2014年歯科診療報酬改定 改定ポイントと新設評価項目

1.歯科診療報酬改定率と重点課題

1.歯科医院の労務管理の課題

歯科における2014年度診療報酬改定率は、プラス0.99%であり、初診料・再診料に加算された消費税補てん分を加味すると、実質改定率は0.12%となりました。
財源としては、プラス0.99%で約300億円、うち消費税対応として約200億円が補てんされましたので、実質改定率対応分として100億円が配分されたことになります。

2014年診療報酬改定率

2.歯科診療報酬改定重点課題

重点課題として掲げられたのは、高齢化社会を背景とした在宅医療の推進と周術期口腔機能管理の充実です。
特に、周術期口腔機能管理は、術後の誤嚥性肺炎等の外科的手術後の合併症等の軽減を目的に前回診療報酬改定で新設され、今次改定でより強化されました。

3.ライフステージごとの口腔機能変化対応

重点課題について

重点課題のほかに、ライフステージごとの変化対応について、4つの視点で評価を行うこととなりました。
これは、高齢期における摂食・嚥下えんげ等の口腔機能低下を防ぐためには、特に、乳幼児期から学齢期(高等学校を含む)に、良好な口腔・顎・顔面の成長発育及び適切な口腔機能を獲得し、成人期・高齢期にかけて口腔機能の維持・向上を図っていくことが重要という考え方によるものです。
また、新規歯科医療技術や先進医療の保険導入についても、今回の改定では重点的に評価されています。さらに、期待された外来診療環境体制加算は、小幅の改定に留まりました。

ライフステージごとの口腔機能変化対応

4.注目された主な改定項目

(1)歯科訪問診療の改定

今回の改定で最も注目されるのは、歯科訪問診療の評価の見直しです。具体的には、歯科訪問診療1は850点⇒866点、歯科訪問診療2は、380点⇒283点、さらに1日に10人以上診療した場合、診療時間が20分未満に限った「歯科訪問診療3:143点」が新設されました。

歯科訪問診療の改定概要

(2)周術期における口腔機能管理の充実等

周術期口腔機能管理が必要な患者について医科医療機関から歯科医療機関の情報提供にかかる加算が算定できるようになりました。
また、実施した患者に対する手術料の加算の新設等、周術期口腔機能管理の充実を図るようになっています。

新たに設けられた施設基準

(3)先進医療の保険導入等

新たに歯科用CAD/CAMについても、点数が新設されました。
ただし、算定要件のハードルが高いため、多くの歯科医院で算定できるかは今後注目されるところです。

歯科用CAD/CAM(コンピュータ支援設計・製造ユニット)装置を用いて制作された歯冠補綴(ほてつ)物の評価

(4)初・再診時における歯科外来診療環境体制加算の評価の見直し

期待されていた外来診療環境体制加算は、結果的に初診料に28点⇒26点、再診料加算が2点⇒4点の加算となりました。
安心・安全を目指した診療所の充実を図る視点からの改定ですが、大幅な評価の引き上げには至っていません。

歯科外来診療環境体制加算

(5)消費税8%への引き上げに伴う対応

消費税引上げに伴い、医療機関や薬局等の仕入れに係る消費税負担が増加することから、基本診療料に点数を上乗せすることを中心に対応し、補完的に個別項目に上乗せされています。

消費税8%への引き上げに伴う対応

2.重点項目に対応した改定概要

1.在宅歯科診療に対する評価

今次改定の重点課題のうちの「在宅歯科医療の推進等」に対し、新規の施設基準等が設けられたほか、一部評価の見直しがありました。
主な改定項目は下記のとおりです。

(1)歯科訪問診療の改定

歯科訪問診療については、各点数が改定されたとともに、歯科訪問診療2が2人以上9人以下でかつ診療時間が20分以上に、1日に10人以上訪問した場合、あるいは診療に要した時間が20分以下の場合に算定する歯科訪問診療3が新設されました。
各点数には消費税アップへの対応分が加算されています。
また、在宅患者等急性歯科疾患対応加算については、同一建物居住者が55 点に統合されました。

