平成26年決算テータからみる医科診療所経営実績分析

1.平成26年 医科診療所経営実績分析

1.医科診療所経営実績分析の概要

本調査は、平成26年の決算書に基づいて、実数値から経営状況を把握することを目的としています。
その上で、連続して調査を実施している平成25年との比較を通して、前年実績との改善または悪化の状況を分析しています。
抽出したデータは、平成26年に決算を終えた無床診療所269件(医療法人195件、個人開業74件)の主要科目を抽出し、平均値を算出しています。
なお本分析では、個人開業及び医療法人の実数値をそれぞれ集計した後に、個人開業に統合したため、人件費から役員報酬と専従者給与は除いています。

平成26年 比較要約変動損益計算書

2.医科診療所 全体動向と利益の状況

(2)医科診療所 利益状況

限界利益、経常利益は、わずかながら増加となりましたが、医業利益は減少しました。
限界利益が対前年比101.0%、医業利益が同97.3%、経常利益が同99.4%という結果となりました。

医業収入・費用等全体の状況
今回制定されたマイナンバー法においては、その利用範囲が社会保障分野、税分野、災害対策分野に限定されており、現時点でもこの範囲内で対応準備が進められています。
しかし、「施行日以後3年を目処に、利用事務の拡大を目指すこと」とも規定されていることから、今後は分野や利用機関の拡大が図られると想定されています。

限界利益・医業利益・経常利益

3.医業収入 対前年増減比較分析

(1)医業収入分析

医業収入の実績は、下記のとおりです。
医業収入合計では、対前年比101.1%となっています。
保険診療収入が2.2%の増加となりましたが、保険外診療収入及びその他の医業収入がともに減少しました。

医業収入と医業収入分析

4.医業費用 対前年増減比較分析

(1)医業費用対前年比較

医業費用の実績は、下記のとおりです。
特に、その他の固定費が増加しており、消費税8%への税率引き上げが影響したと思われます。

変動費(医薬品・医療材料費)、人件費・役員報酬、その他の医業費用

(2)医業費用分析

変動費、人件費、その他固定費

2.平成26年 収入上位診療所の経営実態

1.収入上位診療所経営実態調査の概要

第1章で分析した無床診療所269件(医療法人195件、個人開業74件)の決算書より、収入上位20%を抽出し、経営データを集計しました。
分析の分母は53件となります。
内訳は、医療法人46件、個人開業7件となっています。

平成26年 収入上位診療所比較要約変動損益計算書

2.収益性の状況

(1)経営動向と利益状況

平成26年診療所経営実績は増収減益でした。
収入上位診療所も同様に、増収減益となりました。
黒字診療所の割合は88.7%でした。
全体では84.5%が黒字でしたから、収入上位の方が黒字割合が高いという結果となりました。
医業収入は全診療所データでは、1.1%の増収でしたが、収入上位診療所では、2.0%増加しています。収入上位の診療所においても、保険外診療収入は減少していますが、保険診療収入は増加しています。
変動費は前年比3.1%増、また限界利益は同2.5%の増加となりました。
医業費用は、人件費が2.0%の増加、その他固定費は14.9%の増加となりました。

限界利益・医業利益・経常利益

3.医業収入の状況

(1)医業収入対前年比較

医業収入対前年比較

(2)医業収入分析 (医業収入上位20%)

医業収入分析 (医業収入上位20%)

4.医業費用の実態

(1)医業費用対前年比較

(1) 変動費(材料費・検査委託費)

変動費(材料費・検査委託費)

(2) 人件費・役員報酬

人件費・役員報酬

(3) その他医業費用

その他医業費用

(2)医業費用分析

医業費用分析
省資源・省エネへの取り組みは、紙・ゴミ・電気の節約など身近な活動ですから、小さな積み重ねが非常に重要になってきます。

3.平成26年 診療所経営指標分析

1.医療法人経営指標分析の概要

本章では、医療法人195件の無床診療所をベースに、貸借対照表の数値を抽出し、経営指標を算出しました。
分析は、収益性、生産性、安全性、成長性の4つの視点で行っています。
第1章では、医療法人・個人開業のデータを合算しました。
法人・個人合算データで経営指標を分析すると、役員報酬を除いているため異常値が発生します。
よって、医療法人195件をベースに分析を行いました。

