1.相手に好印象を与える「話し方の基本」
お客様との商談や社内会議、クレーム対応など、話し方の良し悪しが業績を左右する場面が数多くあります。
共通して言える点は、高い業績を上げている社員は、成果に結びつけるための上手な話し方を心得ているということです。
今回は、彼らのような「できる社員」が実践している話し方を体系的にまとめました。
これらの実践で営業力は必ず向上します。
是非営業担当の方の業績アップにお役立て下さい。
1.ここが違う!「できる社員」の話し方
同じ内容の話をしているのに「何故あの社員は、良い営業成績を残しているのだろう、何故お客様から評価されるのだろう」と、日頃そんなことを感じてはいないでしょうか。
魅力的な条件提示も優れたアイデアも、相手に良さが理解されて初めて価値を持ちます。
つまり、相手に伝わる正しい「話し方」を身につけ、好感度や評価をアップさせる必要があるということです。
「できる社員」は、話し方を工夫して、人の心を動かしています。
ビジネスでは、「話し方」が重要であるということを十分理解し、それを磨く努力をしています。
このような「できる社員」が身につけている話し方は以下の3点です。
「できる社員」は、相手の立場に立った話し方を意識せずに身につけています。
相手の立場に立った会話によって、相手が自分に対して興味や理解を示したり、今どのような気持ちであるのかが垣間見えたりと、自分に有利な会話を進めることができ、取引成立につながることを感性で行っているのです。
反対に、相手の身になることを疎かにしてしまうと、たとえ、話しの内容は伝わっても、「相手の心に届かない」、「納得してもらえない」ことで成約に至らず、相手にマイナス印象を植えつけてしまうことになります。
2.話す「スピード」「声の大きさ・トーン」は相手に合わせる
十分気を配って資料を準備しても、実際に会話をする時に、どのような話し方をするかで、印象は全く異なってしまいます。
メラビアンの法則によれば、人が相手を受け入れるためには、服装や態度などの視覚情報が55%、話し方が38%を占めますが、準備した資料の説明(話しの内容)はわずか7%に過ぎません。
■メラビアンの法則
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した、人の第一印象は初めて会った時の、3から5秒で決まり、また、その情報のほとんどを「視覚情報」から得ているという概念。
例えば、早く話す人とゆっくり話す人がいます。
相手の話し方を無視して会話をすると、話の内容がよくわからないと悪い印象を与えてしまいます。
このようなケースでは、相手の話し方のタイプをよく観察し、相手の話し方に合わせることが重要です。
そうすることで今までよりも会話がスムーズに運びます。
話し方をタイプ別に分析すると、早く話す人は、頭の回転が早い人、テキパキ何事もする人が多いと言われています。
一方、ゆっくり話すタイプの人は、落ち着きのある性格の人、自分に自信を持っている人などが多いと言われています。
3.「話す」が3割、「聞く」が7割を心がける
人の会話は、「話す」と「聞く」という「刺激」と「反応」によって成り立っています。
相手の話していることを聞き、理解した上で話をしなければ、会話は成立しません。
1対1で話す場合、相手が話す時間を7割にすることを意識する必要があります。
つまり、自分が話す時間を3割に抑え、聞く時間を7割にするということです。
営業の場面においても、お客様の話を真摯に聞くよりも、買っていただきたいために、話しすぎてしまうことがあります。
「できる社員」は、話す時間と聞く時間のバランスを無意識に取りながら、深い信頼関係を構築しています。
厳密に考えると、相手の心を”知る”ことは難しいですし、相手に自分の心を知ってもらうことはできませんが、深い信頼関係にある場合、相手の心を心で感じようとするスイッチが自動的にオンになります。
深い信頼関係にない場合においては、「話す」が3割、「聞く」が7割と意識しながら話し合いをすると、心に余裕が生まれ、相手の話に集中することができるようになります。
以下は、人の話をどのくらい聞いているかのチェック表です。
話し上手は、聞き上手であり、自分と違う意見に出会えることを喜べる人とも言えます。
2.相手を納得させる「論理的な話し方」
1.話のストーリーを結論から組み立てる
言いたいことを明確に伝える1つの方法は、結論志向で話すことです。
これは、結論や大事なことを最初に述べたり、早めに結論を明確にしたりすることです。
具体的な理由は結論の後に述べるようにすれば、より効果的な会話になります。
逆に、状況説明などから始め、最後に結論を述べると相手は話を全部聞き終わるまで何が言いたいのかわからないことになり不親切であると受け取られます。
また、相手を納得させる論理的な話し方には、結論だけではなく「話す内容」や「シナリオ」にも着目すべきです。
2.相手の脳裏に焼きつけるための数字を示して語る
相手の脳裏に深く印象付けるためには、具体的な数字を示すことが有効です。
商談の際に、あれもこれもと提示しても日がたてば、その記憶は薄れていきます。
情報として「正しい」ことを説明しても、それが相手に実感として伝わらなければ、意思の疎通は成功したとは言えません。
