必要です。

(1)自院への信頼感を獲得する

医院に対する信頼感が自費治療を選ぶ際の前提となります。
経営理念、診療方針は人の価値感や目指す方向を院内スタッフと患者に伝える事が出来るツールです。
患者が診て、共感でき、信頼できる経営理念・診療方針を診察室や待合室に掲示して、歯科医院に対する不信感を払拭し、信頼感を形成する必要があります。
自院が特に重視している事や歯科医療におけるこだわりなどを明確にしておきます。
近隣の歯科医院と同じようなものはだめです。
患者が「この歯科医院を選んでよかった」と思える項目を工夫します。

信頼感の獲得方法

(2)自院のセールスポイントを明確にする

自院のセールスポイント明確にしなければいけません。
患者にもスタッフにも、他院より優れているポイントを、分かりやすく、明確に訴えます。

セールスポイントの明確化
これらを、ホームページや院内掲示、診療のしおり、パンフレットなどでアピールします。

(3)自費のメニューをそろえる

自費治療を患者に選んでいただくには、まず選べるメニューを用意する必要があります。
多様なメニューを用意することで幅広い患者層に来院してもらうためです。
インターネットで様々な歯科医療を比較してから来院する患者が増加しています。
この時希望する治療メニューが無ければ他院へ行ってしまいます。
メニューにあれば自院が得意とする方法を選んでもらう事も可能になります。

患者が望む、患者が選べる治療メニューを用意すること

2.自費の価格戦略

(1)価格戦略の考え方

自費治療の獲得には、実は保険診療の窓口負担が重要となっています。
「あの歯医者は高い」というクレームや悪い噂は、自費ではなく、保険診療で発生します。
「保険ならどの医院でも同じはず」といった思い込みが、初診時の診療内容によって大きく変わり、その思い込みが崩されたときにクレームが発生します。

歯科医院の窓口負担の相場感と価格戦略の重要ポイント
それが「普通の値段」だという信頼感を与え、その医院の自費の価格への信頼感となってくるのです。

(2)3段階価格

三段階の価格を設定すると、中間の価格のものを選定する傾向が強くなる

3.患者をひきつける値引き

患者が感動するような値引き方法を工夫します。
口コミが広がり、患者満足度の向上などに大きな効果が期待できます。

感動する値引き方法

2.自費診療のプロモーション戦略

1.自費を増大するプロモーション戦略

自費のプロモーションには、説明やPRに使う情報発信ツールの開発や院内セミナーなどのイベントが欠かせません。
ツールには、模型やポスター、カタログなどが有ります。
メーカーや技工所も色々なツールを用意していますが、基本的には自院独自のものを自作することをお勧めします。

ツールの作成ポイント

2.ホームページの活用

ホームページが歯科医院選びの重要なツールになっています。
しかも、医療法の広告規制の適用をほとんど受けません。
自費治療のメニューを掲載することで分かりやすくなり、医院選びをしやすくなります。
注意点としては、厚生労働省のホームページ・ガイドラインに従って、分かりやすく、美しいホームページを制作する必要があります。

ホームページ作成のポイント

3.自費治療のカタログ作成

自費治療を勧めるにあたり、カタログが必要となります。
ありきたりのカタログではなく、自院での説明に沿ったカタログが必要です。
また、治療ユニットで行う事が多い為、文章も必要ですが、ビジュアルに訴える事の方が重要です。

カタログ作成のポイント

4.待合室での自費PRを工夫する

待ち時間が患者にとって一番の苦痛です。
その待ち時間を有効に利用しましょう。
待合室での工夫が自費治療を増大させるだけでなく、クレームや医院への不満を少なくする重要なポイントになります。

ポイント

5.診察室での自費PRを工夫する

診察に入ってもすぐに治療となることは少ないでしょう。
また、治療途中でも次の治療の用意や、印象取りなど、時間が空いてしまう事も有ります。
その時間を自費のPRに充てる工夫が必要です。

ポイント

6.デジタル・コミュニケーションツールの活用

現在では、デジタル化している歯科医院が多くなっています。
ですが、治療時の説明にしか使用せず、患者はその場で見た薄い記憶しかなく、すぐに忘れてしまいます。
せっかくのビジュアルに訴える機能を十分活用しましょう。

デジタルコミュニケーションツールの活用ポイント

3.自費増大のための院内体制の構築

1.スタッフを営業マンに教育する

自費を増やすには、医院を選択して来院した患者に、「自費治療」を選択していただかなければなりません。
自費治療の選択には、「患者ニーズ」をつかみ、「ウオンツ」という気持ちを持ってもらう事です。
その気持ちを持ってもらうには自費治療のツールの他にスタッフ全員の協力が無ければ受注できません。
院内体制とスタッフ教育が重要なポイントになります。