平成26年比較貸借対照表 全診療所平均

2.収益性分析 前年対比

指標計算式、収益性分析コメント

3.生産性分析 前年対比

指標計算式、生産性分析コメント

4.安全性分析 前年対比

指標計算式、安全性分析コメント

5.成長性分析 前年対比

成長性分析コメント

4.平成26年 診療科目別経営実績分析

1.診療科目別経営実績分析の概要

本分析で抽出したデータは、平成26年に決算を終えた無床診療所269件(医療法人195件、個人開業74件)から診療科目別に抽出し、各診療科目別の平均値を算出しています。
なお、抽出した診療科目は、内科、小児科、心療内科、整形外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科となっております。
第1章のデータ同様、個人開業に統合したため、人件費から役員報酬と専従者給与は除いています。

各データのサンプル数
診療科目別の個別データは、次ページ以降に掲載しました。
診療科目別に集計した主要科目は、下記のとおりです。

平成26年 診療科目別主要データ

2.診療科目別経営実績分析結果

(1)内科診療所

内科を標榜している診療所の集計データです。
内科診療所は、増収増益となりました。
ただし、医業収入は、0.3%の増加と前年と変わっていません。
役員報酬は、26年平均で、40,517千円となっています。
医業利益は、45,210千円(対前年比2.1%増加)となりました。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(2)小児科診療所

小児科を標榜している診療所の集計データです。
小児科診療所は、減収減益となりました。
保険診療収入は2.3%と増加しましたが、保険外診療収入等が減少しました。
役員報酬は、26年平均で、31,788千円となっています。
ただし、医業利益は、32,965千円(対前年比1.8%減少)となりました。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(3)心療内科・精神科診療所

心療内科・精神科を標榜している診療所の集計データです。
心療内科・精神科診療所は、増収増益となりました。
医業収入は対前年比1.1%増加、医業利益は対前年比5.2%の増加となりました。
保険診療収入が、1.4%と増加しましたが、保険外診療収入等は減少しています。
役員報酬は、26年平均で、44,302千円となっています。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(4)整形外科診療所

整形外科診療所の集計データです。
整形外科診療所は、増収減益となりました。
医業収入は、0.5%の増加とほぼ前年並ですが、変動費、医業費用ともに増加し、結果として、医業利益は5.9%、金額にして2,322千円の減少となりました。
役員報酬は、26年平均で、39,943千円となっています。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(5)皮膚科診療所

皮膚科を標榜している診療所の集計データです。
皮膚科診療所は、増収増益となりました。
1%台とわずかですが、医業収入は増加、医業利益は3.4%の増加となりました。
役員報酬は、26年平均で、36,902千円となっています。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(6)耳鼻咽喉科診療所

耳鼻咽喉科を標榜している診療所の集計データです。
耳鼻咽喉科診療所は、減収減益となりました。
医業収入は、保険外診療収入が6.2%増加しましたが、保険診療収入が0.9%減少しました。
役員報酬は、26年平均で、33,691千円となっています。
医業利益は44,181千円(対前年比3.0%減少)、金額にして1,348千円の減少となりました。

平成26年 比較要約変動損益計算書

(7)眼科診療所

眼科を標榜している診療所の集計データです。
眼科診療所は、増収増益となりました。
医業収入は対前年比2.5%増、保険診療収入も保険外診療収入も増加しました。
役員報酬は、26年平均で、39,377千円となっています。
医業利益は、43,683千円(対前年比3.2%増加)、金額にして1,335千円の増加となっています。

平成26年 比較要約変動損益計算書

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