相手を説得する場合は、できるだけ具体化された数字のあるデータの方が客観性や具体性という面から説得力は増します。
数字も統計資料やアンケートなど多種多様ですから、情報源や数字そのものの信憑性ということも考慮しなければなりません。
以下は、新商品の商材を例にした商談事例です。
事実としての数字は、データに基づいた信憑性のある数字を示しますが、評価としての数字も事例で示すとより相手の印象に残すことが可能になります。
3.論理的に話すことの効果
論理的に話をすることは誰しも訓練をすれば習得できます。
しかし、どんな論理で話すかとなると、その前提として合理的な考え方や判断力が無ければ単なる「自己正当化」のための自己主張で終わってしまいます。
論理的に話すとは、筋道立てて話すことで、相手にわかりやすく伝えることです。
つまり、難しいことを易しく、易しいことを深く、時には面白く伝えることです。
更に論理的に話すということは、自分の言いたいことが相手にストレートに伝わることを1つの目標 としています。
よって頭の中で伝えたい内容(結論)と、その根拠がいかに容易に理解してもらえるかが鍵となります。
以下に論理的に相手に伝わるための方法と効果をまとめます。
常に検証し、「話し方」が重要なスキルであると認識する必要があります。
自分の意思を論理的に相手に伝えることなしには、相手からの信頼を得られないばかりではなく、実際の社内業務にも支障をきたす恐れがあります。
つまり論理的に何を伝えたいのかを常に整理する必要があります。
また、相手に話が上手く伝わらない場合は、その原因を探り、論理的に話すための対策を練る必要があります。
3.成約に結びつける「共感話法」
1.歩調を合わせるペーシング話法
ペーシング話法とは、相手の行動、声の調子や声のトーン、話し方を相手に合わせて一体感を演出し、相手の立場に立って話すことでお互いの距離を縮める手法です。
相手の話し方や立場に合わせて対話することで、ビジネスパートナーとして相応しい人物である印象を与えます。
人は、相手が自分の立場に立って心配りをしてくれたり、話を合わせてくれると、うれしくなって「あの人は、いい人だ」と言ったりします。
それを自分から実行すれば、相手の人は、自分に好印象を持ち、契約の成約後もリピート受注や紹介等、副次的な効果も生まれてきます。
話す「技術・コツ」という知識としての記憶は、忘れたり消えたりしがちですが、相手との歩調を合わせたり、相手の立場に立とうとする「気持ち・心構え・話し方」というのは、一度身につくと忘れにくいものです。
「話し方」で重要なのは「伝えているか」ではなく「伝わっているか」であり、相手中心の意識を持つことでペーシングも可能になります。
2.購買意欲をかきたてる他社事例紹介話法
他社事例紹介話法は、成功した第三者の例を挙げて質問をしていく話法です。
セールストーク時に、反論したいと思っていても相手の気分を害するような発言は得策ではありません。
そこで、成功した第三者の例を挙げることで自分が傷つくことなくセールストークを展開することができます。
例えば、「同じようにA社様は、当初、難しい、費用対効果を測れないなどとおっしゃっていましたが、今ではお得意様になっています。」とか、「B社様では、導入前と比べ500万円の利益が出ている」など第三者の例を挙げたあとに「どう思われますか?」というような質問を盛り込みますとスムーズに商談を続けていくことが可能です。
諸外国は、日本人の国民性をどのように見ているのでしょうか。
日本人は、秩序にこだわり時間や約束を守る、仕事が丁寧で美意識が高いとみられています。
また、集団行動を好む傾向にあるとみられています。
そこで、購買意欲を掻き立てる手法の一つとして、「皆様が購入されている、使用されている」という話法を使います。
周りが使っているということを上手く伝え、周りも使っていると伝わった時点で、人は無条件にその商品を良いものだと認めて疑わない状態になるものです。
他のお客様での成功事例を紹介することにより、具体的に費用対効果がイメージできます。
3.反論意見を話すのに有効なクッション話法
人はできる限り自分の発言に同意を得たいと考えます。そのため反論をされると身構えてしまうものです。
そのためビジネスの世界でもできる限り相手の発言には同意をする、もしくは同意をしたかのように見せる必要があります。これをクッション話法と呼びます。
「お宅の商品は高いですよね」という質問に対し「いえ、うちの商品は安いですよ」という回答は好ましくありません。
相手は同意を欲しているわけですからそこで拒否をすれば心象が悪くなります。
このような場合は「たしかにうちの商品は高いです。ですが・・・」という形で、返答する話し方がよいでしょう。
このように、一旦受け入れつつも、こちらの主張を推す話し方が、一般的にイエスバット法といわれるもので、一枚クッションを挟み込み、やんわり相手の問いかけを反論する話し方です。
過去歴代総理の中で竹下登元首相は、反論すべき場面で「なるほど、そういう考えもあるわな」と、あえて言っていたので、周囲の人を敵に回さなかったという話は有名です。
相手の意見に対して反対意見を伝えるのに、直接的なものから婉曲的なものまで並べると以下の3つになります。
