リーダーの本当の仕事とは何か…ダグラス・コナン、メッテ・ノルガード 著/有賀祐子 訳

「毎日の小さな実践が大きな変革を起こす!」
本の帯のこの言葉に釣られて、思わず読んだのですが……
「リーダーシップで大切なのは、自分ではなく相手なのだ、リーダーシップは信じられないほどのしなやかさと、とめどないしたたかさを併せ持つのだ。」という気づきを与えてくれます。
「タッチポイント(接点)」とは、予期しない割り込みや業務のなかで生じる一つひとつのやり取りをさします。
この貴重な触れ合いの機会に変えて、わずかな瞬間にリーダーシップを発揮し、相手の抱える問題を解決し、自分の仕事も片付けようというのである。

第1章 仕事への「割り込み」を新たな視点から見る

タッチポイントの3つの要素
(1)相手、(2)テーマ、(3)リーダー
リーダーは相手の話にじっと耳を傾け、テーマの輪郭をつかむ手助けをし、緊迫感をもたらし、次のステップへの自信を持たせる。
タッチポイントで主導権を握るには、最も切迫したニーズに対処できなくてはならず、その対処をとおして相手の能力を高め、次のテーマに挑戦できるようにする必要があるのだ。
自分のテーマに対処する-問題に先手を打つ
相手のテーマに対処する-まず、一人ひとりの考えを聞く
みんなのテーマに対処する-リーダーも責任を負う
タッチポイントはどれもみな可能性の泉であり、人間関係がうまくいくかどうかをも左右する。
ちょっとした触れ合いでさえ、自分とその将来、あるいはリーダーについての考えを変えるきっかけになりえる。
「君ならもっとよい成果を出せるはずだ」というひと言が多くの場合、相手に自信を持たせ、「高い目標に挑戦しよう」という意欲を引き出すうえで、大きな役割を果たす。
やる気を高めて仕事を前に進めるのだ。献身を引き出すのだ。正しいことをしたいという思いを相手に抱かせるのが望ましい。
テーマには厳しく向き合いながらも、人への気遣いを示すことはできる。
そのときかぎりで終わらない結果を出すには、たしかな人間関係を築き、まわりの人々の成長を助ける必要がある。
本当の優しさとは、一人ひとりの従業員を人間、ひいては尊重すべき相手と見なすだけでよいのだ。

第2章明日もっとうまくやれることが、ひとつあればよい

進歩して完成の域に近づくにつれて、日々の大切な瞬間をとらえ、特別な何かを添える術に長けてくる。
その特別なものによって、ありきたりな触れ合いがかけがえのないものへと変わる。
リーダーであるあなたがきちんと仕事をするには、他の人々に全面的に頼らざるをえないからだ。
歯切れよく語りかけ、全員に同じメッセージを届けなくてはいけない。他人の話に熱心に耳を傾け、相手に必ず「聞いてもらっている」という気持ちを抱いてもらわなくてはいけない。
専門性とタッチポイントを活かす力、この両方を磨こうと努めれば、学習に拍車をかけて成果を高められるだろう。
タッチポイントにうまく対処するための3つの基本 (1)知恵=論理、(2)ハート=誠実さ、(3)技能=手腕  技能を発揮するとは、相手の話をじっくり聞くのも、効果的なリーダーシップ発揮法になりえる。
目標を達成できない理由は、知恵、ハート、技能のうちどれかひとつで頻繁に躓く傾向があり、そのせいでなかなか完璧の域に近づけない。
(1)知恵:背景となる理屈が欠けているとき
優先順位をつける訓練ができていないからかもしれない。
また、非常に明快な考えを持っているのに「部下たちは自分で理解すべきだ」という理由で説明の時間を省いているのではないだろうか。
(2)ハート:本物の絆に欠けるとき
自分のハートの中身をつかんでいなければ(あるいは、表に出さなければ)、相手と本当のつながりを築くことはできない。
(3)技能:技能が十分でないとき
仕事の下地づくりを怠ったら、部下たちから「準備をして最大限の努力をするだろう」という信頼は得られない。
そのうえ、自分の技能向上をなおざりにしたら、部下たちにもそれを期待できないだろう。
誰にでも不得意な分野はある。サルも木から落ちるというではないか。
誰もあなたに完璧は求めていない。
望んでいるのは向上である。
だが、変わるのは容易ではない。
なぜ難しいかというと、新たな気づきを頭ではなく身体に覚えこませ、あまり考えなくても実践できるようになるまで努力しなくてはならないからだ。
心のなかにひらめいた最高の意図を直感的に形にできるまで、自分を鍛えるのだ。
謙虚な気持ちになると、新たな学習と成長の地ならしになるからだ。
実際、謙虚な人ほどえてして、技能の習熟に誰よりも身を入れるものだ。
彼らは、自分を他人と比べるのではなく、「こうありたい」という内なるビジョンに突き動かされているのである。

第3章自分流のリーダーシップ・モデルをつくる

知恵を働かすというのは、寄せ集めの発想や仮定をもとに、一貫性のある考え方を生み出すことだ。
こうした考えを自分流のリーダーシップ・モデルと呼ぶ。
リーダーにとってリーダーシップ・モデルを築き上げるのは、最も省力化とストレスの軽減につながる、実際的な取り組みである。
リーダーは決定的な瞬間に、攻撃型や適応型ではなく、統合型のアプローチに従う必要がある。
人々を利己的か利他的、競争的か協調的のどちらに分類しても意味がない。
わたしたちは両方の性質を併せもっているからだ。
古代の老荘思想は、攻撃型の「陽」と適応型の「陰」を、対象的でありながら互いに補うものととらえ、これらが組み合わさって全体を形成すると考えていた。
二つの動きを理解することから知恵が生まれる。
二つの本質的な問いに答える
問い1 人々が全力を尽くそうとするのはなぜか。
問い2 変化の絶えない世の中で成果を向上させていくにはどうすればよいか。
動機づけに関しては、自分が金銭、称賛、勝利、挑戦などに惹かれるからといって、他人も同じだと思いこまないように、注意したほうがよい。
肝心なのは、あなたが何に夢中になるかではない。
みんなが心の底から全力を尽くそうとするのはなぜか、なのだ。
効果的にリーダーシップを発揮するには、人間と変革の本質を理解していなくてはならない。
「長く効果が続く抜本的な変革を引き起こすには時間がかかる」という事実を受け入れる必要がある。