■スタッフ研修会の実施

自費のスタッフ勉強会を定期的に開催します。
常に自費への取り組みを行うためには、スタッフの意識から変えなければいけません。
スタッフに対し、強制して自費を進めるよう指示したとしてもスタッフ自身が理解していなければ無駄な努力に終わってしまいます。
スタッフが自費の良さを理解し、患者の為に自費を進めるんだ等いう意識を持たせることが重要です。
研修会を開催し、知識を深めることが自院の良さを理解させることにもつながります。

研修会開催のポイント

2.スタッフに自費の良さを納得させる

患者が感動もしくは納得して自費を選択するのには、進めるスタッフが自費の良さを理解し、納得していることが前提です。
良さを理解していないと「高い治療を無理に勧めて嫌われたらどうしよう」「悪徳セールスマンのように思われたらいやだ」という意識がスタッフの中に生まれてきます。
自費治療の根本は患者のために一番適した治療方法だとスタッフ自身が自覚することです。

ポイント

3.自費治療の価格と効果の比較

スタッフの中には自費治療が高いから進めるのをためらう人もいます。
患者にとっての価値や評価によって、対価が変わることを理解させましょう。
高い物なのか、価値が認められるから高価なのかでは判断が大きく違ってきます。

ポイント

4.自費治療獲得にインセンティブを設定

スタッフの自主的な自費のカウンセリングや営業活動を促すため、自費販売の報奨制度を設定することも重要です。
スタッフの自費への取り組みを活発化させるためにも、常に自費への認識を持ち続けさせるためにも、報酬制度を構築する方が良いと思われます。
但し、報奨制度に目を奪われ、患者に適していない自費を進める事の無い様に注意しなければいけません。合っていない自費治療を受注したことより、その話題を振った(言葉にした)こと自体が問題になるからです。
予約制の歯科医院が多い現状では、患者の来院前にスタッフミーティングで対処法を決めておくことが重要です。

報奨制度のポイント

4.カウンセリング導入事例

1.カウンセリングシステムの導入事例

(1)医院概要

医療法人社団 A歯科医院(関東 中核市)
立地等:JR駅徒歩7 分 テナント開業(マンションの1階部分 駐車場6台)

医院設備・スタッフ

(2)目標収入の設定

MBC(マネジメントバイオブジェクティブ:目標管理)を平成22 年より導入し、自費月額売上目標200万円と助手、衛生士、歯科医師、院長と全て個人の目標を設定し、みんなが幸せになれる歯科医院を目指しています。
会計事務所の担当者が素案を作成し、院長、担当者、各スタッフと面談し、最終目標を設定しています。
現在、自費売上は年間20,000千円を超え、今年度中には達成できる見込みとなっています。

2.ツール紹介

(1)カウンセリング用ツール

カウンセリング用ツールとしては、次ページ以降のシートを使用しています。
1ページ目は、医院の名称が記載されているため、2ページ目からの紹介としています。
このシートは、スタッフミーティング(毎週木曜夜7時~8時)で歯科助手が中心となりまとめたものです。
患者へのご案内、診療の流れ、検査の種類や目的、医院の願いをまとめて、カウンセリングに活用しています。

ツール

(2)治療提案書作成のための助手、歯科医師間のシナリオツール

歯の治療進行イメージシートをもとに、治療提案書を作成します。
治療置換や方法など、歯科医師が最善と思う内容を作成します。
その中には、それぞれの個人的興味や歯の治療が完治した後にやりたいこと、なりたい自分情報を盛り込み、この治療計画によって、明るい未来の自分を想像できるものとします。

歯の治療進行イメージシートの内容

(3)カウンセリングシート

基本的には、問診票に記入してもらった後で、カウンセリングシートを作成します。
このシートは既往症や住所氏名等の基本情報の他、気持ち良く来院して頂くために、生活上 不都合なこと、辛い経験をお聞きして、患者の不安解消に役立てています。
問診票やカウンセリングシートは助手と衛生士で常に改善案を提案しています。

カウンセリングシート

(4)その他のツール

その他のツール

3.朝礼、終礼の患者情報の共有

A歯科医院では、朝礼、終礼を実施しています。
朝礼ではその日に来院予定の患者の確認と院内での患者情報の共有を行います。
終礼では、各自がその日の反省と患者情報の共有を行います。
毎週木曜日にはミーティングを診察後に行っており、毎回発表者を決めて発表者が勉強したことをみんなに伝え、意見交換を行います。
その後、助手、衛生士、歯科医師に分かれてグループ研修を実施しています。

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