「ノー」については、詳しく述べる必要はないでしょう。真正面から「それは違います」と自分なりの意見を伝えるやり方です。もちろん相手は否定された気分になります。
「イエス、バット」は、一旦、相手の意見に同調しながら、「でも」以下に反対意見を伝える方法です。
「イエス」と賛同されたようでありながら、使い方次第では否定された印象が残る場合があります。
「イエス、アンド」は、もっとソフトで、相手の意見を受け入れた上で、「そして」と転換しながら自分の意見を添える方法です。
このやり方をすると、「相手の意見+自分の意見=第三の考え方」が生まれてきます。
つまり、相手の意見に同意したあと、否定ではなく建設的な提案をするという話法です。
「それはいい考えですね。
それと私の考える方法を組み合わせると、もっと良くなりますよ」という話し方です。
いずれのクッション話法も、一旦「イエス」で受け止めことが大前提の話し方です。
4.ケース別「話し方」実践例
1.信頼関係を築き相手を納得させる「話し方」
人は「信用していない人の言うことは信じない」、「知らない人とは取引しない」、「嫌いなタイプからは買わない」ものです。
人は好意をもっている人からの要請を受けると、それに積極的に応えようとするものです。
人の行動特性を説いたザイアンスの法則の中に以下の行動パターンがあります。
※ザイアンスの法則:アメリカの心理学者ロバート・ボレスワフ・ザイアンスが提唱した、繰り返 し接すると好感度や印象が高まるという法則。
これらのことからわかることは、信頼関係を築くには、よく知り合うことが大切だということです。
営業の法則で「売上は、訪問回数の2乗に比例する」というのがあります。
つまり、お客様を訪問して話す機会を増やせば増やすほど「2乗的に」売上もアップしていくということです。
自分を語り、相手に知ってもらうことが目的ですから毎回、クロージングをする必要はありません。
時には、宿題をもらったり、相談を持ちかけられたりと気の利いた存在となることです。
某中小企業の営業職に常にトップセールスの結果を残している営業マンがいます。
お客様との信頼関係を築くまでは、一切商品説明をしないことを心がけているようです。
「商品を売る前に自身を売る」という考えは今の時代にも必要であるということです。
2.「No」を「Yes」に変え成約に結びつける「話し方」
お客様が「No」というのは、人間の行動パターンから考えると当然です。人は往々にして否定的に物事を考えるものです。
よって断られたからといって気にすることはありません。
営業では、以下の3つを三大反論と呼びます。
恐らく営業時には何度も耳にしているはずです。
アメリカ保険業界のトップセールスであり、晩年は営業教育でも著名なフランク・ベドガーは、「お客の断りの62%はウソの断りで、真実の断りは38%にすぎない」と述べており、よって、予め反論に対しての想定問答集を作り、反論が出たらすぐに答えられるようにしておくことが必要だと説いています。
お客様の「No」に対して一番いい方法は何でしょうか?
それは、相手の意見に再反論するのではなく、同意してしまうことです。
つまり、お客様の意見は正しいですという姿勢を示し、お客様のことを尊重していると感じさせる話し方が必要です。
例えば「おたくの商品は高いね。」と言うのに対して「はい、私もそう思います。
実はその分・・・・・・・」と経済性を訴えかけるようにしたら、その営業マンに対する共感性から受け入れられる可能性が増します。
3.受注スピードを速めるための「話し方」
ここでは、より受注に近づくための質問のテクニックを紹介します。
「もしも話法」といい、「もし~だったら」という質問形式のため、「ASKIF話法」とも呼ばれています。
「もし~だったら」という形で質問するものなので、相手は具体的イメージを浮かべやすくなります。
また、「もしも」という仮定の話ですから、相手も答えやすいのです。
営業の目的は契約を結ぶことです。
相手に買う気があるのかを確かめるのも必要です。
セールストークはタイミングをみてクロージングしないと、いつまでたっても受注できません。
あと一押しの段階では、思い切って以下のような流れでトライアルクロージングをかけてみるべきです。
もし、相手からすんなりと金額や納期が出てきたなら、それに近い見積りを出せば、成約できる可能性が高くなり、成約スピードも速めることができます。
つまり、「もしも」という形で尋ねることで、具体的な情報が入ってくるのです。
とはいえ、慣れた購買決定者ですと、複数の見積りを出させることもありますから、そこには、かけひきが必要な場合もあります。
まとめ
「話し方」の極意は、相手の身になって考え、相手の身になって話すことです。
色々な場面で「自分の意見が採用されるようになった」、「仕事の評価が上がった」、「人に頼られ るようになった」、「重要な仕事を任されるようになった」、ひいては「営業成績が上がった」などの変化が現れれば、話し方が変わった証拠と言えます。
「話し方」の変化は、周りとの関係や評価をも変えていくことになります。
■参考文献
『論理的な話し方が面白いほど身につく本』(中経出版)
『「セールストーク」の基本と実践テクニック』(フォレスト出版)
『上手な話し方が面白いほど身につく本』(中経出版)