歯科訪問診療の見直し及び新設

(2)かかりつけ医機能の強化

歯科訪問診療のうち、在宅療養を行っている患者に対する訪問を中心に実施している歯科診療所(歯科訪問診療料1)の評価として、加算が新設されました。

新たな加算点数
在宅かかりつけ歯科診療所加算における在宅療養患者とは、下記の施設に入居または入所している患者、短期入所生活介護やグループホームに入所している患者は除かれますので注意が必要です。

在宅療養患者の対象外となる患者

2.周術期における口腔機能管理の充実等

周術期における口腔機能管理は歯科診療所の取組みが少なく、また歯科医療機関と連携がなく歯科を標榜していない病院も口腔機能管理をほとんど実施していないのが現状です。
そこで、周術期口腔機能管理が必要な患者に対し、医療機関から歯科医療機関の情報提供に係る評価と、管理を実施していることや手術に対し、加算等が新設されました。

新規算定項目

3.口腔機能変化への対応と医療技術の保険導入

1.各ライフステージの口腔機能変化への対応

各ライフステージの口腔機能の変化への対応が小児期、成人期と分けて、算定項目が新設されています。
下記にその一部を解説します。

(1)小児期の対応

小児期の口腔機能変化への歯科治療に対し、保隙装置(ほげきそうち)の装着が新設されました。

小児保隙装置の評価

(2)成人期の対応

成人期は、有床義歯による口腔機能の回復又は維持を主眼とした調整又は指導と、舌接触補助床を装着した患者に摂食・嚥下機能(えんげきのう)の改善を行う項目が新設されました。

舌接触補助床の訓練の評価及び有床義歯の継続的管理の見直し

(3)歯の喪失リスク増加への対応

歯を喪失するリスク回避を目的とする治療の取組みに対し、ライフステージごとに評価体系を見直しており、患者の歯の状態別に点数が分けられました。

歯周病安定期治療の評価体系の見直し等、フッ素物局所応用に関する評価の見直し等

2.新規医療技術・先進医療の保険導入等

(1)新規医療技術の保険導入等

医療技術や医療機器、材料等は進化しており、また自由診療としてしか認められなかった治療が多々ありますが、その医療技術や最新医療等の一部を保険適用し、導入できるようになりました。

歯科矯正用アンカースクリューを用いた歯科矯正治療の評価

(2)先進医療の保険導入等

最新医療機器(歯科用CAD/CAM・コンピュータ支援設計・製造ユニット装置)を活用した補綴(ほてつ)物や手術等の評価に対し、基準が新設されました。

歯科用CAD/CAM装置を用いて制作された歯冠補綴(ほてつ)物の評価

4.新算定項目に係る疑義解釈通知

厚生労働省から診療報酬改定や新基準について、疑義解釈通知が出されています。
主要な項目を抜粋し、下記に掲載しました。

1.医学管理・在宅医療

医学管理:新製有床義歯管理料、在宅医療:歯科訪問診療料、在宅医療:歯科訪問診療料 リハビリ・処置等

2.リハビリ・処置等

本章では、本章では、医療法人立の歯科診療所72件をベースに、貸借対照表、損益計算書より実数を抽出し、経営指標を算出しました。
分析は、収益性、生産性、安全性、成長性の4つの視点で行っています。
第1章では、医療法人・個人開業のデータを合算しました。
この法人・個人合算データを使用しますと、役員報酬、専従者給与を除いているため異常値が発生します。
よって、医療法人立歯科診療所72件をベースに分析を行っています。

リハビリテーション:歯科口腔リハビリテーション料1、処置:フッ化物歯面塗布処置、歯冠修復及び欠損補綴(ほてつ):CAD/CAM冠、歯冠修復及び欠損補綴(ほてつ):小児保隙装置
※厚生労働省ホームページ『平成26年度診療報酬改定の概要(歯科診療報酬)』から一部抜粋しています。
※記載された施設基準や評価(算定点数)は、要件等を抜粋しています。
各詳細条件が有りますので算定する際には、十分留意してください。

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