第4章仕事に感情を交えるのが、本当に勇気ある行動だ

仕事に感情を大いに交えるのが本当に勇気ある行いというものだ。
一緒に仕事をする人たちへの思いやりを忘れないのである。
リーダーの多くは自分をさらそうとしない。本音を出すどころか隠すのである。
だから、型どおりの関係しか築けず、熱い献身など引き出せない。
従業員は、生身のリーダーの本音を知りたいのだ。
ハートをめぐる問いに答える
問い1 なぜリーダーの道を選ぶのか?
問い2 自分の掟は何か?
問い3 有限実行がどれだけできているか?
タッチポイントを鮮やかにさばく人々は、自分の職業人生よりも、組織やチームへの献身を大切にしている。
軍隊では「Ⅰに使命(ミッション)、Ⅱにチーム、Ⅲが自分自身」と言い慣わされている。

第5章自分を鍛えるにはどうしたらよいか

チャールズ・ダーウィンが観察したように、環境が急変するなかを生き延びるのは、最も強いものでも最も賢明な者でもない。
他を凌ぐ適応力を発揮した者なのである。
このため学習する能力が最も高い者が、適者として生存していく。今の時代に何より大切な能力は学習のしかたを学ぶ力だと説いているのである。
人間関係を築くには、時間をかけて話をする必要がある。
相手を知ろう。
相手のストーリーを学ぼう。
相手は何を原動力にし、何を気にかけ、何を誇りにし、何を心配しているのか。
人間は一人ひとり違う。
相手にとって何が大切かを知っていた方が、影響力をおよぼして献身を引き出すのが遥かにうまくいくだろう。
何かを言う前に「この意見はどう相手に役立つだろう?」と自問するのだ。
タッチポイントでひときわ重要なのは、期待内容をはっきり伝えることだ。
理解してもらえると決めてかかり、相手に本当に伝わっているかどうかを確かめないのだ。

第6章リーダーシップで大切なのは、自分ではなく相手だ

触れ合いの活かし方にかけては全員にひとつ共通項がある。
誰かと接する際に、自分が何を得られるかよりも、何をもたらせるかを考えるのだ。
組織が自分に何をしてくれるかと問うのはやめ、どうすれば組織に奉仕できるか、その方法をさがすのである。
魔法の言葉-どうすれば力になれますか?
リーダーシップで大切なのは自分ではなく相手である。
この魔法の言葉を口にすると、自分が伝えたいこと、成し遂げたいことを前面に押し出すのではなく、相手が何を望み必要としているかを探ることを重点に据えられる。
タッチポイントの三角形  「どうすれば力になれますか?」という魔法の問いを繰り出すと、三角形をつくる準備になる。
最初のステップとして、相手の話をじっと聞く。
これは何が起きているかをつかみ、相手が何を自分に求めているかを知るのに役立つ。
第二のステップとして、テーマの大枠をつかむ。
三つめのステップでは、次に何をするか、誰がそれを実行するかを決めて、課題を前に進める。
タッチポイントを終えた後は、事後確認として「どうなりましたか?」「ほかに何か必要ですか?」などと問いかけよう。
こうすると、あなたの気遣いを改めて印象づけることができる。
しかも、相手の答えからは、事後どうなったのか、自分が本当に役にたてたのかどうかがわかる。
「聞く → 大枠 → 前進」さえ頭にいれておけばよい。次の手順が決まってタッチポイントが終了したら、後々のためにメモしておこう。
テーマが自分ではなく相手のものである場合、フォローアップをすると、自信をつけさせたり、感謝の気持ちを伝えたりする機会にもなる。
効果的なタッチポイントの四つのA
(1)神経を研ぎ澄まして;alert
(2)豊かな;abundant
(3)本物の;authentic
(4)順応性がある;adaptable
という条件を満たしながら相手と関わるのである。
明日、もっと進歩するには?「何かがうまくいかないと、そのたびに私は真っ先に「この教訓は何だろう?」と言います。
最優先すべきは失敗から学び、できれば、同じ失敗を二度としないようにすることでしょう。」(ラリー)  ビジョンや戦略は約束にすぎない。
リーダーの仕事は約束を形にして、現場での成果へつなげることだ。
しかし、抽象的なコンセプトをどう実地に根付かせるのか?
無味乾燥な箇条書きにどう生気を吹き込むのか?
これをタッチポイントごとに実行するのである。
「リーダーシップはガーデニングと同じです。水や肥料をやるなどの手入れを、毎日欠かさす実行する必要があります。
雑草を抜いたり刈ったりするのも欠かせません。
庭を放っておくと、目も当てられない状態になりますからね。」(アイリーン)
人材を育てて成果を押し上げるには、厳しさと優しさの両方が求められる。

リーダーの本当の仕事とは何か…ダグラス・コナン、メッテ・ノルガード 著/有賀祐子 訳私・桐元自身も悩んでいるリーダーシップについて、分りやすく書いています。
どうすれば、問題に対処できるのか。
日々の実践がまだまだ足りていないと痛感させられました。
役職者以上の方が読まれることをお勧め致します。

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